多国籍軍参加論争、集団的自衛権論争の一面化・歪曲を批判する |
−−改憲阻止、多国籍軍参加反対=自衛隊即時撤退運動をより一層強化するために−− |
T.はじめに−−多国籍軍参加決定の独断と暴走の“弱点”。憲法論争、国際法論争の両方から攻めるべき。
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(1) 多国籍軍参加の小泉首相の独断専行と暴走は弱さの現れ。
政府は6月18日、イラク多国籍軍への参加を、国内世論の反対と懸念・不安を無視し何の説明責任も果たさず、大慌てで閣議決定しました。先のブッシュ・小泉の日米首脳会談で首相個人の一存で勝手に参加を公言してから、わずか10日です。まるで「首相独裁」。有無を言わさず帰国後大急ぎで政府与党内での参加合意取り付けを行い、15日には疑問だらけでデタラメな「多国籍軍参加の政府見解」なるものを発表しました。
本来なら憲法論争、国際法論争、あるいは新法制定が必要な、国の重大な軍事外交政策の転換です。「政府見解」や衆院でのアリバイ的な閉会中審査でお茶を濁して済むものではありません。なのに何一つまともな論議もなしに、6月28日の「主権委譲」を持って一片の「政令」改正だけで参加を実現したのです。
※「イラクの主権回復後の自衛隊の人道復興支援活動等について」6月18日閣議了解
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2004/0618ryoukai.html
“6月28日の4時間の空白”という事態に気付かれたでしょうか。−−首相がなぜこんな無謀なことをしなければならなかったのか。ここにその秘密があります。詳しくは第U章(1)で述べますが、この4時間の間、日本は“イラク派兵の法的根拠の喪失”という異常事態に陥ったのです。そしてこの同じ事態は4月から6月まで「主権委譲」を控えてすでに外交・軍事関係当局の間で問題になっており、これをどう切り抜けるかをめぐって政府がてんやわんやしたのです。
※「宙に浮いた派遣部隊 多国籍軍参加の矛盾露呈」(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20040629/mng_____sya_____005.shtml
参院選に突入しています。年金改悪の強行と併せてこの多国籍軍参加の独断専行は、小泉政権の支持率の急落となって表れています。昨年の衆院選ではイラク特措法が争点から外されたのですが、今回の参院選では、不十分とはいえこの多国籍軍参加問題が争点の一つになっています。
首相の暴走は強さの表れではありません。弱さの表れです。きちんと説明できない、説明しようとすれば次々ボロが出てくる、だから審議や議論を逃げているのです。首相が説明できないものを与党の各候補者が説明できるわけがありません。参院選の間、声を大にしてこの弱点を徹底的に追及し、多国籍軍参加の違憲・違法性を明らかにし、参加反対、自衛隊撤退の運動を強化していかねばなりません。
(2) 多国籍軍参加反対論争は歪曲され切り縮められている。改憲につながる歴史的な意義を持つが故に全体像をつかまねばならない。
しかしこの多国籍軍問題は、久しぶりに世論の注目を浴びているにも関わらず、論点全体が正しく提示されていません。あまりにも集団自衛権行使と指揮権所属論争に一面化され歪曲され、根本的争点を外しているように思えてなりません。
第一の欠陥は、自衛隊居座りの国際法上の違法性を全く攻めていないことです。自衛隊派兵・駐留は、「事後的参戦」という形のイラク侵略戦争への参戦であり、米英と同様の国際法違反を犯していることに変わりないのです。しかもなぜ今回の多国籍軍参加問題が浮上してきたのか、事の発端が“自衛隊の法的地位”の問題、国際法上の欺瞞と違法性にあることを全く指摘していません。政府与党の弱点はまさにここにあるのです。集団自衛権行使、指揮権の所属などの論点も、“自衛隊の法的地位”との関わりで位置付けて初めて政府の矛盾、弱点が鮮明になるのです。
第二の欠陥は、憲法論争が政府に大きく譲歩した地点で行われていることです。「集団的自衛権」か「個別的自衛権」か。しかし事の本質は「自衛権」の問題ではないはずです。日本から遠く離れたイラクの地に他国領土に重武装の軍隊を派兵しておいて日本の「自衛権」もクソもないでしょう。憲法第9条そのもの、武力行使、交戦権そのものが問題なのです。
第三に、にも関わらず今回の集団的自衛権論争は歴史的に重要な論争です。なぜなら憲法改悪に弾みを付けるからであり、憲法改悪とは要するに無制限な集団自衛権行使を実現するためのものだからです。今回の多国籍軍参加をこのまま容認してしまえば、憲法改悪にストレートにつながっていく危険性をはらんでいます。改憲阻止のためまずは今回の多国籍軍参加を撤回させる。その決定的な意義を改めて強調したいと思います。
以下、第U章では、与野党論争から抜け落ちている“自衛隊の法的地位”の欺瞞と違法性を問題にします。イラク領土に外国軍を派兵することは国連憲章に違反する侵略行為である。この当たり前の問題を明らかにします。その上で国際法上の欠陥や矛盾を結局は政治的力関係と闘いが決することを主張します。
