反占領・平和レポート NO.47 (2006/7/19)
Anti-Occupation Pro-Peace Report No.47 |
イスラエルは、レバノンへの侵略戦争――陸海空の軍事封鎖と大規模空爆、無差別殺戮――をやめよ!
Israel, Stop the Aggressive War on Lebanon
-- the Air-Sea-Land Blockade, Massive Aerial
Bombing, and Indiscriminate Massacre !
Denounce Bush Government for
Supporting the
Aggressive War by Israel! |
◎米国ブッシュ政権による、イスラエルの侵略戦争支持糾弾!
◎安保理でのイスラエル非難決議への拒否権行使糾弾! ◎停戦の呼びかけつぶし糾弾! |
(1)すでに285人を超える犠牲者、50万人の避難民
イスラエル軍は16日、首都ベイルートの主要施設に対して100箇所を越える集中的な空爆を行なった。レバノン南部住民に対して「2時間以内」の避難を求める警告声明を発表して、軍事侵略をいっそうエスカレートさせた。これまでの主要施設から市街地全体への全面的な攻撃拡大の危険性が出はじめている。ベイルートでは、発電施設が破壊され、人々は電気や水、食料を欠き、主要道路や橋が破壊されたもとで残された避難経路に人々が列をなすなど破滅的な事態に陥ろうとしている。
19日には、地上部隊の一部がレバノン南部に侵攻し大規模攻撃を加えた。これが本格的な地上攻撃か、一時的な地上攻撃かはだ分からない。しかし、戦火は広がる一方である。
※<レバノン>イスラエル軍攻撃で死者累計は285人に(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060719-00000079-mai-int
※Refugees Fleeing Beirut Speak of
Catastrophic
Bombing
http://www.antiwar.com/jamail/?articleid=9307
イスラエル軍は、12日のベイルート国際空港への数度にわたる爆撃を皮切りに、レバノン領海にイスラエル軍の艦船を配備して海上封鎖し、幹線道路や橋を空爆して陸路も遮断した。レバノン空軍基地の滑走路を爆撃し、ガソリンスタンド、電力施設などインフラ施設を次々と破壊し、ベイルート北方のジュニエの港湾施設を海上から砲撃した。さらにシリア国境の山岳地帯にある衛星テレビなどの中継施設を破壊し、被害情報が世界に配信されるのを妨害している。
イスラエル軍は15日には、攻撃地域をレバノン全土に拡大し、ベイルート中心部に近い港や北部の第2の都市トリポリを爆撃した。さらに、ベイルート沖の哨戒行動を強めるなど、レバノンを陸海空から封鎖する作戦を一層強化している。
イスラエルの攻撃は甚大な被害と犠牲をもたらしている。15日には、避難中の市民の一群を空爆し、20人を一挙に殺害した。数家族で一緒に小型バスで南部の村から退避する途中で、ほとんどが子どもだった。レバノン側の犠牲者数は18日にはすでに285人を超えている。また、避難民は50万人規模に達している。
※Children die in convoy attack as
Israel
widens Lebanon assault(guardian)
http://observer.guardian.co.uk/world/story/0,,1821706,00.html
※避難民、50万人規模に=連日の空爆逃れる―レバノン(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060719-00000020-jij-int
イスラエルによるレバノンへの大規模攻撃は、主権国家へのあきらかな侵略戦争であり絶対に許すことは出来ない。イスラエルは、レバノンに対する侵略戦争、大規模・無差別空爆を今すぐやめ、レバノンに対する破壊と殺戮を中止すべきである。今すぐ撤退すべきである。
