(4.29 署名運動交流集会 問題提起)

有事法制成立後、「平時」からすぐに始まる「戦争国家体制」作りの危険性

2002年4月29日
吉田正弘(平和通信)



[1]はじめに−−問題提起

(1)有事法制「発動後」の軍事的危険性に付け加えて「発動前」、法案成立後の危険性に注目する。
・署名の呼びかけや4/13の事務局主催の学習会で、有事法制には3つの危険性があると訴えてきた。
@朝鮮半島有事、台湾海峡有事など東アジアでアメリカが行う侵略戦争への加担・参戦。
A明文改憲にに向けた突破口。「下位法」による「上位法」の否定。
B国内治安弾圧。言論や運動への弾圧・抑圧。反動的国家統制。
・もちろん「発動時」には@〜Bがワンセットで問題になる。しかし「発動前」における具体化や準備の危険は実際の政治過程によって異なる。
・われわれはこれまで「もしこの法律が発動されれば」という前提条件で考えていたので、「ピンとこない。」「どうしても違和感が残る。」「自分自身実感がわかない。だから他人に説明できない。」「切迫感に欠ける。どうしても迫力がない。」「どう説明すればいいのか困る。」等々が実感であった。
・この「切迫感がない現実」と「恐ろしい法律」とのギャップを埋め合わせるために、これまで色々考えてきた。「もし発動された時どのようなものになるか」を想定して、1993〜94年の「第二次朝鮮戦争の危機」を持ち出したり、朝鮮戦争時、ベトナム戦争時の沖縄を想定することを考えてみた。またブッシュの侵略戦争との関係を持ちだした。もちろんこれら全部が必要なことである。しかし不十分。

(2)現実の政治過程の進展の中に置いて有事法制を位置付け直す。法律成立後から「平時」下の整備・準備を経て「実際の発動」に至る政治過程全体を通じた危険性を明らかにしなければならない。
・「発動後」を焦点に批判を組み立てると、どうしても軍事的危険性への批判が中心になる。現に朝鮮半島有事や台湾海峡有事への対処を問題にするのだから。
・しかし法律成立後から、「有事」に備えた「平時」からの準備と具体化に目を移すと、ブッシュの戦争への参戦体制作りの危険についても、国内の戦争国家体制作りについても、平素からの非常に危険な側面が前面に立ち現れてくる。
・小泉首相の説明は「備えあれば憂いなし」。「将来の」、しかも「日本が攻撃されたとき」に備えたものと言う。まだまだ一般の市民は「日本が攻撃されたらそれに備えた法律は必要だ」「戦争なのだから仕方がない。我慢しなければ。」等々。−−全てが遠い将来への一般的な法整備と思い込まされている。この一般的抽象的なイデオロギー操作を鋭く批判するには、具体的な政治過程における危険性を対置しなければならない。

(3)この法案は絶対成立させてはならない。阻止に全力を。
・この法律が成立した直後から、「有事」に向けた軍国主義化、反動化の具体化が始まる、息苦しい国家体制作りがすぐに始まると知れば、一般市民も関心を持ち危機感を示すはず。
・しかも2年間の間次々と戦争法案が提出される。(200件とも言われる)。すべてが「武力攻撃事態法」に基づき、軍への協力を前提にし、市民の権利を制限・剥奪する諸法律である。
・もちろん法案成立後から発動するまでの間は、有事法制の具体化や整備をめぐって激しい闘いが繰り広げられるだろう。一直線には進まないだろう。
・しかし法案成立後の闘いは、成立前の闘い以上に苦しいもの困難なもの。一旦動き始めたら、止めることはますます難しくなる。成立前に阻止することが一番重要。法案成立阻止に向けて全力で頑張ろう。



[2]有事法制をめぐる政局と複雑な国内情勢

(1)有事法制3法案−−「武力攻撃事態法」「自衛隊法改悪」「安全保障会議法改悪」−−を最重要課題と位置付け、最優先で成立させるつもり。
・後半国会の4大法案−−有事法制関連3法案、個人情報保護法案・人権擁護法案、健康保険法改悪法案、郵政関連2法案−−のどれもが重大なもの。
・有事法制は26日衆院本会議で審議入り。5月連休明けから本格審議開始。政府与党は後半国会でこれを最優先させるつもり。
・政府与党内部で新たな権力抗争。有事法制もその駆け引き材料に。
・また有事法制は与野党でもねじれている。社民党、共産党だけが全面反対。民主党の原則支持・容認が最大のガン。自由党も必要との立場。民主党、自由党が土壇場で修正作業に入り賛成もありうる。
・国民の反対がどこまで高まるかが眼目。様々な反戦市民団体、民主主義団体、言論団体、弁護士団体などが、反対のアピールや声明、大衆行動を進めている。

