反占領・平和レポート NO.24 (2002/08/23)
Anti-Occupation Pro-Peace Report No.24

「グッシュ・シャロム」が‘魔女狩り’的迫害を受けている!
    −−続報(2)−−
 毅然とした闘いによる反撃はシャロンの目論みを挫折させつつある / しかし迫害は続いている

翻訳紹介:
        8/7「グッシュ・シャロム」配信情報
                  (8/6「ハ・アレツ」紙社説と、それへの「グッシュ・シャロム」の反論)


Gush Shalom is being persecuted like witch hunting!
    -- Followed Information (2) --
Israeli peace camp is fighting back with their heads high, which is breaking down Sharon's intention. / But the persecution continues.


TRANSLATION:
        The information sent by Gush Shalom on August 7



 8/14配信情報で、グッシュ・シャロムは、通常の情報配信が一時できなくなっていたのを再開することを宣言し、緊急事態を脱したことを告げました。今回は、さまざまな情報も総合して、グッシュ・シャロムに対する迫害攻撃の背景やイスラエル国内の政治情勢なども含めて報告します。

■シャロン政権の苦境が新たなスケープゴートを必要とした
 シャロン政権は、今年2月ごろ最初の苦境に陥りました。政権発足から1年を経て、治安も経済も全く公約が果たされていないという世論の批判が噴出しました。反占領闘争も大きく前進しました。シャロンは、その最初の危機を「テロとの戦争」=対パレスチナ「戦争」をエスカレートさせることで、‘戦時体制’‘国家存亡の危機’を演出して乗り切りました。
 しかしながら、治安の面でもほんの一時の平静を得たにすぎず、経済の面でもいっそう苦境に陥り、軍事費の増大が財政を圧迫しはじめています。

 5月ごろからこの夏にかけて、一方では、パレスチナ人民の側からの和平へ向けた真剣な努力が続けられ、他方では、イスラエル国内の反戦平和運動が新たなとりくみを強化し、和平を求めるイスラエル世論も再び強まりはじめました。
 その流れを阻止し‘戦時体制’を持続させようとするシャロンと軍の画策が強められました。ハマス幹部1人を殺害するために、ガザの住民居住地域にF16戦闘機で1トン爆弾を投下して、9人の子どもを含む15人の民間人を巻き添えにして殺害し、160人以上の負傷者を出したことは、その最たるものでした。
 ところが、このガザの1トン爆弾は、国際的にも国内的にもごうごうたる非難の嵐をもたらしました。それは、「テロとの闘い」という論理を破綻させかねない状況をもたらすほど激しいものでした。グッシュ・シャロムによれば、それは「近いうちに、首相、国防相、参謀総長、実行パイロットの全連鎖を、もろともハーグに送ることになるかもしれない」(8/17付ウリ・アヴネリ論説)と思われるほどのものでした。
 このことをきっかけに、情勢は大きく転換しはじめたのではないかと思われます。シャロン政権は、2度目の政権の危機に陥りはじめています。そのような状況の中で、今回のグッシュ・シャロムへの攻撃・迫害が行われているのです。国内に「裏切り者」「国家反逆者」がいると騒ぎ立てているのです。

 しかし、シャロンの目論みは功を奏してはいないようです。グッシュ・シャロムとその支援者、イスラエル平和運動の即刻の反撃は、反占領・平和運動と和平を求める声をいっそう活性化させています。

■もはや半年ももたないとみなされているシャロン政権
 今、イスラエル国内では、シャロン政権は来年10月までの任期を全うできず、年明けの1月か2月に総選挙が行われるということが、公然と語られるようになっています。
 まず、一つの節目は、今年11月に行われる労働党の党首選です。現党首のベンエリエザー国防相とラモン元保険相との間で争われると見られていましたが、7月末から8月初めにかけて、第3の有力候補が急浮上して大きな話題となっています。イスラエル第3の都市ハイファの現市長アムラン・ミツナ氏が、「即時無条件で和平交渉を」という公約を掲げて党首選候補および首相候補として名のりをあげました。そして、複数の世論調査で、圧倒的に他の2候補を引き離した高い支持率を獲得しました。その最新のものは8/16の「マ・アリヴ」紙のもので、ミツナ氏57%、ラモン氏22%、ベンエリエザー氏10%(労働党員内での支持率)です。
 これまで繰り返し、労働党のシャロン政権からの離脱が問題となってきましたが、11月の党首選は、はっきりと連立離脱=倒閣か否かの党首選となることが避けられなくなりました。そして、和平派ミツナ氏が圧倒的な支持を得つつあるのです。

