反占領・平和レポート NO.28 (2003/3/20)
Anti-Occupation Pro-Peace Report No.28

イスラエル軍によるISM活動家レイチェル・コリー殺害を糾弾する!

[翻訳]・ISM(国際連帯運動)のプレスリリース『ラファにて:レイチェル・コリー、イスラエル軍に殺害さる』
・『レイチェル・コリーの両親の声明』(「グッシュ・シャロム」配信メールより)
・『安らかに、親愛なるレイチェル』(「女性連合」ギラ・スヴィルスキー)


■あってはならないことが起こりました。3月16日、ガザ地区南部ラファ難民キャンプで、イスラエル軍による不法不当な家屋破壊を阻止する活動を行なっていたISM(国際連帯運動)のメンバー、レイチェル・コリーさん(米国籍)が、軍用ブルドーザーに砂と瓦礫をかけられ、そのまま轢き殺されたのです。彼女はまだ23歳でした。
 イスラエル軍は、「偶発的に女性を死なせてしまったようだ」と発表しましたが、白々しいにもほどがあります。いっしょに活動していた他の7人のISMメンバーを含む目撃者たちの証言から、故意に轢き殺したことは明白です。
 単なる殺人者集団が政権を握ったシャロン政権の攻撃的暴力的性格をこれほど鮮明にする出来事はありません。私たちはこの暴挙を心底からの怒りをもって糾弾します。

■しかしレイチェルの死は毎日、毎時間、毎分のように続くイスラエル軍によるパレスチナ人への虐殺と圧迫の中のほんのわずかな一こまなのです。レイチェルより、もっと若い子どもたちが虫けらのように殺されているのです。
 特にこの時期に、国際的な支援活動を行なっている者を意図的に殺害したことは、特別に重大な犯罪的意味をもちます。一方では、ブッシュがイラクの民衆や子どもたちを皆殺しにする侵略戦争をまさに開始する寸前であったことであり、他方では、シャロンがその盟友ブッシュの侵略に乗じてパレスチナ民衆に攻撃をしかけようとしている矢先の出来事であったからです。レイチェル・コリーさんの死は、イラクとパレスチナの民衆の行方を暗示しているかのようです。ブッシュなら「人間の楯」となってイラクにとどまっている人々をも攻撃しかねない。ますます懸念が強くなります。私たちは手遅れにならないうちに何としてもアメリカやイスラエルの侵略戦争を阻止しなければなりません。

■イスラエルとアメリカが、中東において前代未聞の大量殺戮と大規模な戦争犯罪、人道に対する罪を犯そうとしています。イスラエル軍によるISM活動家の殺害は、国際社会の監視の目を排除しようとする意図を感じさせるものです。できうる限り広範に事実を知らせなければなりません。
 殺害現場の状況をリアルに説明しているISMのプレスリリースを翻訳紹介します。
 イスラエルの平和運動も即座にイスラエル軍を糾弾し、事実を全世界に知らせようとしています。「グッシュ・シャロム」の配信メールの中から、レイチェル・コリーさんの両親の声明と、「女性連合」ギラ・スヴィルスキーさんのレターとを合わせて翻訳しました。

P.S.なお、さきの「反占領・平和レポート No.27」の続報ですが、「パレスチナ非常事態委員会」からの緊急アピールに応えて、「パレスチナの人々を保護する国際委員会(ICPPP:International Committee for the Protection of the Palestinian People)」が つくられ、そのオフィスがパリに設置されたことを、グッシュ・シャロムの配信メールが伝えています。


ISMプレスリリース
ラファ:レイチェル・コリー、イスラエル軍に殺害さる

 今日(3月16日)午後5時20分ごろ、米国ワシントン州オリンピア出身のレイチェル・コリーが、イスラエル軍用ブルドーザーによって故意に轢かれた後、その負傷のためにラファのア・ナジャール病院で死亡しました。