(2)国際法違反は明白。人道的危機を作りだし人々の生活を破壊するイスラエルの常套手段
「イスラエル兵拉致」を口実に生活関連施設を爆撃・破壊し、「人道的危機」を作り出す非情なやり方は、6月末から始まったガザへの侵攻と全く同じである。
当初の南部地域への攻撃によって、首都ベイルートには周辺地域から公園や学校へ次々と避難民が押し寄せた。しかし、イスラエルの攻撃はベイルートへと拡大し、発電施設が破壊され、人々は電気や水、食料、医薬品を欠き、凄惨な生活を強いられている。主要道路や橋が破壊されたもとで残された避難経路に人々が列をなすなど破滅的な事態に陥ろうとしている。
国連人道問題調整事務所(OCHA)のヤン・エグランド所長(国連事務次長)は14日、イスラエル軍によるレバノン空爆やガザ侵攻などに対し、「国境・港湾の封鎖や空港空爆で罪のない第三者が健康や生活の被害を受けるなら、それは誤りで、国際法違反に相当する」と述べ、イスラエル軍を非難した。さらに、エグランド氏はパレスチナ自治区が食料・エネルギー供給、医療・衛生などの点で深刻な状況にあると指摘し、「現状は過去10年間で最悪の水準だ。すべての当事者に抑制を求める」と語り、事態の深刻さを明らかにした。
※The Gaza/Lebanon Crises: Escalating
Occupation
& Danger of New Border Fighting(IPS)
http://www.ips-dc.org/comment/bennis/tp43GazaLebanon.htm
また、人道支援団体も次々とガザとレバノンで起こっている人道危機に警告を発し、イスラエルの攻撃の中止を要求している。アムネスティ・インターナショナルはガザで急速に進行している市民生活の破壊に強い危機感を表明した。
※Israel/Occupied Territories: Civilian
population
at risk in Gaza(amnesty)
http://web.amnesty.org/library/Index/ENGMDE150652006?open&of=ENG-ISR
(3)ブッシュによる、イスラエルの侵略戦争への全面支持
ブッシュ大統領は、レバノンのシニオラ首相による、イスラエルの攻撃中止を求める要請をあからさまに拒否した。ブッシュは、「イスラエルが中東での自衛の権利を持っている」と語り、現に大規模な空爆と破壊・殺戮の渦中にあるレバノン首相に対して直接、イスラエルの残虐行為を「自衛権」として支持することを伝えたのだ。イスラエルの「自衛権」を支持する発言はサミットでも再三強調し、イスラエルの攻撃にお墨付きを与え続けた。
※イスラエルには自衛の権利がある=ブッシュ米大統領(ロイター)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060716-00000209-reu-int
さらに米国は13日、アラブ諸国を代表してカタールが国連安保理事会に提出したイスラエル軍のガザ侵攻を非難する決議案の採決に拒否権を行使し、17日にはレバノン侵攻についてアラブ諸国が強く求めた議長声明による停戦の呼びかけに反対した。
※米国、イスラエルのガザ侵攻を非難する国連安保理決議案に拒否権行使(ロイター)
http://today.reuters.co.jp/news/newsArticle.aspx?storyID=2006-07-14T095447Z_01_NOOTR_RTRJONC_0_JAPAN-220980-1.xml
また私たちは、小泉首相がイスラエルの野蛮行為に対して示した異常な対応をも糾弾しなければならない。この時期小泉首相は中東を歴訪し、イスラエルの侵略とは無縁に、自らがすすめるヨルダン川流域の共同開発について話し合う「4者協議」構想の宣伝をつづけたのである。しかもヨルダン国王がイスラエルの攻撃に対して懸念を示したのに対して、「今回、中東の動きを見て権力闘争のすさまじさが分かった」「内政も外交もいい勉強になった」と語り、イスラエルによるパレスチナ、レバノン攻撃・戦争を「権力闘争」と規定し、「いい勉強になった」と澄まし顔で語ったのだ。一般市民が大勢死んでいる状況を「勉強した」とは許し難い暴言である。
