□用語「EHS」を初めて認知
世界保健機関(WHO)国際電磁波(EMF)プロジェクトは「ファクトシ−ト(Fact Sheet)」というものを折にふれて出す。ファクトシ−トは、いわばプロジェクトの見解、もしくは情報提供と理解していい。2005年12月に出された「ファクトシ−ト No.296」は電磁波過敏症について取り扱っている。
今まで、電磁波過敏症については、EHS(Electromagnetic HyperSensitivity) と IEI(Idiopathic Environmental Intolerance with attribution to EMF)と、二つの用語を巡ってプロジェクト内の統一がされていなかった。EHSは文字通り電磁波過敏症のことだ(国立保健医療科学院の訳では「電磁過敏症」と訳をしているが)。IEIは「EMFが原因と考えられる突発性環境不耐容症(国立保健医療科学院では「本態性環境非寛容症」としている)のことで、その理由は「EHSは電磁波と症状の因果関係が証明されたあかつきにはふさわしいが、まだ因果関係が証明されていないからIEIがいい」というものだ。このような状況の中において、今回のWHO正式文書で、「EHS」(電磁波過敏症)に用語が統一されたことは重要だ。
□2004年のプラハ会議で大筋が決まった
WHO国際EMFプロジェクトが電磁波過敏症をテ−マに本格的な国際会議を開いたのは、2004年10月25日〜27日にチェコの首都プラハでの電磁波過敏症ワ−クショップである。このワ−クショップのねらいは、現段階での電磁波過敏症に関する知見はどのようなものかを検討することが第一。第二のねらいは、参加者間でこの問題を議論する場を提供すること。第三のねらいは、電磁波過敏症を今後どのように取り扱い、どのように進めていったらいいかを提案することであった。
このプラハ・ワ−クショップで確認されたことは、「電磁波過敏症は特定の症状というのはなく、個人個人によって症状が様々であることに特徴があること」「症状は“思い込み”でなく実在すること」「その症状の度合いは人によってまちまちなこと」「症状の重い人によっては生活スタイルを変えざるを得ないほどきついこと」などである。
□結論でも電磁波過敏症の存在を認めた
このファクトシ−トの結論では次のように述べている。「EHSは、多様な非特異的症状として特徴づけられ、症状は人によって異なっています。症状は確かに存在していますが、その重症度は非常に広い幅があり、どのような症状を引き起こすにせよ、影響を受ける人にとってEHSは、日常生活に支障をきたす可能性のある問題です。EHSは、明確な診断基準を持たず、EHSの症状が電磁界暴露と関連するような科学的根拠はありません。さらに、EHSは医学的診断もなければ、単一の医学的問題を表しているかどうかもはっきりとしません。」
ここで惑わされてはいけないのは前半で「症状はたしかに存在する」と明言しているのに、後半で「科学的根拠はない」と木に竹を継ぐような表現をしている点である。これは前半ではっきりとWHOとして電磁波過敏症を思い込みでなく認めているととるべきで、後半の部分は「およそ新しい病気や歴史上初めて経験する病気」についてまだよくわからないといっているにすぎないということだ。