チェチェン軍の発表では、イトゥム・カレ地域で、ドゥカ・ウマーロフ部隊の支隊がロシア軍の縦隊を攻撃し、装甲兵員輸送車3台を撃破、兵士および士官13人が死亡した。戦闘は1時間以上続いた。ウマーロフ司令官によると、チェチェン側は迅速な行動を作戦方針とし、これに沿ったもの。
チリ=ユルトでは、ロシア軍による「掃討作戦」が行われ、2人の村人が拘束された。また、バチ=ユルトでの、ロシアの軍用車への攻撃のあと、この村に対しても「掃討作戦」が行われ、20人の民間人が行方不明となった。
9月3日夜、クチャロイ村の近辺で、チェチェン機動部隊による、ロシア軍拠点への攻撃が行われた。この攻撃により、ロシア兵5人が死亡、7人が負傷した。同日、アルグンでは軍用車1台が破壊され、ロシア兵1人死亡。2人が負傷。
ゴイティとウルス=マルタン間では軍用車1台を撃破。スタール=イアタギでは、ロシア兵が近在の民家を銃撃してチェチェン人男性6人、女性6人を死亡させた。これに対してレジスタンス側は装甲兵員輸送車を撃破して応じ、ロシア兵士5人が死亡。
ロシアと親ロシアのチェチェン政府が、繰り返しチェチェンが連邦軍によって平定されていると宣言しているにもかかわらず、イングーシへ逃れてきたチェチェン難民の中で,チェチェンに今戻りたいという者はまずいない。
ロシア政府の統計によれば、チェチェンの隣国であるイングーシ共和国には、現在14万9千人の難民が流入している。この他にも、94年から96年までの第一次チェチェン戦争の際にチェチェンから逃れてきていた難民2万人も、イングーシの間に合わせのキャンプに居留している。
8月28日、ロシア安全保障会議のヴァレンティン・ソヴォレフ副書記がラジオ・リバティーに語ったところでは、「冬が近づいており、人々は3年目のテント生活を過ごすことはできないだろう」とし、ロシア政府は難民の状況に深く憂慮していると表明した。
鉄道の客車を改造したキャンプや、テントに生活している難民数は3万2千人ほど。彼らはしばしば飢え、貧弱な食料で命をつないでいる。4月以降、暖かい食事の供給は停止している。これ以外のところにいる難民にとっては事態はさらに悪い。
国際的な救援活動は、難民たちが生き延びる役には立っている。しかし援助団体もまた、難民の帰国をすすめている。イングーシで活動しているNGOは30団体あるが、その一部は帰国する人々に対して食料と建設資材の提供を約束しており、難民の帰国したあと、援助物資を送り届けるための準備に入っている。彼らによると、帰国後には自由な移動が可能であり、2週間分の食料の配布が受けられるという。
一方、国連とサウジアラビア赤十字は、トイレ設備などのない鉄道車両に暮らしている難民のために、さらに多くの新しいテントハウスを設置するための予算を組んだ。
イングーシ政府が、難民の帰国を望んでいることは理解できる。貧弱な社会と経済の基盤しかないにもかかわらず、イングーシ共和国は15万人近い難民を受け入れて3年目を迎えたことで、数々の問題をきたしているのだ。
家屋とアパートの値段は急騰し、仕事も、学校も、病院も不足している。失業率が高まるにつれて、犯罪も増加している。イングーシの国民は不平を訴え始め、ある関係者は人々の間で偏狭さが目立ってきたと指摘する。
このような問題に直面したイングーシ政府は、ロシア政府と親ロシアのチェチェン政府と結んで難民の帰国を早めようとしている。政府関係者は親ロシア政権の担当者とたびたび協議して、難民のデータベース作りを始め、多くの時間とリソースをそれに費やしている。
しかし、イングーシ政府はそれ以上のことができずにいる。ロシアの連邦予算に依存しているため、政府はチェチェン難民に適切に対処するための行政機構を持てず、悲鳴をあげている。ロシア政府からの送金は遅れており、イングーシがチェチェン難民のために使うはずの資金は届かず、その結果として食料と医薬品が不足している。
チェチェンに戻りたいという人々はほとんどいない。 ほぼ3万人の難民が、さらに1年間のイングーシでの居留を申請している。
モスクワでの安全保障会議で、ロシア政府のウラジミール・イエルギン/チェチェン担当相は、ロシア政府がチェチェン人の帰国の安全を保障し、同時に就業の機会と失業手当を支給すると発言した。
チェチェン人にとっては、ロシア人同様、カディロフ氏の親ロシア政権も信用できず、傀儡でしかないと考えている。ノーボスチ通信社は、8月30日のカディロフ氏の発言として、「難民を帰国させるために充分な予算を組み、破壊された家々の修復費を支給するのが最もよい政策だ」という発言を伝えた。
ほとんどのチェチェン人はこれらの発言を疑っている。カディロフの発言に対して、ある難民は「彼は難民を呼び戻して、レジスタンスの攻撃からロシア軍を守るための、人間の盾にするつもりさ」と話した。
多くのチェチェン人の理解では、ロシア軍であれチェチェン側のレジスタンスであれ、難民に安全の保証はしない。そして難民が恐れるのはロシア軍による、「掃討作戦」と呼ばれる民間人への攻撃である。これについて親ロシア政権の司法当局は、ほとんどが個人的な犯行であるとの見解を堅持している。
状況は去年からほとんど変わっていない。当局の幾度もの帰国の勧めにもかかわらず、ほとんどの難民はイングーシでの居留を希望しており、甘い誘いには応じないのである。何人かのコメンテーターは、最近のチェチェンの戦闘激化が、この冬にはさらに多くの難民流出の引き金になりうると発言している。
