「初めて明かされる!サマワ帰還米兵、イラク住民の劣化ウラン被曝」

イラクウラン被害調査緊急報告集会・記録
UMRCアサフ・ドラコビッチ博士講演会 in OSAKA 2004,4,14

発行:
UMRCイラク・ウラン被害調査カンパキャンペーン事務局
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局

A4判77ページ 頒価:700円 (+送料)
(この冊子の売り上げの収益分はUMRCの被害調査分析費用に送ります。)

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 この小冊子は2004年4月14日に大阪で行われた、ウラニウム医療研究センターUMRC所長のアサフ・ドラコビッチ博士の講演会の記録です。
 ドラコビッチ博士の来日は2003年11月に続いて2度目でした。今回の訪日はアフガニスタンの第1次、第2次ウラン汚染調査に続いて、2003年9〜10月にUMRCが行ったイラク市民の汚染調査の結果、サマワ帰還米兵の汚染調査等の結果を報告することが目的でした。
 ドラコビッチ博士の報告は、アフガニスタンでの第1次、第2次調査のショッキングな結果から始まりました。UMRCの現地調査チームはアメリカの空爆にさらされたアフガニスタンの人々が、これまで見たことがないような高い濃度のウランに汚染されていることを発見したのです。爆撃地点の風下で湾岸戦争症候群に似た症状の患者が発生し、人々の尿の中のウランの濃度が跳ね上がっていたのです。現地で採取した水や土のサンプルもウランに汚染されていました。アフガニスタンで発見されたウランは劣化ウランではありませんでした。UMRCはこれを“非劣化ウラン(NDU)”と呼んでいますが、天然ウランと同じ同位体の組成で、人工で原子炉の中でしかできないウラン236を含んでいたのです。
 さらに、ドラコビッチ博士のイラク調査に関する報告は非常に注目されました。4月4日に「ニューヨーク・デイリー・ニュース」という100万部の部数を持つ新聞社は彼らが調査したサマワ帰還米兵のウラン汚染の事実をスクープしました。これまで米国では主要なメディアによって抹殺されていた劣化ウラン弾の危険性と被害が初めて大きく報道され、全米を大きく揺るがしたのです。この小冊子の後半はこのアメリカのでの報道を追っています。
 皆さん!私たちはいかなる困難な中でも真実の追究をやめないドラコビッチ博士とUMRCの活動に、引き続き微力ながら支援を続けていきます。この報告集を作ったのもその一環です。わずかなものですがパンフレットの収益(実費を除いた)はすべて分析費用に回したいと思います。私たちはUMRCに限りない共感を寄せるとともに、日本で劣化ウラン/ウラン兵器の被害の暴露、その全面的禁止のために今後ともできる限りのことを行いたいと思っています。
 私たちは、文字通り「一人の命でも救うことができれば、すべての人類を救うことと同じ」というドラコビッチ博士の信念を共に共有し、今後も劣化ウラン/ウラン兵器が全面的に廃棄されるまで、その危険性を暴いていく活動に全力を注ぎたいと考えています。是非ともこの冊子をお読みください。


内容(目次より)

はじめに

第1部 サマワ帰還米兵,イラク住民の劣化ウラン被曝 イラクウラン被害調査緊急報告集会

主催者あいさつ

嘉指信雄氏(NODU広島プロジェクト)のアピール

UMRCアサフ・ドラコビッチ博士講演
 「イラクとアフガニスタンにおけるウラン汚染」――放射能戦争が健康に与える影響――


第2部 米兵の劣化ウラン被曝の事実を明るみに出したスクープ記事

イラク戦争劣化ウラン情報 No.15
 ニューヨーク・デイリーニュース・スクープ
 [第1記事] おそらく州兵たちはアメリカのハイテク兵器の犠牲者であろう  2004/4/3

イラク戦争劣化ウラン情報 No.16
 ニューヨーク・デイリーニュース・スクープ(続報)
 [第2記事] 兵士達、健康上のリスクを知りたいと要求  2004/4/3
 [第3記事] 問題の野営地の中で  2004/4/3