第V章では、政府が自衛隊居座りを正当化する唯一の根拠、安保理決議1546の欺瞞と欠陥を真正面から批判することの意義を確認します。第W章では、憲法論争の一面性を批判し憲法第9条を前面に押し出す意義を述べたいと思います。
最後に第X章では、なぜここまで無理をしてまで小泉首相は多国籍軍参加を独断先行しイラクに軍隊を居座らせようと躍起になっているのか、日本支配層の真の狙いについて簡単に触れます。
U.「主権委譲」で再び露呈する“自衛隊の法的地位”の欺瞞と違法性。−−元々イラクへの派兵・居座り自体が主権侵害の侵略行為。
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(1) 「主権委譲」がきっかけで露呈した“自衛隊の国際法的位置”の空白。
今回の事の発端は、6月末のイラク暫定政権への「主権委譲」でした。これをきっかけに、“自衛隊の国際法的位置”に空白が生じたとして政府与党が大慌てしたのです。理由はCPAのお墨付きがなくなるというものです。6月末で連合国暫定当局(CPA)が消滅する。そうすれば自衛隊がCPAと結んでいた「地位協定」が無効となる。そうなれば自衛隊が“違法”“非合法”になる。しかも現在日本は暫定政権とも「地位協定」を結んでおらず、全くの“無協定”状態になるのです。
※昨年、イラク特措法をめぐる国会論戦の中で、自衛隊の法的地位をめぐる合法・非合法性について争われた。この時政府は、CPAの同意で、CPA規則第17条に基づいて自衛隊はイラクに派兵されると主張した。これに対して、CPAの「同意」を得てもそれはイラク国民の同意ではない、自衛隊派兵とイラク国民との国際法的関係はどうなるのか、自衛隊は本来イラク国民の同意なしには活動できないはずだ、と追及されたが、福田官房長官(当時)、川口外相はしどろもどろで、まともに応答できなかった経緯がある。「第156国会 参議院・外交防衛委員会−(3)イラク復興支援特別措置法案について」http://www.eda-jp.com/pol/iraq/030710-3.html
※今年1月政府は、自衛隊がCPAの一員として処遇されることを認めながら、戦時国際法の適用は受けないと答弁した。ところが国連安保理決議1483は、CPAのもとにあるすべての関係者にジュネーブ条約、ハーグ陸戦法規など国際人道法の遵守を明記している。政府はその整合性を一体どう考えるのか。つまり連合国要員である自衛隊がどうして戦時国際法の適用を受けないのか。更には自衛隊は捕虜をどのように扱うのか。政府は、自衛隊が抵抗勢力に捕まったときは捕虜の扱いを受けると言うが、それは自衛隊が軍隊の構成員であり、交戦者の資格を持つということを意味するのではないのか。等々。様々な言い逃れ・ごまかしからくる矛盾が追及された。http://akamine-seiken.naha.okinawa.jp/data/04.01.270.htm http://www.t-yamaguchi.gr.jp/kokkai/2004/4-1-29g.html
※「自衛隊に占領軍特権 国内法の「空白」はイラク市民の人権への脅威」(核兵器・核実験モニター203号)http://www.peacedepot.org/nmtr/bcknmbr/nmtr203.pdf
実は、政府は当初、イラク暫定政権と直接、「地位協定」を結ぶ交渉をやっていました。CPAとの「地位協定」を暫定政権との「地位協定」に事務的に衣替えするだけで、多国籍軍に参加しなくてもイラクでの“自衛隊の法的地位”を確保できると軽くみていました。ところがそれが今年5月に不調に終わったのです。
その背景にあるのは、安保理決議1546をめぐる対立、占領支配の継続を主張する米英とこれに反対する欧州各国との対立です。多国籍軍の地位、権限や形態も大きく揺れ動きました。その結果CPAは、暫定政権が自衛隊と個別の「地位協定」を結ぶのは不可能だとの見通しを日本側に伝達、これに驚いた日本政府が5月の連休明けにから急遽、多国籍軍参加への法的整備に着手したというのです。
※「多国籍軍参加、検討わずか1カ月前」(日経新聞)
http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt69/20040615NN002Y92515062004.html
首相と官邸は大慌てしました。なぜか。本来、イラクという他国領土に重武装の軍隊を一方的に派兵するのは如何なる屁理屈を付けようと国際法上の侵略行為です。元々合法性、正当性に疑問符が付いていたのです。それを「CPAの要請」を盾に辻褄を合わせてきたのですが、このままではその苦し紛れの論理自体が破綻してしまいます。自衛隊イラク派兵の侵略者的な本質が露わになるのです。
※そもそも自衛隊のイラク派兵は、米英の対イラク侵略戦争を支持し、侵略戦争の継続=占領支配に参加・加担するもの、イラク侵略戦争への“事後的参戦”である。その意味で自衛隊派兵は、国連憲章と国際法を破って何の「大義名分」もなしに一方的にイラクに侵略した米英両国と同様、侵略の共犯者、侵略者なのである。
