10月6日から、チェチェン東部のクルチャロイスキー地区のツォツシン・ユルト村が、200両ものロシア軍の軍用車によって包囲され、村人は村の外に出ることを許されていない。また、外部から入ろうとすれば検問で止められ、追い返される状況が続いている。村からの断片的な情報を総合すると、ロシア兵たちは家々を調べた上、男性全員拘束して、戦闘員かどうかの「選別」しているという。
この村に対する掃討作戦は初めてではない。前回の作戦では生後3ヶ月の子供を連れた母親1人を含む20人が拘束され、チェチェン側のレジスタンスをしているという容疑を受けた。拘束された村人は1週間後に解放されたが、全員が深刻な外傷を受けていた。また、ロシア兵は少しでも値打ちがあるものはすべて略奪した。
今回、ツォツシン・ユルト村に近いアフトゥリー村の村人が確かめたところでは、、包囲によって食料はすでに尽きており、人々は国際的な人権機関、人道機関による介入を求めている。(ルスラン・イサーエフ記)
10月12日、欧州評議会(CE)は、現在チェチェン共和国に駐在している人権問題専門職員の活動を年末まで延長することで、ロシアのイワノフ外相と合意したと発表した。ワーキンググループは2000年の6月より、ロシア政府のウラジミール・カラマーノフ人権問題担当官の事務所に駐在している。
10月13日、ロシア・チェチェン友好協会の北コーカサス支部代表、イムラン・エズヒエフ氏がスンゼン地区の警察に逮捕された。警察によると容疑は「反憲法的行動」。同氏はこれまで、イングーシ共和国でチェチェン難民のために活動して尊敬されている。プリマ・ニュースより。
10月9日、チェチェンの南隣のグルジア共和国から分離独立を求めているアブハジアの、グリプスキ地域の村落数ヶ所に対して、空からの爆撃が行われた。これによって、5人前後の村人が死亡。アブハジア当局はグルジア軍によるものだとして非難した。これによると、グルジア政府はアブハジア近辺で活動するチェチェン民兵に対して支援を行っているという。グルジア政府当局者はこれに対して「挑発にすぎない」と断言。当時グルジア軍機が当該地域を飛行していなかったことを、文書による証拠で示すこともできると発言した。
10月7日夜、チェチェン南西の町アチホイ−マルタンで、100人以上のレジスタンスによる攻撃が行われ、少なくとも4人の親ロシア政権の警察官が死亡した。戦闘は2時間続いた。
10月10日、グルジア東部、アブハジアに対する爆撃騒ぎについて、グルジアのダビッド・テバゼ国防相は、「国籍不明機がアブハジア=グルジア国境のグリプスキ地区を攻撃した。今後そのような機が飛行した場合は攻撃する」と発表した。また、爆撃にグルジア政府が関与しているという非難に対しては、「絶対にそのようなことはない。グルジア側の村も攻撃されている」と強く否定した。グルジア空軍副司令官のミハイル・ザヴァナゼ大佐は、グルジア領を攻撃したのはロシア軍機だった」と語っている。
10月15日、ロシア軍筋はここ24時間の間の戦闘により、20人のレジスタンスが死亡、ほかに34人がロシア側の捕虜となったと発表した。首都グロズヌイと東部の都市グデルメスにおいて行われたロシア軍の特殊作戦によるもの。また、親ロシア政権の当局者はグロズヌイのスタロプロスミロフスキー地区で、レジスタンス側の待ち伏せによって5人の民間人が死亡したと発表。
10月15日のグラスノスチ財団の情報によると、チェチェンの首都グロズヌイとキズリャルを結ぶ道路沿いで、12人の男女の遺体が発見された。遺体にはいずれも暴行された痕が残されている。チェチェンではロシア軍による掃討作戦により、多数の民間人が行方不明になっており、今年2月にも、ロシア軍基地付近の廃村で70体に及ぶ虐殺遺体が発見されている。
参考サイト: Human Rights Watch: http://www.hrw.org/
10月15日、欧州連合(EC)の執行機関である欧州委員会は、冬季を迎えるチェチェン難民の救援のために、700万ユーロ(およそ7億8千万円)を支出することを決定した。支援金は欧州委員会人道援助事務所(ECHO)を通して支出され、食料、医薬品、テントなどに使用される。対象は17万人の国内難民と、隣国イングーシ共和国などに居住する最大21万人の越境難民。救援活動上の問題として、欧州委員会はチェチェン領内での困難な状況をあげており、国連が提供する救援関係者間のVHFによる連絡網の使用も、ロシア側に対して交渉を続けている段階という。
10月13日から14日にかけて、チェチェンの首都グロズヌイ、シェルコヴスコエ地区で戦闘。グロズヌイでは装甲縦隊が攻撃され、1時間の戦闘でロシア軍の装甲車1台、トラック2台が破壊された。その後グロズヌイ郊外でも2台の装甲車が破壊された。シェルコヴスコエ地区ではトラック2台が破壊、装甲車1台が損傷した。
チェチェンの南隣、グルジアとアブハジアの国境地域が緊張している。チェチェンニュース20号*でも伝えているが、チェチェンとグルジアの民兵が国境地帯に集結するなどの不穏な動きを見せたのち、今月9日には国籍不明の軍用機がグルジア、アブハジア両国の村を爆撃したと報道されている。
アブハズ人は分離独立を求めるが、グルジア国民の中には分離独立への不満があり、アブハジアの一部にもグルジアに近い人々がいる。その混交を考えると、基本的には国境の引けない地域のように見える。
アブハジア紛争は、ロシア政府にとって、グルジア共和国をコントロールするための材料となっている面がある。グルジア政府が国境地帯の状況悪化に対して、火消しの役割を果たそうとしている一方、アブハジアの分離独立派はロシアの支援を受けている。グルジアにはロシア軍の兵力5000人が駐留し、加えてアブハジア紛争のための平和維持軍として1500人が配置されている。国籍不明の軍用機はおそらくロシア軍機であり、国境地帯をかく乱する行動の一部と考えられる。
コーカサス地域の政情不安定とロシアの介入、そしてチェチェン紛争はそれぞれに強く結びついている。今後も気になるトピックがあれば紹介したい。(発行人)
*チェチェンニュース20号:http://www.geocities.com/kafkasclub/che/01news/chn_020.html