「対テロ戦争」への加担に反対し、イラク・インド洋からの自衛隊撤退を求めるシリーズ(その5) |
イラク戦争の民間人犠牲者が100万人を超える!
日本はいつまで破壊と殺戮に協力するつもりなのか?! |
1.イラクにおける民間人犠牲者数は100万人を超えた!
"Just Foreign Policy"は今年8月初旬、イラク戦争の民間人犠牲者が100万人を突破したことを公表した。2006年10月に英医学誌『Lancet』に発表されたアメリカのジョンズ・ホプキンズ大学とイラクのムスタンシリア大学による共同調査『2003年イラク侵略後の死亡率:横断的集落抽出調査』は、2006年6月時点において、米軍のイラク侵略によって全土で65万人を超える民間人が犠牲となったことを発表したが、今回の数字は、その後の犠牲者数の推計を加えたものである。"Just
Foreign Policy"は、『Lancet』に掲載された論文とその他のデータベースを基に最新のイラク人犠牲者数をカウントし警鐘を鳴らしてきた。2004年9月までの犠牲者数10万人、2006年6月65万人、2007年8月100万人――まさにイラク戦争による民間人犠牲者数は加速度的に増加していることになる。
100万人という数字は、米軍を中心とする多国籍軍による戦争犯罪の深さ、巨大さを象徴するものである。この数だけイラク民衆の悲しみが繰り返された。イラクからの民間人犠牲者の報道が途絶えることはない。米軍の掃討作戦、空爆にともなう民間人殺戮、自動車爆弾による大量殺戮、激化する宗派間対立とそれに巻き込まれる民間人犠牲者、等々。私たちは、イラクにおいてとんでもない犠牲者が日々生み出され、それがあまりにも巨大な数値に積みあがっていることを感じている。イラクの人口は、戦火の中で推計2200万人〜2700万人とばらつきはあるが、何と、総人口の4%〜5%の市民が侵略戦争と占領支配の犠牲となったのである。当然のこと、米軍が撤退しない限り拡大し続けるのだ。
※「65万人を超えるイラク人が米軍、多国籍軍の侵攻の犠牲に」(署名事務局)
※Just Foreign Policy ホームページ
http://www.justforeignpolicy.org/iraq/iraqdeaths.html
※One million Iraqis killed(Press
Esc)
http://www.pressesc.com/news/99409082007/one-million-iraqis-killed-us-invasion
表1 論文「2003年イラク侵略後の死亡率:横断的集落抽出調査」中の各期間における超過死亡率の |
2.占領下で、戦時に匹敵する犠牲者が生み出されている
『Lancet』に掲載された論文は、イラク全土における犠牲者についての家庭調査結果を統計的手法に基づき整理したものである。その結果、侵略戦争後が始まった2003年3月以後の超過死亡率=戦争の犠牲者の全体像が明らかになった。表1に、論文中の2006年6月までの各期間の超過死亡率と犠牲者総数(=累計犠牲者)を示した。これによると、2006年6月までに65万人を超える犠牲者が生み出されたことになる。
それでは、さらにその後の犠牲者数を加算すると、どれほどの犠牲者数が生み出されたことになるだろうか。"Just
Foreign Policy"は、次のような手法に基づき、『Lancet』論文後の民間人犠牲者の推定を行った。
推定犠牲者数=65万人× |
IBC推定の最新の犠牲者数 |
|
IBC推定の2006年7月までの犠牲者数 |
65万人の数値に、IBC=イラクボディーカウントのデータに基づく推定を加えている。IBCの犠牲者数は、マスコミ報道によって報道されている数値となるために、数値自体は非常に低いものとならざるを得ない。しかし、犠牲者数を粘り強くカウントし公表しているデータは全体の傾向を明らかにする。『Lancet』に掲載された論文の中において、IBCとイラク全土の家庭調査結果は、各期間(2003年3月〜2004年4月,2004年5月〜2005年5月,2005年6月〜2006年6年)を通して、IBCの犠牲者総数と家庭調査に基づく1000人当たりの犠牲者数の間に非常に良い相関が見られることが指摘されている。(『Lancet』掲載論文のFig.4を参照)。
図1 IBCによる週毎の犠牲者数 |
※私たちも、"Just Foreign Policy"と同じ前提によって推定した結果、犠牲者は100万人をはるかに越えていることが明らかになった。論文では、侵略戦争による超過死亡率と累計犠牲者は表1のようになっている。そこに今年の2007年6月まで推定を加えてみよう。表1の中のXの値を推定する作業である。すでに触れたように、IBCの推定犠牲者数とイラク全土の家庭調査結果に基づく推定犠牲者数の間には、非常に良い相関がある。図1は、IBCが発表している週毎の犠牲者数であるが、この図から期間A:2005年6月〜2006年6月までの犠牲者数と期間B
:2006年7月〜2007年7月までの犠牲者数を求める。期間Aの犠牲者数が約2万100人に対して、期間Bの犠牲者数は2万9700人である。この両期間の犠牲者数の比は1.48であり、これが超過死亡率に反映するものとする。そうすると、期間Bにおける超過死亡率は21.0人/1000人となる。そうだとすると、イラクの人口が変わることなく2713万人とすると、2006年6月〜2007年6月における犠牲者総数は約57万人となる。これから、侵略戦争開始からの犠牲者の累計は、何と120万人を超えることになる!図2に、超過死亡率の推移をグラフで示した。赤線が、IBCのデータに基づいて推定した数値であるが、これよりもさらに多いとした25人/1000人の場合を青線で、少ない17人/1000人とした場合を黄線で示した。それぞれの場合の累計犠牲者数は、それぞれ約140万人と117万人となる。低く見積もった場合においても100万人を超えている!
