電磁波研会報・第7号 2000.11.15発行


第9回講演会に61名参加
〜9月30日午後 於・飯田橋シニワ−ク東京 講師天笠啓祐さん〜

 天笠啓祐さんを講師に招いて「第9回電磁波問題市民研究会講演会」が開かれました。テ−マは『なぜ、日本では電磁波規制が進まないか!』活発な質疑応答があり約3時間の講演会を終了しました。終了後、講師を囲んだ楽しい交流会がもたれました。
 参加者は60名以上となり、座席につけない方さえある中で、天笠さんのわかりやすい講演を、参加者のみなさんは熱心に聞いておられました。質疑応答では「マスコミはIT(情報技術)革命だと囃し立てるが、実態はパソコンと携帯電話の普及にすぎない。IT革命で健康が壊されてはたまらない」という意見や、携帯電話中継基地局や送電線・変電所や電子機器のため電磁波過敏症の人たちが苦しんでいることが、赤裸々に発言されました。長崎県、静岡県、茨城県などの遠方からも参加された熱心な方もおられました。

講師紹介:天笠啓祐(あまがさ けいすけ)さん
1947年東京生まれ。早大理工学部卒。72年から月刊誌『技術と人間』の 編集担当。93年に『技術と人間』社を退社しフリ−・ジャ−ナリストに。現在は立教大学講師も兼ねる。著書は『原発はなぜこわいか』(高文研)、『脳死は密室殺人である』(ネスコ)『電磁波はなぜ恐いか』(緑風出版)、『電子立国ニッポン』(柘植書房)、など多数。講演活動も活発にこなし、「わかりやすい講演」との評判。



<航空機乗務員の放射線被曝問題>
航空機乗務員は放射線職業人より3〜4倍の被曝量という現実(下)

 今回は具体的にどんな被害が出ているか疫学調査にもとづいて説明していきます。高線量の放射線を被曝するといくつかの臓器に急性障害が起こります。これはその臓器の細胞が死ぬためです。とくに造血系や生殖器官が感受性がより高いといわれます。一方、低線量被曝の場合はがんが問題になります。広島・長崎の原爆被害者は被爆後2〜3年でまず白血病に冒され、白血病は7〜8年後にピ−クを迎えその後減少しまし。その後は乳がん、甲状腺がん、肺がん、消火器系がんなどが増えていきました。航空機乗務員の場合は当然ながら極低線量です。

    <死亡率の調査>
  1. 1991年、サリスベリらは、1950年から1984年の間に亡くなったブリティッシュ・コロンビア航空の341名のパイロットのうち、がんによる死亡(脳、結腸、ホジキン)が過度であることを認めました。
  2. 1992年、ア−ビンらにより1966年〜89年に亡くなった英国のパイロット411名に対する死亡率調査で、すべてのがんをまとめてある程度の過度が見られた。その中で「有意」ながんは悪性黒色腫、結腸がん、脳がん。
  3. 1993年、カジらは1952年から1988年の間に亡くなった日本航空のパイロット59名を調査したが、20名ががん、29名が事故死だった。
  4. 1990年にバンドらが行った1950年以来カナダの航空会社に勤めたパイロット918名を対象とした最初のコホ−ト調査(集団調査)によると、直腸がんによる死亡率(SMR=4.35)と脳腫瘍による死亡率(SMR=4.17)が「有意」に増加した。しかし1996年に同チ−ムがより大規模な集団(1950年から1992年の間に「エア・カナダ」に少なくとも1年以上勤めたパイロット2740名)について行った疫学調査ではがんのよる死亡率増加を明白に証明することはできなかった。
  5. 1998年にニコラスらが、1984年から1991年までの米国の航空乗員死亡例1538例を分析したところ、腎臓がんは「有意」な過度だが他のがん(前立腺、脳、直腸など)は有意とは言えなかった。

    <罹患率の調査>
  1. 1990年にバンドらは、黒色腫とは別の皮膚がん(SIR=1.59)、ホジキン病(SIR=4.54)、脳腫瘍 (SIR=3.45)で「有意」な増加。しかし1996年の調査では脳腫瘍の増加は軽減し有意ではなくなったが、反対に前立腺がん(SIR=1.87)と急性脊髄性白血病(SIR=4.72)が「有意」に増加。
  2. 1996年にグレイソン(Grayson)らは、米軍パイロットのがん発生率を調査した。米軍人を戦闘機乗員と非乗員将校に分け比較したところ戦闘機乗員のがん発生率が「有意」に増加(+31%)した。膀胱がんと精巣がんも「有意」に高い。
  3. 1995年にフィンランドチ−ム(プッカラら)が主に女性乗務員を調査。1940年から1992年までフィンランドの航空会社に勤め1967年の段階で生存していた乗員のうち女性1577人と男性187人を調査したが、乳がんが「有意」に過度(SI  R=1.6)で特に骨がん発生がSIR=15.10と出た。乳がんリスクは勤務後15年後が最大とした。白血病と黒色腫は増加したが有意ではない。
  4. デンマ−クでリンジェ(Lynge)が乳がんの増加(SIR=1.6)を報告したが例証数は多くない。
  5. ワ−テンバ−グ(Wartenberg)がUS航空を引退した乗員を過去に遡って調査したところ乳がんリスクが過度を出た。 ○1999年にグンデストラップ(Gundestrupp)らが飛行時間と比例したデンマ−ク乗員を調査したが、飛行時間5千時間以上の乗員は急性骨髄性白血病(SIR=5.1)、黒色腫(SIR=2.8)、皮膚がん(SIR=3.0)と過度に出た。

    <染色体の調査>
  1. 1993年にドイツのシャイド(Scheid)らがパイロットとスチュア−デスの血液リンパ球内の染色体異常の調査をしたが、放射線被曝特有の異常な過度が記録された。
  2. 1995年にもハイマ−ズ(Heimers)らが上記と同様の報告をした。
  3. 1998年にロマ−ノ(Romano)らが民間航空機乗員と地上員を比較調査したが、電離放射線作用を示すとされる二動原体染色体の相当する染色体異常(2倍以上)と環状組織に相当する染色体異常(3倍以上)が「有意」に過度に出た。
  4. 「宇宙ステ−ション」ミ−ルとユ−ロミ−ルに参加した宇宙飛行士を対象にオ−ベ(Obe)らが行った細胞遺伝学上の分析では、帰還した後の染色体異常数は出発前に比べて「有意」に増加した。
  5. 1998年ツィングマン(Zwingmann)らがオランダのエンジニア2グル−プから採取したリンパ球に生物学的分析比較をした。1グル−プは乗員でもう1グル−プは地上勤務だが、DNAへの活性酸素・フリ−ラジカル攻撃は乗員グル−プに「有意」で多い。
    (ピエ−ル・バルベイ博士の報告より短縮して引用)

    <島田義也博士資料「放射線の人体影響」(グラフ)>


<読者からの声>


<海外情報>

ケータイは危険か?今日誰もが知っておいた方がよい情報
 医学博士ハンス=クリストフ・シャイナー<翻訳:加藤尚子>

携帯電話の何が問題か?<荻野晃也>(山形南高新聞2000年10月19日)

南高生のケータイ・PHS事情(山形南高新聞2000年10月19日)

○携帯電話でペースメーカー誤作動。真後ろより離れた方が危険!?。京都府中小企業センター、電磁波の「回折」確認(朝日新聞2000年8月27日)


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