イラク戦争劣化ウラン情報 No.17
 ニューヨーク・デイリーニュース・スクープ(続報最終)
 [第4記事] 陸軍はニューヨーク州兵部隊を検査する予定  2004/4/5
 [第5記事] 州政府、兵士達の健康のためにひと肌脱ぐ  2004/4/6

イラク戦争劣化ウラン情報 No.18
 ニューヨーク・デイリーニュース・スクープのその後
 G.I.達は軍にウラニウムの検査を受けたいと表明  N.Y.D.N 2004/4/19
 クリントン、G.I.達の健康検査を後押し  N.Y.D.N 2004/4/20
 ヒラリーが将軍を追及、G.I.達が勝利  N.Y.D.N 2004/4/21
 米国防総省のウラニウム否定  N.Y.D.N 2004/4/27
 米国防総省:ウランはニューヨークの部隊に危害を加えなかった  AP通信 2004/4/30
 病気のG.I.達のはっきりしない事実  N.Y.D.N 2004/5/6

イラク戦争劣化ウラン情報 No.23
 NHK BS 世界のドキュメンタリー
 「イラク 劣化ウラン弾被害調査――ドイツ人医師13年の足跡――」 について

 戦争の最も小さな犠牲者  N.Y.D.N 2004/9/29
 劣化ウランによる汚染で英国人がハネウエル社を告訴に踏み切る  Observer 2004/7/11

Military Medicine [168巻8号 2003年] から訳出
 24時間尿採取と指数的崩壊解析に基づく、
 湾岸戦争退役兵士における劣化ウランの吸入時での肺への取り込み量の評価
   保証人:アサフ・ドラコビッチ
   投稿者:アサフ・ドラコビッチ、パトリシア・ホラン 、レオナードAディエツ 、アイザック・ツィンメルマン



はじめに


(1) この小冊子は2004年4月14日に大阪で行われた、ウラニウム医療研究センターUMRC所長のアサフ・ドラコビッチ博士の講演会の記録です。
 ドラコビッチ博士の来日は2003年11月に続いて2度目でした。今回の訪日はアフガニスタンの第1次、第2次ウラン汚染調査に続いて、2003年9〜10月にUMRCが行ったイラク市民の汚染調査の結果、サマワ帰還米兵の汚染調査等の結果を報告することが目的でした。


(2) 講演会の時期は、劣化ウラン反対に取り組んでいた北海道の今井さんや、高遠さん、郡山さんの3人がイラクの武装戦力に拘束され人質となった事件のまさに真最中でした。劣化ウラン反対運動の関係者、反戦の市民運動は、とにかくできることを何でもやって3人を救おうと必死になっていました。
 折しも小泉政権は自衛隊イラク派兵への批判が高まることを恐れて彼らにすべての責任を転嫁する卑劣な「自己責任論」を押し出し、心労で倒れそうな家族をよってたかって袋だたきにしているところでした。政府の見殺し政策を許すな、イラクの民衆に直接働きかけよう、自衛隊撤退の声を強めようというのが私たちの気持ちでした。ドラコビッチ博士の講演会は国会議員会館(4月12日)、東京報告会(4月12日)、大阪報告会と開かれましたが、この状況の中で、国会議員会館で開かれた報告会では今井さんのお母さんに来て頂き、集まった議員、マスコミ、市民にアピールをお願いしました。東京報告集会では写真家の豊田直巳さんが人質を巡る動向と政府の「自己責任」キャンペーンの下で非常に強い圧力にさらされていた家族の状況を報告されました。大阪でもNODU広島プロジェクトの嘉指信雄さんがアピールされました。
 その後私たちは、全国各地の市民の努力の結果、3人が無事帰国できたことを心から喜ぶとともに、極めて親日的であったイラクの人々をこのような状況に駆り立てている米軍の侵略と占領の不当性を糾弾し、これに加担する自衛隊の撤退の声をますます強めていこうと決意しました。


