http://www.jca.apc.org/tlessoor/chechennews/chn/0724.htm (HTML版) 発行部数:1660部
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沖縄国際大学に米軍海兵隊のヘリコプターが墜落した事件を覚えていますか?沖縄の米軍ヘリ墜落事件が起こったのは、2004年8月13日。その翌月には、北オセチアのベスランで学校占拠人質事件が発生し、ロシア特殊部隊の突入によって330人以上が殺害されました。今回のチェチェンニュースでは、記憶と忘却をめぐる藤沢和泉さんの文章を最初にお送りします。
次に、インドで平和大行進を実践されている寺沢潤世上人からの手紙をご紹介します。続いて、アンナ・ポリトコフスカヤの関連記事と、ロシアで始まった新しい官製キャンペーンについての情報を。最後の二つは、日本の難民行政(ビルマ、クルド)に関する記事の紹介です。『踊れ、グローズヌイ!』上映会も全国で行なわれています。ぜひチェックをお願いします。
(邦枝律/チェチェンニュース)
INDEX
(藤沢和泉/チェチェンニュース)
記憶——、といってももちろん、チェチェン戦争自体が過去のものになったと言いたいわけではない。それどころか、未だ現在進行形で続くこの戦争には次々と新たな「日付」が書き加えられていく。
昔ある知人が、(沖縄の米軍ヘリ墜落事件について)「事件は忘れられても1年たつと『あれから1年』といってまたマスコミに注目される」と言った。そして、『2年後はあまり注目されないで5年後ぐらいに再び注目され、その次は10年後…』というように。その通りかもしれない。1年後にまたニュースでとりあげるのはいい。だが結局その1年後の1日だけで忘れ、「キリのいい」年数を経たときしか顧みられない、そういう気づきそうで気づきにくかった事実をシンプルに語った言葉だ。
アンナ・ポリトコフスカヤの命日であり(そしてプーチンの誕生日でもある)10月7日には、すでに「チェチェン総合情報」でも紹介しているようにマスコミ各社が一周忌の集会や犯人捜査状況などを各々報道した。来年はどうなるのだろうかとすでに先のことを考えてしまう。
2004年の9月1日から9月3日にかけておこったベスラン学校占拠事件。私は今年の9月に果たして事件はとりあげられるのか報道を注視していた。しかし私の知る限り、当該期間にベスランを「回顧した」報道はAFPの短信以外日本語で見る/読むことはできなかった(もし私の見落としがあればご教示いただきたい)。
ロシア学校占拠事件から3年 [AFP 9/4]
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2277016/2074492
当該期間にベスラン関係報道がなかったと述べたが、その少し後の9月16日には日経新聞で「ロシア学校占拠事件から3年——「真相を」遺族の思いなお」という記事が掲載されていた。現地取材をした古川英治記者によって事件から3年後の遺族の姿をリポートしたものだが、彼/彼女らの「戦い」を非常によく伝えてくれているので以下に抜粋したい。
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ロシア南部の北オセチア共和国ベスランの学校占拠事件から9月で3年が過ぎた。300人を超える犠牲者を出した同国最悪のテロの“真相”を求め、遺族が政府との対決姿勢を強めている。特殊部隊突入時の目撃証言と公式な説明が食い違い、「政権に都合の悪い情報が隠されているのでは」との疑問が消えないためだ。風化の波が押し寄せる中、遺族にとってやりきれない日々が続く。
人質が監禁された現場に部隊が突入し、流血の惨事に終わって事件について、遺族の多くは「政府は人命を二の次にして作戦を展開した」と疑っている。政府は人質解放まで戦車は使わなかったとしているが、住民らは「早い段階で攻撃するのを見た」と証言する。
[事件の遺族でつくるグループ「ベスランの声」の代表]エラさんは「政府は人質の命を最優先に考えて対応すると信じていた。今はそんな自分を責めている」と唇をかむ。
別の遺族団体に匿名で7月に届いたビデオには「爆発は体育館の中では起きていない」とする現場調査した専門家の証言があったという。事実とすれば「武装集団が体育館に仕掛けた爆弾が暴発したため突入した」との政府声明と食い違う。しかし、究明に向けた活動への支援の輪は広がっていない。「政府がウソをついていることは明らか。でも政治に関与したくない」。人質となった娘二人が無事戻ったという男性は打ち明ける。「政府に刃向かうことによる“報復”を恐れ、沈黙する住民は少なくない」とエラさんはいう。
(日本経済新聞、2007年9月16日、朝刊、34ページ)
