新東京タワー問題で質問書を提出し交渉を行う
「新東京タワ−(すみだタワ−)を考える会」は、墨田区業平橋・押上地区の予定されている新東京タワ−問題について、2005年12月20日(火)に墨田区役所を訪れ、以下に掲載した「質問書」を提出し、約1時間以上にわたって交渉を行ないました。交渉内容は質問書の後ろに掲載します。新東京タワ−建設は、2011年から予定しているテレビ放送地上デジタル化の切札と推進側は宣伝しています。しかし、墨田区民も東京都民もほとんど関心が無いのに進められているのが実態です。こんないい加減なやり方で、2011年7月から地上テレビのアナログからデジタルへの全面以降はできるのか、甚だ疑問です。
2005年12月20日
墨田区長 山崎昇様
新東京タワ−(すみだタワ−)に係わる公開質問状
新東京タワ−(すみだタワ−)を考える会
大久保 貞利
網 代 太郎
拝啓 平素より、地域振興、住民の健康増進にご尽力いただき、ありがとうございます。
私どもは、新東京タワ−(すみだタワ−)に関心を持つ、墨田区内外の市民により作る市民団体です。
新東京タワ−について、直接影響を受ける地元住民をはじめ、放送事業の利害関係者でもある市民のほとんどは、詳しい事業内容を存じておりません。
つきましては、以下について質問させていただきます。お忙しい中、恐縮ですが、2006年1月20日までにご回答をお願いします。
- メリットとデメリットについて
新タワ−建設によるメリットとデメリットのそれぞれについて、区のお考えをお示しください。
- 建設費について
新タワ−の建設費は約500億円であり、東武鉄道が中心になって拠出すると説明されていますが、区としてその一部を負担するお考えはございますか?
また、現時点で負担するお考えがない場合でも、建設費・物価高騰・設計変更の状況変化により建設費が500億円から増額された場合や、東武鉄道側の事情の変化等により、建設費の拠出を求められた場合、区として負担する場合もあり得るとお考えですか?
- スケジュ−ルについて
新タワ−建設が正式に決まった場合、そのスケジュ−ルをお示しください。特に、環境アセスメントに係わるスケジュ−ルについて、詳しくお示しください。
- 景観について
一般の住宅地が多い業平橋・押上地区への高さ600m級の新タワ−建設は、周辺住民に威圧感を与え、景観に大きな影響があり、また、隅田川花火大会の花火観覧にも影響があるのではと危惧いたしております。景観への影響について、区としてのお考えをお示しください。
また、高さ600m必要な理由について、お示しください。
- 電磁波について
現東京タワ−から発せられている電波により、同タワ−周辺では諸外国の基準を上回る電磁波強度が測定されています。また、海外では、電波塔周辺で発がんリスクが高まるとの疫学調査結果も報告されています。新タワ−からの電波によって、周辺のどの程度の範囲にどの程度の強さの電磁波が及ぶのか、および、それによる健康影響について予測・評価するため、専門家による調査検討を行なうことを求めます。これについて、区のお考えをお示しください。
よろしくお願いします。
<2005年12月20日の交渉報告>
応対したのは、大竹恵介主査(都市計画部都市整備担当・拠点整備課新タワ−誘致推進担当)と、杤谷信昭主事(同)の二人。新東京タワ−(すみだタワ−)を考える会からは網代太郎さん(化学物質過敏症支援センタ−事務局長)と大久保の二人。
「拠点整備課新タワ−誘致推進担当」は3人いて、大竹さんが事務畑で、杤谷さんが土木畑で、残りの担当者が建築畑だという。
質問状について、「誘致が決定した訳ではないので、説明できない部分もあるがお答えできる内容もあるので」と断ったうえで、いろいろ答えてくれた。
区は建設費について一切負担しない方針だ
建設費について区の負担もありえるのでは、との質問にはこう明確に答えた。しかし、一方で「これだけ大きいものができるのに、すべて運営を民間にまかせるのは得策でない。なにかあった時、区も介入できるようにすることも必要ではないか」という意見が区議会筋から出ているとのこと。
環境アセスメントは法令上は対象外だが東武鉄道として“自主的にアセスメントをする”と聞いている
今回の新タワ−はアセスメント法の対象に入っていないとのこと。
景観については、東武鉄道もなるべき圧迫感がないように「シンプルで透けるようなデザイン」を考えているという
世界一の高さ610メートルなので圧迫感が出ないわけがないと、聞いていて感じた。最近の技術でエッフェル塔のように底面積を大きくとらなくても強度が保てる技術が開発されている、という。
難視聴地域解消のために、高さ600mが必要となった
東京タワ−建設時代と違って、高層ビルが増えたので「難視聴地域解消」にはやはり600メートル必要だという。「しかし、高ければいいというものでなく、あまり高いと灯台下暗し、で近くに陰ができやすい」と、東京都練馬区で計画した高さ1008メートルの「東京ワ−ルドタワ−」案を批判した。
地盤が弱いという人がいるが、関東礫層の大深度まで杭を打つので他区より危険ということはない
他区で建設するにしても、関東礫層の岩盤まで杭を打つのは同じだから心配ないと言いたいのだが、「大地震の際に液状化現象のおそれがないとは言えないが、地面内な粘土に近いシルトで、かつゼロメ−トル地帯なのでむしろ水害が心配」と言っていた。これでは「液状化のおそれは否定できないし水害も心配」と言っているようにしかとれなかった。誰が考えても江東デルタ地帯は危険なのは明らかだと思うが。
「デジタル放送には、必ずしも新タワ−がなくても技術的に可能ではないか」との質問に、「デジタル放送は防災に役立つ」と答えにならない答えしか返ってこなかった
新東京タワ−が建設されなくても現東京タワ−でカバ−できる、という有力な意見がある。また、北海道や九州地区では、テレビ地上デジタル化にあわせて2011年に新高層タワ−を建設しようという動きはない。これはケ−ブルテレビやその他の技術でデジタル化はカバ−できることを物語っている。それでも、新タワ−建設にこだわるのは「公共事業」として景気対策の面をねらっているからだ。そこのところが、マスコミは見抜けない。だから、この担当者も逃げるだけで、答えにならない答えしか返ってこないのである。「防災対策」なら別の視点が必要で、600メートルタワ−は関係ない。
電磁波については「インタ−ネットで情報を集めている」といい、あまり知識はなかった
肝心な電磁波については、予想どおりわかってなく、こちらがいろいろ情報を提供した。こちらの主張「電磁波の影響について灰色の段階だからこそWHOでも“利害関係者の参加させろというステ−クホ−ルダ−論”が出ているのだ」は、少しは分かったようだ。
<その後の状況>候補地の年内最終決定の線はなくなり、2006年3月末決定に延期された。その影響で、当初の2006年1月20日質問書回答期限も「無理なのでもうすこし回答を延期して欲しい」と連絡があった。
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