ロシア軍と武装勢力の間で戦闘の続くチェチェン紛争は,すでに20ヶ月が経過しようとしている.ジュネーブで開かれている,第57回国連人権委員会では,このチェチェン問題が重要な議題の1つとして取り上げられている. 4月8日付のニューヨーク・タイムスによれば,アメリカ政府はチェチェン問題について、人権抑圧だとしてロシア側を非難.チェチェン紛争をあくまで国内問題とするロシアと,人権問題だとするEUなど西側諸国の論議が続いている.この10日にも,EU側の提出したロシアに対する非難決議が採決に持ち込まれる見込みだ.
EUによる決議案は,「緊急の懸念は、チェチェン共和国においてロシア軍による暴力行為が続いていることである。市民に対する無差別かつ不公正な暴力が報告されており、人道的に深刻な状況である」とした上で、チェチェンへの各国際機関や人権団体による視察を強く求めている。
91年,ロシア連邦からの独立を宣言したチェチェン共和国に対して、ロシアは経済封鎖に続いて軍事介入を進めた。94年からの介入による死傷者はロシア側だけで2万人以上にのぼる。96年、チェチェン、ロシア間で和平合意が結ばれ、ロシア軍の撤退が実現したものの、チェチェンへの経済支援の停止と治安悪化により、情勢はふたたび緊迫した。
99年9月、モスクワなどでのアパート爆破事件をきっかけに、ロシア軍のチェチェン進攻が再開された。これまでの20ヶ月間に、隣国イングーシに逃れた難民は20万人を越える。
ジュネーブでの国連人権委員会にあわせ、会場前では,寺沢潤世さん(日本山妙法寺)が,抗議の断食を行っている.寺沢さんは,チェチェン戦争の平和的解決と,各宗派の宗教者によるチェチェン平和ミッションの実行,および難民に対する人道援助を求め、すでに10日間の断食と座り込みを続けている.
国連宮殿前の「足の壊れた椅子」(地雷廃絶キャンペーンのためのモニュメント)の前で祈りをささげる寺沢さんに対し,フランス・チェチェン委員会(チェチェン救援のための民間組織,本部:パリ,ストラスブルグなどに支部)なども支援を表明.各国の市民から寺沢さんのもとに賛同の声が集まっている.
寺沢さんは断食に先立って発表した声明の中で「(この紛争は)民族の滅亡のふちにあるチェチェンの人々の悲劇であるのみならず、ロシアに生まれたばかりの新しい民主主義にとっても、悲劇となろうとしている。今回の断食を通して、私たちはチェチェンの平和への道筋を開くために誰もが行動をするよう呼びかける(一部略)」としている。
声明文(英語)Oral statement at the 57th Session of the UN Commission on Human RightsFast for Peace in Chechnya, Geneva 2001