チェチェン総合情報

チェチェンニュース Vol.07 No.04 2007.02.09

http://www.jca.apc.org/tlessoor/chechennews/chn/0704.htm (HTML版) 発行部数:1661部

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チェチェン共和国以外のロシア連邦で暮らしているチェチェン人は現在どのような状況に置かれているのでしょうか?チェチェン共和国以外の出身でチェチェンにいた期間もごく短いチェチェン人が、チェチェンで拷問を受け、欧州人権裁判所に訴え出て勝訴寸前まで行ったところでシベリア当局に不当逮捕されてしまった事件を紹介します。記事の書き手はアンナ・ポリトコフスカヤ。

2月24日(土)夜、都内で、チェチェン人強制移住の歴史と、ロシアで相次ぐ暗殺事件を考える集会を企画しています。ぜひご参加ください(詳細は後日お知らせします)。

「東京の教育を破壊してきた石原知事の三選NO! 」緊急署名にもよろしければご協力をお願いします。(邦枝律/チェチェンニュース)

INDEX

■「ロシア連邦の人質」 アンナ・ポリトコフスカヤ

チェチェン共和国以外のロシア連邦で暮らしているチェチェン人は現在どのような状況に置かれているのでしょうか?チェチェン共和国以外の出身でチェチェンにいた期間もごく短いチェチェン人が、チェチェンで拷問を受け、欧州人権裁判所に訴え出て勝訴寸前まで行ったところでシベリア当局に不当逮捕されてしまった事件を紹介します。記事の書き手はアンナ・ポリトコフスカヤ。

以下に、ノーヴァヤ・ガゼータの記事の抄訳をお送りします。

●事件の始まり

カザフスタンの学校で英語教師をしていたアダムが、家族とともに、チェチェンのグローズヌイで暮らす兄のアルビのもとに身を寄せたのは、第二次チェチェン戦争が始まる直前の1999年のことでした。その年の秋には、アルビのアパートがミサイル攻撃で破壊されたため、兄弟とその家族たちは、チェチェン共和国南西部のアチホイ・マルタンに住む父親の家で暮らすことになりました。

2000年になると、内務省(VOVD。新ロシア派)の役人が、捜索という名目でチターエフ家に繰り返し乱入し、金目のものをあらかた略奪していくようになりました。4月にはアルビとアダムが逮捕され、アチホイ・マルタンの内務省(後にチェルノコゾボ収容所)に拘留されて、「その内容をここで紹介することは倫理的にも不可能である」とポリトコフスカヤが述べるほどの凄まじい拷問を受けました。

2000年10月、不幸中の幸いで釈放された二人の兄弟は、当然のことながら怒りに燃えて、ロシアの法執行当局—検察庁、裁判所—を訪れます。ところが、彼らの訴えは、まさに法の執行を司るそれらの機関によって、完全に黙殺されてしまいます。そこで、二人の兄弟は、やむをえず欧州人権裁判所に訴え出ることになりました。

●「私がチターエフです。で、私ってお尋ね者だったんですか?」

欧州人権裁判所に提訴した後、兄のアルビは、これほどまでひどい辱めを受けた場所ではもう暮らしていけないと考え、ロシア連邦を去ってしまいます。一方、アダムはシベリアに移って、以前と同じように教師として働き始めました。

2005年夏、欧州人権裁判所から原告勝訴の暫定判決が下されました。ところが、まさにそのとき、アダムに対するロシア当局の捜査が始まったのです。「八着の軍用コートとシャミーリ・バサーエフのインタビューを録音したテープ」がアダムの自宅から「発見」され、アダムは一瞬にしてお尋ね者の「チェチェン人戦闘員」ということになりました。

アダムはシベリアの一時的収容施設(IVS)に拘留され、連邦保安局(FSB)の支局長から欧州人権裁判所への提訴を取り消すよう圧力をかけられますが、それを拒否します。支局長は、護送のコストをかけずに彼をチェチェンに移送するために、アダムに対して、チェチェンのアチホイ・マルタン地区の検察庁に出頭したという書類にサインをしてやるから、その代わり自腹を切ってそこへ行ってこいという取引を申し出ました。

9月16日、アダムは約束どおり一人でアチホイ・マルタンの検察庁に出頭しましたが、そこではなぜかアダムを呼びつけた張本人である責任者が彼に取り合ってくれず、グローズヌイの検察庁にたらい回しにされました。29日になってようやくアスラン・マフムドフという担当捜査官が見つかりますが、マフムドフはアダムに会うなり「君の事件は手違いだから、もう帰っていいよ」と言ったのです。