(2)小泉政権の軍国主義的・反動的内外政策の総仕上げ。
・有事法制は、昨秋の「テロ対策特措法」、「つくる会」教科書採択策動、靖国神社公式参拝の昨夏の強行に続く、4/21の「電撃参拝」等々、のタカ派路線に続くもの。
・しかし戦後国家体制のあり方を根本的に変える「総仕上げ」的な軍国主義的・反動的法案。

(3)しかし小泉政権の支持率は昨秋の「テロ対策特措法」の時から様変わり。市民の声を結集することができれば廃案、継続審議に持ち込むことは可能。
・小泉政権が4月26日で1周年を迎えた。支持率は80%台から40%台へ半減。支持しないは20%台から40%台へ倍加。
・辻元議員の秘書給与疑惑でも反転攻勢に出れていない。山崎幹事長の醜聞で政治不信はピークに。
・4/28のトリプル選挙で小泉自民が1勝2敗。政権運営が苦しくなる。



[3]有事法制の発動時の危険性

(1)有事法制の基本性格−−国家総動員法
・国家機関、公的機関(半国家機関)だけでなく、地方自治体、民間企業、はては市民の一人一人まで戦争の遂行に動員し協力させる法律。戦争できる国家体制作りをめざす法律。
・今回の有事法制は「時代錯誤」との批判がある。もちろんこれは正しいが、政府与党はそれを知った上で強行しようとしている。なぜか?想定を対ソ全面戦争型の本土防衛戦(「冷戦時代のカンヅメ」)にすれば、国家総動員を狙い目にすることができるから。日米の軍事的自由行動も、市民の権利剥奪も、国民資源の徴発も、包括的・網羅的にできるから。
・国会審議で小泉首相が「憲法の枠内」を強調したが全くの欺瞞。憲法そのものが非常事態法を否定している。政府は「有事事態の認定」「予測されるとは何か」という根本問題すらまともに答えず一般論でごまかし、曖昧で何にでも適用できる法を成立させるつもりである。

(2)「なぜ今なのか」「なぜ急ぐのか」。
・ブッシュ政権が年内にも始めかねない対イラク戦争準備に不可欠。対イラク戦争準備に東アジアでの対北朝鮮軍事牽制への対応を急ぐ必要がある。「対米公約」。
・小泉政権の支持率が急落している。自民党を含む保守反動勢力は小泉のうちにしか通せないと考えている。今を逃せば「明文改憲」への突破口も、国内治安弾圧体制の強化も、保守反動のシナリオ全部が水泡に帰す。

(3)「もしも発動されれば」−−「戦争国家体制」とは如何なるものか。
@ 発動要件そのものが曖昧で恣意的で主観的。首相の政治的判断で好き勝手に。

A 首相にあらゆる非常権限が集中される。首相が「有事の認定」「自衛隊の出動」「対処措置の強行」「自治体が拒否するときに代執行」など何から何までできるようにする。非常事態法。憲法まで一時停止する。

B 米軍と自衛隊の共同軍事行動=集団自衛権行使が自由自在になる。在日米軍基地も自衛隊基地もフル稼働。

C 戦争に「国民は協力する義務」があると、市民一人一人に戦争協力を押しつけ。(「国民は・・・必要な協力をするよう努めなければならない」)

D 戦争のために国民の基本的人権の侵害・剥奪は正当化される。

E 私権制限。土地や物資の強制収容が可能に。反すると処罰。

F 戦争のために協力して働くことの強制(徴用)。−−憲法の強制労働禁止違反。しかし事実上逃れることはできない。

G メディアと言論の統制、言論と思想への弾圧。戦争反対の声を上げれば犯罪者に。



[4]「平時」から「有事」に備えた「戦争国家体制」作りが進められる危険−−これこそ法律成立後すぐに始まる危険性

(1)有事法制が法制化される前とされた後で、日本の軍国主義、日米軍事同盟は、何がどう変わるのか。日本の政治のあり方、国家のあり方がどう変わるのか。有事法制の発動の前と後ではない。法制化の前と後であることに注意!
・有事法制が通れば、その有事法制の発動以前から、日米軍事協力も、日米共同軍事行動も、在日米軍基地も、国内政治反動も、基本的人権の制限・剥奪も、メディア規制も、既成事実と「本番」に向けた準備と具体化が、次の焦点になる。
・一番危険なのは、時間をかけて「戦争国家体制」作りが進行することによって、国家のあり方、憲法の枠組み全体が変質させられる危険があること。
・これまでの安保関連法は、日米ガイドラインにしても、周辺事態法にしても、自衛隊と日米の軍事協力のレベルでの危険が問題になった。地理的にも沖縄や横須賀など在日米軍基地が存在し集中するところで問題になった。しかし有事法制は国民全体を、市民一人一人を網羅する包括的な危険性を持つ。