(図3参照)
図2 超過死亡率の推移(最新のデータは予測) |
図3 犠牲者総数の推移(最新のデータは予測) |
そして『Lancet』に掲載された論文に、最新の超過死亡率にある程度の幅を持たせて評価した場合、イラク民間人の犠牲者は2007年の中頃には100万人を超え、年末には150万人に迫る勢いであることは間違いない。このようなすさまじい犠牲者が、戦争ではなく、米軍の占領支配下で起こっているのである。私たちは本シリーズ(その3)「2007年のイラク民間人の犠牲者は2006年に比べて激増」において、イラクにおける民間人犠牲者は拡大の一途を辿っていることを取り上げた。その中において、処刑・銃撃・爆弾等により殺された民間人の死亡者の数を2006年と2007年の同じ月ごとに比較したグラフを取り上げ、さらに悪化し続ける状況を問題にした。推定の結果は、このような状況と一致する。もはや、尋常ならざる「人道的危機」がイラク全土を支配している。
『Lancet』に掲載された論文の最後の部分に次のように指摘がある。イラクにおける占領支配の犠牲者数は「戦時に匹敵する。ベトナム戦争では300万人が死んだ。コンゴ紛争では380万人が死んだ。・・・・ダルフールでは過去31ヶ月で20万人もの人々が死んだ」。過去の紛争、戦争と匹敵するペースでイラクにおいて犠牲者が生み出されていることを決して忘れてはならない。
※「対テロ戦争」への加担に反対し、イラク・インド洋からの自衛隊撤退を求めるシリーズ(その3)
「2007年のイラク民間人の犠牲者は2006年に比べて激増」(署名事務局)
3.福田首相は「新テロ対策特措法」を断念せよ。航空自衛隊をイラクから撤退させよ!
100万人を超える犠牲者を生みだし続けている米国の侵略、占領支配を誰が肯定することができようか。イラク人が被っている惨事は人命の損出ばかりではない。米国の占領支配はイラクに安定をもたらさずに、民族間、宗派間の対立を高めるものであった。おびただしい数の難民・避難民が生み出されている。国連の推定では国内避難民が200万人、国外難民が220万人、実際にはその倍に上るという報告もある。教育、医療体制の崩壊は、次世代へ大きな悪影響を残すことになるであろう。イラクを泥沼にたたき込んだ最大の犯罪者はブッシュ政権である。そしてこのブッシュの戦争を支持したのが他ならぬ小泉元首相であり、安倍元首相である。
さらに福田首相は、「新テロ対策特措法」を早急に可決し、インド洋上における米軍艦船への給油活動を継続することに躍起になっている。しかしながらこの給油活動は、テロ特措法の枠組みさえ逸脱し、アフガニスタンのみならずイラクで作戦行動をする米艦船の支援をするなど、アメリカのグローバルな侵略戦争に加担するものとなっていることが暴露されている。米軍への協力は、破壊と殺戮を続ける無法なブッシュの戦争の共犯者になることを意味する。この戦争に、一片の正義もない。この戦争は、米国の石油のための戦争であり、軍産複合体のための戦争である。イラクにおける悲劇をなくすための唯一の解決策は、米軍の即時徹底である。小泉、安部に引き続き、変わることなくブッシュの戦争に寄り添う福田に対して、「新テロ対策特措法」の断念と、イラクからの航空自衛隊の即時撤退を要求しよう!
※UN warns of five million Iraqi refugees
(Independent)
http://news.independent.co.uk/world/middle_east/article2640418.ece
2007年10月10日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
|