海外情報
(抄訳 TOKAI)
マイクロウェ-ブ・ニュ-ス2001年7〜8月号より
☆ドイツもスイス・イタリア並みを目指す
ドイツは、携帯電話基地局からの放射線(電磁波)に対しイタリアやスイスのような厳しい基準を採用するであろう。連邦政府を構成する緑の党はより厳しい基準の採用を求めているが、通信業界や政府の放射線規制当局がこれに抵抗している。
環境省副大臣で緑の党のシモ−ネ・プロブスト(Simone Probst)は6月21日に開かれた携帯電話健康問題会議で次のように語った。「私たちは方針を変えたい。つまりEMF(電磁波)の分野で予防原則を確立したいということだ。人がいる場所ではなるべく中継塔からの電磁波は弱くしたり、電磁波の健康影響調査をすすめたり、SAR(頭部へのエネルギ−吸収量)をもっと携帯電話使用者に伝わるようにしたり、することが必要だ。」
7月1日、連邦政府環境大臣は「現行の電磁波ガイドラインを補うため、スイスの基準を参考にした予防的基準を採用するかどうか考慮中だ」と報道関係に発表した。そして討議はまだ終わっていないし決定も出ていないことも強調した。
☆厳しい基準の導入巡る攻めぎ合い
通信業界は以前から現在より厳しい基準が導入されることに反対の立場を明らかにしてきた。ダルムシュタット(Darmstadt)に本社のある通信企業「T−モビル」社はドイツテレコム社から分かれてできた会社だが、今年5月に「現行の基準より厳しい予防基準は科学的な根拠に基づいたものではない」と声明を出している。
環境大臣は政府諮問委員会である「放射線防護委員会」(ドイツ語のイニシャルでSSKと称する)がこの問題で勧告を出していると語った。非電離放射線に関する専門家でSSK(放射線防護委員会)の主要メンバ−であるユルゲン・ベルンハルト(Jurgen Bernhardt)博士はICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)の現副議長で前には議長も歴任している人物だ。ベルンハルトはMWNからコメントを求められたが答えなかった。しかし彼はICNIRPガイドラインに依拠した現行の基準に変更をもたらすことには賛成しないであろう。
☆SSKとは違う判断になろう
環境大臣は、基準決定にはSSK(放射線防護委員会)の勧告を部分的にはベ−スにするだろうと述べているが、関係はねじれているのが実情だ。SSKの委員長はマリア・ブレットナ−(Maria Blettner)で、ビ−レフェルト(Bielefeld)大学に在籍する疫学者だが、5月に委員長を辞職した。理由は、タ−ゲスツァイトゥング(Tageszeitung)紙(6月11日付け)によれば大臣がSSKの勧告を無視したからだという。
SSKの別のメンバ−はより厳しい基準に反発していない。その一人、クリスチャン・クッパ−ズ(Christian Kuppers)はダルムシュタットの環境擁護団体・エコ研究所(Oko)所属しているが、最大基準として「1μW/cm2(マイクロワット・パー・平方センチ)」(2V/m)を求めた。これは20μW/cm2(8.7V/m)で人体に有害になるという証拠に基づき(そこ安全率をかける)、主張している。
スイスの予防基準は「4μW/cm2」(4V/m)でICNIRPより百倍厳しい(9百メガヘルツで)。イタリアやその他もほぼ同じだ。社会民主党(SPD)は連合政権の主力だが予防原則を支持している。
もしドイツが厳しい予防基準を採用すればドイツの政策は一変する。プロブスト環境副大臣は低レベル電磁波で生理学上と心理学上の影響がありそれが科学的「不確かさ」(安全でない)につながると述べた。