(2)自民党や保守反動勢力が国内政局を動かす便利な手段。
@ 「有事」をちらつかせれば、軍国主義的で反動的な自民党政権は絶えず国内政治と政局を牛耳ることができる。
・有事法制は既に「政局」になっている。小泉首相と森派、自民党内若手保守反動派などの政治的主導権確保の手段、小泉政権の保身と延命の手段になっている。
・小泉政権だけではない。小泉政権が倒れてからも、「戦時」「有事」を持ち出せば、その間、国民の総反発を受けない限り、軍国主義的で反動的な自民党、あるいは保守反動政党とその政権が続く限り、国内政治と政局を動かすことができる。

A 有事法制関連法を全て通すまでの2年間、国会は戦争法についての議論で一杯になる。
・今後2年間(だがその期間は、新たな反動法が出てくることで無制限に延長されるはずだ)、様々な戦争準備法、今分かっているだけでも、電波規制や空域・海域統制、民間防衛、有事版の対米物品役務提供協定(ACSA)関連法などがある。軍事優先、権利制限、人権抑圧、言論統制などが国会の中心議題になり、戦争法と反動法の審議が目白押しになるだろう。

(3)日本軍国主義と日米軍事同盟の更なる強化。
@ 有事法制が通れば、ブッシュの次の戦争に向けての準備も、日米軍事同盟のエスカレーションも「合法的」(反憲法的)に進められ、歯止めが利かなく危険がある。集団自衛権行使のなし崩し的な先行実施が積み重ねられる。
・ブッシュの新たな戦争拡大準備にもっと危険な形で、もっと深く組み込まれるだろう。「有事法制発動に備えて」が大義名分になる。例えば、ブルーリッジ寄港は、地方自治体の民間港に正々堂々と「有事法制」準備のために寄港するだろう。
・「有事法制発動に備えて」を大義名分に、堰を切ったようにあらゆる日米軍事協力整備を加速するだろう。
−−東アジアで朝鮮半島有事、台湾海峡有事を想定したアメリカの先制攻撃態勢整備。周辺事態法の完結。「防衛態勢」整備は、要するに「攻撃態勢」整備のこと。有事法制を整備させて米軍が思い切って自衛隊を従え日本全体を自由に後方基地に使用できなければ、即応攻撃態勢、先制攻撃態勢が整わないから。中谷防衛庁長官が、有事法制を「抑止力」と答えたのはそう言う意味。
−−東アジアでのアメリカの先制攻撃態勢準備は、対イラク戦争準備にもつながる。
・これは戦争屋ブッシュ政権の思惑一つで朝鮮半島と台湾海峡、東アジア全体を戦争の渦に巻き込む危険なもの。アジアの平和と安全に真っ向から敵対するもの。被害者(「日本有事」「日本防衛」)にならないためのものではなく、アメリカの侵略戦争に加担し米日共同で対北朝鮮、対中国への攻撃態勢準備が整備・完了したことを誇示するもの。いつでも東アジアの「力の空白」を心配せずに対イラク戦争を遂行することが出来ることを明らかにするもの。加害者になることを内外に宣言するもの。

A 在日米軍基地の強化、日米共同軍事演習の恒常化。特に在沖縄米軍基地の強化、第7艦隊の基地・横須賀の強化。


(4)有事法制「発動要件」の拡大解釈と政権による恣意的な発動、発動権の乱用
・中谷防衛庁長官は、「インド洋展開中の自衛隊艦船に攻撃が加えられればどうする?」との質問に「発動する」と答えた。この問題は、わざと危険地帯に自衛隊を派遣して徴発し、それをきっかけに侵略を開始するとんでもない危険につながる。アメリカのように陰謀や謀略が可能になるのだ。(ベトナム戦争拡大のきっかけになったプエブロ号事件など)
・不審船問題が起これば、テポドンが飛べば、NYで起こったようなテロが起これば等々、「有事法制の発動」か「発動待機事態」に入る可能性は、首相の恣意と主観に委ねられる。つまり「前段階」がどんどん野放図に拡大解釈されて、「発動待機」も含めれば、いつでも、どこでも、首相が「非常大権」を振りかざすことができることになるかもしれない。