そればかりでなく、マフムドフは、グローズヌイに来てから「軍服を着た正体不明の人間たち」に脅迫されているアダムに対して、早くこの場を離れるよう忠告し、彼の身の潔白を証明する書類まで発行してくれました。

●ロシア連邦の人質

こうしてアダムはカディロフツィに誘拐される前にチェチェンを去ることができました。チェチェンからシベリアへの帰路、アダムは一連の事件についてプーチンに宛てて手紙を書いています。

「親愛なる大統領、私はロシアで生きていくことが日に日に困難で危険であると気づかされてしまう一人の人間です・・・お願いです。この理不尽な状況を、法の庇護が受けられない状態を、司法当局によるテロを、どうか見過ごさずに止めてください」

「司法当局は、問題を解決することも、アチホイ・マルタン地区の地方警察の職員に対する内部捜査を始めることもなく、逆に私や私の家族、親戚を破滅させようとしています。彼らは、執拗に私を脅迫して、自分たちに逆らえばお前を戦闘員に仕立て上げてやると脅すのです」

「親愛なる大統領、チェチェンではいまだに人々が失踪しています。超法規的な殺人と、恐ろしい残虐行為が今も続いています。信じてください。チェチェンで生きていくということが、本当にどうしようもない恐怖をともなうということを・・・これは、それでもロシアにおける法の正義を信じている人間が最後の希望を託して書いた手紙です」

●「よくある話」

アンナ・ポリトコフスカヤの記事の最後は、こんな文章で結ばれています。

「・・・(アダムの)四人兄弟のうち二人は、自らの幼い子どもたちの墓を作らなくてはならなかった。アダムはまだ赤ん坊だった息子のために墓を作った。生まれたばかりの彼の息子は、爆撃のショックで心臓発作を起こして亡くなった・・・。チェチェンではよくある話である」

記事の全文はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070206
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070207

■最近のロシア・チェチェン関連報道

2月以降のロシア・チェチェン関連ニュースをお送りします。

●ロシア

○国際非営利団体への公務員の参加を禁止する法律が成立 [Caucasian Knot 2/7]
http://eng.kavkaz.memo.ru/newstext/engnews/id/1176056.html

ロシア国会で、国際非営利団体への公務員(軍人や検察庁/保安評議会職員、判事、議員などを含む)の参加を禁止する法律が成立した。法律が施行されれば、国会議員がアムネスティの会員になることも違法ということになってしまうが・・・?

○プーチン大統領、年次演説 [AFP 2/1ほか]

1日、プーチン大統領は、国民と内外記者団に向けて、クレムリンで3時間30分の年次演説を行いました。以下に主な内容を紹介します。

○<ロシア>地下鉄爆破事件の3被告に終身刑 [毎日新聞 2/2]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070202-00000171-mai-int

2004年の2月と8月にモスクワで起きた地下鉄爆破事件の被告3名が終身刑に。事件では49名が死亡し、約300名が負傷した。被告は「ロシア南部チェチェン共和国付近を拠点とする地下組織のメンバー」とされている。

●チェチェン

一時的収容所(SIZO)における拷問 [Caucasian Knot 2/6]
http://eng.kavkaz.memo.ru/newstext/engnews/id/1176026.html

チェチェンの人権状況を監視しているノルディ・ヌハジエフが、チェルノコゾボの一時的収容所(SIZO)で現在も違法な拷問が続いていることを指摘した。

●ベスラン学校占拠事件

プーチンが突入を命令した [Caucasian Knot 2/6]
http://eng.kavkaz.memo.ru/newstext/engnews/id/1175971.html

ロシア連邦共産党のユーリ・イワノフ議員は、実行犯との交渉を拒否してロシア治安部隊を突入させ、334名もの人質(その半数以上は子どもたち)を死亡させることになった命令を下したのがプーチン大統領であるとして、痛烈に批判した。突入は、強力な指導者としてのプーチンのイメージを損ねないためになされたものだとも。クレムリンからの許可が下りなかったために、実行犯と交渉しようとする人が次々と脅迫された経緯については、アンナ・ポリトコフスカヤ著『プーチニズム』に詳しい(彼女自身も現場に向かう機内で毒を盛られて一時重態に陥った)。

●人権・報道の自由

ロシア大統領ら名指し=報道の自由抑圧の「独裁者」−米民間団体 [時事通信 2/5]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070205-00000044-jij-int

ニューヨークに本部を置く米民間団体、ジャーナリスト保護委員会(CPJ)が、民主的に選出された指導者が独裁傾向を強め、報道の自由を抑圧する風潮が出てきていると警告し、ロシアのプーチン大統領らを名指しで非難した。(米国のブッシュ大統領の選出過程はそもそも民主的でさえなかったようですが・・・。)

