パンフレット紹介
小泉政権の有事法制とブッシュ政権の
「悪の枢軸」=対北朝鮮戦争挑発政策

(A4判64ページ)
発行:2002年3月25日
編集:「平和通信」編集局
連絡先:羽曳野市島泉3-4-13 吉田方
頒価:500円
※署名事務局でも扱っています


内容:

(1)発行にあたって

(2)ブッシュの対北朝鮮戦争挑発政策、「悪の枢軸」戦略に我が国を丸ごと組み込む有事法制整備

(3)ブッシュ政権の対北朝鮮戦争挑発政策と小泉政権の加担・追随

(4)資料編




発行にあたって

(1) 「9・11」と米によるアフガンへの侵略戦争から6ヶ月が経過しました。ブッシュ大統領は「テロとの戦いの第2段階」を公言し、対イラク戦争準備に躍起となっています。アメリカの戦争拡大を如何にして阻止するか。「悪の枢軸」戦略、最近明らかになった「核先制使用」戦略とどのようにして闘うか。アフガンでの侵略行動を如何にしてやめさせるか。フィリピン、コロンビア、イエメン、グルジア等々、世界中に戦火を拡大しようとするブッシュ政権の軍事的覇権主義の暴走をどのようにしてストップするのか。−−これが目下の世界の反戦平和運動の焦眉の課題です。もうこれ以上ブッシュ大統領に好き放題させてはなりません。

(2) 小泉政権は4月上旬にも有事法制を今国会に上程し、4つの関連法案をわずか2ヶ月足らずで強行可決しようとしています。なぜ今有事法制か。なぜそんなに急ぐのか。「備えあれば憂いなし」なんてウソです。背景には、ブッシュ政権の戦争拡大政策があり、ブッシュ政権の軍事的冒険主義に最も忠実に従い協力・加担する小泉首相の好戦主義があるのです。イラク攻撃準備などで対米離反し始めたEU諸国とは全く違う態度です。
 私たちの責任は重大だと思います。有事法制を阻止することができれば、ブッシュ政権の対イラク戦争にも、対朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)強硬政策にも、大きな制約を課すことができるからです。事態は急迫しています。市民の力を結集し有事法制反対の意志を小泉政権にぶつけましょう。

(3) なぜ北朝鮮なのか。アメリカは北朝鮮をイラクと並ぶ最大の「戦略敵」に据えています。アメリカが軍事覇権を確立するにあたって「ならず者国家」=北朝鮮は格好の餌食になっているのです。アメリカに追随して我が国でも軍国主義と政治反動のエスカレーションは常に「北朝鮮の脅威」を口実に行われてきました。
 北朝鮮を相手に緊張を煽るやり方は、米ソ冷戦が終焉しソ連が崩壊して以降の1990年代のアメリカの軍事戦略の最大の特徴の一つなのです。ソ連という強大な社会主義国を主敵に膨大な軍事増強と世界的な前方展開包囲網を構築してきたアメリカにとって、ソ連の消滅で顕在化した“膨大な過剰軍備”“海外基地網”を維持するため、ソ連に代わる敵を作る必要に迫られているからです。しかし北朝鮮とイラクを合わせてもソ連に取って代われるわけがありません。そこで絶えず、ありもしない「危機」、デマやでっち上げの「脅威」をかき立てねばならず、戦争挑発を図らねばならないという事情があるのです。アメリカはまず「脅威」があってそれに「備える」のではなく、まず“過剰軍備”“海外基地”維持があり、戦争をやりたいという意志があって、そのために「脅威」を作っているのです。

(4) そしてアフガン侵略が一段落した現在、再び対イラク戦争準備と並行して、ブッシュの対北朝鮮政策が焦点に浮上してきました。ブッシュ政権は今のところはイラクと北朝鮮を区別しています。イラクに対しては今まさに戦争準備に入っているのですが、北朝鮮に対しては中長期的なレンジで戦争準備をする姿勢です。
 それでもブッシュ政権は、強硬政策を前面に出し戦争挑発と緊張激化を煽っているのです。「悪の枢軸」戦略も、「核先制使用」戦略も、その一環です。これに歩調を合わせるように我が国でも、有事法制国会上程を前にして、「不審船」とその引き揚げ問題、新たな拉致疑惑問題、朝銀信用組合問題など対北朝鮮強硬政策が再び浮上しています。

(5) この3月25日、金大中大統領は北朝鮮への特使派遣を発表、南北対話を6ヶ月ぶりに再開することを表明しました。米の強硬・挑発政策に対する韓国と北朝鮮の双方の危機感が突き動かしたものだと思います。アメリカの人為的な戦争挑発で、朝鮮半島情勢が1993〜94年のように再び悪化するような事態を回避するためでしょう。
 北朝鮮は日本にも対話のシグナルを送ってきました。私たちは、小泉政権がブッシュ政権に追随して、米日一緒になってこの南北対話再開の動きに冷水を浴びせ妨害しないよう、戦争挑発ではなく対話をするよう自国政府に対して要求しなければなりません。有事法制を強行することによって、折角始まった南北対話を妨害し、戦争を挑発するようなことはやめるべきです。