(5)「戦争国家体制」作りの中で国家のあり方そのものが変わる危険。
・法律成立後、どんなテンポで、どんな形態で「戦争国家体制」作りが進むのかは、現実の力関係に規定される。抵抗が弱い場合と強い場合で違うし、世界情勢、特にアメリカの動向に大きく左右される。
・以下にシミュレートするのは、抵抗が弱い最悪の場合の危険性を想定したものである。法律成立後の闘い如何によって具体的過程は修正される。

@ 軍事レベル、政治レベル、社会レベルの全面に置いて、国家のあり方そのもの、戦後の国家の統治構造全体が軍国主義的で反動的なものに変質・変容させられていく。
・恐ろしいのは、日本の政治を転換する画期になるかも知れないと言うことだ。政局と政治情勢が大きく右傾化、反動化、軍国主義化する危険性である。もちろん有事法制国会通過の翌日から雰囲気が変わるというわけではないが、数年かけて変わる可能性は高い。日本の政治状況と社会の雰囲気が根本的に転換し、政治反動化と軍国主義化がエスカレートするかも知れない。
・以下の全てが「戦争国家体制」作りの中で具体化され整備されていけば一体日本はどうなるか。首相の独裁権限は増大し、米軍の戦争への加担、自衛隊の自由自在の行動を認めさせるだけでなく、憲法で禁止されたはずの自衛隊や米軍への協力を、社会制度や法制度、社会生活の隅々にまで浸透させ、首相に全面的に従わせようとするだろう。一旦包括法である「武力攻撃事態法」ができれば、「有事のために軍に協力するのは当たり前」になり、戦争に備えるという名目ですべての人々を従わせることになる。
・このまま進めばいずれ市民一人一人に自衛隊の好き勝手な行動の容認・礼賛を迫り、自衛隊・米軍への協力を迫る。これに協力しないと「非国民」としてはじき出される危険、孤立させられ潰される危険が出てくる。
・どこまでこの通り進か分からないが、いずれにしてもこれは全く新しい事態である。

(1)有事に耐えられる自治体作り、有事に備えた病院作り、有事に備えた民間企業作り。
・公務員、医療関係者、運輸・港湾労働者、NHK等のメディア関係従業員には、「有事」に戦争協力を義務付けられるだけでなく、「平時」からそれを前提にして協力が強要される。戦時に本当にできるか普段からチェックされる危険が出てくる。反対する者は「踏み絵」を踏まされる可能性がある。

(2)「災害演習」から「軍事演習」へ。
・これまで「災害」名目で行われてきた「災害演習」が、公然と「有事」を想定した「有事演習」に変えられるかも知れない。ビッグレスキューの完全な軍事演習版は行われないと断言できるだろうか。今回は文字通り自衛隊が主役になり、これに自治体、企業、市民が奉仕させられる訓練。東京から全国へ拡大させられる危険。協力を拒否すれば職務命令違反(公務員)。民間業者なら解雇もあり得るか。
・自衛隊の演習にあわせて、自治体職員が土地収容や物資収用の訓練にかり出される。収用対象の網が民間にかぶせられる。
・自治体はかつて住民を戦争に動員する道具であった。民間防衛法、国民保護法・・・住民組織(隣組)を作って平時から戦争動員に備えることを意味する。

(3)有事に耐えられる軍事協力。対米・対自衛隊協力。
・自衛隊が、自衛隊と米軍が、有事を想定した演習を公然と始める。有事法制は有事に自衛隊や米軍が行うことにフリーハンドを与えるもの。成立後の演習では自治体、企業、市民の協力を前提に行われる。自衛隊や米軍が一層好き放題に行動するだろう。軍の輸送に民間業者を動員したり、港湾労働者を動員したり、公務員に協力させたり、住民の避難や民間防衛を組み込んだり。演習の中にすでに深く民間が組み込まれる。普段から軍の指示の下におかれる危険性がある。
・ブルーリッジ入港。「地位協定で拒否できない」→これからは積極的な協力を要求される。有事に備えて協力体制を整えろ、平時から協力しろ。米軍は今日本の法律には縛られていない。それに加えて日本の自治体、企業、市民に米軍への協力を強要することになる。