(3) 博士は講演のはじめに、UMRCの使命について「私の仕事というのは何もどこかの国に反対するとか、そういうものではなくて、人類の命を粗末にするいなかる人々、こういった人たちに反対して闘うということです。もし人一人の命でも救うことができれば、すべての人類を救うことと同じことだ」と語りました。続いて、「政治的にもまた、経済的にも自由な世界、そして苦悩のない世界の実現のために私は無知という大きな岩を何とか私の水の1滴で砕いていきたいと考えています」と話しました。一人の人間として、また科学者あるいは医師として、兵士や住民に深刻な被害を与えることをやめようとしない政府に対する怒りと誠実な彼の人柄、信念がよく伝わります。


ニューヨーク・デイリー・ニュース 2004,4,5発行の表
 ドラコビッチ博士の報告は、アフガニスタンでの第1次、第2次調査のショッキングな結果から始まりました。UMRCの現地調査チームはアメリカの空爆にさらされたアフガニスタンの人々が、これまで見たことがないような高い濃度のウランに汚染されていることを発見しました。爆撃地点の風下で湾岸戦争症候群に似た症状の患者が発生し、人々の尿の中のウランの濃度が跳ね上がっていたのです。現地で採取した水や土のサンプルもウランに汚染されていました。アフガニスタンで発見されたウランは劣化ウランではありませんでした。UMRCはこれを“非劣化ウラン(NDU)”と呼んでいますが、天然ウランと同じ同位体の組成で、人工で原子炉の中でしかできないウラン236を含んでいたのです。これは米軍が2種類のウラン兵器−−対戦車用の劣化ウラン弾と貫通型の大型爆弾−−を使用しており、ウランの組成が異なる可能性を示しています。アフガニスタンと、後で出てくるバグダッド等では主として大型爆弾が使われ、人々は非劣化ウランに被曝した可能性が高いのです。

 ドラコビッチ博士のイラク調査に関する報告は非常に注目されました。4月4日にニューヨークで彼らが調査したサマワ帰還米兵のウラン汚染の事実がスクープで公表された直後のホットな時期だったからです。イラクに派遣された第442憲兵中隊の兵士が劣化ウランに被曝した事実は全米を揺るがしました。これまで米国では主要なメディアによって抹殺されていた劣化ウラン弾の危険性と被害が初めて大きく報道されたのです。アメリカでの人々の関心が兵士達の被曝に集中していました。
 サマワから帰還兵した州兵9人中4人から劣化ウランが、7人から人工のウラン236が尿の中から検出されました。これらの兵士は体調を崩してイラクから国内に送り返されていました。米兵には様々な症状が出ており、米兵自身が劣化ウランへの被曝を疑っていたのに、米軍病院当局は劣化ウランへの被曝を確かめる調査さえを行わず、たとえ行っても、本人に結果さえ教えない非人間的な扱いを兵士らに行って来ました。業を煮やした兵士らが駆け込んだのがUMRCだったのです。そして彼らを診察し、調査を行ったがドラコビッチ博士でした。調査のスポンサーになったのは「ニューヨーク・デイリー・ニュース」という100万部の部数を持つ新聞社でした。この連携によって真実が明るみに出されたのです。

 博士の報告の中でさらに以下のことが明らかにされました。(イ)彼らはイラク戦争が終わり、ブッシュが5月1日に「戦争終結宣言」を行ってからサマワに配備されました。つまり2003年6月から8月までのわずか2ヶ月間そこにいただけで被曝したのです。(ロ)後を引き継いだオランダ兵は、米兵のいた操車場の汚染がひどいため、そこへの配備を拒否し、砂漠の中にキャンプを設営したことです。
 これらの事実から博士が強調したのは、こういう劣化ウランで汚染された環境の真っ直中に自衛隊は送り込まれたのであって、自衛隊員の被曝も避けられないと言うことでした。彼らを被曝させないためには、直ちに撤退させなければならない、と。

