<海外情報>

(抄訳:TOKAI)

米国の携帯電話訴訟で高裁が地裁に差戻し

ロスアンゼルス・タイムズ 2005.3.23
RCAワイヤレスニュ−ス 2005.3.21

□5つの集団訴訟すべて差戻し
 「第4回米国巡回控訴審裁判所」は3月16日(水)、モトロ−ラ・ノキア・エリクソン・ソニ−・サムスン・松下ら24の携帯会社(後掲)に対する「携帯電話電磁波リスクから消費者を守るためにイヤホンやヘッドホンなどの付けて売るといった対策をしないのは誤りだ」とする5つの集団訴訟について、「差し戻す」ことを決定した。(訳注:巡回控訴審裁判所とは全米を11の巡回裁判区に分けて設置された高等裁判所に相当する。ただしニュ−ヨ−ク州やメリ−ランド州では州最高裁判所に相当する)
 5つのうち4つはジョ−ジア州、メリ−ランド州、ニュ−ヨ−ク州、ペンシルベニア州の地裁に差戻し、残りの1つはボルチモア市にある連邦第1審(地裁)裁判所のキャサリン・ブレイク(Catherine Blake)判事に差し戻された。この決定は2対1という際どさで決定した。

□ブレイク判事への差戻しの意味
 ボルチモア市の連邦第1審判事ブレイクは、もともと州ごとに争われていた5つの集団訴訟を「連邦政府の決めた携帯電話安全基準に関わる問題だ」と原告の主張を無視し州裁判所でなく連邦第1審裁判所に2003年3月一括審議扱いとし、原告の主張を斥けた判事だ。原告側はこの判決を不服とし控訴していた。ブレイク判事に差し戻された係争の弁護人はメジャ−チ−ム「ボルチモア・オリオ−ルズ」のオ−ナ−でタバコ訴訟で名を馳せた弁護士ピ−タ−・アンジェロス(Peter Angelos)事務所所属である。アンジェロス法律事務所は、100人の弁護士を抱える全米有数の事務所であり、そのことも話題となっていた。

□今回の決定の影響は
 今回の差戻し判決はあくまで「審議は連邦裁判所でなく地域裁判所がふさわしい」という司法管轄の問題であり、携帯電話訴訟の中身に関わる判決ではない。しかし、強引な位に連邦地裁判事キャサリン・ブレイクが訴訟指揮をし却下判決をしたことに対する「差戻し判決」なので、今後に影響することは必至だ。
 被告の業界側の弁護人は「米国議会がFCC(連邦通信委員会)に携帯電話を含む電磁波についての基準設定をまかせているのであるから連邦裁判所が判断するのが妥当だ、としたブレイク判決を認めなかった今回の判決を遺憾に思う。最高裁に再判断してもらうことも検討する。」と語っている。

被告の24企業及び連合体等名
(携帯電話機メ−カ−)ノキア、モトロ−ラ、クアルコム、エリクソン、サムスン、京セラ、オ−ディオボックス、松下、フィリップス、サンヨ−、ソニ−
(携帯電話会社)シングラ−、ベンゾン、スプリントPCS、Tモ−ビル、ネクステル
(地方電話会社)ベンゾンCOM、SBC、クウェスト
(長距離電話会社)AT&T、MCI
(連合体)CTIA、TIA
(通信会社)Assn of California
《電磁波問題市民研究会のコメント》
携帯電話訴訟についてはいままでのところ業界側がすべて勝訴していたが、今回高裁にあたる連邦巡回控訴審裁判所は2003年3月にメリ−ランド州ボルチモア市の連邦地裁でキャサリン・ブレイク判事が5つの集団訴訟を却下した判決に対し「差し戻す」判決を言い渡した。あくまで司法管轄の不備に関する判決だが、一括でなく州ごとに裁判することは原告側を勇気づけるであろう。


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