検証と批判:テロ特措法2年間に一体何が起こったのか。
テロ特措法改定=延長の強行採決に強く抗議する!
ブッシュの侵略戦争に加担し日本の軍事プレゼンス=自衛隊の中東常駐体制を狙う


はじめにーー数々の疑惑、違憲・違法行為を数の力で封殺。
 政府は、来月11月1日で期限が切れるテロ特措法延長のための改正案を10月3日に衆議院で強行採決した。10日に参院でも採決を強行する構えである。解散・総選挙の日程から逆算したわずか数日の審議日程、まともな答弁をせずごまかしと強弁で押し通した強引な審議、数の力で押し切る採決。これは、政府の答える義務、民衆の知る権利を封殺する暴挙であり、民主主義の圧殺である。
 私たちは、2年前の国会上程以来、この法律に一貫して反対してきた。2年の延長など論外である。即刻の廃止、自衛艦の撤退を要求する。
※「テロ特措法・海外派兵は違憲市民訴訟の会」はこのテロ特措法を受けて、自衛隊の海外派兵は憲法第9条に違反するとして、さいたま地裁に提訴した。(私たち事務局のメンバーも賛同人に参加している)ところが今年6月25日 わずか3回の口頭弁論で結審し訴えをことごとく棄却する不当判決を出した。「会」は7月7日、高等裁判所(東京)へ控訴受理され、裁判は今も継続中である。http://www.hahei-iken.org/hahei-ikenindex.htm

 9・11に対する「報復」として米国が行ったアフガニスタン戦争に対する支援、米艦船への洋上給油を主たる内容としたテロ特措法は、アフガン戦争が事実上終了した後も延長・継続された。そして、今年3月に始まったイラク戦争攻撃に加わった米英艦船等に対する給油さえ行い、集団自衛権を禁じた憲法はおろか、この特措法そのものの範囲をも大きく逸脱して、なし崩し的にイラクを攻撃に参戦した。
 この法律が可決されて以降2年間の間に、この法律の数々の疑惑、違憲行為、不法行為が次々と明らかになっている。小泉政権は、こうしたテロ特措法の矛盾や疑惑に一切答えることなく強権的に可決させたのである。新民主党は国会の事前承認などの小手先の「修正案」を出してこの不当極まりない法律とその審議に協力し、またもや政府与党の“共犯者”となった。小泉首相が成立後「与野党の皆さんに(審議に)協力していただいたたまものです」と述べてニコニコと民主党を讃えたのも当然である。私たちは、与野党のなれ合いで進められる侵略国家への転落の道に警告を発し続けなければならない。
※テロ特措法案の衆院通過、与野党協力のたまもの=小泉首相(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031003-00000784-jij-pol

 以下この法律の2年間が如何なるものであったのか、疑惑と疑問、違憲行為と不法行為の全容を詳しく検証してみよう。


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(1)テロを戦争と同一視し国際法をぶち壊す。改めて問うべき米国のアフガニスタン侵略の正当性。
 まずこの法律の前提を問わねばならない。給油の是非や戦争でテロが防げるのかといった議論よりもっと根本的な問題は、ブッシュのアフガニスタン侵略の不当性、無法性が完全に忘れ去られていることである。テロ特措法の前提は、9・11テロ事件とアフガン戦争ではなかったか。なぜこの根本問題が国会論戦から抜け落ちていたのか。

 そもそもなぜ米国はアフガニスタンを攻めたのか。その根拠は一体どこにあるのか。なぜ実効支配をしていた主権国家であるタリバン政権を崩壊させたのか。米軍がいなくなれば瞬時に崩壊するようなカルザイ政権を本当の「民主政権」と言えるのか。それを「傀儡政権」と言うのではないのか。カブールにしか実効支配が及ばない政権、軍閥が群雄割拠し、今なお治安が回復しないアフガンを「解放した」と言えるのか。タリバンは復活しつつあるという。テロはなくなるどころか返って増えているではないか。−−数千人、数万人を殺戮し、荒廃した国土を更に破壊し最貧国を戦争で打ちのめしたあのアフガン戦争とは一体何だったのか。ブッシュ政権のアフガン侵略の正当性そのものを今改めて問わねばならない。

