<EU出資のREFLEX研究報告>

欧州7ヵ国・12研究グル−プの共同研究による細胞実験の最終報告

REFLEX(レフレックス)とは、Risk Evaluation of Potential Enviromental Hazards from Low Energy Electromagneyic Field Exposure Using Sensitive in vitro Methods(細胞実験高感度検出法による低エネルギー電磁波による環境被害リスク評価)研究プロジェクトのこと。この頭文字をとってよばれる。総額3千万ユ−ロで研究期間は4年間。出資の大半はEUであり、欧州7ヵ国・12研究団体が参加した。全体のとりまとめはミュンヘンにあるVERUM(ベルム=行動研究財団)が行い、責任者はアドル・コファ−氏。この研究は2004年5月に終了し、12月に最終報告書が出た。

□12月20日に発表
 欧州7ヵ国・12研究団体が、期間4年間総額3千万ユ−ロ(約4億円)をかけて実施されてきた、REFLEX(レフレックス)プロジェクトの最終報告書が2004年12月20日に発表された。出資の大半はEU(欧州連合)であり、EUが公式にすすめた研究である。しかも、この最終結果は、参加した12研究団体(グル−プ)で再現性(繰り返し実験しても出る研究結果)が確認され、信頼度の高い研究結果である。そのためロイタ−、BBCなど欧州の主要メディアは大きく報道している。日本の大手メディアは、今回もほとんど報道をしておらず、この分野の報道管制を強く感じる結果となった。

□細胞実験で携帯電磁波がDNA損傷
 今回の研究は、細胞実験研究・動物実験研究・疫学研究(人間の実生活対象の研究)の3つのうちの細胞実験研究である。
 携帯電話で使われる局所SAR(エネルギ-吸収比)0.3〜2W/kgの電磁波を実験室内のヒトと動物の細胞に照射して影響(効果)をみる実験だが、研究結果は、多くの人間の細胞中の1本鎖DNAと2本鎖DNAが、電磁波でダメ−ジ(損傷)受けることが発見された。またそのダメ−ジは再生修復された細胞にもはっきりみられた。また、DNAの損傷だけでなく、他の細胞変質(染色体の損傷や一定の遺伝子活動の変質および細胞分裂率の変化)の手がかり(ただし決定的証拠ではない)も今回の研究で発見した。
 DNAの損傷は電磁波量が多くなるにつれ、また被曝時間が長くなるにつれ、損傷量も増加した。
 DNAの損傷や再生された細胞にみられた変異細胞は、がんの原因につながる変化とみられている。SARは電磁波を身体はどの程度吸収するかをみる割合である。通常の携帯電話電磁波のSARは、0.5〜1W/kgであり、今回の電磁波量は、ふつうの携帯電話で使用される量に相当する。ちなみに、日本の局所SARの規制値は2W/kg以下である。

□携帯電話論争に一石を投じる研究
 全世界で6億5千万台の携帯電話が販売され、年間1千億ドル規模の産業に発展している携帯電話産業だが、一方で携帯電話の電磁波は腫瘍やアルツハイマ−病やその他の病気の原因になりうるのではないか、という懸念も出されている。
 REFLEXプロジェクトは、高エネルギ−の電磁波は細胞や細胞内のDNAにダメ−ジ(損傷)を与えることは以前からわかっていたが、携帯電話から出るような低エネルギ−の電磁波はどの程度の影響をもつのか、というテ−マで実施されてきた研究計画だ。その意味で今回の最終報告は携帯電話安全論に一石を投じることは間違いない。
 7ヵ国・12研究団体のコ−ディネ−ト(とりまとめ)役をしたのはドイツのミュンヘンにある、VERUM(ベルム=行動研究財団)だ。そしてベルムの責任者がフランツ・アドルコ−ファ−(Franz Adlkofer)氏だ。
 DNAは有機体とその各種細胞の遺伝物質を運ぶ役割をもっているが、そのDNAが電磁波でダメ−ジ(損傷)を受けたことが細胞実験で発見された。これまでは携帯電話程度の低レベル電磁波がどのように細胞を傷つけるかを示す証拠は不十分だったし、実験に再現性がなく一貫性に欠けていた。ところが今回の実験は、「いくつもの実験室で百回も実験が行なわれた上での結果だ。私には一定の条件の下で電磁波がDNA損傷を起こすことは間違いないと思っている」とアドルコ−ファ−は述べている。

□批判よりもさらなる実験を
 アドルコ−ファ−は「電磁波が慢性病の原因となるメカニズムが今回の実験で解明できた」と語っている。と同時に「今回の研究は実験室環境での測定であり、この研究で健康上のリスクが証明されたものではない。遺伝子的な影響や形質的な影響に関してはさらなる研究が必要だ。動物や有志の人間を対象にした研究が必要だ」とも述べた。
 ただし、さらなる研究や動物実験等で安全性が立証されるまでは「予防策として、携帯電話の使用は慎重にすべきだ。携帯電話使用時間はなるべく少なくし、リスクが心配な人はイヤホンを使うべきだ。私はパニックを起こしたいわけではない。しかし注意するに越したことはない。」とアドルコファ−氏は警告した。
 また「追加の研究にはさらに4〜5年かかる。私は企業や政府ができる限りこのような実験をするよう求めたい」と語った。


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