チェチェン総合情報

チェチェンニュース
Vol.01 No.07 2001.06.07

■ロシア人人権活動家 ビクトル・ポプコフ氏、銃撃により死亡

プラハに本部を置く人権団体、プラハ・ウォッチドッグによると、4月18日にロシア軍に銃撃されて以来、安否が気遣われていたロシア人人権活動家、ビクトル・アレクサンドロヴィッチ・ポプコフさんが、今月2日、モスクワの病院にて死亡した。ポプコフさんは4月18日、人道援助のためチェチェン人医師ローザ・ムザロヴァ氏とともにチェチェンの村々に医薬品を輸送していたところ、ロシア兵の銃撃を受けた。その後5月5日に、友人たちの尽力によってモスクワまでヘリで搬送され、治療を受けていた。

ポプコフさんは55歳、ロシア正教古儀式派の信徒。ロシアの人権NGO「オメガ」の代表として、アルメニア人とアゼルバイジャン人が対立したナゴルノ・カラバフ紛争(92-94年)などで、コーカサス諸民族間の対話促進の活動を続けてきた。この地域の人々にとって、長髪と豊かな髭を蓄えた、優しい眼差しのポプコフさんの姿はなじみ深い。99年のチェチェン進攻勃発当時にモスクワでハンストを実行したおりには、「励ましてくれる人も多かった。『本当はこの戦争はおかしいのでは』と思っても、声をあげられない人は多いはず」と語っていた。

ポプコフさんは2000年2月に日本にも訪問している。「チェチェンの悲劇は人類社会全体の悲劇として捉えられなければならないと思います。チェチェン人など、少数民族がこの地球上から消されかかっているのに、何とかしようという声がどこからも上がってきません」(練馬区での報告)チェチェン進攻に賛成する気運の強いロシア正教界においては貴重な存在であっただけに、今回の死亡の報は日本を含め各地で深い悲しみを呼んでいる。

■「和平交渉は可能だ」チェチェン大統領、ロシア紙に語る

5/27チェチェン共和国のアスラン・マスハードフ大統領は、ノーヴァヤ・ガゼータ紙のインタビューに対し、「ロシアとの交渉は可能であり、不可避でもある。あらゆる戦争は交渉によってしか終わらない。チェチェン戦争も同じだと確信している。問題はクレムリンの中に、冷静かつ合理的に対話のできる相手がいないことだ」と語った。

マスハードフ大統領は元ソ連軍大佐であり、94年から96年の間はパルチザンの参謀長。ロシア軍の撤退と和平交渉を成功に導き、戦争後の97年に民主的な選挙を通じてチェチェン共和国大統領に選出された。28日、ロイター

■5/29 国際赤十字スタッフ、ロシア軍に銃撃される

赤十字国際委員会(ICRC)の現地スタッフ、アルビ・イスライロフ氏が、首都グロズヌイ近くのスタロプロミスロフキー(Staropromyslovky)の検問所で銃撃された。赤十字マークが明確に表示された車に乗っていた。同氏は一命をとりとめ、グロズヌイ第9病院に収容されている。ICRCはロシア政府に事件の調査を要請するとともに、状況が明らかになるまでの間チェチェンでの活動を停止する。30日、ICRC

■5/29 「チェチェン難民をすべて帰還させるべき」親ロシア政権担当者語る

29日、チェチェンにおける親ロシア政権の担当者は「イングーシに避難中の15万人の難民を、6月末までに帰還させるべき」と発言。イングーシのアウシェフ大統領は、「チェチェン難民は、安全と基本的な人権が保証されないかぎり帰還しないだろう」とコメント。同大統領は、「ロシア軍による『洗い出し作戦(mopping up operation)』が行われる度に、チェチェンからの難民が増加する状況は続いている」との見解を明らかにした。

■5/29 チェチェン進攻による軍の死者数は3千人以上 ロシア側発表

ロシア政府のチェチェン担当報道官セルゲイ・ヤストルゼムスキー氏は、99年からのチェチェン進攻作戦によるロシア軍側の死者数は3,096人に達すると発表した。28日にイワノフ国防相が発表した2,682人(兵員登録所名簿による)との開きについてヤ氏は「登録所の名簿は連邦軍以外の軍(内務省軍など)を含んでいない」と応じた。プラハ・ウォッチドッグ

■5/29 500人のチェチェン市民がグロズヌイにて抗議のデモ

チェチェンの民間人に対する戦争に抗議するとともに、ロシアに対する国際社会の圧力の強化を求めて、首都グロズヌイでは500人規模のデモが行われた。一方、チェチェンの親ロシア政権のアフメド・カディロフ氏は30日、チェチェンの『真実』を伝えるためにアメリカを訪問する。30日、ラジオ・リバティ

■5/31 ロシア議員の搭乗ヘリ、攻撃される

ロシア議会のアレクセイ・アルバトフ、エフゲニー・ゼレーノフ両議員の搭乗したロシア軍のヘリコプターが、チェチェン/イングーシの国境にて攻撃を受け、ナズランのロシア軍基地に緊急着陸した。両議員は負傷したものの、容体は快方に向かっている。チェチェン共和国のマスハードフ大統領は、この攻撃がチェチェン側によるものと認めた上で、「チェチェン軍は領空に入ったロシア軍機を迎撃する権利がある。ロシア軍ヘリに議員が乗っていることはわからなかった」としている。6/1、AFP

■5/30 「チェチェン戦争は市民をターゲットにした戦争」アムネスティ、年次報告書を発表

今年3月、サマシキ村において女性と子供を中心とする60人の人々をロシア軍が攻撃した。少なくとも3人の女性が死亡、5人が負傷した。ロシア軍は彼らの食料調達のために「安全な回廊」を設定し、そこを砲撃したのである。また、ロシア当局は、国連人権弁務官による、フィルターラーゲリ(強制収容所)への視察を、安全上の問題と、悪天候を理由に拒否した。(同報告書より)

■6/3 「チェチェンゲリラは公開処刑にすべきだ」 ロシア軍コーカサス地域司令官語る

ロシア軍コーカサス地域司令官ゲンナジー・ツルーシェフ将軍は、「チェチェンの無法者どもは広場につるしあげて処刑すべきだ」とイズベスチア紙に対して語った。

一方、ヤストルゼムスキー・チェチェン担当報道官は、「チェチェンでの対テロリズム作戦の結果として無法がはびこることになってはならない。公開処刑は問題外だ」と語った。

この日、チェチェンではロシア軍がグロズヌイ、アルグンなどの主要道路を封鎖し、50人以上のチェチェン人をパルチザンの容疑で拘束した。4日、AP

■6/3 930人のチェチェン人が行方不明ロシア政府人権担当者が明らかに

ロシア政府の人権担当官ウラジミール・カラマーノフ氏は、ロシア軍のチェチェン進攻以来、930人のチェチェン人が行方不明になり、うち366人はロシア軍に拘留中、18人は死亡したことが確認されたと発表した。「行方不明者の中には、いわゆる「掃討作戦」やパスポートチェックの際の拘留者が含まれている。それらのチェックには現地政府の司法担当者は同伴していないことが多い」4日、AP