 米のアフガニスタン攻撃は、国連憲章第51条「自衛権」には当てはまらない国際法上何の正当性もない無法な侵略戦争であった。安保理決議1368は安保理がテロに対して「自衛権を認識する」「すべての必要な措置をとる準備がある」など誤解を与える誤った規定をしたが、いずれも「国連憲章と合致する」「国連憲章の下での」という条件付きの条文であった。安保理として具体的な武力行使措置を定めたものではなかった。そもそも国際法では「報復」「復仇」は禁じられている。国際テロに対しては法的措置に訴えるべきであり、軍事的措置に訴えるのは国際法違反である。ところがブッシュ政権は、テロの衝撃を逆手にとって、テロと戦争を同一視し、このような国際法上の制約や禁止条項を一切無視して、何の証拠なしにアフガニスタンに侵略したのである。
※「決議1368(2001)安全保障理事会により、2001年9月12日の第4370回会合にて採択」http://www.unic.or.jp/new/pr01-78.htm

 このテロ特措法の正式名称を思い出して欲しい。人を煙に巻くだけの長ったらしい名称である。「平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案」。「国連憲章の目的達成」も、「国連決議に基づく」も「人道的措置」も全部嘘っぱちである。その実態は、米国が国連から独立して一方的に多国籍軍を結成してアフガンを攻撃した侵略戦争を「後方支援」する、明らかな対米侵略戦争支援法なのである。
※「テロ対策特措法について」(首相官邸)http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2001/1029terohougaiyou.html

 私たちは、9・11以降まるで流行り言葉のように使われ出した「当面の安保問題の中心問題はテロとの戦い」なる宣伝、政府やマス・メディア、軍事アナリストたちが吹聴する「テロとの戦争」に反対する。それはブッシュ政権による侵略戦争の恰好の口実であり、外交と内政の主導権を握り続ける手段となっているからである。ブッシュが政局で自分が不利になった時に必ず「オレンジ警報」(テロ警告)を出しているのも、愛国者法を相次ぎ打ち出し警察国家体制確立に邁進しているのも、そのためである。
 テロは戦争ではなくせない。否、むしろより複雑になり拡散するだけである。アフガン戦争後、イラク戦争後の実情そのものがこのことを証明しているし、パレスチナ問題がすでに答えを出している。要するにブッシュ政権は、テロを口実に戦争を世界中に拡大することで、自らの石油=軍事帝国主義の世界覇権を拡大しようとしているのである。それはテロをなくすのとは全く逆の道である。

(2)9・11事件の全容解明は一体どうなったのか。アルカイダ、ビンラディン犯人の証拠は結局どうなったのか。−−9・11被害者家族の疑問にさえ一切答えようとしないブッシュ政権のいかがわしさ。
 もっと根本的な問題がある。アルカイダ、ビンラディンが犯人であり、タリバン政権が彼らをかくまったことが、アフガン攻撃の根拠であったはずである。しかしブッシュ政権は国内外に向かって、彼らが犯人であることの物的証拠、動機など、犯罪者であることを証明する最低限の情報公開すら怠っている。軍事機密だと言ったまま、裁判をしているのかどうかも分からない。これが「法治国家」と言えるのか。こんなメチャクチャなことがまかり通っていいのか。
−−グアンタナモ基地に不当に拉致・収容した「捕虜」を拷問にかけ尋問したはずである。この「捕虜」から決定的証拠が出なかったことは何を意味するのか。
−−今年7月には、9・11調査委員会の「議会報告書」が出されたが、そこにはサウジ政府関係者とFBI関係者との関係が指摘されていた。それだけでも重大だが、数多くの疑惑に全く答えていない上に、28ページもの「非公開」部分があった。
 本来なら必死になって真相究明の先頭に立つべきブッシュ政権がなぜ、真相究明に不真面目で、なおかつ事実を隠蔽しようとするのか。要するにサウジアラビア、パキスタンと米国のCIAなどの諜報機関やペンタゴンなどの間に、9・11に関して公に出来ない関係があるからである。ブッシュ一族とサウジ王族との深い関係も知られているし、二重三重スパイが絡んでいるとも言われている。真相は闇の中だ。
※FBIを厳しく批判 米同時テロで議会報告書(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030721-00000042-kyodo-int
※サウジ工作員が接触か 米中枢同時テロ実行犯と(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030802-00000073-kyodo-int

