映画紹介
「グアンタナモ、僕たちが見た真実」
−−米の「対テロ戦争」の残虐さを告発−−

 この映画は、ごく普通のパキスタン系イギリス人青年3人が、「アルカイダ」と決め付けられ、キューバのグアンタナモ米軍基地で2年以上拘束され、拷問を受け続けた実体験を基にした映画である。記録映画であると錯覚させられるほど精密に再現された彼らの体験は、あらためて米軍の非道さを全世界に訴えずにはおかない。

 この映画は、あるイギリス人青年の、人生にとって幸福なエピソードから始まる。彼は故郷のパキスタンでお見合いをして結婚を決め、自分の結婚式に出席してもらおうと、イギリスの同じ町に住む友人を招待した。こうしてイギリスから四人の青年が家族や親戚の住むパキスタンで顔を合わせた。
 彼らがパキスタンを訪れたちょうどそのころ、つまり2001年10月7日、米・英軍がアフガニスタンへの空爆を開始した。青年たちがモスクを訪れると、そこで米軍のアフガニスタン空爆に反対する呼びかけが行なわれていた。彼らは、現地の実情を見て人助けもしようと、軽い気持ちでアフガニスタンを訪れることにした。
 10月13日、彼らは国境を越え、アフガニスタンへと入国した。この当時パキスタンとアフガニスタンの国境は自由に出入りができたのである。しかしながら、その時から彼らの運命は一変していく。アフガニスタンで体験する空爆は、彼らの半ば物見遊山的な気分をすっかり吹き飛ばしてしまう。彼らはなす術もない日々を送った末、パキスタンに戻ろうとする。ところが、彼らが乗った車の行き先は、ちょうど北部同盟が攻略しつつあったタリバンの拠点の一つであった。避難する途中で仲間の一人が行方不明になり――その青年の行方は今もなおわからない――、残りの三人はタリバン兵と見なされ、降伏するタリバン兵と一緒に収容所に連れて行かれてしまう。
 三人は北部同盟から米軍に引き渡される。彼らは、米軍なら英国の国籍を持つ自分たちの言い分をわかってくれると期待したが、それは間違いだった。彼らは「アルカイダ」であることを「白状」しなかったことから、キューバにある米軍基地グアンタナモの収容所へと移送される。

 グアンタナモは、100年前に締結した条約を根拠に、米国がキューバから軍事基地として借用し続けている場所である。キューバ政府は返還を要求しているが米国は頑なに拒み続けている。米国と国交のない国の領内にあるため、そこで米国は自国の法律も国際法も無視して好き勝手に振舞っている。
 三人の青年はグアンタナモでで過酷な拷問を受ける。頭に袋をかぶせられて炎天下のもと何時間も不自然な姿勢をとらされたり、裸にされて犬をけしかけられたり、暗闇の中大音響がなる部屋に入れられたりしていた。彼らはパキスタンには結婚式のためにやってきたのだと何度本当のことを言っても信用されず、ビンラディンが演説している集会を映した不鮮明な映像に基づいて、ひたすら「アルカイダの戦士」であると決め付けられ、そのように白状するまで拷問は続けられた・・・。
 「想像もつかないような状況に巻き込まれ、追い詰められたとき、人は潰れてしまうか、強くなれるかだと思う。僕は、強くなった・・・。」という青年の一人の言葉通り、ごく普通の青年だった彼らは、このような映画の制作に関わることで米軍の残虐さを告発する闘士へと変わった。

 米国は今もなお「捕虜でも犯罪者でもない敵性戦闘員」と決め付けた人々約500人に対して、捕虜に適用されるべきジュネーヴ条約も、犯罪者に適用されるべき国内法の両方を無視して拘束し続けている。
(2007.3.10 鈴)

下記の映画館で上映中。
3月16日まで ナビオTOHOプレックス(梅田)16:15~18:05、18:25~20:15、20:35〜22:25
3月16日まで TOHOシネマズ二条(京都二条)10:00~11:50、12:30~14:20
3月30日まで シネテリエ天神(福岡)14:25〜16:08、16:20〜18:03、18:15〜19:58
3月31日から 静岡シネギャラリー(静岡)11:00~、15:15~、19:25~
その後各地で順次上映予定。
詳しくは、「グアンタナモ、僕たちが見た真実」http://guantanamo.jp/index.htmlを参照。




−−関連パンフレット案内−−

アブグレイブ:ブッシュ政権中枢の第一級の国家戦争犯罪
――「対テロ戦争」=先制攻撃戦略に組み込まれた組織的虐待・拷問・虐殺システム――