有事法制:討論と報告
有事法制の危険性とデタラメ
(第4号 2002/05/15)
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既に「原発防災訓練」には自衛隊が多数参加
警察庁はサブマシンガンで重装備の「原発警備隊」を新設
(美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会) |
「原発防災訓練」に参加した自衛隊の護衛艦「あぶくま」。すぐ後ろは高浜原発。
(出典:防衛庁ウェブサイトより)
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■自衛隊出動を可能にした「原子力災害特措法」
JCO事故の後、「原子力災害対策特別措置法」が制定され2000年6月16日に施行となりました。この「原子力災害特措法」では、内閣総理大臣が災害対策本部長となり、自衛隊に対し出動要請ができるのです。JCO事故の時、当時の小渕首相の関心は、住民の命ではなく、内閣改造人事でした。住民への避難命令を最初に出したのは、東海村の村長でした。政府はJCO事故の責任を一切放棄したまま、国家統制的な「原子力災害特措法」を強引に作ったのです。
「原子力災害特措法」は、「原子力災害から国民の生命、身体及び財産を保護ることを目的」としています。しかし第26条では「緊急事態応急対策」として「犯罪の予防、交通の規制、その他当該原子力災害を受けた地域における社会秩序の維持に関する事項」があげられ、反対運動等への治安弾圧の機能をも兼ね備えています。
■既に「原発防災訓練」では自衛隊が多数参加。護衛艦「あぶくま」まで参加
法律ができれば、次は「訓練あれば、憂いなし」として、「原発防災訓練」には、既に自衛隊が参加しています。法施行後、島根・佐賀・石川・福島・福井等で自衛隊参加の「防災訓練」が頻繁に行われています。昨年3月の福井・京都での「原子力防災訓練」は、海上自衛隊舞鶴地方隊・航空自衛隊第6航空団(石川県小松市)から約230名の隊員、車両40両、航空機3機、艦船1隻が参加する大規模なものとなっています(写真参照)。
さらに、自衛隊参加の「防災訓練」の内実はエスカレートしています。昨年3月の福井・京都での「防災訓練」には海上自衛隊の護衛艦「あぶくま」[※1、上の写真参照]までが参加しています。対艦船・対潜水艦での戦闘を主目的とした「あぶくま」のような強力な戦闘力を持つ護衛艦を原発周辺の海域に出動させること自体、極めて異常なことです。このような護衛艦は、人命救助や民間人の輸送に使われるものではなく、海からやってくる「敵」の艦船や、潜水艦を対象にした攻撃用の戦力です。訓練の内実は、「外敵」から「原発を守る」という、有事法制下における「原発防衛出動」訓練の先取りともいえるものです。
※1 護衛艦「あぶくま」
沿岸海域での、対潜水艦索敵・攻撃、対水上艦船攻撃、哨戒任務を目的とした排水量2000dの大型護衛艦である(舞鶴地方隊所属)。ハープーン対艦ミサイル2基や、62口径76mm単装速射砲1基、短魚雷3連装の他、アスロック対潜ロケットランチャー1基、高性能20mm機関砲(CIWS)1基を装備し、強力な対潜・対空能力を持つ。
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■海上保安庁が日常的に「原発警備」
9.11以降、海上保安庁が日常的に「原発警備」を行っています。第8管区海上保安本部(舞鶴市)は、巡視船18隻、飛行機2機、ヘリコプター3機を使って、24時間体制で若狭の原発周辺を「監視」しています。さらに舞鶴ヘリポートの拡張工事に着手しています。現在1機しか待機できないヘリポートを、2機のヘリが待機可能となるよう面積を4倍に拡大し、夜間の使用を可能にするため照明設備等を設置するというものです。
■警察はサブマシンガンで重装備した「原発警備隊」を新設