 今年の9・11の2周年でも、テロ被害者家族たちは、ブッシュ政権に数々の疑問や疑惑を突き付けた。被害者家族にさえ答えられない事実とは一体何なのか。
※私たちは、フィラデルフィアのニュースサイトに掲載された、9・11に関する20の疑問点を問い質した記事を現在翻訳中である。「WHY DON'T WE HAVE ANSWERS TO THESE 9/11 QUESTIONS?」http://www.philly.com/mid/dailynews翻訳終了次第本HPに掲載したい。この記事を一瞥すれば、背筋が寒くなるだろう。ブッシュ政権が何かを隠しており、ドロドロとしたものが浮かび上がってくるからである。それはイラク侵略をウソとでっち上げで強行した疑惑に通じるものである。イラクの疑惑にはようやくメディアや世論の目が向き始めたが、この9・11に関しては完全に隠蔽状態なのである。
※私たちは昨年5月、9・11をめぐるブッシュ政権の対応が疑惑だらけで不可解なことが米政界で大問題になった時点で告発記事を掲載した。「米政界を揺るがす一大政治スキャンダル−−−ブッシュは同時多発テロを事前に知っていた!9・11の2日前から準備されていた対アフガン戦争」(署名事務局)しかしそれ以降、米政界でも日本の政界やメディアでもこの疑惑は真剣に取り上げられていない。一部の被害者家族が粘り強く真相究明を続けている状況である。

 イラクで遂に大量破壊兵器を見つけることは出来なかった。1400人が半年もかかってイラク中を捜索しまくった結果、何も出てこなかったのだ。幸か不幸か米政府が兵器の存在をでっち上げようにも、国連査察が10年以上も行われた結果、安易にニセの証拠を出せないことも苦しくなっている一因である。
 CIAが出した「暫定報告書」は苦し紛れからか、論点を「兵器の存在」から「開発の意図」にすり替えた。米国内外の世論がこれでごまかされると思ったら大間違いである。UNMOVIC(国連監視検証査察委員会)のブリクス委員長は「イラクは湾岸戦争直後の1991年に兵器のほとんどを破棄した」との「確信」を示した。「犬がいなくとも玄関に『猛犬注意』の張り紙を張ることは出来る」との見方だ。米英が指名手配し拘束したフセイン政権高官からも、「90年代の早い時期に兵器は破棄された」という情報しか入手できなかった。「イラクの脅威」、しかも「差し迫った脅威」は全くのウソ、でっち上げだったのである。上院軍事委員会の前委員長は「どの過程で情報が誇張、操作されたのかを調査する必要性が高まった」と述べた。
※イラク、大量破壊兵器を10年前に破壊=ブリクス前委員長(ロイター)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030917-00000379-reu-int
※イラクに核計画なかった IAEAが報告書(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030909-00000026-kyodo-int

 そうこうしている間に、今度はCIA工作員に関する秘密漏洩疑惑が浮上した。ブッシュ再選の選挙対策本部を牛耳るローブ上級顧問、外交・安保を取り仕切るライス補佐官らが疑惑と責任の真っ直中に押し出された。
※<情報リーク疑惑>83%が「問題深刻」 米TV緊急世論調査(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031002-00001011-mai-int
※イラク核情報ねつ造疑惑 米高官が違法暴露? メディア工作、報復か(西日本新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031001-00000013-nnp-int

 イラク侵略でこれだけ次から次へウソとでっち上げを平気で行ったブッシュ政権である。9.11とアフガン侵略をめぐる問題だけは真実、事実だと考える方がおかしい。ブッシュ政権は9・11でもシロとは言えないはずだ。半ばある程度のテロ情報を知りながら放置し、事件を新たな軍事外交戦略発動のために最大限利用したとの疑惑を持たれても仕方がないのではないか。もし潔白だというなら、徹底的に真相究明をやるべきだし、すでに分かっている事実関係を全面開示すべきである。なぜ隠すのか。そこが大問題である。
※大量破壊兵器能力は不十分 米長官、テロ前は脅威否定(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030926-00000086-kyodo-int


