発行部数:1058部 INDEX ・チェチェン難民の追い出し工作 ・カディロフツィ ・人道援助ワーカー誘拐の周辺 ・チェチェンが独立国家なら「侵略」 テクスト: 大富亮/チェチェンニュース ■チェチェン難民の追い出し工作 まず、疑わしいけれど公式の情報から。ロシア国営RIAノーボスチ(*1)による と、チェチェンの隣国イングーシに流入している難民の帰還が進み、この4年 間で20万人から4万5千人に激減している。ばら色のニュースはまだ続く。 チェチェンに戻る難民たちのために、グロズヌイだけで6千世帯分の一時宿舎 が建設された上、破壊された家々の再建のために公的な補償金が下りるという。 4月1日に、9千人の難民が入居していた「スプートニク」キャンプが閉鎖 された。難民たちはこう語る。ロシア側は「退去しなければ配給物資を止める」 と脅迫し、抵抗する難民たちのテントには麻薬の包みを放り込んで、違法物資 を所持したと言いがかりをつけた。イングーシに残った最後のキャンプ「サツィー タ」も、同じような方法で近々閉鎖されようとしている(*2)。 HRWやメモリアルなどの人権団体が、例のグロズヌイの一時宿舎を調査したと ころ、たった14平方m(8畳程度)の室内に8人が居住していた上、上下水 道もなく、援助物資も満足に届いていなかった。頼みの「公的補償金」(額は わずか35ドル相当)はなぜか支払いを受けられず、請求した難民たちは「あ なたの名前は補償対象者リストにない」と宣告された(*3)。これが公式発表の 裏側。 ■カディロフツィ チェチェン領内では、親ロシア派のチェチェン人、カディロフ行政長官の息 子アフメドを中心とする「カディロフツィ(カディロフ一派)」による誘拐や 略奪が増えていて、現地ではロシア軍以上に恐れられるようになった。メモリ アルによると、3月までの間に、少なくとも78人の市民が拘束され、うち4 1人が現在も行方不明、別に30人ほどが戦闘に巻き込まれて犠牲になった。 3月27日、シャリ地区のドゥバユルト村に装甲車8台が乗りつけ、所属不明 の兵士たちが19軒の家を捜索し、28歳から44歳の男たち11人を拘束し た。8人は今でも行方不明のままだ(*4)。 ■人道援助ワーカー誘拐の周辺 チェチェンとその周辺での人道援助活動はきわめて難しい。2002年に何者 かに誘拐されていた「国境なき医師団(MSF)」のワーカー、アルヤン・エ ルケル氏が4月11日にようやく解放された。MSFは、この誘拐の主謀者が、 ロシア当局か、その協力者だと考えている。エルケル氏は誘拐当時、ロシア連 邦保安局(FSB)の尾行を受けていた上、誘拐の瞬間にもFSB職員が同じ 場所にいた(*5)。捜査は棚上げされ、3月にも担当者の一人は「誘拐の背後に ロシア当局がいるのは明らかだ」と、AFP通信に語っている。なぜこういう 事件が起こるかといえば、ロシア当局が、チェチェンで起こっていることを、 援助関係者にも見せたくないからだ。こうして「チェチェンに立ち入ると危な い」というイメージが、援助関係者にもジャーナリストにも増幅されていく。 ■チェチェンが独立国家なら「侵略」 ところで4月15日、ロンドンに亡命しているFSBの元士官、アレクサン ドル・リトビネンコが興味深い発言をした。「私はチェチェン侵攻はロシアの 犯罪だと考えています。1997年に、ロシアはチェチェンとの間に平和条約 を結びましたが、ここで、事実上でも法律上でも、チェチェンは独立したので すから」(*6)と。この「平和条約」(*7)はごく短い文書で、チェチェンとロシ アは「双方の関係を、常識的かつ国際法の基準に沿って発展させること」と定 めている。この条約と、国連総会で決議された「侵略」の定義(*8)を重ねてみ ると、この戦争は国内問題などではなく、ロシアによる正真正銘の侵略ではな いかという考えが、頭をもたげてくる。そういう考えをもとに私たちも反戦を 訴えていった方がよいのではないか? 参考記事: (*1)RIA: MOST CHECHENS RETURN HOME FROM INGUSHETIA http://chechennews.org/notice/20040420ria.htm (*2)PW: Refugee camp Sputnik dismantled http://www.reliefweb.int/w/Rwb.nsf/480fa8736b88bbc3c12564f6004c8ad5/a20d94090e1af48949256e6e000403ee?OpenDocument (*3,4)HRW: The situation in Chechnya and Ingushetia deteriorates http://www.reliefweb.int/w/Rwb.nsf/480fa8736b88bbc3c12564f6004c8ad5/ec26a5ea2294a9f085256e70006cb1f6?OpenDocument (*5)MSF ”ロシア当局はアルヤン・エルケル誘拐の背後にいる人物を知っている”: http://www.msf.or.jp/news/news.php?year=2004&id=2004031901&key=arjan (*6)CP: A.Litvinenko: "We all are members of one team" http://www.chechenpress.info/english/news/2004/04/20/03.shtml (*7)ロシア連邦とイチケリア・チェチェン共和国の平和と相互関係に関する条約(仮訳): http://chechennews.org/archives/peacetreaty.htm (*8)侵略の定義に関する決議 国連総会第二九回会期決議三三一四: http://www1.umn.edu/humanrts/japanese/JGAres3314.html
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