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3年が経ち、現地でも少しずつ風化が進んでいる。もちろん学校を占拠した犯人グループの愚行こそ責められるべきものではあるが、それに対する政府の対応も同じように疑惑に満ちたものである。こうした事件後の経過をいつまでも追い続けることなしに歴史を書き加えることはできないし、「チェチェン人のテロによって多数の子どもたちが死んだ」という記憶やイメージを確定するにはまだ早すぎるのだ。
もちろん、「日付」も「名前」もない死者たちが大勢いることを決して忘れてはならない。戦争で亡くなったほとんどの人には命日もなければ一周忌もなく、こうして回顧されることさえないのが現実である。しかし、「日付」も「名前」もない死は実際に存在している。
日経新聞の記事の中で、10歳だった息子を亡くしたエミリアさんは次のように語っている。「万一、次の悲劇が起きたとき、ベスランの母親はなぜ真実を突き止めなかったのかと問われる。だから最後まであきらめない」と。私たちには「なぜ放っておくのか」という他者からの声が投げかけられ続けている。
インドで大規模な非暴力平和行進を実践されている寺沢潤世上人からの手紙です。「沈黙と暴力の中間に積極的非暴力行動が存在する」——含蓄の深い言葉だと思います。この平和行進(Janadesh)については、次のPDFファイルをご覧下さい。
Janadesh News 4 oct
http://www.jca.apc.org/tlessoor/chechennews/dl/20071004janadesh_news.pdf
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合掌 一昨日、マトゥラで初めてのメール、嬉しく拝見しました。ちょうどその頃、どうしておられるか、いつ又お会いできるかなと思っていた矢先で、きっと心が通じたのでしょう。去る二日、北京からインドに渡り、ここ二週間ばかりインドの大地を行脚しています。近来になかったガンディアンの非暴力の大行進で、毎日二万五千人の大群衆が八キロの列にわたる列を作って毎日、歩いています。私たちのお祈りが、その大行進の先頭に立っています。あたかもジンギスカンの大群が移動するような光景で、二十五組に編成された各グループごとに毎日の夜営、食事、水浴、飲水、便所を千人単位で設営しつつ、大移動するのです。
写真つきでつづきを読む:
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20071018/1192698981
次は、10月5日にヘラルド・トリビューンに掲載された「アンナ・ポリトコフスカヤ」という記事の訳を紹介します。著者のナタリヤ・エステミロワ氏は、人権グループ「メモリアル」の活動家で、戦争や紛争での女性人権擁護者に贈られる「アンナ・ポリトコフスカヤ賞」を最初に受賞した人物です。
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ナタリヤ・エステミロワ
2007年10月5日 グロズヌイ(ロシア)
彼ら——ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤと警察のセルゲイ・ラピン——が最後に会ったのは2003年11月、グロズヌイにあるオクチャブリスキー地区裁判所の荒れ果てた建物の中でである。彼は特別装甲部隊の重武装で迷彩服を着た護衛団に付き添われていた。彼女は何人かの友人とともにそこにいたが、それぞれラピンかその仲間いずれかの手によって痛めつけられた人たちだった。
彼は裁判にかけられていたのだが、その大部分はアンナによるものである。彼は被害者にぼん引き(Cadet)というあだ名で知られていた。それより2年前の2001年9月、アンナは一人息子のゼリムハンが失踪したムルダロフ一家と会っている。彼が失踪した場所にある建物は、当時ロシア北部のハンティマンシスク自治区からの警察官チームによって占有されていた。チェチェン警察はチェチェンの秩序や法を維持する能力に欠けていると見なされていたため、同様の部局が並列して設置されロシア他地域から来た警官が配属されたのだ。
つづきを読む:
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20071015/1191942835
14日、ロシア政府は、プーチン大統領が16日からイランを訪問する際に、大統領を自爆攻撃で暗殺しようとする計画が進められていると発表しました。インタファクスは、「ロシア情報機関のある信頼できる筋は、国外の複数筋から、テヘラン訪問中に大統領を暗殺する計画が存在するとの情報を受け取った」と報道しているとのこと。要するに、またロシア政府ソースで新しいキャンペーンが開始されたということでしょうか。本当に暗殺されたらびっくりですが。