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(1)米・多国籍侵略軍のアフガン民衆殺戮、国土破壊に加担。
 日本が「戦時」に公然とその侵略者を支援する法律を作り、現に「後方支援」を行い無法な侵略戦争に参戦、主権国家の崩壊、民衆虐殺や国土破壊に直接加担する侵略国家に一歩踏み出したのは戦後初めてである。朝鮮戦争の時、日本は一部参戦し国を挙げて加担した。ベトナム戦争の時も、出撃拠点・兵站基地など様々な形で加担した。しかしそのための法律を作って公然とやったことはなかった。だが今回は違う。これは法律や憲法以前の問題である。日本が世界中に侵略軍を派遣し軍事プレゼンスを誇示する米国のような公然たる侵略国家になるのか否かという根本的な問題である。

 数千人、数万人の人々が殺害され数十万、数百万人もの人々が飢えと貧困におびえているアフガニスタンでは、米軍は未だに「タリバン掃討」を口実に殺戮、抑圧、爆撃や襲撃を繰り返している。米軍が遊牧民のテントを爆撃し多数の女性や子どもが犠牲になった9月17日の事件は記憶に新しい。
 後で述べるように、政府自らがテロ特措法に違反してイラク侵略に参戦・加担した。その意味では、この法律の結果、イラクの民衆をも殺戮し抑圧する側に立ったのだ。米軍はイラクの人々の頑強な抵抗に対して怒り狂い、虐殺と家宅捜索と拘束、銃撃と爆撃を続けている。イラクでは少なくとも9千人から数万人の人々が殺された。実際の犠牲者の数は不明である。アフガンに続いてイラクでも劣化ウラン弾を浴びせ、民衆と国土全体を放射能で汚染した。インド洋に居座る自衛艦はこれらの殺戮と弾圧、これらの破壊と汚染について直接の責任を負っている。日本が加害者になったことを私たちは肝に銘じなければならない。

(2)明らかな集団自衛権の乱用。明らかな憲法違反。
 「集団自衛権行使」とは一般に同盟国(今回は米国)が攻撃されたとき、自国(今回は日本)が攻撃されていないのに、自国が攻撃されたものと見なし、「自衛権」を行使することである。テロは戦争ではない。だから今回の対米アフガン侵略支援は、国際法を破って無理矢理テロを戦争と位置付けて、集団自衛権の概念をも踏みにじり拡大解釈した正真正銘の侵略戦争なのである。単なる集団自衛権の行使という生やさしいものではなく、その乱用と言えるだろう。二重三重に違憲行為なのである。
※「日本の「参戦法」とアメリカの「報復戦争」についてのQ&A−−「日本の参戦法」編」として、私たちはテロ特措法の制定時に詳しくこの法律の違憲性を整理した投稿を掲載した。もう一度ご参照いただきたい。2年を経過してこの時の危険性がまさに的中したと言える。
※自衛隊は米軍の指揮下で活動している。2002年6月16日付朝日新聞は、洋上補給活動が始まる一週間前に海上幕僚監部の派遣チームがバーレーンの米中央軍第五艦隊司令部のムーア司令官と協議した際、自衛艦が米海軍第53任務群司令官の戦術指揮下に入ることを容認していたと報じた。