■「石原知事の三選NO!」緊急署名のお願い

最後に、4月の都知事選で三選を目指す石原都知事に、お疲れさまでした(もうやめていいです)の声を届ける署名運動を紹介します。石原都知事は最近、一回あたり2000万円〜3000万円という豪華な海外出張や、四男への公費投入などの「都政の私物化」が報道されています。署名の集約期限は2月10日(土)。よろしければご協力ください。

以下レイバーネットから転載します。

http://www.labornetjp.org/news/2007/1170478978735staff01

「東京の教育を破壊してきた石原知事の三選NO!」賛同署名のお願い

私たち14団体は、 昨年12月の集会での「これ以上石原都政の継続を許してはなりません。そのためにも都民の幅広い統一戦線を実現し、石原三選を阻止しなければなりません」を含む「アピール」実行第一弾として、“石原知事やめてください”の思いをこめて、「東京の教育を破壊してきた石原知事の三選NO!」の一点での署名に取り組んできました。

この取り組みは、1月17日の「朝日」「毎日」(下記HP参照)などで取り上げられマスコミも注目しています。

記者会見での小森陽一(東京大学)さんの訴えに応え、乾彰夫(都立大学)小山内美江子(脚本家)小田実(作家)見城慶和(夜間中学と教育を語る会)早乙女勝元(作家)佐貫浩(法政大学)斎藤貴男(ジャーナリスト)俵義文(こどもと教科書全国ネット21事務局長)さんをはじめ、多数の方々から、賛同をいただいています(1/27現在)。

署名は、以下の専用署名フォームからお願いします。

https://form1ssl.fc2.com/form/?id=166724

「君が代問題:石原知事3選阻止呼び掛け署名活動 市民団体など開始へ」
/「毎日新聞東京版1月17日付け」
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/tokyo/archive/news/2007/01/17/20070117ddlk13040485000c.html

【呼びかけ団体】

枝川裁判支援連絡会/学校に自由の風を!ネットワーク/「君が代」不当処分撤回を求める会/教育を壊すな!市民と教職員東京ネットワーク/「つくる会」教科書採択を阻止する東京ネットワーク/東京・教育の自由裁判をすすめる会/都教委包囲首都圏ネットワーク/都立高校のいまを考える全都連絡会/都立の大学を考える都民の会/七生養護「こころとからだの学習」裁判を支援する全国連絡会/「日の丸・君が代」強制反対・嘱託不採用撤回を求める会/「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟をすすめる会/「日の丸・君が代」不当解雇撤回を求める被解雇者の会/「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会

■イベント情報

●12/1- 東京ほか: みえない雲
http://www.mienaikumo.jp/

●1/6-2/9 東京: 六ヶ所村ラプソディー
http://rokkasho-rhapsody.com/pole2.html

●1/27- 東京ほか: グアンタナモ、僕達が見た真実
http://www.guantanamo.jp/

●1/27-2/9 東京: ヒバクシャ—世界の終わりに
http://rokkasho-rhapsody.com/pole2.html

●2/1-3/30 東京: 東京国際芸術祭2007
http://tif.anj.or.jp/

●2/10 東京:教育に自由を!2・10集会
http://comcom.jca.apc.org/freedom/news.html#070210

●2/17 東京: チョムスキー:マニュファクチャリング・コンセント上映!
http://www.cine.co.jp/media/

●2/18 東京: 今、文学と芸術に何がなし得るか
http://npopeaceon.org/schedule/

●2/18 東京: Talk☆PEACE☆Cafe vol.2 COME!ON!愛国心
 〜若者のリアリティと都知事選・日の君・教基法〜
http://saypeace.org/

●2/24 東京:「相次ぐ暗殺事件とチェチェンの今」

●2/24-3/5 東京:フォト・プレミオ 青木弘写真展「BORN UNDER FIRE−戦火の子どもたち−」
http://konicaminolta.jp/about/plaza/schedule/2007february/gallery_b_070224.html

●3/3 神奈川:第4回FAV連連影展
http://renrenfav.blog54.fc2.com/blog-entry-16.html

●3/10- 東京: パラダイス・ナウ
http://www.uplink.co.jp/paradisenow/

●3/22-4/1:周 香織・ねもと よしみ 二人展 「おわりとはじまり」
 会期中トークイベントあり
 ○3/24, 4/1:「ねもとよしみ劇場」
 ○3/25, 3/31:「周香織の部屋」
http://shukaori.exblog.jp/d2007-02-01


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