■今回のグッシュ・シャロム攻撃はイスラエル軍による戦争犯罪を広範な人々に認識させることに役立った!
 シャロンとイスラエル軍は、いわば墓穴を掘った形になりはじめています。イスラエル軍の士官たち兵士たちが動揺しているのです。グッシュ・シャロムの8/18配信情報によれば、空軍高官が今回の件で非常にフラストがたまり懸念を深めていて、パイロットたちが心理不安に陥っているといいます。パイロットや司令官は、戦争犯罪で裁かれることを恐れて、自分たちは命令を遂行しただけだと言いはじめているのです。

 8/17付ウリ・アヴネリ論説では、「戦争犯罪の話題は、今や全国民的議題となってしっかりと定着した。」と述べられています。そして、テレビ番組でも戦争犯罪のことが取り上げられ、これまで話題にならなかったようなことも話題になるようになったといいます。その中でも「人間の楯」の問題は、国内外で大きく問題にされはじめました。
 特に8/14にナブルス自治区チュバス村で起こった事件が大問題になっています。パレスチナ人青年ニダル・アブ・ムセイン19歳が、ハマス活動家ナセル・ジェラールの家のドアをたたいて出てくるように言う役割をイスラエル軍に強制され、イスラエル軍がやってくるのを待ち構えていたに違いないナセルが発砲し、ニダルは死亡。イスラエル軍はブルドーザーで家をつぶしてナセルを生き埋めにして殺害した、というものです。
 テレビ番組で、予備役准将が、このようなやり方は「何千回となく」行われてきたと言明して、いっそう問題が大きくなりました。地域住民を「人間の楯」として使うことは明らかな戦争犯罪だからです。

■迫害攻撃と反撃のせめぎ合いは続いている
 シャロンをはじめとして右翼閣僚や軍高官は、グッシュ・シャロムの活動家を国家反逆罪で裁判にかけることも含めて、法的手続をとることを司法長官に要求しています。しかし、司法長官は、口先でグッシュ・シャロムを激しく非難しても、法的手続をとることができないでいます。グッシュ・シャロムの8/18配信情報では、「今までのところ、司法長官は法的根拠を見出せていないようです。...しかし、圧力が強まれば、こじつけの解釈をしたり、新法をつくったりするかもしれません」とコメントされています。

 右翼は、法的措置をとらない司法長官に苛立ちをぶつけはじめています。空軍長官は、グッシュ・シャロムを国家反逆罪で起訴するように司法長官に要求し、グッシュ・シャロムは、空軍長官をガザ1トン爆弾の件で調査するよう要求して反撃しています。司法長官への右と左とからの圧力がせめぎ合っているようです。ここでも「女性連合」をはじめとするイスラエル平和運動・人権運動の諸組織が活躍して、グッシュ・シャロムとともに闘っています。

 8/18配信情報では、人権団体への攻撃も強化されていることが指摘されています。グッシュ・シャロムと並んで、イスラエル内アラブ人市民のために活動している人権市民権組織「アダラー」が攻撃されはじめました。シャロン政権は、グッシュとアダラーをやり玉に挙げて攻撃することで、イスラエルの平和運動と人権運動の全体を脅しているのです。

■苦し紛れのシャロン政権の危険性
 今回翻訳紹介しました「グッシュ・シャロムによるハ・アレツ紙社説への反論メール」の最後に、新たなパレスチナ人民への攻撃作戦計画のことが指摘されています。グッシュ・シャロムは、それを暴露し広めることで、シャロン政権の更なる暴挙を阻止する闘いを展開しています。
 苦境に陥っているシャロン政権は、危険極まりない動きを見せています。一部新聞でも報じられましたが、対イラク攻撃実現へ向けたブッシュ政権への働きかけを強めているのです。そして、イラクからのミサイル攻撃には報復すると繰り返しています。つい最近、テルアビブの北方に迎撃ミサイル、アローの配備を開始したと報じられました。既に南部の空軍基地には配備済みだといいます。
 国内向けには、警官、消防士、病院職員など1万5千人を対象に、天然痘の予防接種を実施すると発表し、イラクによる化学兵器攻撃があるかのように危機感を煽っています。また、ガスマスクの配布や軍による使用方法のデモンストレーションが行われています。

 シャロン政権は、今や、何でもいいから国家存亡の危機を演出しないではおれない状況に立ち至っているのではないでしょうか。

2002年8月23日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局



【翻訳】
グッシュ・シャロムによる8月7日の配信


 個々の士官に警告の手紙を送るというグッシュ・シャロムの「極悪行為」が、ラジオのトークショーで、他を圧倒する問題であり続けています。政府閣僚が魔女狩りを始めてから、私たちは、数多くの私たちに向けられたののしりの言葉を受け取りました。しかし、...時々、すばらしい驚きがあります。たとえば、毎夜の「ジョジョ・アブトブル」の聴取者電話参加番組で、突然何人もの左翼が現れて、そのすべてが女性で、グッシュ・シャロムにはそのように行動する民主的権利があると擁護してくれたのです。

