<海外情報>

(抄訳:TOKAI)

カナダの放射線防護委員会が極低周波電磁波と健康問題に関するレポートを提出

カナダ放射線防護委員会報告書・サマリ−より

□270ぺ−ジを超す報告書
 2005年1月、カナダ政府・州政府・準州政府放射線防護委員会(FPTRPC)は「極低周波電磁波に関する健康影響と曝露ガイドライン]と題する270ぺ−ジを超す報告書を発表した.以下に概要を紹介する。

(1)極低周波磁場のがんリスクを扱った研究は幅広くある。リスク証拠は弱いが、いくつかのタイプのがんと極低周波電磁波との関係を示唆するものもあればそうでないものもあり一貫していない。

(2)今回の報告書では疫学調査・動物病理学・細胞実験のデ−タを基に極低周波電磁波と健康への有害影響の関係の強弱を判断する新しい証拠があるのか、について検討した。主たる新研究結果は小児白血病との関係を示唆するものであり、2つの新研究結果は「流産との関係の可能性」を見つけた

(3)極低周波電磁波が健康に有害な影響を与えるのではないかという論争の原因は疫学調査デ−タの不確実性さが関係している。疫学調査証拠の欠点は極低周波電磁波と因果関係があるとするリスク要因が未立証で確定的でないために明確でないことが一つにある。またバイアスや研究規模の小ささも欠点としてあげられる。バイアスは実験設計を周到にすれば改善が可能だ。研究規模の小ささ(たとえば症例数が少ない)はプ−ル分析やメタ分析で対応可能だ。3つの最近出たメタ分析では、磁束密度の高い極低周波磁場と小児白血病の関係は高まると出た。この研究結果は偶然なものでないであろうと結論づけているが、それでもバイアス問題や因果関係での若干の不明確さは残っている。

(4)自動車排ガスなど交通量が大きいと交絡因子として影響すると言われるが、最近の研究結果では小児白血病と交通量の関係はないことがわかった。交通量は排ガス中のベンゼンが交絡因子として働くためと過去によく引用されていたが、最近は、接触電流(contact currents)が交絡因子として言われるようになってきている。

(5)実験室研究では、接触電流がない条件にするため絶縁体のプラスチックケ−ジに動物を入れて磁場曝露するようにしている。動物実験では、がんリスク要因あるいは環境ホルモン要因として磁場が関係しているという研究結果は新しい研究ではない。ただ一つの例外として、実験条件も厳しくしたドイツの最近出た研究結果は、磁場がスプレ−グ・ド−リ−亜種のラットで、乳癌のプロモ−タ−として作用した証拠を発見した。米国の研究者でこの種と別の亜種のラットを使って同じ実験をしたが再現されなかった。まだ確定段階とはいえないということだ。

(6)最近出た2つの研究は極低周波電磁波が流産の一因になるとしている。2つの研究は「一日のうちの最大電磁波」か「平均電磁波」のいずれかが流産に影響を与えているのであろうとしている。流産は妊娠の10%の割合で発生するのだが、2つの研究は電磁波を妊娠女性が浴びることでさらに10%流産リスクが増えるとしている。電磁波は電気製品・壁の中の電気配線・地中配管から出るとしている。これらは現代の生活では避けにくい被曝だ。さらなる研究が求められる。

(7)カナダには3千ヘルツ以下の極低周波電磁波の全国統一基準はない。だが多くの海外の政府組織・非政府組織は極低周波電磁波に基準値を設けている。疫学調査で決定的な結論は導き出せないのでそれらの海外の基準は生体への影響デ−タを基に作られている。しかし基準値は各国まちまちである。特に東欧と西欧で異なる。(訳注:東欧のが厳しい)。それは科学的デ−タ・哲学・方法論が国によって違うことから生じる。予防原則を電磁波に適用すべきという市民の声が世界中で増えている。いくつかの国では予防原則がすでに採り入れられているが、そうでない国もある。それは予防原則がどのように適用すればいいのか、という考えに違いがあるからだ。


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