中国がSAR値「1W/kg」の採用を検討中

しかし情報産業省(ICNIRP派)が抵抗している

□採用されれば国基準で世界一厳しい値
 中国政府は携帯電話のSAR(吸収比;Specific Absorption Rate)値を1W/kgに設定することを考慮中だ。これが採用されると国としては世界で一番厳しい値となる。この基準値を中国保健省と環境保護省が支持しているが、情報産業省はICNIRPの2W/kgを支持し対立している。基準値は主に政府省庁代表で構成されている共同ワ−キング・グル−プが決定する。共同ワ−クング・グル−プは基準値決定の際の材料として米国と欧州に調査団を派遣するがモトロ−ラ社(米国)やMMF(欧州ケ−タイメ−カ連盟)は基準値を緩くさせようと画策している。

□ICNIRP基準値は短期間・急性用
 2000年後半に中国保健省は米国のANSI/IEEE(国家規格協会/電気・電子技術者協会)のSAR基準値である「1.6W/kg」(組織当たり1g)を採用しようとしていたことがある。その後昨年10月に、共同ワ−キング・グル−プメンバ−である蒋(Chiang)は韓国ソウルで開催されたWHO会議で「共同ワ−キング・グル−プは1W/kg基準を提案する」と報告した。これに対しWHO国際EMFプロジェクトは中国政府がICNIRP基準採用するよう促したことをマイケル・レパチョリ(WHO国際EMFプロジェクト共同代表)は認めた、とMMFは明らかにした。
 蒋はソウルでのWHO会議での報告書で「ICNIRP基準は短期間の急性健康影響結果を基にしてつくられているが、熱作用や刺激作用を生じない低レベルでも生物影響は出るとする多数の文献がある」と書いている。
 なお表に掲げたが、スウェ−デンのホワイトカラ−労組連合TCOは「0.8W/kg」基準を採用している。中国は携帯電話使用人口が1億6千6百万人で世界一で、米国が1億3千5百万人で第二位である。

国名 等SAR値組織当たり
中国(検討中)1.0W/kg10g
アメリカ1.6W/kg1g
国際非電離放射線防護委員会
(ICNIRP)
2.0W/kg
(日本もここ)
10g
スウェ-デン事務労働組合連合
(TCO)
0.8W/kg10g

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