イラク戦争の違法性については今では有り余るほどの証明と証拠が示されており、国際法的な違法性は動かし難いものとなっている。侵略の唯一最大の根拠とされた「大量破壊兵器」がブッシュ政権のウソ・でっち上げであったことは今や明らかだ。元UNSCOM現地査察責任者スコット・リッター氏や元UNMOVIC委員長ブリックス氏の証言、更にはブッシュ政権のウソ・でっち上げに良心の呵責を感じて辞任し内部告発したケイ団長をはじめ数々の政府高官の証言等々。以下の私たち署名事務局の論説を参照。
○http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Japanmilitarism/cause_lost.htm
○http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Iraq/aftermath2.htm
○http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Bushwar/arrange_iraq_attack14.htm
実際6月28日の「電撃的主権委譲」の際に“4時間の空白”が生じました。「主権委譲」が2日前倒しされたため、6月30日を前提に動いてきた政府が大慌て、急遽持ち回り閣議で、暫定政府の承認、多国籍軍参加の施行日を2日繰り上げる閣議決定をする羽目に陥ったのです。ところが閣議の了承は午後7時45分、「主権委譲」は午後3時20分(いずれも日本時間)、この4時間25分の間、政府の派兵の法的根拠は失われたのです。空白は空白、わずか4時間とは言え法的根拠の喪失には違いありません。政府の責任は重大です。
※政府 展望なき「歓迎」 新政権を閣議で承認(西日本新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040629-00000015-nnp-kyu
※時間の「空白」問題ない=多国籍軍参加手続きで−石破防衛庁長官(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040629-00000845-jij-pol
(2) 多国籍軍参加で辻褄合わせ。ところが今度は憲法違反との二律背反に。
そこで政府が持ち出したのが多国籍軍参加です。“自衛隊の法的地位”をクリアするには、@暫定政権との個別の「地位協定」を結ぶか、A国連安保理決議で法的地位が保証される多国籍軍に参加するか、二つに一つ。@がダメならAしかないという訳です。安保理が全会一致で採択した安保理決議1546は「多国籍軍の駐留は暫定政府の要請に基づくもの」と明記している→多国籍軍に参加すれば暫定政府の同意が得られたことになる、というのです。
ところが多国籍軍に参加すれば、今度は憲法、集団自衛権行使の従来見解に反する。あちらを立てればこちらが立たず、になるのです。切羽詰まった小泉首相が一存で、憲法違反を承知で多国籍軍参加のごり押しを決めたのです。国際法はごまかせないが憲法なら何度もごまかしてきた。世界の目は厳しいが日本の世論は俺に甘いと思い上がったのでしょう。以降、多国籍軍参加を前提に、辻褄合わせとごまかしに躍起となったのが、参加をめぐるドタバタ劇だったのです。私たちがメディアを通じてその様子を知ったのは、ここからです。
※イラク自衛隊、多国籍軍参加を検討 主権移譲に向け政府(朝日新聞)
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/seiji/20040528/K0027201910024.html
※多国籍軍参加方針を決定 人道復興支援に限定 イラク自衛隊で政府(共同通信)
http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2004/iraq4/news/0609-1657.html
多国籍軍参加ごり押しのため、政府が次にねじ曲げごまかそうとしたのが、憲法第9条です。多国籍軍の主任務は、暫定政権及び占領の継続に反対する反米レジスタンス、反米武装勢力のせん滅・掃討であり、武力行使が中心です。多国籍軍参加は当然、この武力行使との一体化を意味するのです。これは明らかに憲法第9条が禁じ否定する第一項の「国権の発動たる戦争」「武力による威嚇」「武力の行使」に該当し、第二項「交戦権」に該当します。また政府がこれまで否定してきた米英侵略軍との「集団自衛権の行使」そのものです。
“自衛隊の法的地位”の二つの選択肢自身が政府の解釈に過ぎません。しかしこの彼らの論理に沿っても、自衛隊の地位が危うくなっているのが現状なのです。こうして、一方で彼ら政府が立てた「法的地位」「合法性」を担保しようとすれば、他方で憲法を破らねばならなくなったのです。国際法的な「合法性」も、憲法の平和条項も両方を守ろうとすれば、自衛隊は撤退させるしかない、非常に苦しい立場に追い詰められている。これが日本政府と自衛隊が現在置かれている現状なのです。−−この政府の弱点、“4時間の空白”の責任を徹底的に追及すべきです。
(3) 国際法の“二重構造”と根本矛盾:結局は闘いこそが理不尽な占領容認の国際法、国際法的「正当性」「合法性」を暴き突き崩す。