 レイチェルは、ISM活動家としてラファで数週間活動していました。彼女は、ラファのハイ・サラーム地区でパレスチナ人の家屋破壊と家財の破壊を妨げようとして殺されました。

 レイチェルが轢かれたときは、ISMとイスラエル軍との対峙が2時間続いていました。レイチェルと他の活動家たちは、軍とのこの対峙を通じて、自分たちが非武装の国際平和活動家であることをはっきりと示していました。

 イスラエル軍は、彼女がブルドーザーの前へ走り込んだとき偶発的に殺されたと主張することによって、彼女の名誉をけがそうとしています。この殺害の目撃者たちは、これは全くの偽りであると強く主張しています。レイチェルは、ブルドーザーが彼女の方へ前進してきたとき、ブルドーザーの通り道に座っていました。ブルドーザーが止まることも方向を変えることも拒否したとき、彼女は、ブルドーザーの前に集められた土や瓦礫の山の上によじ登ろうとしました。彼女は蛍光性のジャケットを着ていて、前進し続ける運転者を直視していました。ブルドーザーは前進し続け、その結果、彼女は土と瓦礫の山の下に轢かれました。彼女の姿が見えなくなって後、運転者は、ブルドーザーが完全に彼女の上にくるまで前進し続けました。運転者は、ブルドーザーのブレードをもちあげませんでした。それで彼女はその下敷きになって押しつぶされました。そのあと運転者がブルドーザーをバックさせ、そして7人のいっしょに活動していた他のISM活動家が、大急ぎで彼女の体を掘り出しました。救急車が大急ぎでア・ナジャール病院へ彼女を運びましたが、彼女はそこで亡くなりました。

 レイチェルは、2000年9月以降にイスラエル軍兵士と植民者によって殺された1900人のパレスチナ人の中に加わります。


(現場で撮影された写真と状況)
 レイチェルは、不法な家屋破壊で脅されていたパレスチナ人の家に滞在していました。そして、今日レイチェルは、他の非暴力国際活動家たちとともに、不法な家屋破壊が行われる予定の家の前に立っていました。目撃者たちによれば、レイチェルは、パレスチナ人の家を取り壊す過程でイスラエル軍用ブルドーザーに二度轢かれました。目撃者たちは、ブルドーザーの運転者にはレイチェルがはっきりと見えていたし、レイチェルは攻撃を引き起こすようなことは何もしていなかった、と述べています。

 下の写真は、レイチェルが十分目立ち、メガホンをもって、ブルドーザーの運転者に何の脅威も与えていないということを、はっきりと示しています。


はっきりと目立っていたレイチェル・コリーは、メガホンをもって、パレスチナ人の家を取り壊そうとしているイスラエルのブルドーザー運転者と対峙している。占領地ガザのラファにて、2003年3月16日。(ISM撮影資料)

他の平和活動家たちが、イスラエルのブルドーザー運転者によって負傷させられたレイチェルを助け出す。占領地ガザのラファにて、2003年3月16日。(ISM撮影資料)


(「グッシュ・シャロム」2003.3.17配信のインタナショナル・リリースより)
レイチェル・コリーの両親の声明

 2003年3月16日

 私たちは、今、深い悲しみの中にあって、ガザ地区でのレイチェルの死の詳細な事情を知ろうとしているところです。
 私たちは、私たちのすべての子どもを、グローバルなコミュニティと家族の美しさを正しく認識し高く評価するように、育ててきました。そして、レイチェルが自分の信念に生きることができたということを、誇りに思っています。レイチェルは、仲間の人への−−その人たちがどこに住んでいようと−−愛と義務感に満ちあふれていました。そして、彼女は、自分で自分自身を守ることのできない人々を守ろうとして、命を捧げました。
 レイチェルは、ガザ地区から私たちに手紙を書きました。私たちは、この際、彼女自身の言葉で綴られた彼女の体験を、メディアに公表したいと思います。