 日本が攻撃されていないのに、日本は一体この悪法の下で何をやってきたのか。
−−海上自衛隊はアフガン侵略の米・多国籍軍艦船に大量の給油活動を行った。補給艦「はまな」「ときわ」「とわだ」は、本年9月8日までに計291回、米英のほか、フランス、ニュージーランド、イタリア、オランダ、スペイン、カナダ、ギリシア、ドイツなど10ヶ国の艦船に、約32万キロリットル、総額120億円の洋上給油を行ったのである。もちろんすべて無償、国民の税金をアフガン民衆殺戮に使ったのだ。総必要量の4割というのだから、これなしにはアフガン攻撃をインド洋上から出来なかったということ、それだけ決定的な役割を果たしたということだ。
−−海上自衛隊は護衛を口実に複数の護衛艦を付けた。2002年12月以降には更にイージス艦が加わった。物議を醸したようにこのイージス艦はデータリンクにより米軍との強力な共同作戦能力を持つ。
−−あまり知られていないテロ特措法の別の側面がある。それは、海上自衛隊による国内外の米軍基地への物資輸送である。それはアフガン戦争、イラク戦争を通じ2192トン、206回に及び(9月30日まで)、軍用機タイヤや日用品を在日米軍基地191回、グアム島の米空軍アンダーセン基地など国外基地15回に及んだという。
−−古い数字だが航空自衛隊も、米軍横田基地、嘉手納基地、グアムを結んで米軍の人員・物品の輸送を、計189回行った。
※米軍への物資輸送2192トン=テロ特措法、要請は減少−航空自衛隊(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030930-00000091-jij-pol

(3)法律に違反してまでイラク侵略に加担−−アフガン侵略、イラク侵略の最重要の出撃拠点になった在日米軍基地。
 それだけではない。このテロ特措法は、日本が米軍の新たな出撃拠点になることと併せて発動された。在日米軍基地はアフガン戦争、イラク戦争への決定的に重要な出撃拠点となったのである。
−−特にイラク戦争では、横須賀からミサイル巡洋艦カウペンスがイラクへのトマホークによる先制攻撃の第一撃に参加した。
−−横須賀基地からは空母キテイホーク、厚着基地から同艦載機が参戦した。横須賀所属の艦艇がキティホークの随伴艦として参戦した。
−−三沢基地からはF16戦闘機約10機が参加した。
※「防空網制圧(SEAD)という特殊任務を持つ三沢のF16は、航空作戦開始初日から毎夜バクダッド上空を飛行、「地対空ミサイルを根絶やしにする」など首都攻撃の中核を担っていたことが、米軍機関紙や航空専門誌などから分かった。「やりの穂先」の異名を持つミサワはその名の通り、航空攻撃の先陣を真っ先に切る最精鋭部隊だったのである。」(東奥日報2003年8月13日)
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2003/0813/nto0813_12.html
−−沖縄・嘉手納からもF15戦闘機約10機が爆撃に参加し、海兵隊の一部が戦闘に合流した。
 イラク戦争に参加した在日米軍基地の米軍兵士の数は明らかになっているだけでも1万人に及ぶ。日本が海外で唯一空母戦闘軍(空母機動部隊)、海兵遠征軍、水陸両用遠征軍が配置され、南アジアから中東への侵略戦争の最重要の出撃拠点になっていることをここに証明したのである。

(4)テロ特措法の下で進行した“官邸の独走”“軍部の独走”−−首相官邸の超タカ派・制服組が米軍と共謀して海外派兵を強行推進。
 米軍だけではない。日本を侵略国家へ変貌させようと画策する海上自衛隊と自衛隊制服組、首相官邸の超タカ派たちが、米軍・米政府との‘共同謀議’で海外派兵をエスカレートさせているのである。2002年5月6日付の朝日新聞は、海上自衛隊幕僚監部が4月10日に在日米海軍のチャプリン司令官を横須賀基地に訪ね米軍側からイージス艦やP3C哨戒機の派遣要請の一芝居をしてくれるよう申し出たという。
※「155-衆-安全保障委員会-4号 平成14年11月19日」(国会議事録)
http://www12.ocn.ne.jp/~a-oide/anpo-021119.html

 また前回は手控えられたが、今回の改定以降P3Cが加えられる危険性が出てきた。このP3Cは哨戒活動(船舶の探索、確認)をすることが目的で、補給やその護衛よりも一歩戦闘行為に踏み込むものである。数百キロの海域を掌握し、敵艦を監視し情報を集め、日本の自衛隊のみならず米の艦船に対して攻撃情報を提供するP3Cの派遣は、前線における攻撃との一体化であり、立派な共同軍事作戦、軍事力の行使、集団自衛権の行使である。
※「P3C哨戒機のインド洋派遣に含み 衆院委で官房長官」(朝日新聞)
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/seiji/20030930/K0030201910033.html