日本政府は安保理決議1483に基づいてCPAの要請やCPAとの地位協定を正当化し、1546に基づいて暫定政府の要請による多国籍軍への参加を正当化させています。しかしそうした占領支配を追認・容認する国連決議がそもそもどこまで“自衛隊の法的地位”をクリアするのか、どこまで国際法上の合法性、正当性を担保するのか。−−ここに戦後世界中を侵略してきた米国を筆頭に、西側帝国主義諸国大国が安保理常任理事国を牛耳り、拒否権を持ち決定的主導権を持つ国連という国際機関、その安保理決議、そして現在の国際法上の根本的欠陥があるのです。
今回のイラク戦争・占領をめぐる国際法の流れは対イラク開戦の戦前と戦後で明らかに断絶があり、2つの根本的に異なる流れがあります。いわば“二重構造”とでも言えるものです。
a) 米英の根本的な違法性、国連憲章違反:米英は、イラクの脅威が全くないのに、ありもしない「大量破壊兵器の脅威」を勝手にでっち上げ、国連憲章を暴力的に破壊する形でイラクを侵略しました。この時米英は、開戦を正当化すべく決議1441をごり押ししようと世界中を脅しつけたのですが、安保理の多数派が結局これに従わず、逆に米英が完全に安保理で孤立。自らが提出した安保理決議1441の採択を断念する格好で侵略戦争という暴走に走ったのです。安保理決議なしの戦争という意味でも、何の正当な根拠もなしに主権国家を崩壊させる国際法侵犯の侵略戦争であることは明白です。
b) 米英占領の追認・容認の国連安保理決議:ところが国連と安保理は戦後一転して、米英の軍事占領支配を容認する決議を3本(1483、1511、1546)も採択しました。決議案を出したのは全て米英侵略者の側です。CPAと占領支配を追認したのが安保理決議1483、主権委譲前に「多国籍軍」を先行させることを狙ったのが1511、欺瞞的な主権委譲=占領支配の継続を容認したのが安保理決議1546です。まるで侵略者へのご褒美であるかのような決議です。“実効支配”とか、“占領という事実を認めざるを得ない”とか屁理屈を付けながら、占領を「合法化」「正当化」する“占領法規”の役割を果たしているのです。
※本来なら、国連憲章に違反しイラクに侵略した米英は裁かれるべきである。ところが米は戦争犯罪、大量虐殺、人道に対する罪を裁く国際刑事裁判所(ICC)の設置に最後まで反対し妨害した。もちろん署名を拒否している。米兵が裁かれることになるからである。このICCはまさにファルージャやアブグレイブ、すなわちジェノサイド、一般住民の虐殺やレイプ(性的虐待)、捕虜の取り扱いなどを定めた戦争法規定違反などを裁くためのものだからだ。“世界の憲兵”“世界の侵略者”の鏡として自国だけは侵略をやりたい放題できる特権を確保しようとしているのである。現行の国連と国連決議はかかるアメリカやイギリスという“無法者”を野放しした上に成り立っている。
このa)とb)は根本的に対立し矛盾するものです。a)の根底には米英の国連憲章違反という厳然たる事実があります。安保理決議も採択されませんでした。ところが現実にイラクを侵略した米英が力づくで占領支配を続け、石油支配と中東覇権を手放そうとしないのです。
現在の国際的な力関係の下ではa)b)はどこまで行っても並行線、否そのまま放置すればむしろb)の方が事態を制するのです。そこで日本政府は、この力関係に乗じ、今回の“自衛隊の法的地位”問題で明らかなように、b)を徹底利用して、侵略軍・占領軍からの要請や傀儡政府からの要請、多国籍軍への参加等々で「合法性」「正当性」を確保しようとしてきたのです。しかしこの「合法性」「正当性」はどこまで行っても、侵略者・占領者からのお墨付きです。a)の貫徹を主張する闘うイラク民衆や国際反戦運動からすれば、自衛隊はれっきとした侵略軍・占領軍の一部であり、“自衛隊の法的地位”は最初から国連憲章に反する違法、非合法なもの、無効なものです。自衛隊は、イラク民衆からの要請・同意ではなく、侵略者・占領者からの要請・同意という根本矛盾、根本的弱点を抱えているのです。
侵略者は力に任せて自らを正当化しようとする。被侵略者はこれに抵抗する。結局は国際法上のこの矛盾は、政治的力関係と闘いが決着を付けるのです。イラク民衆の闘い、国際反戦運動の闘い、この連帯し共同した闘いこそが国際法のこの“二重構造”や“根本的欠陥”を押し込み、米英の侵略者、これに加担する日本の侵略者を追い詰めていくのです。それは、イラク戦争をめぐる国際法上の政治対立、政治闘争です。米英帝国主義の侵略・占領とこれに命をかけて抵抗するイラク民衆、国際反戦運動との闘い、米英に加担する日本帝国主義の軍事介入とイラク民衆、日本の反戦運動との闘いです。侵略と反侵略、占領と反占領、帝国主義と民族解放、抑圧民族と被抑圧民族の対立・闘争です。
私たち日本の反戦運動の課題は、現地で米英占領軍、米英傀儡政府に命がけで抵抗するイラク民衆のレジスタンス運動と連帯し、多数の国際世論を引き付けることによって、この理不尽な国連決議の違法性、無効を真正面から突いて闘うこと、日本政府に向かって“自衛隊の法的地位”の根本的な違法性、無効を突いて闘うことです。