ありがとうございました。
レイチェル・コリーの両親、クレイグ&シンディ・コリー



安らかに、親愛なるレイチェル

ギラ・スヴィルスキー
エルサレムより

 親友の皆さん、
 メディアは、イラクでの「ボディー・カウント(戦死者数)」に熱心ですが、ボディー・カウントはパレスチナで既に始まっています。世界の注意の目が米国のイラクへの侵略にまつわる事柄に釘付けになっている下で、イスラエル軍は、パレスチナ人に残虐な仕打ちを行なっています。昨日、軍は、ガザ地区で11人のパレスチナ人−−2人のティーンエイジャーと2歳の少女を含む−−を殺し、西岸地区でも2人殺しました。しかし、すべての目がブッシュとバグダッドに向いていて、誰がこれを見ているでしょうか?

 イスラエルとパレスチナの平和運動と人権活動家は、これまで同様これを直視し、運動を組織してきました。ここ2〜3週間に、26のイスラエルとパレスチナの諸組織が、「パレスチナ・イスラエル非常事態委員会」に参加し、そのようなことが起こるのを、またさらに悪化するのを妨げようと努力しています。戦争が起これば、軍はいっそう長期にわたる外出禁止令と封鎖を課すであろうということに、疑問の余地はありません。それは、既に栄養失調になっているパレスチナ住民の間に、いっそう大きな飢餓を引き起こすでしょう。また、軍が占領地の電話線と電気を切断しようとすることも予想されます。そして、大規模な家屋破壊や、住民の追放や、植民者民兵のパレスチナ人攻撃を見て見ないふりをすることなどの、まさに現実的な危険が存在します。当地の活動家たちは、可能な限りそのようなことを妨げるために活動し続けます。また一般大衆に事態を知らせ続けます。

 米国出身で国際連帯運動(ISM)に加わっていた平和運動活動家、23歳のレイチェル・コリーの、ガザ地区でのこの日曜日のゾッとするほど恐ろしい死は、私を痛いほどとらえて離しません。レイチェルは、ブルドーザーの前に立って、ドライバーに対して破壊しようとしている家に思いやりの気持ちをもつように、目で訴えかけた勇敢な女性です。しかし、ドライバーは、じかに彼女の上へブルドーザーを乗りあげました。それからバックして仕事を終わらせました。私は、床に入ってもずっと、頭の中にこのイメージが浮かんで眠れませんでした。私は、レイチェルを知りませんでした。でも、彼女はとても深い思いやりのある人であったのだと、想像することができます。彼女は、まさに彼女を包み込もうとしていた暗黒の力を心に思い描くことができなかった、それほど彼女自身は思いやり深い人であったのだと。私は、近年あった非暴力による抵抗の同様の行動を思い起こして、身震いする思いです。というのも、それらは、ただ負傷するだけか、すんでのところで命を落とすような目にあうかしただけだったからです。そして、この殺人は、現に今、命令を出している人々とそれを遂行している人々の、なんと冷酷な心を示していることでしょうか。

 「女性連合」は、次のような広告を今日の「ハ・アレツ」紙に掲載しました。

[私たちは、コリーの家族の方々と国際連帯運動(ISM)の皆さんに、心からの哀悼の意を捧げます。
レイチェルは、パレスチナ人家族の家の破壊を妨げるために、勇敢で非暴力の努力を行なっているさなかに殺害されました。
占領は、人間の命を−−パレスチナ人の命を、またイスラエル人の命を−−安っぽいものにしてきました。
The Coalition of Women for Peace : Machsom Watch, Movement of Democratic Women of Israel (TANDI), New Profile, Noga Feminist Journal, The Fifth Mother, WILPF-Israel section, and Women in Black.]

 どうかレイチェルが安らかに眠りますように。そして、ご家族の方々が親愛なる子の思いやり深く何にもかえがたい大切な魂に慰めを見出されますように。