【要望の要旨】
電磁波の人体への影響について現在、国際的に論争が展開されています。しかし昨年(2001年)6月、世界保健機関(WHO)のがん研究専門機関であるIARC(国際がん研究機関)が家庭で使われる50・60ヘルツの極低周波電磁波を21名のメンバ−全員で「ヒトに対して発がん性の可能性あり」と分類したことで、状況は大きく変わってきました。
携帯電話に使われる高周波電磁波も同様にWHOが2003年〜2005年を目途に健康影響評価に向けて調査を進めています。
こうした中で、日本でも電磁波対策の遅れに不安をもつ国民が増えつつあり、全国各地で携帯電話中継基地局建設や送電線・変電所建設を巡ってトラブルがいくつも起こっています。その原因は、携帯会社や電力会社が建設前に住民に対して十分な説明をせず強引に建設しようとしていることにあります。
昨年6月にWHOが極低周波電磁波を「ヒトに対して発がん性の可能性あり」と分類したのは「0.4マイクロテスラ(4ミリガウス)以上で小児白血病発症リスクが約2倍」という疫学調査に基づいて決定したものです。そのためWHOは各国の政府や産業界に対して「電磁波曝露低減のための安全で低コストな方法を提供すべき」だし、個人に対しては「特定の電気器具の使用を最小限にとどめるとか、比較的高い電磁場を出す発生源から距離を離すことで、曝露低減のための選択をすることができる」と推奨しています。また送配電線の建設には景観や住民感情を配慮することが求められる、とも言及しています。
携帯電話に使用する高周波電磁波に関しても、英国で2000年5月に独立専門家委員会(スチュワ−ト委員会)が、携帯電話の脳への影響を考え「16歳未満の子供の携帯電話使用抑制と携帯会社の販売自粛」などの勧告をし、英国教育省はその勧告を受けてその趣旨のパンフレットを国内の学校に配布しています。また740万ポンド(約13億円)の資金で携帯電話の健康影響調査にも乗り出しています。
さらにドイツをはじめいくつかの国では、携帯電話中継基地局について学校や幼稚園など子供のいる施設の近くでは建設を慎重にし、自治体や住民の意見に配慮するようになってきています。送配電線建設の際の「景観や住民感情の配慮」は携帯電話中継基地局建設にもそのままあてはまります。
【要望項目】