V.必要なのは、安保理決議1546を自衛隊居座りの根拠にさせないための小泉政権に対する批判と追及。
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(1) 私たち反戦運動は、安保理決議1546を真正面から批判しその誤り・欠陥を暴いて、小泉政権を追及すべき。
政府の多国籍軍参加の唯一の拠り所は安保理決議1546であり、特に「暫定政府による多国籍軍駐留要請」という文言です。政府は自衛隊を何が何でも居座らせるためにこの論理をごり押ししたのです。小泉首相は占領追認の1546を最大限利用する。対する私たちは1546の違法性、欺瞞、無効を突く。米英の侵略は今や誰も否定できない歴史的な事実でるが故に、歴史的な大義と正当性は私たちの側にあります。
そもそも1546もその“全会一致”も、金科玉条のもの、国際法的に絶対のものではないのです。もちろん国連憲章の蹂躙と破壊であり、イラク侵略・占領を合法化・正当化するものではあり得ません。
あとは私たちがどこまで1546を真正面から批判し政府を徹底追及するかです。私たちはイラク侵略戦争にも、米英侵略軍そのものである多国籍軍にも、その多国籍軍に駐留を要請する暫定政府にも、断固反対です。こんなものを果たして主権委譲と呼べるのか。占領の延長ではないのか。当然イラク民衆はこんなものを認めるわけがありません。暫定政権への反対と批判が噴出するのは時間の問題でしょう。こんな1546を自衛隊居座りの根拠にするなどもってのほかです。
※<多国籍軍参加>自衛隊活動の政府理由説明(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040624-00000027-mai-pol
(2) 主権委譲なき「主権委譲」、米英軍事占領の永続化を暴露しよう。
前章U章(3)の、国際法上の矛盾、“二重構造”に即して、もう少し詳しく1546を検討しましょう。そこには2重の矛盾・対立があります。
−−a)とb)の矛盾:1546はb)であり、根本的にa)に相反するもの、国連憲章を侵害する違法なもの、無効なものです。
−−b)自身の自己矛盾:同時に、1546はそれ自身が欺瞞的で矛盾したものでもあります。それは一方で「占領の終結」「完全な主権委譲」を唄いながら、他方で提案者である米英自身が「占領の終結」「完全な主権委譲」を認めず、米英軍を居座らせて睨みをきかせ、占領の永続化を図ろうとしているからです。ブッシュとブレアは、開戦時にもウソを付きましたが、今回もまたウソを重ねたのです。
※決議全文「Security Council resolution 1546
(2004)」英語
http://www.un.org/Docs/sc/unsc_resolutions04.html
※「イラク新決議:国連安保理決議の要旨」(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/mideast/news/20040609dde007030021000c.html
安保理決議1546は一言すれば、米英占領の終結と完全な主権委譲、完全な主権回復を目的とした、イラク民衆への主権委譲=占領終結決議の“はず”です。現に決議には「安保理はイラク暫定政府の発足と選挙による政府への移行を歓迎する。また、占領の終結、6月30日期限での独立した暫定政府への完全な主権移譲を望む」と明記されています。
ところが看板と中身は大違い。「完全な主権委譲」「完全な主権回復」「占領終結」というきれい事の基本目的とは裏腹に、そこに書かれている暫定政府や多国籍軍をめぐる諸規定や文言は、それとは全く正反対のこと、つまり実質的権力を米英が牛耳り続けるという露骨な占領継続政策、占領継続の制度的保証措置がたくさん盛り込まれているのです。
また決議は、国民会議を開催し移行政府を形成した上で、今年末あるいは来年初めに選挙を実施するスケジュールを明記しています。しかし傀儡の暫定政府と米英軍占領の下での選挙とは一体どんな選挙なのか、議論の余地なく明らかです。民主選挙でも自由選挙でもあり得ません。
イラク占領に抵抗し反対するイラク民衆と国際反戦運動の立場から見れば、これらは全てイラク侵略の継続に過ぎず、開戦時からの根本的な違法性の延長線上でしかありません。ここまでイラクを泥沼に陥れながら、ブッシュもブレアも、イラクを完全に手放す政治的決断をやっていないのです。ファルージャなどで抵抗するスンニ派やシーア派サドル・グループなど、これまで占領に抵抗してきた多数のイラクのレジスタンス運動やイラク民衆が、暫定政権を受け入れず反対しているのは当然です。支持する多くの人々も米英の直接占領よりも事態が改善するだろうという期待感・幻想からのものに過ぎません。
否、むしろ米英の傀儡暫定政府が存在する限り、米英多国籍軍が居座る限り、真の主権委譲、真の独立国家建設はまともに進まないでしょう。その意味で、1546はイラクの独立を妨害するものなのです。従って小泉首相が、石油資源や中東覇権に食い込む下手な野望を抱くのではなく、イラク民衆、イラクの未来を真剣に考えるなら、これの邪魔になる暫定政権と多国籍軍を批判すべきだし、そもそも自衛隊を主権委譲に敵対する多国籍軍に参加させるのを撤回すべきです。
