チェチェン総合情報

チェチェンニュース
Vol.01 No.18 2001.08.27

■チェチェン問題について、NGO諸団体がヨーロッパ各国へ声明/グラスノスチ財団、8/21

7月29日、チェチェンの隣国イングーシ共和国において、33人以上の政治、人権、人道NGOの代表者らによる緊急会議が開催された。それぞれの政治的立場や活動の垣根を越えた、戦争停止を目的とした会議である。会議では、非政府の査察団によるチェチェンでの戦争犯罪への査察を決議した。詳しくは:http://www.glasnostonline.org/rus/article.php?sid=809

■ラジカル党、チェチェン進攻の中止と和平交渉にむけてのアピール/グラスノスチ財団、8/21

8月18日、西欧の政党トランスナショナル・ラジカルパーティおよびアンチミリタリー・ラジカル・パーティーによる、チェチェンでの戦争停止とマスハードフ大統領との和平交渉を訴える集会がモスクワで行われた。参加者たちは、欧州評議会によるチェチェン共和国の国際承認を求めた。

■チェルケス共和国:警察の捜索により、チェチェン人57人が逮捕される/グラスノスチ財団、8/21

8月20日、警察による捜索により、57人のチェチェン人を含む245人の犯罪容疑者が、チェルケス共和国で逮捕された。直接の逮捕容疑は住所の未登録。共和国警察の広報によるとこの捜索で14人の連邦指名手配者が逮捕された。そのなかにはチェチェンのレジスタンスも含まれ、26kgの麻薬を所持していたという。

■戦闘状況/グラスノスチ財団、8/21

8月19日、33歳と37歳の2人のチェチェン人が、レジスタンスの容疑でアレロイ村で逮捕された。警察は彼等の自宅から爆破物3個の所有と18発のグレネード弾、800発の銃弾を発見したという。

チェチェン軍司令部によると、ロシア軍による南部ヴェデノ地区への空爆と砲撃は続行されている。チェチェン軍は、民間人への被害拡大の懸念からすでにヴェデノ地区から撤退しているが、機動部隊が主要道路を確保している。

■スタール・イタギでの掃討作戦/グラスノスチ財団、8/21

8月17日、チェチェン側のニュースソースによると、ロシア軍はスタール・イタギとチリ-ユルトでの掃討作戦を開始した。午後9時、ロシア軍はスタール・イタギ、チリ-ユルト、ドゥバ・ユルトの電力源を遮断し、午後11時には20台の装甲車と軍用トラックがそれらの村に侵入した。ロシア兵は家々に押し入って、民間人のなかからレジスタンスの容疑者を逮捕して回った。村人のアイナ・ガシェーエヴァとシャイナ・シンカエーヴァは略奪の被害を受けた。イブラギム・イムラノフ(34)、イスラム・イムラノフ、シャムカン・ヤナバエフ、シャムスディン・ヤナバエフは逮捕され、行方不明となった。

■戦闘状況/グラスノスチ財団,8/22

8月19日、ロシア連邦軍の発表によると、アレロイ村での戦闘により、9人のレジスタンスが死亡、20人が捕虜として投降した。

8月21日、セントペテルスブルグから派遣され、ガラゴルスクに配置されている警察官が攻撃を受け、1名が死亡、レジスタンス1名が捕虜となった。

8月21日、ヴェデノに向かうロシア軍の縦隊が攻撃を受けた。チェチェン側の伝えるところでは、装甲車3台、軍用トラック1台が破壊され、兵士20人が死亡。

8月21日、アルグンではロシア軍とレジスタンスの戦闘により、軍用車両数台と装甲車2台が破壊され、搭乗していたロシア兵が死亡した。この戦闘での死亡者はロシア兵10人とレジスタンス1名。チェチェン側のニュースソースによる。

■ロシア・チェチェンの戦闘激化/ロイター、22日

8月22日、ロシア政府は、「最重要手配犯」のシャミーリ・バサーエフ野戦司令官がロシア軍との戦闘中に負傷、他に35人のレジスタンスが死亡したと発表した。一方、レジスタンス側のWebサイトでは40人のロシア兵が死亡したと発表している。

ロシア軍北カフカス軍管区のアレクセイ・クズネツォフ副司令官は次のように語った。「昨日、シャミーリ・バサーエフが負傷したという情報が、軍情報部に入った。われわれはこの情報を確認中である。この際に、彼の6人のボディガードが死亡したと思われる」

バサーエフ司令官は、1995年の第一次チェチェン戦争の際に、南ロシア、ブジュンノフスクの病院を占拠、無傷でチェチェンに退却した。2000年の首都グロズヌイの攻防戦で、退却地時に地雷で片脚を失ったが、その後も有力な野戦司令官である。

■ロシア軍兵士による少年射殺が判明/AFP,8/23

8月22日、チェチェン南部の村ツェレンテロイの住民の告発によると、17歳のチェチェン人の少年がロシア兵によって殺害された。親ロシア政権の公式筋がインターファックス通信に語ったところでは、少年は先週、牛の番をしている際に拘束された。そして連邦軍は22日に、銃で殺害された少年の遺体を家族に引き渡した。チェチェンを担当するロシア政府のチェルノフ検察官は、この件の容疑者はすでに逮捕されたと発表した。しかし容疑者の身元については非公開とした。