(6) このパンフレットは、アメリカの戦争拡大に反対し日本の有事法制に反対する運動を始めるにあたって、基本的な情勢認識や反対理由を述べるために作成したものです。パンフレットの全体を通じて私たちが強くアピールしようとしたのは、新聞・雑誌やマスコミなどでほとんど触れられないか、あるいは別々に、かつ歪められた形でしか触れられない、「有事法制と米日両政府の対北朝鮮強硬政策との関係」です。私たちの考えでは、有事法制に反対する場合、アメリカと日本の北朝鮮政策との関係抜きには語れないのです。
 パンフレットは2つの論文と資料編から構成されています。
 まず1番目の論文では、有事法制が浮上してきた歴史的経緯、歴史的ダイナミズムを分析しています。アメリカの1990年代の対北朝鮮政策が有事法制整備の圧力になったのです。とりわけ1993〜94年の「第2次朝鮮戦争危機」をきっかけに米が有事法制を執拗に日本政府に要求してきた経緯と背景について詳しく触れました。
 2番目の論文では、ブッシュ政権になってからの、特に「9・11」以後の今現在の北朝鮮強硬政策、「第3次朝鮮戦争の危機」準備を分析の中心に据え、これに追随し同調する小泉政権の北朝鮮強硬政策を批判しました。

 言い足りないところ、言い過ぎるところなど、多くの議論すべき点があると思いますが、そこは皆さんのご批判やご意見をお聞きしながら、また運動を進める中で随時加筆訂正し、良いものに仕上げていきたいと思います。よろしくお願いします。

2002年3月25日
『平和通信』編集局




ブッシュの対北朝鮮戦争挑発政策、「悪の枢軸」戦略に我が国を丸ごと組み込む有事法制整備
−−憲法機能停止法としての有事法制を阻止しよう−−

2002年3月25日
『平和通信』編集局


−−−−−−−−−−−−−− 目  次 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−

T.はじめに−−なぜ今有事法制の整備なのか。
(1)有事法制の強行を決断した小泉政権。
(2)「備えあれば憂いなし」は全くのウソ。
(3)有事法制の本質は米日両政府による対北朝鮮戦争準備。
(4)「9・11」と対アフガン戦争への参戦が直接のきっかけ。
(5)1990年代のアメリカの東アジア戦略、北朝鮮政策と内外情勢の歴史的ダイナミズムが押し出したもの。有事法制の2つの推進力、2つの矛先。

U.ブッシュ政権の対イラク戦争をはじめグローバルな戦争拡大と軍事介入にフリーハンドを確保するための日本の有事法制整備。
(1)収まる気配のない米の対アフガン戦争と世界中に拡大する米の軍事介入。
(2)具体的準備に入った対イラク戦争。「悪の枢軸」を支持し、対イラク戦争にも加担しかねない小泉首相。
(3)ブッシュの対イラク侵略と連動する日本の有事法制準備−−東アジアの「力の空白」を埋め合わせることで世界中での米軍の侵略行動にフリーハンドを与える有事法制。

V.ブッシュ政権が「朝鮮半島有事」「第3次朝鮮戦争危機」を準備する道具としての有事法制整備。
(1)「第3次朝鮮戦争の危機」を未然に防ぐことこそが有事法制阻止の決定的意義。
(2)アメリカには前科がある−−米の先制攻撃寸前にまで緊迫した1993〜94年の「北朝鮮の核開発疑惑」と「第2次朝鮮戦争」の危機。
(3)一切の責任はアメリカにある。
(4)有事法制は「朝鮮半島有事」「第3次朝鮮戦争の危機」を防止するものではなく引き起こすもの。
(5)「有事」を決めるのは一体誰なのか。いつ、如何なる段階で、如何なる方法で「有事」を発動するのか−−事実上全てをアメリカの政府と軍が決定。
(6)自衛隊の指揮権の米軍への一部委譲とシビリアン・コントロールの無力化。

W.自民党・財界・右翼反動勢力による新たな改憲戦略、「下位法」による「上位法」の否定、「平和憲法」機能停止法としての有事法制。
(1)1999年の反動諸立法強行を転機とする政治反動と軍国主義化の新段階。
(2)驚くなかれ。「包括法」(安保基本法)、「下位法」(有事法制)で「上位法」(「平和憲法」)を機能停止に追い込む改憲戦略は既に1990年代の初めから構想されていた!