安保理決議1546の欺瞞と違法性は、6月末まで米英が直接軍事占領してきた仕組みを、間接的な軍事占領に粉飾するための2つの“道具”にあります。「暫定政権」と「多国籍軍」です。
−−米英=多国籍軍の“超法規的”“治外法権的”位置付け。
米英軍=「有志連合軍」と呼ばれてきた侵略軍・占領軍が、看板だけ「多国籍軍」と書き換えられます。早い話が“居座り”です。イラク軍は現在まともに機能していません。暫定政権の「暴力機構」「常備軍」は、米英多国籍軍がその役割を果たすことになります。米英軍である多国籍軍が、事実上暫定政権から何の制約も受けない“治外法権”、あるいは“絶対的存在”になっているのです。
現に「主権委譲」後も米英は、多国籍軍の指揮権は自分たちが持つと主張しています。パウエルやウォルフォウィッツらは、米軍を何年も駐留させると一方的に押し付けています。安保理決議1546ではフランスなどの反対で、暫定政権と米英軍との間に「調整機関」を持つと決められましたが、両者の意見が割れた場合はどっちが最終的権限を持つのかは曖昧なままであり、事実上米英側の指揮権保持がごり押しされたのです。
しかも、米英軍は自分の傀儡である暫定政権との間でさえ「地位協定」を結ぶことが出来ない状況なのです。そして何と、代わりに、現在の連合国暫定当局(CPA)指令17号を引き続き地位協定として準用する方針を明らかにしたのです!これは明らかに法的にも軍事占領支配の継続、占領軍特権の継続をごり押ししているのです。これのどこが「完全な主権回復」「完全な主権委譲」なのでしょうか。呆れてモノが言えません。
※ロドマン米国防次官補は6月16日、イラクへの「主権移譲」後に編成される多国籍軍の指揮権に関し、「国連安全保障理事会決議の『統一指揮下にある(アンダー・ユニファイド・コマンド)』は、現在の状況において米軍の指揮を意味する」と断言し、イラク側の指揮権を否定した。
1546決議の中で、恒久政権が発足し政治プロセスが完了した後に多国籍軍の駐留が失効するとされている点についても「失効が多国籍軍の撤退と自動的に同じになるわけではない」と主張し、イラク側を脅しつけイラクの要請という形式を取らせて駐留を延長する考えを示した。
また、多国籍軍とイラク暫定政権との地位協定締結については、暫定政権側が長期にわたる協定を望んでいないとして締結しないことを述べた。代わりに、現在の連合国暫定当局(CPA)指令17号を引き続き地位協定として準用する方針を明らかにした。これは明らかに軍事占領支配の継続であり、占領軍特権の継続である。
※多国籍軍指揮権は米軍に 米高官が確認(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040617-00000086-kyodo-int
※「イラク新決議:多国籍軍に関する主な内容」(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/mideast/news/20040610k0000m030164000c.html
−−米CIAエージェントが首相に。暫定政権は米英の傀儡政権。
「完全な主権委譲」「完全な主権回復」の結果、引き継がれる暫定政権は米英の傀儡政権でしかありません。暫定政権は米英占領支配永続化の隠れ蓑、イチジクの葉っぱです。米政府は、すでに4月段階で下記のような露骨な本音を明け透けに明言していますが、真の狙いは占領の永続化なのです。
−−暫定政権は「選挙管理政権」に過ぎない。よって立法権は持たない。新しい法律の制定や米政府が認めた法律を修正することもできない。
−−暫定政権が立案する内外政策は「米国駐イラク大使」と「調整」する。
−−暫定政権は駐留米軍の法的地位を保護する。
−−イラク軍に対する指揮権は米軍が持つ。等々。
※「極めて限られた主権移譲に 米、最終決定権手放さず」(共同通信)
http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2004/iraq4/news/0424-1214.html
6月28日、CPAは表向きは「消滅」しましたが、実質的なCPAの権力と機能は米国大使館と米英多国籍軍に引き継がれました。米国大使館は、何と1700人を擁する世界最大の米国大使館と言います。
旧傀儡政権=統治評議会は、新傀儡政権=暫定政府に代わります。暫定政府の各機関のトップには米国顧問団数百人が指揮を執ることになります。しかも暫定政府のトップであるアラウィ首相は何と米CIA、英M16のエージェントをやっていた怪しい人物、分かりやすく言えば“米英のスパイ”なのです。
首相や大統領や主要閣僚を選んだのはCPAのブレマー総督です。統治評議会が色々口出ししましたが、統治評議会自体が大枠米英政府の下で働いてきたスパイや協力者ですから、暫定政府の組閣時の内紛は米英の利益と権益を侵すものではありません。最終的人事権はブレマーが握って決めたのです。6月28日以降はネグロポンテ米大使がこの人事権を握りました。
これら全体を眺めたら分かるように、行政権、立法権、司法権、治安維持の実権など、国家権力の根幹は全て米国が握っているのです。事実上“占領の継続”“半占領状態”です。
