反占領・平和レポート NO.36 (2003/9/27)
Anti-Occupation Pro-Peace Report No.36

ついに起こりはじめた地殻変動、イスラエル軍に激震!
27名の空軍将兵が占領地での軍務拒否を宣言
−−エリート中のエリートたちの反逆−−
[翻訳]「新年のすばらしい贈り物」ギラ・スヴィルスキー

Eventually Cataclysm began! Severe Earthquake in the Israel Defense Forces!
27 Israeli Air Force pilots declare the refusal to serve in the Territories.
− the revolt of the elite of elite −
[TRANSLATION] " A Great Gift for the New Year " by Gila Svirsky

9月24日、イスラエル空軍将兵27人が連名で、占領地での攻撃命令には従わないことを明確に宣言した手紙を空軍司令官宛てに送り、それをマスメディアを通じて公表しました。(初め25人と伝えられましたが、すぐ後に2人増え27人になったようです。)
 この手紙には、占領に対する明確な批判があります。民間人を平気で殺傷する不法・不道徳な行為は、「イスラエル社会全体を堕落させつつある現に行なわれている占領の、直接の結果です。占領の永続化は、イスラエル国家の安全保障と道徳的堅固さを致命的に損ないつつあります。」と。

 昨年1月末に53名の予備役将兵が占領地での軍務拒否を宣言し、他の将兵にも呼びかける新聞広告を出して大きな衝撃を与えましたが、今回の空軍パイロットたちによる集団的軍務拒否宣言は、1年半前のときをはるかに上回る衝撃をイスラエル軍とイスラエル社会に与えています。
 日本のマスメディアでも無味乾燥な事実だけは報じられましたが、その衝撃の大きさについては全くと言っていいほど伝えられていません。事を極力小さく扱おうとするイスラエル軍当局の発表をベースに報道しているからです。

 今回の出来事が極めて衝撃的なことであるのは、軍事国家イスラエルと、そこにおいてイスラエル空軍が占めている位置からきています。イスラエル空軍は、軍事国家イスラエルの「エリート中のエリート」、「英雄中の英雄」なのです。
 昨年来の占領地での軍務拒否運動は陸軍の将兵が中心で、エリートである空軍からは攻撃ヘリのパイロットが2人加わっただけでした。この軍務拒否者(Refuseniks)の運動は、戦時体制を前面に押し出したシャロン政権の軍事的エスカレーションの中で、一定の停滞を余儀なくされてきました。しかし、その間に軍内部の動揺は静かに深く進行していたのです。今回明確な形で公的に意思表示したのは27名ですが、彼らによれば、「灰色の拒否者」(指揮官との私的な相談で任務からはずれる者)が広範に存在しているといいます。さらに、今回の拒否者たちの筆頭には、「神話的パイロット」とまで言われ、指導教官としても活躍していて「若いパイロットたちは彼の武勲の話や彼自身が書いた本で育てられている」といわれている准将がいるのです。
 空軍司令官は、質問に答えて、「これは、空軍に起きた地震などではない。」と述べることによって、激震が襲ったことを事実上認めています。

 イスラエル平和運動の先進的部隊である「公正な和平をめざす女性連合」のギラ・スヴィルスキーさんが、この衝撃と、それによって切り開かれるのではないかと思われる希望とを、全世界の人々に伝えようとしています。ギラさんから配信されたメールを取り急ぎ翻訳紹介します。

 なお、「予備役」は Reserves の訳ですが、イスラエルでの Reserves は単なる「予備」ではありません。イスラエルでは男子は18歳から3年間の兵役を終えた後、42歳まで毎年約1か月、軍務につく義務があります。そしてこの「予備役」兵の多くがリクルートの兵士たちを現場で指揮するのです。その意味で、イスラエルにおける「予備役」は、まさに現役なのです。今回も「予備役の空軍パイロット」と報じられていますが、実際、今回の軍務拒否パイロットたちの約半数は、週に1〜2回出撃していたと伝えられています。


2003年9月27日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局



(ギラ・スヴィルスキーさんからの配信メール)

新年のすばらしい贈り物

 友人の皆さん、

 今週の金曜日(9月26日)に始まるユダヤ暦の新年、ロシュ・ハシャーナの、想像しうるかぎり最良の贈り物がここにあります。25人のイスラエル空軍パイロットによる軍務拒否です。朝の新聞でこの出来事が何故イスラエル人に衝撃を与えるのかを理解するためには、次のことを知らなければなりません。空軍パイロットはイスラエルのヒーローであり、最良のもの、最も輝かしいもの、最も勇敢なものを凝縮して表わすものであるということです。

 以下は、イスラエルの最大発行部数をもつ「イディオト・アハロノト」紙が用意したインターネット記事を、私が取り急ぎ翻訳したものです。それは、「ハ・アレツ」紙(英語紙)の無味乾燥な記事よりも、ずっと深い洞察を与えてくれます。それを読んで、このことが持つであろう衝撃、占領への支持を掘り崩すような衝撃を、ぜひ味わってみて下さい。