(5)テロ特措法そのものへの違反、違法行為−−イラク侵略へのなし崩しの参戦・加担。
 海上自衛隊と自衛隊制服組、首相官邸の超タカ派たちの“独走”は、イラク侵略への参戦でより危険性を増したと言えるだろう。かつての「柳条湖事件」など中国大陸での関東軍の独走をめぐる現地軍と日本の首相官邸の危険でデタラメな対応の結果、日本がズルズルと「15年戦争」の泥沼へエスカレートしていった暗い歴史は一体どうなったのか。背筋が寒くなる思いである。

 テロ−アルカイダ−ビンラディンへの対策を目的とした自衛隊が、なし崩し的にイラク侵略戦争に参戦・加担したという重大疑惑に、政府は全く答えていない。
−−2003年2月25日に「ときわ」はオマーン湾で米補給艦に給油し、同日中に同補給艦が空母キティホークに給油した。そのキティホークは当時、アフガン作戦とイラク作戦の両作戦に関わっていた
※5月15日参院外交委員会での石破防衛庁長官答弁。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/156/0059/15605150059011a.html
−−また米海軍海上輸送団の機関誌『シーリフト』6月号は、「ときわ」が「イラクの自由作戦」に参加中の米給油艦「ジョン・エリクソン」にペルシア湾で給油している写真を掲載した。
※「テロ対策特措法の下で自衛隊は何をしてきたか」
http://comcom.jca.apc.org/heikenkon/Iraq/tokusohou_1.html
−−これとは別に5月22日に米海軍横須賀基地機関紙『シーホーク』インターネット版は、「ときわ」の給油活動、「きりしま」「はるさめ」の通信能力が「イラクの自由作戦」で同盟軍の艦船を大いに助けた、との自衛隊曹長の発言を掲載した。翌日、この記事は不注意に基づく誤りだったとの米軍からの緊急発表があった。
※「米軍機関紙:自衛艦のイラク参戦報道を訂正」(5月23日付毎日新聞)。
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200305/23/20030523k0000e040053000c.html

 イラク参戦はテロ特措法違反である。ここまで証拠を挙げても、政府は、イラク参戦への違法行為を否定するというのか。きちんとした反論を出すべきである。
※「第156回国会 2003年5月16日 安全保障委員会 テロ対策特措法基本計画の延長に関する質疑」議事録(社民党・今川正美議員)参照。
※「イラク攻撃空母・キティホーク給油からみえること―望まないのに参戦させられる私たち―」(停戦委員会)http://www.geocities.com/ceasefire_anet/yuji/kitty.htm


V

(1)日本の中東への軍事プレゼンス、自衛隊の中東常駐体制を目指す。
 野党もメディアも全く触れていない重要な論点がある。今回のテロ特措法延長の最大の危険性は、これによって、インド洋と中東地域への自衛艦の常駐体制がなし崩し的に確立されようとしていることである。アフガニスタン戦争終了後、3隻もの護衛艦を張り付けているような国は米英を除いて他にない。5隻の護衛艦をローテーションし、インド洋へ常駐させ、監視体制と燃料供給体制を敷いているのである。
 テロ特措法延長の危険性は、タリバンやアルカイダ捕捉、「テロ対策」の看板さえ掲げれば、米政府が行うどのような侵略戦争にも参戦が可能になるところに、中東常駐体制すらなし崩し的に可能となるところにある。
 10月17日のブッシュ訪日を前に、小泉政権は大慌てでイラク特措法の具体化、つまり巨額の対米資金援助とイラク現地への派兵計画を明らかにした。テロ特措法の延長とイラク特措法の具体化が合わさって、中東への日本の軍事的プレゼンスは一層強化されるだろう。もちろん「日本の防衛」から全く遠く離れた中東の地で軍事プレゼンスを形成することなど戦後初めてのことである。
※「陸自部隊を12月派遣 イラク南部に100人規模」(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031004-00000035-kyodo-pol
※「陸自先遣隊、12月にイラクへ…政府方針」(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031003-00000001-yom-pol