X.4つの悪法からなる有事関連法制とその法的具体的危険性。
(1)4つの悪法からなる有事関連法制。
(2)集団自衛権行使を盛り込む「安全保障基本法」。日本が攻撃されてもいないのに対外侵略行動を可能にする「前段階」規定。
(3)周辺事態法を完結させる自衛隊法の改悪=「第1・第2分類」の法制化。
(4)我が国全体を米軍基地にしてしまう驚くべき「米軍新法」。
(5)有事が宣言されるだけで国民のあらゆる権利が制限され剥奪される。
(6)戦争に反対する諸個人や反戦運動が処罰され弾圧される。本質は「軍事独裁」。

Y.「テロ対策特措法」の時とは違う。複雑だが絶対安定状態から転落した不安的な小泉政権に有事法制反対の声を集中しよう。
(1)複雑になったが反撃のチャンスはある。
(2)ブッシュ政権の戦争拡大に反対する闘いの一環としての有事法制反対の闘い。
(3)ブッシュの対北朝鮮戦争挑発に反対し南北対話と南北統一を目指す韓国内の反戦平和運動と連帯して、有事法制を阻止しよう。





ブッシュ政権の対北朝鮮戦争挑発政策と小泉政権の加担・追随


−−−−−−−−−−−−−−− 目 次 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−
T.はじめに。
(1)ブッシュ政権の対北朝鮮戦争準備と日本の有事法制整備。
(2)1993〜94年危機を繰り返してはならない。
(3)南北対話の再開。朝鮮半島の和平と緊張緩和の流れを妨害してはならない。

U.ブッシュ政権の対北朝鮮戦争挑発政策と「悪の枢軸」戦略。
(1)クリントン政権時代後半の米朝対話路線の清算。

(2)北朝鮮に対する軍事的恫喝と軍事的挑発。
(3)「包括的取り扱い」という名の無理難題。「米朝合意」の事実上の破棄。
(4)「悪の枢軸」とブッシュ大統領の東アジア歴訪−−“北朝鮮包囲”を鮮明に。
(5)作られた「北朝鮮の脅威」。

V.アメリカの新しい軍事的覇権主義−−対イラク戦争準備、対北朝鮮戦争挑発政策、グローバルな戦争拡大。
(1)2つの「戦略敵」。今は対イラク戦争準備に集中。
(2)対イラク戦争準備のための術策的な「中東和平」の追求。
(3)北朝鮮に対しては当面戦争挑発はするが戦争は回避する。
(4)戦争拡大と「戦時体制」だけがブッシュの政権延命策。
(5)アメリカの“新しい軍事的覇権主義”、“新しい帝国主義”−−世界中に戦争を拡大し軍事介入をグローバル化。

W.北朝鮮への核先制攻撃政策とブッシュ政権の核戦略の転換。
(1)“抑止力としての核”から、“使用する核”への核戦略の根本的転換。−−イラクと並んで標的は北朝鮮。非核途上国に対する言語道断の核の恫喝。
(2)北朝鮮の地下施設破壊を目的とする小型核爆弾の開発推進を指示。
(3)北朝鮮の小型核による地下施設攻撃はミサイル防衛(MD)体制の一環。
(4)孤立するブッシュ政権。イラク攻撃、北朝鮮攻撃、「悪の枢軸」戦略のごり押しと核先制使用戦略が思わぬ弱点に。

X.ブッシュ政権の対北朝鮮戦争準備の最大の弱点は韓国。ブッシュと対決し南北対話・南北統一を求める韓国民衆の闘い。
(1)ブッシュ政権の対北朝鮮戦争準備の最大の弱点は韓国情勢。
(2)米のアフガン侵略に反対し、米韓軍事演習に反対する反戦平和運動の前進。
(3)南北対話が盛り上がるたびに北朝鮮敵視政策でそれを妨害するアメリカ。
(4)日韓民衆の連帯した力で小泉政権の対北朝鮮敵視政策をはね返そう。

Y.ブッシュ政権に同調し再び対北朝鮮敵視政策を強め始めた小泉政権。有事法制強行は戦争挑発行為。
(1)有事法制を阻止する闘いこそ、ブッシュの対北朝鮮戦争挑発を挫折させる闘い。
(2)再び始まった北朝鮮敵視政策、反北朝鮮キャンペーン。
(3)小泉政権の対米追随とその矛盾の拡大。

2002年3月25日
『平和通信』編集局




資料編

○有事法制に関する最近の新聞記事より
○ブッシュ大統領による一般教書演説
○朝鮮半島を巡る軍事力
○有事法制について 内閣官房2002年1月
○わが国の安全保障政策の確立と日米同盟 自民党政務調査会 2001年3月
○平和と繁栄の21世紀をめざして 経済同友会2001年4月
○国民非常事態法制定を提言する 平和・安全保障研究所1999年8月
○有事法制整備の基本方針の全体像 与党協議会への政府提出文書から2002年2月
○非常事態措置諸法令の研究 三矢研究より
○自衛隊法(抜粋)