 この結果は米国民だけでなく、米議会を揺るがしました。兵士達をまともに扱っていない、被曝しても検査もせずに放置しているという非難が政府に集中しました。ニューヨーク州選出のヒラリー・クリントン議員らが州兵らと面会し、議会で問題を取り上げ、軍当局に兵士らにUMRCが行ったような正確な検査をきちんと行うよう要求するまでになりました。この過程で、軍は「本人が被曝した可能性を主張し、検査を要求する場合、劣化ウランの検査をする」ということになっているのに、全くサボタージュしていた事実が明らかになりました。議会で追及された結果、米軍当局はあわてて病院にいた442憲兵中隊の残りの兵士の検査を行い、さらに他の兵士も希望すれば検査を行うと公表せざるを得ませんでした。1000人もの兵士が検査を申し出たと伝えられています。
 しかし、兵士達の申し出は軍の不誠実極まるやり方でまたも踏みにじられました。軍はUMRCの調査に比べてはるかに精度の劣る、しかも劣化ウランかどうかの判定に決定的な意味を持つ同位体検査を行わず、兵士の殆どを異常なしと追い返したのです。その中にはUMRCが検査した兵士も含まれていました。さらに、9月には別の部隊にいた州兵特殊部隊員のダレン・マッシューからも劣化ウランが検出され、軍の検査がいかにデタラメかを暴き出しました。(「戦争の最も小さな犠牲者」参照)。米政府と軍のやり方は全く変わっていないのです。

 私たちを驚かせたのは、報告会でドラコビッチ博士がおそらく世界で初めて公表したイラク住民の調査結果でした。バグダッド、バスラ、ナッシリアで行った住民の調査結果は、住民が劣化ウランに被曝していることをはっきり証明しました。特にバスラで被曝している住民の割合は高く、調査した5人の住民のうち4人から劣化ウランが検出されました。バグダッドでも10人中一人ですがはっきり被曝した市民がいるとの結果が出ていると指摘しました。バグダッド等ではアフガニスタンで発見された人工のウラン236がやはり発見されています。


(4) さらに驚いたことに、9月に劣化ウラン調査のために2週間イラクに滞在しただけのUMRCの調査チームのメンバーが被曝しました。チームのリーダーであるテッド・ウェイマン氏の尿からも劣化ウランが発見されたのです。米政府の言うように戦闘の最中に味方の劣化ウラン弾で誤射されたり、劣化ウラン弾で破壊された戦車に入った米兵だけが被曝する可能性があるという説明は全くのデタラメでした。私たちが恐れていたようにイラクの市民が広範に被曝している可能性があることが明らかになり、参加者にショックを与えました。


(5) またこれらとは別に、2004年の10月、戦闘直後(2003年6月)のイラクに入ったNODU広島プロジェクトの調査結果について、住民の尿から劣化ウランを検出したと公表されました。現地の医師の協力を得て住民の尿を持ち帰り、バグダッドの患者の尿から非常に高い劣化ウランが検出されたのです。イラク戦争後にイラクに入って現地住民の調査を行った世界でたった二つだけの調査団−−UMRCと広島の市民グループ−−のどちらからも劣化ウランが検出された事実は、イラクの汚染が極めて深刻な状態にあることを示しています。


(6) イラクの劣化ウラン汚染調査のためには、本来、国際機関による本格的な調査が必要であることは明白です。しかし、現実には戦争が終わって2年近くたつのにUNICEFもUNEPも何の調査もしていません。時間が経てばウランを尿から検出するのが難しくなります。戦争半年以内にイラク全土の10都市の市民の調査を行い、100サンプルもの試料(尿や水、土壌など)を持ち帰ったUMRCの調査は極めて貴重であったことが明らかになりました。アフガンについても事態は同じです。UNEPはアフガニスタンに戦後調査に入りながら、ウランの使用の疑いについての放射能調査を意図的に行いませんでした。このように国際機関が動かない、あるいはアメリカの圧力によって事態の解明ではなく隠蔽に手を貸しているときに、UMRCが行っている調査の意義はますます重要になっています。