チェチェンのレジスタンスはここ数日、軍事行動を活発化させており、22か月前のロシア軍によるチェチェン進攻以来制圧下に置かれているチェチェン北部地方でも戦闘が頻発している。ロシア政府側が「テロ撲滅作戦」と呼んでいる今回の軍事行動により、公式発表では少なくとも3000人のロシア軍兵士が死亡しているが、民間人、レジスタンス側の犠牲者は明らかになっていない。

■ロシア政府、チェチェンの社会経済の復興のための支出を決定/8/23 ロシア連邦政府声明

ロシア連邦政府は、重点的施策として、2002年以降のチェチェンでの社会・経済的な復興プログラムを承認した。8月22日、ウラジミール・イエルギン/チェチェン政策調整担当相は記者団に発表した。ロシア連邦政府は、2002年の予算より、450億ルーブル(1億5千万ドル程度)をこの目的のために支出する。

■戦闘状況/グラスノスチ財団 8/24

8月22日、シュチェルコブスコエ地区での戦闘で、ガズ-66型軍用トラックが破壊され、ロシア軍特殊部隊の兵士5名が死亡、5人が負傷した。インターファックス通信による。8月22日、内務省軍のヘリコプターがカンカラ-グデルメス間で攻撃を受けた。司法当局によると、副操縦士が重傷。8月21日、軍用食料を輸送中のロシア兵5名がシャリの外縁から300メートルの地点でレジスタンスの攻撃を受け、負傷した。8月21日、バルツコイ村の近辺でトラックがレジスタンスの攻撃を受け、警察官1名が死亡。

■ロシア議員、チェチェン戦争終結へ提言/ラジオ・リバティー,8/21

8月21日、ロシアの有力政治家、右派連合のリーダーであるボリス・ネムツォフ議員は、これまでもプーチン大統領のチェチェン政策に批判的であった。1999年の10月、プーチン大統領(当時首相)はロシア軍にチェチェンへの再進攻を命令し、早期の勝利を約束した。この問題について、ネムツォフ議員はラジオ・リバティーのインタビューに対し、政治的な問題解決の道を探るべきだと答えた。

交渉の第一ステップとして、ネムツォフ議員は「現在のチェチェンを『代表者として大統領を選出する自治州』と考え、そのチェチェン政府と平和交渉に入るべきだ。その際、交渉にあたるのはプーチン大統領の信頼を得た人物が望ましく、親ロシアのチェチェン人では無理だろう」と答えた。

「ロシア側の交渉者はプーチンに近い人間でなくてはならない。たとえば情報関係の人間だ。国防大臣のイゴール・イワノフや連邦保安局のニコライ・パトルーシェフであれば、チェチェン側は彼を真の交渉相手とみなすだろうし、交渉に全力を尽くすだろう。だがそれが、アフメド・カディロフ(親ロシア政権の指導者)のような人間であったら当然、なんの解決にもならない」

もう一つの重大問題として、ネムツォフ議員は難民問題を挙げた。隣国イングーシ共和国をはじめロシア各地の数十万人におよぶチェチェン難民の生存条件は悲惨をきわめている。

「もう一つは、40万人におよぶ難民問題への懸念だ。15万人がイングーシに、あとはロシア各地にちらばっている。彼らの帰還については何のプランもない。政府に予算がない以上、政府に計画もないというわけだ。われわれは難民に対して政府が手当をしなければならないと考えている。これは強制的な送還の話ではない。チェチェンが安全に住める場所になれば、彼らは喜んで帰国するはずだ」

ネムツォフ議員は同時に、プーチン大統領にとって、和平交渉に乗り出すことが難しいことも認めたが、プーチン大統領はかならず、紛争を終わらせるための方策を見つけるはずだと述べた。

「プーチンは今が交渉の始め時だということを悟っている。これは彼の敗北ではなく、人々の命を救うためのたったひとつのチャンスなのだ。そして2004年の次の大統領選挙キャンペーンで「これまでの4年間は困難だった。しかし今、ロシアは平和になったと言えるのだ」と言うためにも」

最後にネムツォフ議員はこうつけくわえた。「なによりまず、プーチンはチェチェン人が『山賊』だという偏見を改めなければならない」

■編集室より

チェチェン南部、ヴェデノでの戦闘は、チェチェン側の撤退によって一応の幕となったらしい。その北方の小村、バノイ-ユルトは、いまのところチェチェン側が拠点を確保しているものとみられる。

注目されるのは、再びいくつかの村で掃討作戦がおこなわれたことである。いまのところ情報は少ないが、スタール・イタギでの作戦はかなり大規模のようだ。

「掃討作戦」とは、ロシア軍がある村を包囲し、その住民の多数を拘束して尋問にかけ、場合によっては強制収容所送りや、即時射殺さえも行うことである。これまでもロシア軍基地付近で多数の民間人の遺棄死体が見つかってきており、この行動は「民族浄化」と呼んで差し支えない。こうした人権抑圧の実態はアメリカのNGO、ヒューマンライツ・ウォッチのWebサイトに詳しい。(発行人)

Human Rights Watch: http://www.hrw.org