イラク戦争−イラク占領−欺瞞的な「主権委譲」下の占領の継続。このイラク開戦以来現在に至るまでの全ての時期にわたって、米英のイラク侵略の国際法違反・国連憲章違反という違法性は、6月28日以降の暫定政権下でも消えないし、変わらないのです。
W.多国籍軍参加は派兵の新段階−−政府に譲歩しすぎる憲法論争、憲法第9条を盾に真正面から論争に挑むべき。
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(1) 多国籍軍参加は自衛隊派兵の“新段階”。質的に新しい危険性と一層切迫性を増す撤退の必要性。
「多国籍軍に参加する。」小泉首相が国民や国会を無視し一存で決めたこの新しい暴走は一体何を意味するのか。−−結論を言えば、自衛隊派兵の新段階であり、軍事外交政策の根本的な転換です。イラク特措法と自衛隊の派兵と比べても質的にエスカレートした新たな段階です。
もちろん自衛隊がイラクに派兵された最初の段階から憲法違反は憲法違反です。イラク戦争・占領自体が国際法違反の侵略戦争であり、それに「事後的」にではあれ参戦することは武力による紛争の解決、交戦権を禁止する憲法第9条を蹂躙するからです。しかし実態が同じ米英軍であっても、「有志連合軍」と呼ばれていた段階と異なり、多国籍軍はより軍事弾圧的性格が鮮明になります。当然それへの参加は、「武力行使との一体性」を格段にエスカレートさせ、憲法第9条の蹂躙をもっとストレートにさせ、明文改憲ギリギリまで憲法を破壊することを意味します。
憲法論だけの話ではありません。イラクの現実を目を見開いて直視すべきです。暫定政権と米英多国籍軍は、「戒厳令」「非常事態令」を検討し始めました。ごく最近の大規模な波状的自爆攻撃や武装抵抗運動による同時多発的攻撃、反米・反占領の民族解放運動にかつてない危機感を抱き、力づくで押さえ込もうとしています。もし「戒厳令」が実施されればイラク全土は一気に想像を絶する血なまぐさい地獄絵と化すでしょう。そんな状況下で自衛隊は、大量虐殺・大量破壊の共犯者になるのです。
現に、日本政府が多国籍軍参加の根拠とする国連安保理決議1546は、多国籍軍の権限は「イラクの治安維持と安定のために必要なあらゆる手段を行使する」ことと規定しています。“あらゆる手段”とは国連官僚の用語で、文字通りの殲滅・大量虐殺・大量破壊を意味するのです。要するに、多国籍軍に参加する各国軍は米軍の指揮下で、米軍が行ってきたようなおぞましい殺戮、虐待、拷問など戦争犯罪の数々の片棒を担ぐということなのです。従来から政府が否定してきた「武力行使との一体化」そのものです。「我々は人道復興支援だから別なので・・」などという寝ぼけた言い訳が通用するわけがありません。
大量虐殺・大量破壊を断行する多国籍軍への反撃と抵抗が燃え上がるのは必至です。イラク民衆には抵抗する正当な権利があり、自らを防衛する権利があります。そうなれば米侵略軍と共同行動する自衛隊宿営地への攻撃、車列への攻撃、自衛艦への攻撃などが現実味を帯びて来ることは時間の問題です。このまま居座れば間違いなく自衛隊はイラク民衆に銃を向けることになります。何が何でもその前に撤退すべきです。
(2) 多岐にわたる指揮権論争。6点全部を最後まで追及すべき。
「多国籍軍に参加するが指揮権は日本にある」−−この政府の主張の後半、指揮権の所属を検討しましょう。指揮権論争と言っても、政府与党が詭弁と屁理屈でごまかしてきた論点は以下のざっと6点に及んでいます。直近では[ごまかし4]「文書了解」に注目されていますが、あくまでも野党側はこの6点全部を最後まで追及すべきです。
[ごまかし1]:そもそも「参加するが指揮権は日本にある」というのは軍事的に通用しません。多国籍軍に参加すると言うことは、米の指揮権下で行動すること以外の意味を持たないのです。しかも多国籍軍の最大の使命は反米武装レジスタンスを壊滅させることなのですから、戦争・武力行使を中心とする多国籍軍全体が米の指揮命令に従わないのなら、それは参加ではあり得ないのです。
[ごまかし2]:そこで政府は「指揮権」という言葉の2つの意味を使い分け、国内向け、米英向けで使い分けしたのです。@自衛隊そのものの直接的な指揮権が日本に属すること、A多国籍軍の一員としての自衛隊の指揮権は多国籍軍全体を指揮する米に属すること。この2つを、つまり国内向け、憲法解釈上は@を、米英向けにはAを使い分け、わざと混乱させているのです。しかし米英に対しても、国際法上も、多国籍軍に参加すると言うことは、Aでしかありません。それは明らかに従来から政府が否定してきた集団自衛権行使そのものです。
[ごまかし3]:次は「参加」でも「指揮権」に従わない虚構の論理を作るために、「指揮権」の概念崩しをやるのです。「指揮」と「司令部」をわざと分け、「指揮権」と「司令部の連絡・調整」を無理矢理分けたのです。政府が安保理決議に盛り込まれた”unified
command”という英文を「統一した指揮」ではなく、「統合された司令部」と強引に意訳し、「多国籍軍は各国軍隊の司令部を束ね、統合されたものとなるが、拘束力を持たない。司令部は連絡・調整をするだけに過ぎない」(外務省幹部)と驚くべき解釈をしているのです。
