□21人のメンバ−には日本も参加
ワ−キンググル−プは世界10ヵ国から21名の専門家によって構成されているが、日本からも京都大学の宮腰順二氏が参加している。
すでに1998年6月にNIEHS(米国立環境健康科学研究所)のワ−キンググル−プが同じIARCのがんリスク評価表を使って極低周波電磁場を今回同様「2B」と評価したが、この時は28名のメンバ−中19名の多数で可決された。これに対しIARCはがん問題で最も権威ある機関であり、そこが全会一致で「2B」(可能性あり)としたことの影響は大きい。
□なぜ沈黙する日本の行政
IARCのワ−キンググル−プのメンバ−表とランク別表は次ぺ−ジに掲載したがグル−プの構成は、電磁場(EMF)はがんを促進すると主張する人からその関連性に懐疑的な企業側コンサルタントまでいろんな立場の人が含まれており、そこでの全会一致の意味は大きい。
今年1月30日に総務省の「生体電磁環境研究推進委員会」中間報告は「電波は健康に悪影響を及ぼすという確固たる証拠は認められない」とする見解を発表したが、今回のIARCの発表は電波(高周波)ではないが50〜60ヘルツの極低周波電磁場に対し「人体への発がんリスクは可能性がある」としたのである。高周波よりパワ−の弱い極低周波で人体に影響ありとすれば、当然高周波の評価にも影響せざるをえないだろう。このIARC評価に日本の総務省はどう応えるのか注目したい。
□7人が動物実験にも「限定証拠」と支持
今回、メンバ−のうち7人が動物被曝実験に基づくがんリスクに「限定つきで証拠あり」の票を投じた。98年のNIEHSの時は一人もこれに票を投じなかったことからすると大きな変化である。
ランク | カテゴリー | 対象物質 |
---|---|---|
1 | 発ガンあり | アスベスト・ベンゼン・ダイオキシン・塩化ビニール・C型肝炎ウィルス・ラドンなど87種 |
2A | 発ガンの可能性あり (probable) | PCB・ベンツピレン・紫外線・ホルムアルデヒドなど63種 |
2B | 発ガンの可能性あり (possible) | クロロフォルム・鉛・電磁場・DDT・PBB・四塩化炭素など231種 |
3 | 分類できない | 炭塵・水銀・キシレン・蛍光塗料・サッカリンなど483種 |
4 | 発ガンの可能性なし | カプロラクタム(ナイロンの原料) |
マイクロウェ-ブ・ニュ-ス2001年7〜8月号より
1 | ラリ−・アンダ−ソン (Larry Anderson) | 米国・バッテル太平洋北西国立研究所 |
2 | ウィリアム・ベイリ− (William Bailey) | 米国・ニュ−ヨ−ク市代表 |
3 | カ−ル・ブラックマン (Carl Blackman) | 米国・EPA(環境保護庁) |
4 | ニック・デイ (Nick Day) | 英国・ケンブリッジ大学 |
5 | ヴィンセント・デルピッツォ (Vincennt Delpizzo) | 米国・カリフォルニアEPA計画 |
6 | パスカル・ゲネル (Pascal Guenel) | 仏・国立病院 |
7 | エリザベス・ハッチ (Elizabeth Hatch) | 米国・ボストン大学 |
8 | ユッカ・ユ−テライネン (Jukka Juutilainenn) | フィンランド・クオピオ大学 |
9 | リ−カ・カイフェッツ (Leeka Kheifets) | 米国・EPRI(電力研究所) |
10 | アブラハム・リボフ (Abraham Liboff) | 米国・オ−クランド大学 |
11 | デイビッド・マコ−ミック (David McCormick) | 米国・IIT調査研究所 |
12 | マイケ・メヴィッセン (Meike Mevissen) | スイス・ベルン大学 |
13 | クジェル・ハンソン・ミルド (Kjell Hansson Mild) | スウェ−デン・ウメオ大学 |
14 | 宮腰順二 | 日本・京都大学 |
15 | ヨルゲン・オルセン (Yorgen Olsen) | デンマ−ク・デンマ−クがん学会 |
16 | クリストファ−・ポ−ティエ (Christopher Portier) | 米国・EHIES(国立環境健康科学研究所) |
17 | リチャ−ド・ソ−ンダ−ズ (Richard Saunders) | 英国・国立放射線防護局(NRPB) |
18 | ジョアシム・シュ−ツ (Joachim Schuz) | ドイツ・マインツ大学 |
19 | ヤン・スト−ルイック (Yan Stolwijk) | 米国・エ−ル大学 |
20 | マリア・スタッチリ− (Maria Stuchly) | カナダ・ヴィクトリア大学 |
21 | ベルナルド・ヴェイレ (Bernard Veyret) | 仏・ボルド−大学 |