次は、警察。警察庁は原発立地県に「原発警備隊」の新設を決めました。既に配備が始まっているサブマシンガン(写真参照)をもった専門部隊を作るというものです。当面はワールドカップの期間中配備し、その後、原発周辺で24時間体制の「原発警備」にあたるといいます。
配備されるサブマシンガンは、対アフガン戦争に投入されたアメリカ軍の対テロ特殊部隊、デルタ・フォースが採用しているものと同じです。まさに「戦争用」の兵器です。
既に9.11以降、警察が「原発警備」に配置されています。昨年11月に起きた浜岡原発事故の抗議集会の後、中部電力が約束の場所に出てこないため、原発ゲート前に行き申入書を読み上げるなどして抗議行動を行いました。ゲート前には警察のパトカーやバスが常駐していました。警察の目の前で抗議行動を行わなければならないという、全く異様な状況でした。
今度は、サブマシンガンをもった警官の前で・・・と想像するだけで本当に恐ろしいものです。ましてや周辺住民は、原発の危険に加え、サブマシンガンで重装備した警察の監視の目の中で、日常生活を強いられることになるのです。警察等による「原発警備」強化に反対しましょう。
■情報隠しと情報統制
9.11直後、アメリカの原子力規制委員会(NRC)はホーム・ページを閉鎖しました。日本の原子力安全委員会も一部会議を非公開としました。さらに通常でも、使用済み核燃料の六ヶ所再処理工場への搬出について、電力会社は日時等の情報を隠したままです。事故時の情報隠し、情報の改ざん等々は彼らのお手の物です。
最も情報が公開されなければならない原子力ですが、「有事」となれば、一切の情報が隠蔽され、出てくるものは当局に都合のいいものだけという情報統制が強化されるに違いありません。この情報統制が、新聞等のマスコミだけでなく、原発反対運動の機関紙誌、ビラなどにも向けられれば、反対運動を押さえ込む手段にもなるでしょう。
■自衛隊や米軍の訓練が危険な原発をより危険に
原発関連施設周辺では、自衛隊や米軍による事故も起きています。再処理工場が建設中の青森では、先月、米軍三沢基地から飛び立ったF16戦闘機の墜落事故。数年前には、舞鶴の自衛隊演習では、空砲のつもりが実弾が入っており、高浜原発のそばの青葉山に着弾するという事故がありました。「原発警備」の強化、自衛隊等の参加は、危険な原発をより危険にさらすこととなります。
■有事法案に反対を
以上は、現に起きていることです。「有事」に対応できる自衛隊出動、治安弾圧強化体制づくりが着々と進んでいます。さらにこのうえ、有事法案が成立すればどうなるでしょうか。「原発事故から住民を守る」から、北朝鮮等によるテロ・ミサイル攻撃等々から原発を守るへと、目的は明確化されます。現在の有事関連法案の自衛隊法改正では「原発防衛」は一旦除外されました。しかし政府は、有事法が成立すれば、その後2年間かけて関連法を整備すると言っています。すぐに、必ずや自衛隊による「原発防衛」を狙ってくるでしょう。
そうなれば、有事に備えた平時からの訓練と称し、自衛隊の出動が更に頻繁になるでしょう。サブマシンガンの警官は、機関銃の自衛隊員に置き換えられるでしょう。使用済み核燃料輸送船を自衛隊の艦船等で護衛する等々、あらゆる場面に自衛隊が我がもの顔で踏み込んでくるでしょう。さらに、反対運動に対する弾圧、情報統制も一層厳しくなるのは、火を見るよりも明らかです。
※ ※ ※ ※ ※
危険な原発の運転をそのままにし、「他国の攻撃から原発を守るため」と称して、自衛隊の出動、戦争遂行国家体制づくりを強行するのは、まさに本末転倒です。まず政府が行うべきは、脱原発に向けてエネルギー政策を大転換することです。
★ 有事法案を廃案に!
★ 自衛隊・警察等による「原発警備強化」反対!
★ 脱原発へ!
有事法制:討論と報告
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