チェチェンでは、ロシア軍に逮捕されたチェチェン人が、爆発物を使って跡形もなく処刑されることがめずらしくない。しかし、グロズヌイに近いペルボマイスカヤ村のアスラン・ザブライロフは、幸運にもその運命から逃れることができた。
2月16日、ロシア軍はアスランと兄のワリドを彼らの家で逮捕し、部隊の倉庫に監禁した。アスランによると、ここで、チェチェンの武装勢力に参加したことを自白させるための組織的な拷問を受けた。
4日後、兵士たちがアスランを建物の外に引き出して、頭にカバンをかぶせ、トラックに乗せたとき、アスランは自分が一体の死体に乗せられたことに気がついた。トラックが止まると、彼は外に引き出され、ふたたびその死体の上に放り出された。そして銃声が響いたが、幸い、銃弾は彼からそれた。だがアスランがそのまま死んだふりをしていると、彼と死体との間に何か固いものがあるのに気がつき、ロシア兵たちが走り去る音が聞こえた。
頭からカバンを外したときに見えたものは、まさに恐怖そのもので、自分の下に横たわっていたのは死んだ兄の遺体、しかも二人の間には今にも爆発しようとしている爆弾が挟まれていたのである。彼は必死で、あと数秒のところで信管を外し、腹ばいのまま道路にたどりつき、通りがかった人間が事件を警察に知らせた。
今、ザブライロフの家族はワリドを殺害した犯人を探しだそうとしている。彼らは犯人を裁判し、処罰することを求めている。これまでのすべての容疑について。
(2003.02.26 ルスラン・イサーエフ/北カフカス チェチェン人ジャーナリスト)
<記事について>ロシア軍の侵攻の続くチェチェンでは、理由の明示されない逮捕、虐待が頻繁に起こっている。特に青年にはゲリラに参加したとの疑いがかけられる。
昨年筆者が接触したチェチェンのゲリラは、「ロシア軍の収容所や軍病院では、
逮捕したチェチェン人から臓器を摘出して売却している」と話した。そして臓
器売買の事実を葬るために、同房の囚人ともども爆殺されるという。2000
年に日本を訪れたチェチェン人のマディナ・マゴマドワ女史は、「モズドクに
あるラーゲリで人体実験が行われていて、帰還者は少ない」と報告しており、
その一致が気になる。なお後半の警察とは、チェチェン人で構成される民警の
こと。(大富 亮)
http://www.watchdog.cz/?show=000000-000008-000001-000228&lang=1
チェチェンに関する映画、「金色の雲は宿った」を上映したことのある、日本 映画学校から便りが届いた。もうじき、学生たちの卒業制作 の上映会があるそうである。彼らが作った作品は、最近、海外 の映画祭に招待されたり、国内でも劇場公開されるなど、評価が高まってきて いる。
映画学校の職員の大西さんのおすすめは、3月6日(木)に上映される立体アニメ作品『ひめ紡 ぎ』である。平日だが、午後7時すぎてからの上映なので、筆者も観に 行くつもりでいる。他の学生たちの作品も見ることができるので、今から楽し みだ。
さて、チェチェンからも、映画の話題が届いた。弱冠25歳のムラート・ マザーエフが監督した、「マルショ(自由)」というタイトルの40分の作品で、 先週トビリシで試写会が開かれた。この映画は、昨年ゲラーエフ部隊の駐留地 として注目を浴びたパンキシ渓谷で撮影された、初のチェチェン語による劇映 画だ。
チェチェンと映画制作の結びつきの歴史はまだ短く、苦い。1994年、当時 のジョハール・ドゥダーエフ大統領は、独立したチェチェン共和国の芸術部門 を育てるために、4人の若者をグルジアの映画学校に留学させた。だがまもな く第一次チェチェン戦争が起こり、このうち2人は命を落とした。
1996年の和平合意後、再びチェチェンから3人の留学生がグルジアに送り 出された。その後の99年、現在の第二次チェチェン戦争が始まった。しかし それにも負けずに2001年にも新たな若者がグルジアで映画を学び始めてい る。「自由」を撮影したマザーエフは、このチェチェン映画留学生たちの一人 であり、チェチェン人初の映画監督でもある。この映画は彼の卒業後第一作だ。
「自由」を輸入して上映しようとしている映像作家の岡田一男氏によれば、こ の作品は35mmフィルムの美しい映像を生かした、純粋さを感じさせる作品 だという。こうして新しい映画の話を聞いていると、チェチェン戦争という背景から 生まれた同年輩の作家の映像を、日本の学生や若い作家たちと共有し、何らか の交流のきっかけにしたいという思いが、どうしても生まれてくる。この映画 に関心のある方は、当編集室にご一報下されば幸い。(2003.02.28 大富亮)
mail: ootomi@mist.ocn.ne.jp
日時:2003年3月5日(水)・6日(木)
場所:富士フイルム本社ホール/東京都港区西麻布 2-26-30
交通:バス/渋谷駅東口バスターミナルより【都01系統・新橋行】
「南青山七丁目」下車1分 地下鉄/「表参道」駅から、徒歩約15分
お問い合わせ 日本映画学校 044-951-2511
<<入場無料>>
日本映画学校: http://eiga.ac.jp
会場地図: http://www.fujifilm.co.jp/map/tokyo.html
3月5日(水)
13:00 『河童になる日』16mm 40分 三科合同
(撮影・照明コース+映像編集コース+映像録音コース)B班
13:50 『過呼吸』16mm 60分 脚本演出コース
15:00 『ひとかけら』VTR 60分 映像ジャーナルコースB班
16:10 『熊笹の遺言』VTR 60分 映像ジャーナルコースA班
17:20 『女ともだち』16mm 60分 映画演出コース武重班
18:10 『Living In Babylonia』16mm 55分 映画演出コース新城班
3月6日(木)
13:00 『ヴァニットマン』16mm 40分 三科合同
(撮影・照明コース+映像編集コース+映像録音コース)A班
13:50 『踊れ!ソワカ』16mm 40分 三科合同
(撮影・照明コース+映像編集コース+映像録音コース)C班
14:40 『海月(くらげ)』VTR 60分 映像ジャーナルコースC班
15:50 『蒲公英的歳月(たんぽぽの歳月)』VTR 60分
映像ジャーナルコースD班
17:00 『仙人掌(サボテン)』16mm 50分 映画演出コース笹岡班
18:00 『八街妄想族(やちまた もうそうぞく)』16mm 50分
映画演出コース吉田班
19:00 『ラリオ』VTR 10分 映像ビジュアルアーツコースB班
19:20 『ひめ紡ぎ』16mm 15分 映像ビジュアルアーツコースA班
*上映開始時刻は、事情により多少前後する場合がございます。