チェチェン総合情報

「アンドレイ・バビーツキ講演録 終わりなきチェチェン戦争、強権化に向かうロシア社会」

発行:チェチェン連絡会議 A5判63ページ・定価500円

2005年10月に来日したラジオ・リバティー記者の講演録を刊行しました。第一次チェチェン戦争以来、数え切れないくらいチェチェン入りしてきた記者による、渾身の講演録です。またフリージャーナリストの稲垣收さんによる論考「北オセチア学校占拠事件の深層」)を併載。どうぞお買い求めください。

書店では今のところ、東京都新宿区の模索舎で販売中。

通販の場合は、下記メールアドレスまで、 お名前、ご住所、部数をお知らせください。

注文先: ootomi@mist.ocn.ne.jp (*を@に置き換えてください)


目次:


▲序文にかえて
▲プロフィール
▲講演: 終わりなきチェチェン戦争、強権化に向かうロシア社会
チェチェンはどう語られているか?
掃討作戦と拉致の実態
チェチェン人に対する拷問
チェチェンの「ゲットー」化
ヨーロッパに逃れたチェチェン人たちの将来
バサーエフへのインタビュー
チェチェン戦争の拡大
▲質疑応答
急進イスラム勢力の影響力は?
ロシア国内の現状は?
民主主義から離脱するロシア
なぜ戦争が続くのか?
▲「恐怖の時代」バサーエフへのインタビュー
「テロリストを探しているのは私の方だ」
なぜ、ロシアの子どもたちが侵略の責任を負うのか?
「あんな結末は予想していなかった」
「ジェノサイドが続く限り、どんなことでも起こるだろう」
▲バビーツキへのインタビュー
どうやってチェチェンに行くのか?
新しいロシアで生きたい
戦争に蝕まれるロシア
チェチェンとロシアは共存できるか
▲北オセチア学校占拠事件の深層(稲垣收/フリージャーナリスト)
相次ぐテロ
人知れず25 万人も殺されているチェチェン人たち
チェチェンはなぜ独立を選んだか
事実無根のテロ疑惑で始まった第2 次チェチェン戦争
強まる報道統制
ロシア軍の戦争ビジネス
チェチェンの多くの人はテロに反対している
新KGB による陰謀説
「テロはロシア政府の自作自演」と語る元FSB 将校
ロシア政府の大罪、そして日本
▲注


序文にかえて(本書より)

ロシアの南、コーカサス山脈の麓ふもとにあるチェチェン共和国で、終わりの見えない戦争が続いています。

私たち、チェチェン戦争の平和的解決を求めるNGOと市民でつくる「チェチェン連絡会議」は2005 年10 月に、チェチェン報道の第一人者である、アンドレイ・バビーツキさん(米国系放送局ラジオ・リバティ記者)を招聘し、その証言を通して、チェチェンで何が起こっているかを、日本の社会に知らせました。

このブックレットは、その際の発言をまとめたものです。

招聘にあたっては、書類手続き上は何も問題がありませんでしたが、日程の直前まで、日本の外務省から入国ビザが発給されませんでした。これは、翌月に迫っていたプーチン大統領の日本訪問にかかわる政治的な妨害と考えられますが、他方で、バビーツキさんが今日、ロシアでどのような位置にいるかということを象徴する事件と言えるでしょう。

ロシア軍の爆撃によって廃墟と化したチェチェンの首都・グローズヌイに残って放送を続けたバビーツキさんは、その徹底した現場主義によって、ロシア政府からは非常に疎まれています。ロシア・チェチェンで取材するジャーナリストたちの間では、「チェチェンのことを知りたければ、どこで取材をしていても、リバティの放送が始まったら取材を中断してそれを聞け」と言われてきました。2005 年の夏には、チェチェンの野戦司令官、バサーエフへの取材に成功しています。日本で開かれた数回の講演・記者会見では、この点でも注目を集めました。

バビーツキさんの所属するラジオ・リバティは、米国議会の助成金によって成り立っている短波放送局です。旧ソビエト連邦のすべての共和国の言語で放送が行なわれており、ロシア向けは24 時間放送しています。米国は、「対テロ戦争」のために、最近ロシアよりの立場をとっているため、バビーツキ記者の関心とは別に、同局もチェチェン問題に ついての姿勢を以前よりトーンダウンさせているようです。

この資料集では、2005 年10 月27 日に、東京の文京区民センターで行なわれた講演を主に収録した上で、別の会場での講演・記者会見の内容を注釈として付記しました。講演ごとの内容の重複はできるだけ省いていますので、本文と注をお読みいただければ、3 回分の講演内容のほとんどを知ることができると思います。また、チェチェンをめぐる状 況をより深く知るために、各種インタビュー記事と、フリージャーナリストの稲垣收さんによる論考、「北オセチア学校占拠事件の深層」を併載しました。

チェチェンでは100 万人の人口のうち、すでに20 万人前後の市民が殺されていますが、それでもこの問題は世界から無視されています。私たちはチェチェン戦争の平和的解決のためにも、国際的な反戦世論を盛り上げていくことが必要だと考えています。このブックレットが、チェチェン戦争に関心を持つみなさんの役に立つことを、編者一同願って止 みません。

チェチェン連絡会議
2006 年11 月