デジタル電磁波の問題を無視した巨大デジタルタワ−の誘致

□東京都の押上・業平橋駅周辺地区が候補地に
 NHKと在京民放5社から諮問を受けて「新タワ−候補地に関する有識者検討委員会」(委員長・中村良夫東工大名誉教授)は新タワ−候補地を東京都の墨田・台東地区と埼玉県のさいたま新都心の2ヵ所に絞った答申をまとめた。これを受けNHKと在京の民放5社は3月28日、東京都墨田区を訪れ同区内の「押上・業平橋駅周辺地区」を候補地の1つとして内定したことを伝えた。
 新タワ−は、2011年に地上波デジタル放送全面移行のために建設するデジタルタワ−で、新タワ−建設誘致で公式・非公式含め首都圏15地域から提案があり、東京都内では、墨田区のほかに足立区(舎人公園)、豊島区(東池袋、造幣局敷地)、練馬区(豊島園)、台東区(隅田公園)の5ヵ所が名乗りをあげていた。

□利権がらみの小躍りはわかるが
 東京都墨田区内の商店会や産業団体などで構成する「新タワ−誘致推進協議会」や事業主体の東武鉄道や東京都墨田区は誘致内定で小躍りしている。新タワ−建設で利益を得る一部が喜ぶのはわかるが、一般の商店主や住民あるいはこの地域に職場をもつサラリ−マンたちは、新タワ−完成によって強力なデジタル波を四六時中浴びることによるリスクについて、どれだけ知らされているのであろうか。落選を悔しがっているが、むしろ落選地域のほうが喜ぶべきなのだ。

□巨大建築物に喜ぶ時代ではない
 高度成長時代や経済万能時代ならともかく、環境の世紀である21世紀では「環境にいいもの」「生態系と調和するもの」「コストをかけないもの」「後世代負担の少ないもの」が尊重されていくべきである。
 デジタルタワ−は、どこからみてもこれとは反する。東京タワ−や新都庁を喜んでいる感覚からの脱却が求められている。丹下健三氏のノ−トルダム寺院を模した超高層新宿新都庁案に対し、磯崎新氏は「低層旧丸ビル型」を新都庁案として出した。「このほうが災害に強いし、コストも低く、窓を開けられ空調費もかからない」とした。21世紀はこうした発想こそむしろ“新しい”のだ。
 周辺住民に電磁波問題を地道に訴えていく作業が、これから模索されねばならない。


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