(4)周到に準備された今回の大規模攻撃――反イスラエルの武装勢力の拠点を壊滅するためにレバノンの政府と社会全体を崩壊させようとしている
今回のイスラエルの攻撃は、一過性のものではない。長期にわたって計画され準備されてきた軍事作戦を「拉致兵士の救出」という口実の下に実行に移したものである。主たる目的は、レバノン現政権の打倒と親イスラエル政権の樹立である。当初からオルメルト首相は、「レバノン政府に責任がある」「単なるテロではなく戦争行為だ」「主権国家による攻撃であり、挑発だ」と、レバノン政府をターゲットにしていることをあからさまに述べ、すぐさま「戦争宣言」を行なった。ガザ侵攻によりハマス主導の自治政府を打倒しようとしているのと同様に、イスラエルに対して軍事的な対決強化を図るヒズボラの拠点を根こそぎ破壊するために、ヒズボラを容認するレバノンの現政権を軍事力でつぶそうという戦略に基づいているのである。さらに、シリアへの軍事攻撃まで辞さない姿勢をちらつかせる危険極まりない冒険主義に走っている。
※The Real Aim (Uri Avnery 2006.7.15)http://zope.gush-shalom.org/home/en/channels/avnery/1152991173
※Strikes Are Called Part of Broad
Strategy(ワシントンポスト)
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/07/15/AR2006071500957_pf.html
今回の攻撃は、突如起こったわけでもない。2000年のイスラエル軍のレバノンからの撤退以降も、特に南部地域に対してイスラエルによって執拗な攻撃が加えられてきた。イスラエルはまだ多数のレバノン人の捕虜を収容している。南レバノンのシェーバの農場を占領し、イスラエル軍は、毎週のようにレバノンの領空や沿海を侵犯してきた。さらにイスラエルはレバノンで要人の暗殺を組織してきた。南部のレバノンの農村にはイスラエルの攻撃に備えたシェルターさえ備えられているという。
今年1月のパレスチナでのハマスの圧勝がイスラエルに対して大きな衝撃を与えたように、2005年4月のレバノンの総選挙は大きな衝撃を与えた。ヒズボラが議会で14議席を獲得し閣僚を2人輩出、イスラエルに対する抵抗闘争がレバノン人民の支持を受け、政治的な躍進を遂げたのである。以来1年以上にわたって、ヒズボラは、「レバノン人の捕虜の釈放」をイスラエルに要求してきた。しかし、イスラエル側はこれを無視してきただけでなく挑発を繰り返してきた。そして、ガザ同様レバノンに対する大規模攻撃の機会を執拗に狙ってきたのである。「イスラエル兵の拉致」は、イスラエル国境でのヒズボラとイスラエル軍との交戦の中で起こった口実に過ぎない。
※Final Battles?: Interview with Saseen
Kawzally(leftturn)
http://www.leftturn.org/Articles/Viewer.aspx?id=961&type=W
イスラエルのオルメルト首相は17日国会で演説し、レバノン攻撃を続行を表明するとともに、攻撃停止の条件として、@ヒズボラに拉致された兵士の解放、A南レバノンからのヒズボラ撤退と同地域へのレバノン軍展開、Bヒズボラの武装解除を求める国連決議の履行の三つをあげた。これこそ本末転倒である。まず第一に、イスラエルは、レバノン人の捕虜の釈放を実施しなければならない。第二に、今回の攻撃を中止するだけでなく、これまでの執拗な挑発行為を謝罪し、今後いっさいレバノンに対する攻撃を行わないことを約束しなければならない。第三に南レバノンにおける軍事展開の部隊の選択は、レバノンの内政問題である。ヒズボラも含めたレバノン政府の問題である。
イスラエルは、このような、レバノン政府が飲むことのできない提案を行うことによって、政府そのものに混乱と対立を生み出そうとしている。
