“Rzeczpospolita”、Nr.219(17.Ⅸ,2004)“”
“Angora”,nr.39(26,Ⅸ,2004/09/25)“に再録
ポーランド国境はたいへん混雑している。連日大勢のチェチェン人が安全な避難場所を求めているからだ。かれらを収容できる施設はまもなく満杯になりそうである。内務大臣は、もしチェチェン人の流入者が減らないようであれば、EUに援助を求めなくてはならなくなると予告している。
先週末、テレスポル(Terespol)を通過して避難所を求めた人数は、チェチェン人だけで200人以上になった。ポーランドの国境警備隊は、たとえすべての人が難民の資格を申請しないままであっても、難民資格の有無には関係なくすべての人に対して入国を認めている。難民の資格を取得するには、迫害と危険性を自ら証明できることが必要である。とはいえ、すべてのチェチェン人が、ポーランド入国後に避難所を求めているわけではない。
市民法の権威アンジェイ・ツォル教授は、昨日の難民問題に関する国際会議で次のように発言した。外国人(チェチェン人)からポーランドに入国できなかった人がいるという苦情がきている。すべてのチェチェン人を潜在的なテロリストとみなすのはとんでもないことだ。それどころか、チェチェン人は今たいへんな民族的悲劇を体験している。
難民資格を申請したチェチェン人は9月はじめ以来300人を超えている。ロシア・チェチェン戦争が何度もエスカレートするごとに、その直後から多数のチェチェン人がポーランド国境にやってくる。ドゥブロフカ劇場襲撃のあとしかり、ベスラン事件のあとも同様である。チェチェン人による難民資格の申請数は本年初頭から3,700人以上になっている。難民の資格を取得するためには、自らチェチェンで被迫害者であったことを証明することが必要である。現在のところ、難民として認定された人は600人である。
難民数が増加するとそのための費用も増大する。「ポーランド引揚者・難民に関する事務所の予算は3000万ズオチとなっている。その中からチェチェン人のために年間2200万ズオチを支出している。「現在のところ、なんとか対処できているが、まもなく問題が深刻になることは目に見えている」と、ヤン・ヴェングジン(ポーランド引揚者・難民に関する事務所長)はいう。
同局が管理する難民のための施設としては、わずか800人分しかない。それゆえ新しい施設を緊急につくらなければならない。さしあたり、2,000万ズオチの費用で新しい施設をビャワ・ポドラスカ(Biala Podlaska)とプシェミシル(Przemisl)に建設中である。それらの施設で1,500人の収容が可能である。「新しい施設をつくるためにはさらに資金が必要である」と、リシャルド・カリシュ(内務大臣)はいっている。
すべてのチェチェン人がポーランドに滞在したいということではない。それゆえ、かれらが難民資格を申請したからといって、その申請書の結果を待たない人もいる。「西の国境に非合法的に移動する途中でつかまっている人が、今年だけですでに360人に達している」と、ヤロスワフ・ジュコヴィチ大佐(中央国境警備隊司令官)はいった。全国の収容施設を管理しているユリアン・ツリワ(ワルシャワ近郊のデンベ収容所長)も同趣旨のことを確認している。「昨日、全ポーランドの収容施設から出て行ったチェチェン人の人数は14人であった。かれらの退出をやめさせる権利はないからである」。
非合法の移民の人数はたしかに激増している。国境警備隊がポーランド入国を拒否した人数は、今年の1月から8月末までですでに昨年(2003年)1年間と同数となった。ルブリン県で緑の国境を強行突破しようとして国境警備隊に阻止された移民数は、本年380人であったが、ポドカルパツキエ県ではおよそ200人であった。「2004年5月1日、ポーランドのEU加盟以降に非合法移民の流入という現象はとくに顕著なものとなった」とアンジェイ・ヴイチク中佐は語っている。
非合法の移民がとりわけ頻繁に越境を試みるのはポーランド・ウクライナ国境である。ポーランド・ベラルーシ国境はまだまだ平穏である。国境警備隊ポドラシェ支部が非合法の越境を阻止したのは、今年に入ってからわずか7人であった。
誰がポーランドに在留したいと望んでいるかといえば、それは中国人、ヴェトナム人、スリランカや旧ソ連の人びとである。しかしながら、ポーランドではかれらを滞在させることはできない。国境警備隊はかれら(非合法移民)をウクライナ、あるいはその出身国に送還している。
ところが、これまでは多数の非合法移民がポーランドに入国することができた。警察が小さな事業の雇い主やバザールを調査してみると、どれほどの人数が入国しているかがわかる。アジアの人びとは、もっとも多くの場合はバザールの売り手やヴェトナム・中国バルの仕事をしている。ウクライナ人とベラルーシ人は建設現場や農家で農業に従事している。
国境警備隊は、身分証明書もヴィザも生活の糧(金)も持たないでポーランドに入国しようとする外国人を毎年数万人も本国にひきかえさせている。かれらはしばしば自分たちはツーリストであるというが、荷物の中には仕事着や道具が詰まっている。
「こういう非合法の移民はますますより組織的になっている。さらに悪いことに、これは危険な国際犯罪の元凶となる恐れがある」と、ジュコヴィチ大佐(中央国境警備隊司令官)が語った。
密輸業者のヒエラルキーの最下位には、アジアやアフリカの国ぐにからの出国希望者を見つけだす人がいる。その上に偽造書類つくりと運び屋(クーリエ)があり、さらにその上に請負人(オルグ)がいる。移民はより条件のよい世界を獲得するために、かれらに対して7000ドルから1万ドルを支払わなければならない。
「だいたいのところ、グループの中で最初につかまるのはクーリエ役であり、請負人はめったに捕まらない」と、ジュコヴィチ大佐はいう。
国境で非合法な越境入国の手引きを務めるポーランド人が存在していて、しばしば国境警備隊に逮捕されている。ルブリン県だけで今年すでに120人のポーランド人が逮捕されている。これはすでに昨年より多くなっている。つかまったのは雑魚(plotka, ニシンの子)ばかりである。たとえば、越境して非合法な移民を運ぶ運転手とか、かれらを農家にかくまった農民などである。
ポーランドはEUの東の境界線を守るために長い年月をかけて準備を整えてきた。これまでに、EU資金から6000万ユーロ、ポーランドの予算から1億4千万ズオチを投入して、最新式の監視装置や監視所の新設に充ててきた。
「非合法の移民の入国を防ぐことは、たんにEUに対するわたくしたちの義務であるばかりでなく、わたしたちにとっても経済的な対策としても大いに利益になることである。非合法の移民の多くはしばしばグレーゾーン(szarej strefie)で働いていて、税金は支払わないし、法律に触れるコンフリクトも多い。テロの危険が高くなっている、いまの時代にあっては、国家の安全にとってもたいへん重要なことである」と、ヤロスワフ・ジュコヴィチ大佐いう。
文責:エリジュビェタ・ポウドニク、ユセフ・マトウシ
訳者:山本茂
2004年9月25日