 この便りは、ひとつの願いを込めたものです。今回のことが占領を速やかに終わらせる触媒となりますように。理性の夜明けの予兆となりますように。そして、究極的に平和の予兆となりますように。中東で、また世界のあらゆるところで。

Shalom / Salaam  エルサレムより
ギラ・スヴィルスキー


(以下、ヘブライ語「イディオト・アハロノト」紙の記事のギラさんによる英訳の翻訳)

予備役の空軍パイロット:我々は彼の地(占領地)での攻撃を拒否する

 予備役のパイロットおよび乗員が、本日、次のような手紙を空軍司令官ダン・ハルツに提出した。:「私たちは、イスラエル国家が彼の地(占領地)で行なってきた不法で不道徳な攻撃命令を遂行することに反対します。」

(訳注:「彼の地(占領地)」は、the territories の訳で、1967年からの占領地=西岸地区とガザ地区のことです。イスラエル社会では公的には「占領」を認めていませんので、当事者の用語としては「彼の地」ぐらいの訳語が適切だと思われます。しかし、それだけではわかりにくくなると思い「彼の地(占領地)」と訳しました。以下同じ。)

 25人のパイロット、元パイロット、乗員が、空軍司令官ダン・ハルツ将軍に本日(水曜日)、嘆願書を送った。その中で、彼らは、彼の地(占領地)での攻撃の任務には参加しないと宣言した。

 「イディオト・アハロノト」紙のウィークエンド・マガジンで公表される記事が報じているところによれば、署名者の中で最も目立った名前は予備役准将イフター・スペクターの名である。スペクターは、空軍の神話的パイロットである。彼は、飛行中隊や空軍基地を指揮し、イラクの原子炉爆撃に参加し、軍司令官の候補であった。若いパイロットたちは、スペクターの武勲の話や彼自身が書いた本で育てられている。彼は、飛行学校での予備役の教官として、今でも空軍で飛行している。

 この空軍司令官への手紙に署名した人々によれば、「灰色の拒否者」は既に空軍内に広範に広がっていて、常備軍のパイロットまで含んでいるという。暗殺に参加することを拒否するパイロットが多数存在するが、飛行中隊の指揮官との私的な相談で、静かに任務からはずれているのである。

 軍務拒否者(Refuseniks)のリストの弱点は、これまでのところ少なくとも、たった2人の攻撃ヘリパイロットしか拒否者の手紙に署名していないということにある。攻撃ヘリコプターのパイロットは、ほとんどすべての暗殺を遂行する人々なのである。

 チャンネル10の質問に答えて、空軍司令官は、次のように述べた。「これは、空軍に起きた地震などではない。分別をわきまえて、あるがままの大きさでとらえることが重要だ。私は、こんな手紙はこれまで聞いたこともない。我が軍は、現存する軍隊の中で最も思いやり深く高い士気をもつ軍である。これは政治的拒否である。まだ与えられてもいない命令の遂行をどうして前もって拒否することができるのか、私には理解できない。政治的拒否は、この国にとってのあらゆる危険の生みの親である。拒否は我々の言語の一部であってはならない。」と。


■手紙全文

「シオニズム、自己犠牲、イスラエル国家への貢献という価値観のもとに育てられた私たち空軍パイロットは、イスラエル国家を防衛し強化するために、任務の大小にかかわらずいかなる任務をも遂行するつもりで常に最前線で軍務についてきました。

「私たちは、退役パイロットも現役パイロットも、ともに等しく、毎年数週間イスラエル国家のために軍務についてきましたし、また現についています。そのような者として私たちは、イスラエル国家が彼の地(占領地)で行なってきた不法で不道徳な攻撃命令を遂行することに反対します。

「私たちは、イスラエル国家を愛しシオニズムの新進的大事業に貢献するように育てられてきました。そのような者として私たちは、民間人の密集地での空軍の攻撃に加わることを拒否します。私たちにとってイスラエル国防軍と空軍は、私たち自身の譲り渡すことのできない不可分の一部です。そのような者として私たちは、無辜の民間人を傷つけ続けることを拒否します。

「これらの行為は不法で不道徳です。そして、それは、イスラエル社会全体を堕落させつつある現に行われている占領の、直接の結果です。占領の永続化は、イスラエル国家の安全保障と道徳的堅固さを致命的に損ないつつあります。

「現役パイロットとして−−戦闘員として指揮官として、また次世代のパイロットを養成する教官として−−軍務につく私たちは、だからこそ宣言します。私たちは、イスラエル国家の防衛のあらゆる任務のために、引き続きイスラエル国防軍と空軍の軍務につくものであるということを。」

署名者:Brigadier General Yiftah Spector, Colonel Yigal Shohat, Colonel Ran, Lieutenant Colonel Yoel Piterberg, Lieutenant Colonel David Yisraeli, Lieutenant Colonel Adam Netzer, Lieutenant Colonel Avner Ra'anan, Lieutenant Colonel Gideon Shaham, Major Haggai Tamir, Major Amir Massad, Major Gideon Dror, Major David Marcus, Major Professor Motti Peri, Major Yotam, Major Zeev Reshef, Major Reuven, Captain Assaf, Captain Tomer, Captain Ron, Captain Yonatan, Captain Allon, Captain Amnon"