同時に、攻撃によるレバノン内の住民流動化は新しい危機を生み出す。レバノン南部およびベイルート南部郊外から何万ものシーア派のイスラム教徒が、キリスト教徒やイスラム教スンニ派の地域に避難した。このような、難民の大移動は、微妙な宗派バランスの上に成り立ってきたレバノン政権の「安定」に対して大きな影響を与える危険性がある。イスラエルは、レバノン政権と社会の不安定化を狙っているのである
※Humanitarian Catastrophe Looms(commondreams)
http://www.commondreams.org/headlines06/0718-01.htm
(5)米国=イスラエルの冒険主義は必ず破綻する
文字通り侵略に次ぐ侵略、歯止めのない戦火の拡大、イランやシリアへの戦争挑発−−次第にイスラエルは国際的な孤立に追い込まれようとしている。残忍極まりないイスラエルへの支持は、ますますブッシュだけになってきている。
今回のイスラエルによる大規模で異常なレバノン侵攻は、さすがに、これまでイスラエルを支持あるいは容認してきた西側帝国主義諸国の間でも批判や自制を求める動きを呼び起こしている。フランスを中心に安保理決議を模索し始めている。国連と欧州諸国は、現在レバノン南部に展開している国連レバノン暫定軍(UNIFL)を上回る規模の国際部隊の派兵を提案している。しかし、それらがヒズボラに対する一方的な武装解除である限りは、絶対にヒズボラとレバノン人民は呑まないだろう。ブッシュはこれら全てを拒否し、イスラエルの軍事行動の自由を制約するあらゆる行為を阻止している。
今回のイスラエルの軍事行動に対して、ブッシュが予めどこまで知っており、その後もどこまで一体的に動いているかどうかは分からない。しかし、これらのブッシュの動きを見れば、米国は、ヒズボラ−−ハマス−−シリア−−イラン−−イラク・シーア派の軸を断ち切るために、イスラエルに合意を与え、ヒズボラの拠点攻撃を大規模に展開させていることは間違いない。これは米軍がイラクで進める、市民を巻き込んだ「対テロ戦争」そのものである。
米ホワイトハウスは16日、国防総省がスタッフ約20人をベイルートの米国大使館に派遣し、在留米国人約2万5000人の避難計画の準備に入ったと説明した。イスラエルによる攻撃の長期化を見越していることを意味する。
※<レバノン情勢>在留米国人2万5千人の避難計画を準備(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/mideast/news/20060717k0000m030135000c.html
一方、イスラエルは戦線拡大、軍事費負担、経済的停滞などで、手詰まりと苦境に陥り始めている。ガザでイスラエル軍は14日、空爆は強めつつも、部隊の一部をガザ市を含むガザ中部から撤退させはじめた。レバノンでの戦線拡大で、部隊の再編成が必要になったためである。
イスラエルはまた、ヒズボラの予想外の反撃能力に動揺を隠せないでいる。ハイファなど北部地域がヒズボラのロケット弾攻撃を受け、北部地域経済が停滞し始めた。ヒズボラは14日にも、レバノン沖で無人機を使ってイスラエル軍艦船を攻撃、艦船を大破させた。
昨年のガザ撤退以来、とりわけ今年初めのハマスの圧勝とハニヤ政権の誕生以降、ハマスによるイスラエル南部地帯へのロケット弾反撃、イスラエル国内での交渉支持世論・政治犯釈放の声の高まり等々、圧倒的な近代的軍事力による残忍極まりない戦争政策にもかかわらず、オルメルト政権の基盤が揺らいできた。ガザへの再侵攻、さらにはレバノンへの大規模な再侵攻は、こうしたオルメルト政権の起死回生の賭けである。オルメルトは、手詰まりと苦境の中で、イスラエル軍首脳の冒険主義的強硬路線に活路を求めようとしているのである。
私たちは改めて強く主張する。イスラエルは今すぐ、国際法に真っ向から違反する侵略戦争をやめ、レバノンにおいてもガザ地区においても、あらゆる軍事行動を中止すべきである!
2006年7月19日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
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