 そうこうするうちに、私たちのeメールボックスは、多くの人々が当局への抗議の手紙を送って下さって、そのコピーであふれかえっています。イスラエル国内のものと、そしてまた多くの外国からのものと。とりわけ「ICAHD(家屋取り壊しに反対するイスラエル委員会)」や「女性連合」や「イェシュ・グヴル」は特筆されるべきです。

 私たちは、特にイスラエル人に−−どこに住んでいようとも−−強調したいと思います。あなたがたのファックスによる抗議の手紙−−特にヘブライ語での!−−が、いかに重要な意味をもちうるかということを。

 皆さんからの要望で、昨日示した抗議先アドレスに加えて、ここに追加の抗議先を示します。

司法長官エリヤキム・ルビンシュタイン事務所:ファックス 02-6708727 // 02-6288065 // 02-6466731 (eメールは見つけることができていません)
司法相メイール・シェトレート:<sar@justice.gov.il
ファックス 972-2-6285-438

 次に、今日(8/6)の「ハ・アレツ」紙社説と、それに対して私たちが送った反論を掲載します。リベラル紙が、平和活動家に対する政府の煽動を一言も批判しないのは、失望落胆すべきことです。−−何人かの閣僚は私たちをののしり、司法相シェトレートはラジオで「裏切りの反逆者(traitors)」という言葉を使ったのですが。


【「ハ・アレツ」紙8/6社説】
政治的純粋さの盲目

 左翼平和グループ、グッシュ・シャロムの活動家たちは、15人のイスラエル軍士官に手紙を送った。それは、テリトリーで彼らの命令のもとで行われた行動について、士官たちが戦争犯罪を犯したという疑いで、グッシュ・シャロムがハーグ国際刑事裁判所に提出するための証拠を集めていると警告していた。

 今週、首相は、司法長官にグッシュ・シャロムの指導者たちを調査するように求めた。司法長官エリヤキム・ルビンシュタインは次のように述べた。国家検察局は、グッシュ・シャロムの活動家に対して法的手続きがとられうるか否かについて、まだ考えを固めていない。しかし、法的疑問とは無関係に、グッシュ・シャロムの行為を無分別でまちがったものとみなさないことは困難である。そして、それによるダメージは、きっとその活動家たちの純粋な意図の影を薄くするほどのものであろう、と。

 グッシュ・シャロムは、占領に反対する運動をさまざまなやり方で推進する政治運動である。その中には、テリトリーでのIDFの行動を監視することや、その監視の諸結果をさまざまなメディア・チャンネルを通じて公表することだけでなく、大衆集会やデモンストレーションを組織することも含まれる。
 これは、すべて、いかなる民主主義社会においても認められているものである。選挙で選ばれた政府の指示に従って主権国家の法の下で作戦行動する軍隊の士官に対して、有罪に導きそうな材料を集めることは、ある一つの条件のもとであれば、価値ある市民的行為とみなされうる。つまり、集められた情報が、その国の法的諸機関に公表され提示されるという条件である。

 グッシュ・シャロムのスポークスマンは、ハ・アレツ紙に次のように語った。この運動は、「イスラエルの法廷への我々の訴えが無駄になる場合のみ、」集めた情報をハーグへ送ることを考えている、と。しかし、この留保があっても、IDFの士官に警告するという決定は問題の多いものである。この活動家たちが本来的に想定していること、及び手紙の中での士官たちに対する暗黙の脅しは、次のことを意味する。すなわち、民主主義の諸原則を実現し法の支配を護るためにある国家諸機構−−裁判所、議会、報道機関を含む−−が、グッシュ・シャロムの眼からは、法的諸機構として不十分だとみなされているということである。グッシュ・シャロムは、次の趣旨の声明を行なっている。つまり、もし満足のいくものでない場合には(おそらく確信をもってそうなのだろう)、真の正義であるとグッシュ・シャロムが信じていることを達成するために、国際フォーラムを追求するであろう、と。

