発行部数:980部
チェチェンの文化財の写真記事をご覧ください:
http://www5e.biglobe.ne.jp/~kafkas/article/nmkw2003/1.html
イベント紹介/失われゆく人類の記憶 〜イラク戦争と文化財〜:
http://www5e.biglobe.ne.jp/~kafkas/article/nmkw2003/
トルコ、ロシア、イランの三大国に囲まれているチェチェン共和国には、主に 穏健なスンニー派ムスリムであるチェチェン人70万人ほどが暮らしており、 彼らの祖先は、6000年以上前からこの土地にいたことがわかっている。人 々の顔つきは、ちょうどヨーロッパの白人の肌の白さと、アラブ系の彫りの深 さが共存している。
ここでの現在の主な産業は果樹の生産と、石油の精製である。言語学者のJ. ニコルズによると、チェチェン人が尊重しているのは、家族および氏族の名誉、 年長者に対する敬意と服従、客へのもてなし、そして公私にわたる礼儀正しい ふるまいである。女性は社会的、職業的に男性と平等で、経済的にも自立する ことを認められている。
チェチェンと、その兄弟民族であるイングーシの人々は、石造りの建築物の文 化を継承している。12世紀に建立されたアッサ谷のトハバーエルドウイ教会 をはじめ、15世紀から18世紀にかけては、「塔」の文化を発展させた。こ れは、地盤の柔らかい牧草地に、工夫を重ねて2〜3階建てに相当する石積み の塔を築き、見張り台にするとともに、外敵の侵略を受けたときには要塞とし て使ったもので、今も多くの村にある。
チェチェンは91年のソビエト連邦の崩壊とともに、独立を宣言した。そして 94年から、その独立を許さないロシアの武力侵攻が始まり、10万人から2 0万人の市民が殺害されている。また、無差別爆撃によって、40万人が居住 していたチェチェンの首都グロズヌイは焼け野原になった。チェチェンはほと んど根拠もないままに「国際テロリズム」ネットワークの一部というレッテル を貼られたまま、世界から見捨てられている。石の「塔」は格好の砲撃目標と なり、今回の展示資料を所蔵している博物館も灰燼に帰し、文化的な損失はは かりしれない。
このページの写真にキャプションを付けた、考古学者からの手紙を紹介しよう。 ( http://www5e.biglobe.ne.jp/~kafkas/article/nmkw2003/1.html )
「これらのものは国立チェチェン=イングーシ合同博物館に保管されています。 ・・・博物館には、1994年時点で、チェチェン=イングーシやカフカス全体か ら集められた15万点以上のコレクションと2万5000冊以上の書籍を有していま した。が、これらは全て1995年1月のロシア軍によるグローズヌィ空襲によっ てなくなってしまいました。博物館には全く何も残されていないのです!
私はすべての写真の説明が付けられるように努力しました。でも、手にとって 見ることができるほんの少しのものを除いて、私やグローズヌィに住んでいた 同僚たちのところにあったコレクションや、文献は全て、第一次、第二次チェ チェン戦争で失なわれてしまいました。・・・博物館の職員の幾人は第一次チェ チェン戦争で、何人かは今回の戦争で亡くなりました」
人の社会は、人だけでなく、言語と、その人々の持つ歴史によって成り立って いる。今、世界中で、「テロリズムの根絶」というかけ声のもとに、少数民族 が、大国によって人命と歴史の両方を奪われている。私たちが手をこまねいて いる間に、言語も失われるだろう。
チェチェンの歴史はほとんど知られていないが、かなり長い。その歴史のなか で光るさまざまな出土品を、この秋には島根県の松江市で見ることができる。 文化財の記録をテーマとする写真家、並河萬里さんが撮影した、チェチェン・ イングーシの出土品。世界各地の紛争地で撮影された写真を見ていると、ステ ロタイプになった「紛争地の人々、難民の苦しみ」という枠組みではなく、平 和と戦乱を生き延び、独自に文化を発展させてきた人々の歴史に気付かされる。
「チェチェンは独立できない。チェチェン人はチェチェンを統治することがで きないからだ」と言った人がいた。では、私たちはどれだけチェチェン人を知っ ているというのだろうか。
(2003.10.03 大富亮/チェチェンニュース)
「戦争と文化財」。イラク、アフガニスタンでの文化財被害など、今、戦争と 文化財についての関心が高まっています。
この企画は、そのイラク、アフガニスタンをはじめとして、チェチェン地方 (ロシア連邦)、そしてカンボジアといった、戦争や紛争などで被害にあった 文化財を展示します。かつてそこにあった姿を惜しむだけでなく、人類のかけ がえのない歴史を記録する「写真」という史料と、文化財の記録をテーマとす る並河萬里の写真家としての足跡を知っていただきたいとも考えています。
また、今回特に桑原史成氏の協力を得、カンボジア内戦時の作品を展示するこ ととなりました。混乱の中、貴重な文化財と共に生きなくてはならない彼らの 壮絶な日常を、第一線のフォトジャーナリストの目が捉えた30点。ご高覧くだ さい。
会 場:島根県立美術館ギャラリー1室
会 期:平成15年10月7日(火)〜13日(月祝)
観覧料:無料
主 催:(財)島根県並河萬里写真財団、島根県、山陰中央新報社
協 力:津和野町教育委員会
後 援:島根県教育委員会、松江市、朝日新聞松江支局、共同通信社松江支局、
産経新聞松江支局、時事通信社松江支局、島根日日新聞社、新日本海新聞社松
江支社、中国新聞社、日本経済新聞社松江支局、毎日新聞松江支局、読売新聞
松江支局、NHK松江放送局、山陰中央テレビ、山陰放送、山陰ケーブルビジョ
ン、日本海テレビ、エフエム山陰
ギャラリートーク
1.並河萬里 10月12日(日)14時〜
2.担当学芸員 10月11日(土)14時〜
10月13日(月)14時〜
会 場:津和野町現代フォトギャラリー 9時〜17時
会 期:平成15年12月20日(土)〜平成16年3月18日(木)会期中は休館日なし
主 催:(財)島根県並河萬里写真財団、島根県、津和野町教育委員会
共 催:大人200円、中高生120円、小学生80円
20名以上は団体料金(大人160円、中高生100円、小学生60円)
ギャラリートーク
桑原史成 2004年1月頃
桑原経歴
1936年 島根県津和野町(旧木部村)生まれ。
1960年 東京農業大学と東京フォトスクール(現・東京綜合写真専門学校)を卒業。
1962年 個展「水保病」が社会的に大きな反響を呼び、水俣病の存在を知らせ
るきっかけになる。同写真展で日本写真批評家協会新人賞を受賞。若手ホープ
として注目を集める。以後、ベトナム戦争、北朝鮮、ロシアなど、社会的なテー
マを常に追求している。
問合せ先:津和野町現代フォトギャラリー tel:0856-72-3171