<海外情報>
AC The People's Media Company
2007年9月24日
(抄訳:TOKAI)
□EU指令「2004/40C」を巡って
「EU(欧州連合)の『物理因子(EMF)指令』が実行に移されたならば、MRI(磁気共鳴画像診断装置)はEU加盟国では実際上、使用停止に追い込まれるだろう」とノルウェ−科学者、ダグ・ルネ・オルセン教授は欧州がん会議(ECCO)の記者会見の場で語った。MRIはがんの診断、治療、研究にとって重要である。EU指令は「物理因子(EMF)指令2004/40EC」のことだ。
オルセン教授は、欧州放射線治療・腫瘍学会物理委員会の議長を務めており、ノルウェ−放射線病院の放射線実験治療部門に勤務している。オルセン教授は「この欧州指令が実行化されたならば、MRIの近くで働く人はすべてこの指令に違反してしまうであろうし、MRIを設置した側は指令違反で訴えられてしまうであろう。それだけでなく、機器のメンテナンスやサ−ビスを行なう人も基準違反になるであろう」と語った。
□英国の研究で測定してみて実証される
2007年6月、英国「熱・安全行政部」が、MRIから出る電磁波曝露量に関する研究結果を発表した。この研究のチ−フは、オ−ストラリア・ブリズベン大学のスチュワ−ト・クロズィ−教授が担当した。研究によれば、MRIから1メートル以内だとEU指令の曝露基準値を超えてしまうことがわかった。
EU委員会は、この研究の精度を認めているし、2007年10月までにEU指令に修正を加えるべきか、また実施移行日をいつにするかの決定を行なう際に、この研究を参考にするとしている。
□スロバキアでは指令を実施している
オルセン教授は「2007年10月では遅すぎる。なぜならば、すでにスロバキアでは、今回の指令内容ではMRIの稼働にとって影響ないと考え、今回の指令を受け入れてしまっているからだ。スロバキアでは、MRIを動かせば違法となってしまうであろう」と語った。
最近発表された、EUバロメ−タ−調査(会報48号20ペ−ジに掲載)によると、多くの欧州人は、EMIのような機器から出るEMFに対する現行規制では健康リスクは十分保護されない、と考えていることがわかった。その調査によると、3分の2の人が電磁波に関する情報は「十分でなく満足していない」と答え、3分の1の人が「まったく不十分だ」と答えている。
□オルセン教授はMRIの必要性強調
オルセン教授は「MRIのほうが放射線被曝は少ない。たとえば、電離放射線(エックス線)を使うCTスキャンによる画像診断が増加するより、MRIが被曝量が少なくなる。こうした情報を多くの人に伝えれば、MRIの使用を認める人が増えると私は思っている。さらに言えば、MRIの医学診断への貢献はすばらしいものがある」と語った。
オルセン教授は「政策立案者は確かな科学に基づいて政策の立案をすべきだ。私の知識では、MRIで使われる静磁場や変動磁場の長期間被曝による、健康への悪影響に科学的証拠はない。科学的裏付けのない性急な決定は、医学の診断に深刻な影響を与えるであろう。それは避けねばならない」と語った。
現在、欧州で年間8百万人に患者がMRI検査を受けている。今回のEU指令は2008年4月から実施される予定である。
<電磁波問題市民研究会の解説>
この記事は、MRIを事実上規制するEU指令を批判したものだが、EUでは真剣にMRIを規制しようとしていることがこの記事でよくわかる。日本では逆にMRIの使用が野放しであり、これまた大問題である。エックス線同様に非電離放射線使用のリスクを認識した上での使用が重要である。