露情報機関、プーチン大統領イラン訪問中の暗殺計画を警告 [ロイター 10/15]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071015-00000358-reu-int
連邦保安局(FSB)と連邦麻薬流通監督庁との間の対立を報じる記事が朝日新聞に出ていて、
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「政治評論家のベルコフスキー氏は「プーチン氏が調整機能を失った瞬間、『銃撃戦』が始まる」と指摘。大統領退任後の首相就任に言及したのも、影響力を維持する姿勢を示す必要に迫られたからだ、と見る。
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という結びでした。
発表ものの記事はだいたい政府の宣伝です。この記事にある事件が<発表可>なら、言いたいことは「偉大なる国の父****がいなければ、ロシアは崩れてしまう」と国民に思わせたいのではないかと思います。****に代入するのは、昔スターリン、今プーチン。戦争が起こると別荘に逃げ込んで、しばらく出てこなくなるところも似ています。あれで側近は苦労が多いかも。(大富)
ビルマ(ミャンマー)と日本の難民行政に関して、12日の東京新聞にすごい記事が掲載されました。これはもう記事つきで抗議のFAXを送るしかない?ファイルと情報はSさんより。ありがとうございます。
ファイルはこちら:
http://www.jca.apc.org/tlessoor/chechennews/dl/20071012tokyo.pdf
抗議FAXのサンプルはこちら:
http://www.jca.apc.org/tlessoor/chechennews/dl/20071014court.pdf
ミャンマー人 相次ぐ難民認定破棄 [東京新聞 10/12]
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20071015/1192407661
ミャンマー情勢が緊迫し、世界の耳目を集める中、東京高裁で九月下旬、先進国としての国際認識を疑われかねない不可解な判決が二件相次いだ。いずれも東京地裁で難民と認定されていたミャンマー人に対し、帰国しても迫害を受ける可能性が低いとして一審判決を破棄したものだ。丸腰の外国人ジャーナリストを銃殺する軍政下に、民主化活動を続けるミャンマー人を戻しても構わないとする高裁の国際センスとは—。
つづきを読む:
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20071015/1192407661
カナダのGlobe&Mailという新聞に、クルド難民のデニズ・ドーガンさんについての記事が掲載されました。デニズさんのお兄さんのエルダル・ドーガンさん一家は、日本での難民申請が認められず、7月にカナダに移住しました。デニズさん自身も、6月に1年間の在留特別許可が下りたものの、日本政府に難民として認定されたわけではありません。
日本の難民行政は、そして日本人は、世界の人々の目にどのように映っているのでしょうか?情報はSさんより。
「トルコにいたときよりも日本にいるときの方が不自由であると思い知ったときは、本当にショックでした。私たちは、日本に来ようとしたこと以外、何も悪いことはしていません。それなのに、私たちはまるで犯罪者のように扱われたのです。まるで虫けらのように」
・・・国連によると、国民一人当たり換算の日本の難民受け入れ数は、世界139位である。
つづきを読む:
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20071016/1192490912
エルダル・ドーガンさん一家の近況はこちらでご覧いただけます。
カナダのドーガン家訪問 ご報告
http://homepage3.nifty.com/kds/kds_048.htm
『踊れ、グローズヌイ!』上映会の情報を追加しました。新潟、島牧村、茅ヶ崎、広島、町田で開催されます。お近くにお住まいの方は、ぜひ足をお運びください。
10/24 新潟:『踊れ、グローズヌイ!』上映会 -全国スピーキングツアー2007 プレ企画「反テロと弾圧について考える」-
チェチェン関連映画『踊れ、グローズヌイ!』
ぼくたちは「テロリスト」じゃない。世界に伝えるため、子どもたちは踊る
http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=1041
10/27 福岡:日本国際政治学会2007年度研究大会「チェチェン革命とドゥダーエフ体制」
第一次チェチェン戦争前夜、グローズヌイで「革命」が起こっていた・・・
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jair/kenkyutaikai/2007/