 UMRCの活動はすべてがボランティアと市民のカンパによって運営されています。現地調査は自分たちの資金で行い、サンプルの分析は市民のカンパによっているのです。残念ながら分析資金の問題があって、UMRCが採取した試料の分析は終わっていません。約半数のサンプルが分析できないままです。尿サンプルのウラン分析は非常に精密な分析であり、1人分の分析に7〜10万円もの費用がかかります。これらは世界中からの市民のカンパや寄付でまかなわれています。日本でもこれまでにイラクの調査費用のために約300万円ものカンパが集まり、UMRCに送金しました。しかし、それでもまだ半分の分析費用が足りないのが現状です。今後も引き続き皆さんにカンパへのご協力をお願いしたいと思います。(参照 http://www.jca.apc.org/stopUSwar/UMRC/umrc.htm

 ドラコビッチ博士は一番最初に湾岸戦争帰還兵の劣化ウラン汚染を発見し、さらにアフガニスタン住民のウラン汚染を明らかにし、さらに今回イラク住民、UMRC調査チーム、特に米兵士の被曝を明らかにしてきました。この科学的調査を進めれば進めるほど、ドラコビッチ博士とUMRCに対する政府や軍の圧力と迫害が強まっています。湾岸戦争帰還兵の調査をやめなかったために博士は97年に米軍を追われました。(博士は18年間米軍に勤務し、大佐の階級を持つトップクラスの軍医だったのです)。
 今回もサマワ帰還兵のデータを公表するなという露骨な圧力が博士と新聞社にかけられ、訪日についても日本に行くなという脅迫があったと聞いています。博士達の科学的なデータそのものが否定できないので、何とかやめさせよう、もみ消そうと米政府や軍がうごめいているのです。博士の帰国後には、何者かがUMRCのインターネット・サイトをダウンさせようと攻撃をかけ、スパムメールが1日に5000通も送り込まれるなど嫌がらせが続いています。このような中で、毅然として真実を明らかにするために闘っている博士達の勇気ある取り組みに心から敬意を払いたいと思います。

 何者も博士達の活動を止めることはできません。この1年近くの間に国際学会で博士達の調査結果は次々と公表されました。5月23日には、マドリードの国際放射線防護学会の11回総会でアフガニスタンの1次調査での市民のウラン被曝のデータが公表されました。7月には、アメリカの保健物理学会の49回年次総会でバグダッドとバスラの土壌汚染のデータが、8月25日には、ブダペストで行われた欧州放射線生物学会でサマワ帰還米兵のデータが公表されました。9月には、ヘルシンキでの欧州核医学学会でアフガニスタンの第2次調査のデータが公表されました。そして11月には、北米放射線学会でバグダッドとバスラ市民の劣化ウラン汚染のデータが公表されました。
 この報告集の発刊が遅れた理由の一つは、4月に博士が日本で発表したデータの多くが学会ではまだ未発表で、これらがきちんと学会発表という形で公表されるのを待っていたためです。博士達の仕事に対して過激派だ、誇張だとの攻撃が米国防総省とこれと連動した一部の「反劣化ウラン活動家」からかけられるようになっているので、きちんと学会発表や雑誌発表の形でデータを公表し、いい加減な形での批判をできないようにしておく必要があると私たちは考えました。その結果、報告集の発行が非常に遅れ、皆さんにご迷惑をおかけしたことをお詫びしなければなりません。