(4)有事に備える学校作り。
・有事法制は、有事対処について「国民の理解を得るために適切な措置を講ずる」(21条6項)こととしている。その最大の狙いは学校教育にある。
・「日の丸・君が代」では「国民に強制しない」法律ができただけで、ほとんどの学校現場に強制された。有事法制ができれば今まで教育の中で全面賛美などできなかった「天皇制賛美」「愛国心の注入」「国防教育」「自衛隊への賛美・協力」などを公然と学校教育の中に持ち込み、教えさせようとするだろう。
・学習指導要領を通じて教科書に書かせ、それを教えさせようとするだろう。法を盾に教育委員会と右翼が結託して攻撃するパターンが猛威をふるう危険性。
・いまのところ食い止められている「滅私奉公」「国のため」「命より大切なもの」という「つくる会」公民教科書の中身がそのまま子どもに押しつけられる危険性。
・自衛隊が参加する様々な予行演習に学校や子どもたちが動員される危険性が増すだろう。

(5)有事に耐えられる国内治安弾圧体制作り。
 社会秩序の維持に関する措置(22条1項ハ)。有事になれば戦争に反対するもの、反戦論者は黙らせなければならない。重要なのはこの法律ができるだけで批判論者を孤立させ、反戦運動を抑圧しするような雰囲気を作り出せること。「戒厳令」など強硬手段が今すぐ含まれていなくても極めて危険な治安弾圧立法である。

A 軍国主義的、反動的、右翼的勢力の発言権の増大と台頭。
・中央政治においても、地方政治でも、教育分野でも、マスコミや論壇やイデオロギー分野でも、政治的力関係の中で、軍国主義的で反動的な部分、右翼勢力の活発化・台頭が避けられないだろう。
・現に有事法制提出段階において、すでに自民党の若手タカ派や右翼保守反動、自衛隊出身者、制服組など、日本の軍国主義勢力、反動勢力が力を増し、発言力を高めている。
・朝日や毎日などのマスコミは、今でもすでに有事法制の必要性を認めるなど容認姿勢になっている。有事法制が出来れば、もっと翼賛的になる可能性が大きい。

B 憲法の平和的民主的条項の空洞化と死滅。次は「明文改憲」へ。
・有事法制成立後の国会と中央政治の中で、200件とも言われる憲法違反の「下位法」が跋扈するようになれば、憲法の平和的民主的条項の空洞化と掘り崩しは新しい段階に入るだろう。もちろん激しい闘いが繰り広げられるだろう。
・しかし憲法の空洞化の中で、自民党と保守反動勢力は次に「明文改憲」を目標として動き出すだろう。



[5]「平時」からの有事法制整備の一環としてのメディア規制3法の危険





[6]中東情勢を機軸に展開する世界情勢−−イスラエルの軍事冒険主義とパレスチナの抵抗闘争が、アメリカの対イラク戦争準備と戦争拡大を困難と窮地に陥れている

(1)ブッシュ政権の中東政策が迷走し深刻な行き詰まりに陥っている。シャロン政権支持・支援が米国内からも、欧州からも、中東諸国からも批判され孤立している。



(2)対イラク戦争準備の包囲網が作れない状況。中東諸国からの反発、欧州諸国からも協力拒否・留保。唯一協力的なブレア政権も、国内からの反発。



(3)ベネズエラでのクーデタ失敗。ブッシュ政権の関与が暴露され、ベネズエラからは言うまでもなく、米国内からも、中南米諸国からも反発を生んでいる。コロンビア、エクアドル、ペルーなどへの軍事介入と軍事的プレゼンス拡大のシナリオが狂う。



(4)米軍はパキスタンにまで軍事作戦を拡大。アフガンでの長期駐留と散発的なアルカイダ掃討作戦。



(5)フィリピンやイエメンへの米軍の増派。南アジアでの米軍のプレゼンスの復帰・復活。



(6)朝鮮半島情勢とブッシュの対北朝鮮政策。



(7)ブッシュの対中政策と米中関係、日中関係。





[7]アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名運動への提案。

(1)宣伝活動の重点を「発動後の危険」だけではなく「発動前」の、「平時」からの危険性に置く。

(2)「メディア規制法案反対」を署名項目に追加する。

(3)有事法制反対、ブッシュの戦争拡大反対と合わせて、シャロンの対パレスチナ全面戦争反対、ブッシュのシャロン支持反対を運動として取り組む。