 この政治的純粋さでもって、グッシュ・シャロムは、イスラエルの公的生活に多大なダメージをもたらし、そして、自分自身の大義をも害している。あらゆる人々の中でも左翼平和活動家は、もっと報道を強化することが必要であり、世論を納得させる方法や、軍の問題の多い出来事を調査するように検察官と法的システムに促す方法を見出すことが必要である。国際刑事法廷を−−その構成のあらゆる問題点にもかかわらず−−国家の法的システムより上位に置くことは、イスラエルの諸機関と世論を信頼しない愚鈍な決定である。
 証拠をハーグ国際法廷へ送るという決定は、占領終結と和平へ向けた継続した運動をあきらめていない人々への軽蔑を示すものである。−−言いかえれば、左翼における深刻な失望と危機を生み出した厳しい紛争の困難な諸条件のもとでも、なお活動している人々、しかし公開で合法的な政治討論においてそうすることに関心をもっている人々、への軽蔑である。
 国際法廷へ証拠を手渡すことは、テリトリーで出され実行される露骨に違法な命令に反対する方向へイスラエルの世論を転換させることを促さないだろう。反対に、それは、正反対の結果をもたらすだろう。


[もしこの論説に意見を述べたければ、編集局に手紙を書くことができます。:
(letters@haaretz.co.il)
または、編集者に宛てることもできます。:
(editor@haaretz.co.il)
次に掲載するのは、私たちの反論です。]



グッシュ・シャロムによるハ・アレツ紙社説への反論メール

 拝啓
 ハ・アレツ紙の8月6日(火)社説は、グッシュ・シャロムへの攻撃に捧げられていました。それは、事実上、シャロン首相が私たちの運動に対してしかけたキャンペーンに加わるものです。

 貴社社説が事実関係で真実でない議論を採用していることは、かなり失望落胆するものです。社説の中で、貴社は次のような立場をとっています、すなわち「選挙で選ばれた政府の指示に従って主権国家の法の下で作戦行動する軍隊の士官に対して、有罪に導きそうな材料を集めることは、ある一つの条件のもとであれば、価値ある市民的行為とみなされうる。つまり、集められた情報が、その国の法的諸機関に公表され提示されるという条件である。」

 この社説の筆者は、グッシュ・シャロムがまぎれもなくそうしたということを認識していないようです。複数の軍当局に送られた手紙の一つ一つが、同時に、ハ・アレツ紙をも含むすべての新聞社にも送られました。そして、実際に事実として、私たちは当時、あなたがたのレポーターに関心をもってもらおうとかなりの努力をしました。−−でも無駄でした。

 また、これらの手紙の一つ一つのコピーが、軍の検察、軍参謀長、国防相に送られました。したがって、権能ある当局は、もしやろうと思えば法的措置をとることができる完全な可能性をもっていたのです。
 私たちは、当局がそうしなかったことに驚きはしませんでした。というのも、私たちが複数の士官に書き送った事柄の大部分は、イスラエル国家とその軍隊の、公式の政策の不可分の一部だからです。家屋取り壊し、集団懲罰、テロ容疑者家族の、家族であるというだけの理由での逮捕、このような諸行為は、公式の政策の一部として、ありふれたもの認められたものとなっています。−−にもかかわらず、これらは、重大な国際法違反であり、特に第4ジュネーヴ条約の重大な違反であります。

 そのような行為と個々の士官とを結びつける証拠を見出すことに、何の困難もありませんでした。たいていの場合、証拠は、報道機関のインタヴューで提供されていました。その中で士官たちは個々の行為を認めて−−しばしば自慢して−−いたからです。そのような場合に、私たちは、そのような士官に手紙を書き、彼の行為または彼が部下に命じた行為が国際法違反であると警告することが、義務であると感じたのです。

 現存するイスラエルの法的システムが、軍事的なものであれ市民的なものであれ、この種の違反行為に対処することができると信じることは困難です。−−もっとも、それが誤りであると証明されれば、私たちはこの上なく嬉しいのですが。
 おそらく、ありそうなこととして、アパルトヘイト廃止後の南アフリカでの「真実委員会(Truth Commission)」と同様の制度が、いずれイスラエルに創出されるでしょう。そしてそれが、この重荷を担うことになるでしょう。もしそうならなければ、この問題は、遅かれ早かれ、何らかの形での国際的な法的フォーラムに持ち出されることになるでしょう。

 貴社が、貴社の特派員アミル・オレンによる昨日(8月5日)の記事に言及するのが適切だとは思わなかったのは、驚くべきことです。その記事の中で、彼は、イスラエル軍参謀本部によって準備されている計画のことを述べました。「‘Defensive Shield’や‘Determined Path’よりももっと激しい、新たな作戦。その遂行は、『数千数万のパレスチ ナ人の死をもたらすかもしれない』」と(!)。
 貴社特派員は詳細を述べていませんのでそれはわかりませんが、この恐ろしいニュース記事は、大量の戦争犯罪が準備されているという大変な疑惑を生じさせるものです。もしこれらの戦争犯罪が行われるようなことにでもなれば、ハーグ国際法廷は、「グッシュ・シャロム」を待つことなしに独自の行動を開始することになるでしょう。

グッシュ・シャロム報道官、アダム・ケラー
テルアビブ