10/27 島牧村:『踊れ、グローズヌイ!』上映会
http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=1041
10/29-30 BS世界のドキュメンタリー:『チェチェン紛争 子どもたちの情景』
チェチェン紛争がロシアとチェチェン双方の子供たちに残した深い憎しみと悲しみを3つのシーンで描く
http://www.nhk.or.jp/wdoc/yotei/
11/4 茅ヶ崎:『踊れ、グローズヌイ!』上映会
http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=1041
講演あり:林克明(ジャーナリスト) 「チェチェンからみたロシア・日本・世界」
http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=1041
11/18 水戸: 講演会「アンナ・ポリトコフスカヤ暗殺とチェチェン戦争」
ポリトコフスカヤ暗殺とチェチェン戦争。ジャーナリストの林克明さんが語る
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20071014/11924460861
11/23 アレクサンドル・リトビネンコ追悼集会 —ロシアの闇とチェチェンの平和を考える—
亡命先のロンドンで暗殺された元FSB将校、アレクサンドル・リトビネンコの著作とその死から、現代ロシアの実情に迫る
http://www.jca.apc.org/tlessoor/chechennews/event/
講演あり:大富亮(チェチェンニュース発行人) 「チェチェンで何が起こっているのか」
http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=1041
関東在住の若者グループ、AINU REBELSによるオリジナルの舞踊と歌
http://www.ainupride.com/ainurebels/
混迷を続けるパレスチナ情勢を、古居みずえさん、広河隆一さん、板垣雄三さんが語る
http://news.ghada.jp/?eid=535447
さあ炉を囲んで話をしよう、ユカラを謡おう、ムックリを鳴らそう
http://homepage2.nifty.com/at_port/news.htm
10/20 文京:「ミーダーン パレスチナ・対話のための広場」発足一周年イベント
「パレスチナ・占領40年と抵抗のかたち」 写真展+上映+シンポジウム
http://midan.exblog.jp/7131657/
10/21 京都:「報道されないガザの素顔 〜パレスチナの子どもたちと4年半〜」
イスラエル占領下で孤立するガザで生活する人々の「本当」の姿は?寺畑由美さんのパレスチナ報告会
http://www.onweb.to/palestine/sabo/yumi1021.html
10/22 千代田:『洞爺湖サミット』を問う-アイヌ民族の権利と現状
サミットにアイヌ文化が利用されようとしている
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070928/1190974960
10/27 千代田:シンポジウム 強まる外国人管理体制-「テロ対策」と日本版US-VISIT
入国・再入国のたびに、指紋と顔情報の提供の義務づけ。
外国人管理/差別はどこまで強まるのか?
http://tochoho.jca.apc.org/evx/event20071027.html
日韓にファンを広げる在日コリアン二世の歌姫
http://leejeongmi.com/11.2.jpg
浜岡原発と六ヶ所再処理工場の本格操業の停止を
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20071010/1191973811
生きとってくれてありがとう−ふたつの時代の女性を通して描くヒロシマ
http://www.yunagi-sakura.jp/
生きたかったよ、死にたくはなかったよ—日米のまなざしが描くカミカゼ
http://www.cqn.co.jp/tokko/
10/20-11/6 世田谷:燐光群公演『ワールド・トレード・センター』
知るのは、あなただけでいい。決して報道されなかった、あの日の出来事
http://www.alles.or.jp/%7Erinkogun/wtc.html
やっぱり映画! コミュニティの可能性が広がる元気な映画祭
http://www.siff.jp/siff2007/
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▼ 編集人:邦枝律 発行人:大富亮