Wi−Fiと無線LANに関連して(2)
外出先などで、スマートフォンやノートPCなどから無線でインターネットにつなぐ方法の一つが、電磁波研会報74号で示した公衆無線LANです。無線LANは、通称「ホットスポット」など、特定の場所でないと利用できませんが、携帯電話などの基地局からの電波を利用すれば、ホットスポット以外の場所でも通信ができます。
携帯電話各社は、2009年ごろから、従来の携帯電話の技術よりもさらに高速のデータ通信サービスを開始しました。主なものは以下の通りです。
- KDDI系のUQコミュニケーションズ株式会社による「UQ WiMAX(ユーキュー ワイマックス)」
- イー・アクセス株式会社による「EMOBILE LTE(イーモバイル エルティーイー)」
- NTTドコモによる「Xi(クロッシイ)」
- ソフトバンクモバイル株式会社による「SoftBank 4G(ソフトバンクフォージー)」
これらの高速無線データ通信(ワイヤレスブロードバンド)は、高速化のために、さまざまな新しい技術を利用しています。
高速データ通信の新しい規格
UQ WiMAXは、モバイルワイマックスと呼ばれる規格を利用しています。モバイルワイマックスは、無線LANの技術を発展させたものですが、無線LANのようにルータなどと通信するのではなく、携帯電話と同様に基地局と通信します。2.5GHz帯の電波を利用しています。
XiとEMOBILE LTEは、LTE(ロング・ターム・エボリューション)という規格を利用しています。第3世代携帯電話の技術を発展させたシステムであるため、3.9世代携帯電話端末パケット通信サービスとも呼ばれます。Xiは2GHz帯、EMOBILE LTEは1.7GHzの電波を使用しています。
SoftBank 4Gは、PHSの技術を改良したAXGP(Advanced eXtended Global Platform)という規格を用い、2.5GHz帯の電波を利用しています。
数万基以上の基地局を増設
従来の携帯電話の下り通信速度(理論上の最高値。以下同様)が数〜十数Mbs(メガビット/秒)に対し、これら最新のデータ通信は、下り40〜110Mbs程度です。 高速の無線インターネットは便利ですが、たくさんの基地局が増設されています。Xiのために、2014年度末までに5万局が設置される計画です。(株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ「2011年度第2四半期決算」2011年11月2日、30頁)
UQ WiMAXの野外基地局は2万局を目指しており、2011年5月までに既に1万5000局を設置したとのことです。(UQコミュニケーションズ株式会社「WiMAX屋外基地局開局数15000局達成のお知らせ」2011年5月31日)
健康被害を心配する基地局建設計画地周辺住民との間で紛争も起きています(UQの電波基地局の設置を阻止する会「UQコミュニケーション(株)のモバイルWiMAX基地局を阻止」)。
スマートフォン普及による通信量の急増、それに伴う通信障害の発生により、基地局増強が必要だと当然のように語られています。しかし、常時通信するアプリなどのサービス提供により、業者側が通信量が増えるように仕向けている側面も見落とせません。便利さばかりを追求すれば、いくら施設を増強してもきりがありません。
また、最新のデータ通信サービスの多くが、1GHz以上の高い周波数を利用しています。より低い周波数に「空きがない」からだと言われていますが、周波数が高いほうが多くの情報を載せやすいというメリットもあります。一方、周波数が高くなると電波の直線性が高まり、基地局1基でカバーできる範囲が狭くなるので、基地局を高密度に設置しなければなりません。
そもそも、1GHz以上の高い電磁波に日常的に被曝する環境は、私たち人類を含め、地球上の生物の進化の過程で存在したことがありません。新たなサービスの普及で激変する電波環境が、私たちの健康に影響しないのかどうかは、だれにも断言できないはずです。
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