(2)テロ特措法改定=延長は海外派兵「恒久法」への“布石”。
 テロ特措法延長の今回の採決強行は、海外派兵「恒久法」への“布石”である。福田官房長官は、「国会再承認は必要ない」として、再び2年の時限立法として成立するこの法律の期限が来たときには閣議決定だけで延長を承認することを明言している。首相と自衛隊の思惑は2年という期限を取っ払うことにある。テロ特措法を事実上の「恒久法」に仕立て上げ、アフガニスタン戦争支援からなし崩し的にイラク戦争支援に踏み出したように、今後起こる可能性のある米軍の侵略戦争への加担、海外派兵のフリーハンドを得ようとしているのである。それは「恒久法」が出来るまでの“つなぎ”として活用されるだろう。 

(3)早くも自衛隊の充足率が限界に。米軍と同様の海外派兵の弱点=「オーバーストレッチ」(過剰拡張)問題に直面。
 小泉政権にとって調子のいいことばかりではない。自衛隊の現場を知る軍事アナリストから、早くも自衛隊が海外派兵の限界に直面していることが指摘され始めた。もちろん、その窮状を逆手にとって、海外派兵部隊の独立化、人員の大幅増強を要求する傾向もある。その意味でこの限界の問題は諸刃の剣である。限界を突破して海外派兵大国、侵略国家への道を歩むのか、限界に突き当たって大きな壁にぶち当たるのか。今日本は重大な岐路に立っているのである。

 いずれにしても現時点では、国連PKO、国際緊急援助隊、インド洋への自衛艦派遣、そして来るべきイラク派兵等々、ここ数年で急増している海外派兵の要員と装備が決定的に不足し始めている。まさしくこれは米軍が今回のイラクの泥沼化ではまり込んだのと同様の「オーバーストレッチ」問題である。元々海外派兵用に準備されてこなかった自衛隊は、すでにアフガン侵略でその弱点を露呈させたのである。
※「日本と世界の安全保障/あえて恒久平和協力法をただす」世界週報10月14日号(潮 匡人)参照。
※「テロ特措法延長問題 揺れる自衛隊−−現場は苦悩 幹部は期待」(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030929/mng_____kakushin000.shtml
「海自幹部は「何回でも派遣しないと人のやり繰りがつかず、活動が続かないのも事実だ」と苦しい舞台裏を明かした。補給艦は三隻でローテーションを組み、乗員のうち既に八十三人が三回目の派遣を経験した。派遣日数が合計三百十日間という乗員もいて、「帰国して一、二カ月してまた派遣という例も珍しくない」(海自幹部)。自ら「必要」と強調しながら、派遣できないでいる現状は、インド洋での補給活動と北朝鮮監視という二正面作戦がほぼ破たんしたことを示している。」防衛庁はイージス艦派遣について、「こんごう」の交代艦は送らないことを決めた。「こんごう」が帰還する前に「みょうこう」を派遣すると、周辺海域で稼働できるイージス艦が日本に一隻もなくなってしまうからである。
※「米軍のイラク向け過小兵力の顕在化と海外過剰兵力展開の危機−−イラク戦争の泥沼化・ベトナム化、米兵の士気低下と厭戦気分が一挙に露呈させた米軍の根本的弱点−−」(署名事務局)

 一人でも多くの人々が、ここで改めて提起した根本的な問題の数々を理解し広めて頂きたい。ブッシュは今、誕生以来の政権危機にある。とはいえ彼らは必至に巻き返そうとしている。ブッシュ政権は世界の反戦平和運動と反戦世論の包囲によって、何よりも米国内の民衆の力で打ち倒されなければ息の根を止められないだろう。
 そのためにもブッシュ最大の支援者である小泉政権に、対米支援の一つ一つに抵抗しこれを揺さぶり最後的に打撃を与えることが、私たち日本の反戦平和運動の重要な課題なのである。

2003年10月5日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局