□稼働してから健康被害が続出
兵庫県川西市の閑静な一戸建団地地区に、ドコモが高さ20メートルの携帯基地局を建設したのは2005年5月で稼働は同年12月でした。
稼働後すぐに、周辺住民たちから「耳鳴りがする」「頭痛がする」「眠れない」「右側の耳に異物感がある」「疲れやストレスを感じる」「気分が悪くなった」等々の健康被害を訴える人が、何人も出てきました。
□住民たちは学習会や署名活動など
2006年5月13日に、電磁波問題市民研究会から講師を招いて、住民たちが電磁波学習会を開きました。当日はあいにくの雨にもかかわらず、約110名が参加し、住民たちの意識は大いに高まりました。
また、学習会だけでなく、住民たちは署名活動、住民アンケ−ト、地主(阪急バス)への陳情、市議会への請願活動など、様々な取り組みを行ないました。
□大阪簡易裁判所に公害調停を求める
2007年5月には、大阪簡易裁判所に「基地局稼働停止と健康被害慰謝料」を求めて、ドコモと阪急バスを相手に調停(公害調停)を申し立てました。基地局建設地は阪急バス所有地なので、地主も調停対象にしたのです。この調停申し立て行動は、地元の毎日放送テレビの報道番組で大きく報道されました。(会報47号18ページ参照)
□市議会で住民請願を全会一致で採択
2007年6月には、住民たちが川西市議会で提出した「携帯電話基地局からの電磁波被害をなくすための請願」が、全会一致で採択されました。さらに、市議会による「携帯電話基地局による電磁波に関する意見書」も、全会一致で可決され、ただちに総務大臣等に送付されました。意見書は地方議会が主体となって国や国会に出すもので、請願より重みがあります。しかも、意見書の中身は、電磁波による健康被害に対して、第三者機関による全国的な疫学調査を実施されるよう要望するという、画期的なものです。
□ついに地主が通知して撤去へ
こうした住民たちの精力的な行動が実を結び、阪急バスは2007年6月ドコモに「住民の意向を踏まえ、基地局を早急に撤去してほしい」との通知を出すに至りました。さらに、2007年12月17日には、大阪簡易裁判所における非公開の調停で、ドコモは「2008年4月中に基地局稼働を停止し、2008年6月中に撤去する」ことを表明しました。これを受けて住民たちは調停を取り下げました。
□あきらめず闘い抜いた住民たち
携帯電話会社は、基地局建設規制の法制度がないことを盾に、地主の了解され得られれば、周辺住民の意向は無視し基地局を強引に建設します。
建設前ならば、住民たちのがんばりで基地局計画をつぶす可能性は大いにあり、すでに、電磁波問題市民研究会と協力して日本国内では、80基以上の建設計画が阻止されています。
しかし、一度建設されてしまうと、住民たちの中にもあきらめが生まれ、反対運動は困難を極めます。そのことは携帯会社自身がよく知っていて、彼らはなるべく秘密裏に計画をすすめ、周辺住民たちが知らないうちに基地局を建てようとします。これが全国における実態です。
今回の川西市の住民の取り組みは、基地局建設後2年半経ってもあきらめず、撤去を勝ち取った点で、全国の住民に大きな希望の光を与えてくれました。
地主である阪急バスに打撃を与えたことも、今回の勝因の一つです。住民が客である阪急バスにとって、メディアや議会で取り上げられたことは、大きな痛手でした。