(7) UMRCと博士の前進は、データを次々に学会で発表したことにとどまりませんでした。世界中で広く評価の声が高まっています。9月には米国内のソノマ州立大学のメディア研究グループ「Project Censored」(検閲されたことによって一般公衆に知らされにくい情報を評価するメディア研究グループ)の選んだ2003〜2004年の「検閲された話題トップ25」の4位に「ハイレベルのウランが兵士と市民から発見された」として、その中にUMRCのアフガニスタン調査がノミネートされました。さらに、10月には反核の活動に対して授与される国際的にも権威ある「核のない未来賞(Nuclear-Free Future Award)」の教育部門を受賞し、ドラコビッチ博士はインドで授賞式に参加しました。この賞は「私たちの中心的な関心の一つは、ウランの致命的な影響について大衆の意識の覚醒に拍車をかけることである」とし、教育部門は「原子力エネルギーに突き進むことの危険を明らかにする事−−政治家、科学者、および原子力産業の代弁者達によって毎日流布されたデマにもかかわらず−−を支援する」人々、組織、あるいはイニシアチブに敬意を表して授与されるものです。まさにドラコビッチ博士とUMRCにふさわしい賞といえます。日本人では原発被曝労働者をとり続けてこられた写真家の樋口健二さんが2年前に受賞されています。
 ※ProjectCensored については http://www.projectcensored.org/publications/2005/index.html
 ※核のない未来賞については http://www.nuclear-free.com/english/frames7.htm


(8) 最後に、私たちはいかなる困難な中でも真実の追究をやめないドラコビッチ博士とUMRCの活動に、引き続き微力ながら支援を続けていきたい思います。この報告集を作ったのもその一環です。わずかなものですがパンフレットの収益(実費を除いた)はすべて分析費用に回したいと思います。また、皆さんにもUMRCの被害調査分析費用へのカンパを引き続きお願いします。
 私たちはUMRCに限りない共感を寄せるとともに、日本で劣化ウラン/ウラン兵器の被害の暴露、その全面的禁止のために今後ともできる限りのことを行いたいと思っています。
 昨年、文部科学省の所轄公益法人である「原子力文化振興財団」が、あたかも劣化ウランが安全であり、劣化ウラン兵器は「良い兵器」であるかのような宣伝を、マスコミ向けのプレスレリーズで行いました。原子力の権威を装う、しかも政府補助金と電力資本からの補助金で運営されるこのような団体が意図的にウランや放射能の危険性の過小評価を行い、核物質を用いる放射性兵器を容認、礼賛するような宣伝を到底許すことはできません。私たちは早速これへの批判を公表しました。この批判については国会でも取り上げられ、社民党の福島瑞穂議員から政府への追及が行われました。
 また、サマワに派遣された自衛隊員についても政府は安全を保証する措置を何もとっていません。政府が持たせた線量計は微粉末で飛び回る最も危険な状態の劣化ウランを検出できないものです。彼らが米兵と同じようにウランを吸入したかどうか、誰にもわかりません。政府は隊員の安全には最大限の努力を払ったと言いながら、帰国した隊員達に何の検査もしていません。彼らが被曝したかどうかは尿の劣化ウラン分析を行わなければわかりません。そしてもし被曝していれば、何年、何十年も経ってその影響が出てくるのです。同位体検査を行っている英国はおろか、いい加減極まる米政府程度の検査も行っていない、文字通り何もしていない政府の無責任を引き続き追及していきたいと考えています。劣化ウラン被曝という一点だけからしても自衛隊はイラクから撤退すべきです。そして、米英の占領軍に軍隊を送って加担するのではなく、米英によって汚染されたイラクの被害調査、被曝調査、追跡調査と医療保障のための援助に切り替えるべきです。

 私たちは、文字通り「一人の命でも救うことができれば、すべての人類を救うことと同じ」というドラコビッチ博士の信念を共に共有し、今後も劣化ウラン/ウラン兵器が全面的に廃棄されるまで、その危険性を暴いていく活動に全力を注ぎたいと考えています。皆さんのご協力・ご支援をよろしくお願いします。
 ※これまでの私たちの活動については、イラク戦争劣化ウラン情報をご覧ください。 
  http://www.jca.apc.org/stopUSwar/DU/stop_du_war.htm

2005年3月7日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
UMRCイラク・ウラン被害調査カンパキャンペーン事務局
吉田 正弘





4・14 UMRCアサフ・ドラコビッチ博士講演会 in OSAKA
サマワ帰還米兵、イラク住民の劣化ウラン被曝−−イラクウラン被害調査緊急集会報告
イラク全土が劣化ウランで汚染されている



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