ロシアの新聞、ノヴィエ・イズベスチアでは、これをチェチェン人の「大量国外追放」という書き方をしている。今後もこの状況は続くだろう。
アレクサンドル・ザジーエフ:北オセチア、ウラジカフカス在住のIWPR記者IWPW: Institute for Peace and War Reporting 戦争報道に関するNGO。本部: ロンドン
http://www.iwpr.net/
9月8日、カフカス・センターによると、ロシア軍は航空戦力とともにイトゥム-カリンスキ地区のチェチェン側拠点への攻撃を行った。チェチェン側は退却した。
9月7日、バクー・プレスクラブにて、コーカサス・ジャーナリスト連盟が発足した。参加者はアゼルバイジャン、グルジア、チェチェン、カバルディノ-バルカリア、アドゥゲイヤ、イングーシ、カラチャエボ-チェルケシアの各国にわたる。
連盟の趣旨は、「コーカサスを互いへの敵意から解放し、コーカサスの諸国家が平等の関係を築く」ことを目的としている。連盟の主体はコーカサスの各共和国からの代表が構成する。
9月13日から16日の間、欧州評議会議員およびロシア下院議員による合同作業グループは、チェチェンおよび北コーカサスを訪問する。
合同作業グループは、イギリスのジャッド卿と、ジミトリー・ロゴージン議員が共同代表となり、チェチェンでの人権状況を視察する。今回の目的には、主にロシア軍およびその特殊部隊による、民間人多数の虐殺疑惑、および難民の状況についての調査が含まれる。また、チェチェンの各党派を交えて、紛争の政治的解決に向けた討議を行う。
13日、モスクワからの出発に先立ち、合同作業グループは連邦保安局、連邦検察当局およびチェチェンの代表と会談する予定であり、チェチェンではチェチェン政府当局者、検察、グロズヌイ市長との会談を行い、カンカラの駐留ロシア軍司令部を訪問し、最後にカラブラクとズナーメンスコエの難民キャンプを視察する。
合同作業グループは17名で構成され、うち10名が欧州評議会、7名がロシア下院の超党派のメンバーである。9月16日には、このチェチェン視察についての記者会見が開かれる。会場はHotel National, 5/1 Mokhovaya St, Moscow 103009。
作業グループの参加者は次のとおり。
Lord Judd (United Kingdom, SOC), Laszlo Surjan (Hungary, EPP/CD),Lara Margret Ragnarsdottir (Iceland, EDG), Rudolf Bindig (Germany,SOC), Lilli Nabholz-Haidegger (Switzerland, LDR), MichaelSpindelegger (Austria, EPP/CD) and Mats Einarsson (Sweden, UEL).The Duma is represented by Dmitry Rogozin, leader of the Russiandelegation to the Parliamentary Assembly (People's Deputies),Valentin Nikitin, Chair of the Duma's Chechnya Committee(Agro-industrial Faction), Andrei Nikolaev, Chair of the Duma'sDefence Committee (People's Deputies), Eduard Vorobiev, Deputychair of the Duma's Defence Committee (Union of Right Forces),Hapisat Gamzatova, member of the Russian delegation to theAssembly, member of the Duma's Chechnya Committee (CommunistParty), Nikolai Kovalev, member of the Russian delegation to theAssembly (Motherland - All Russia), Ashot Sarkissian, member of theDuma's Chechnya Committee (Unity), Leonid Slutsky, member of theRussian delegation to the Assembly (Liberal Democratic Party ofRussia), Nickolay Shaklein, member of the Russian delegation to theAssembly (Russian Regions), Alexandr Shishlov, member of theRussian delegation to the Assembly (Yabloko).
欧州評議会は、1949年に設立された国際機関。評議会は加盟43か国の間の、社会的、文化的、法的な問題の解決を目的とする。