※「連絡・調整」関係と位置付け=政府、「理論武装」に腐心−多国籍軍参加(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040615-00000229-jij-pol
[ごまかし4]:当然野党と国民は納得しません。そこで、じゃあ証文をみせようとばかりに、「参加するが米の指揮下に入らない」を記した「了解文書」なるものを出してきました。しかしこれは6月18日の衆院閉会中審査の川口外相答弁を外務省事務方が勝手にまとめただけの作文。外相や政府側が渋々認めたところでは、それは米英の「公使」との口頭打診、あいまいな口約束だったのです。この点はキミット准将が、同趣旨のことを記者会見で述べたとしても同じことです。正式の外交文書ではあり得ないのです。
もちろん日本政府が国内対策として建前と本音を使い分け、米政府もこの使い分けを黙認するということはあり得ることです。米側からしても、これ以上多国籍軍の離脱・参加拒否が広がればイラク占領は完全に崩壊してしまいますし、日本側からしても自衛隊の国際法的な地位を政府の論理として「担保」するためにも、政府は参加するしかなく、参加条件を緩和してもらうしかないのです。しかし軍事上の根本的な原則は変えられません。米の指揮権下で任務に従事することに変わりはなく、多国籍軍の主任務である武力行使の一部を担うことには変わりはないのです。
※多国籍軍参加:米英了解文書 野党が一斉に批判(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/20040622k0000m010144000c.html
※米英了解、英文提出を与野党要求=細田官房長官「必要ない」−多国籍軍指揮権(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040621-00000310-jij-pol
[ごまかし5]:「米の指揮権に入らない」と言いますが、米兵の輸送も日本の指揮の下でやるというのでしょうか。デタラメにもほどがあります。自衛隊はこの間、サマワに引きこもって「人道復興支援」なるものを行っていたばかりではありません。イラク特措法の「安全確保支援活動」に基づき、虐殺や虐待をイラク民衆に対して行う米兵を、クウェートの米中央軍輸送部隊の指揮の下で輸送しているのです。直接的な後方支援、武力行使と一体化した対米軍事支援を行っているのです。それでも「指揮に入らない」と言い張るのでしょうか。それとも日本が米軍を指揮下に入れるというのでしょうか。
※補給は米軍指揮下の恐れ イラク多国籍軍参加の陸自(共同通信)
http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/shakai/20040618/20040618a4570.html
※<多国籍軍参加>「指揮権区別できるのか」自衛隊幹部も懸念(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040619-00000162-mai-pol
[ごまかし6]:政府解釈では、これまで集団自衛権行使に制約を課すために、「参加はできない」が「協力はできる」として、「参加」と「協力」を区別してきました。こうして多国籍軍への「後方支援」を正当化してきたのです。ところが今回、一足飛びにこの規定を投げ捨て、いきなり何の説明もなく「参加」も可能となったのです。もはや何でもありです。
※「協力」から「参加」へ=多国籍軍めぐる政府見解の推移(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040612-00000667-jij-pol
(3) 質的に変わる集団的自衛権論争−−他国の領土・領海での集団自衛権行使の踏み込みは初めて。
野党や一部メディアは、多国籍軍参加を批判する際、「それは集団自衛権の行使だ」と批判しています。もちろんそれは正しいのですが、最初から政府に譲歩しすぎています。というのも集団自衛権は集団自衛権でも、これまでの集団自衛権論争と今回の論争とは質的に異なるからです。
これまでとの質的違いを突かなければピンぼけです。従来の論争はあくまでも日本の領土・領海あるいはその周辺でのものでしかありませんでした。今回はなぜ日本の領土・領海から遠く離れたイラクという他国領土で、米との指揮権、集団的自衛権が問題になるのか、そこを追及すべきです。でないと今度は別の地域・国において、指揮権さえ独立し、「人道復興支援」を隠れ蓑にしさえすれば、米の侵略戦争への参戦が既成事実化していくことになってしまいます。また、戦前・戦中の日本の皇軍の満州侵略における「居留民保護」「満鉄利権」を口実とする「自衛権」と同様の事態が起こらないとも限りません。
従来の集団的自衛権論争は、戦後長い間にわたり、対ソ・対社会主義でソ連が攻めてくればどうするのか、という問題でした。日本が攻められれば米国が日本を防衛する義務がある。しかし米国が攻められても日本は米国を防衛する義務はない。「片務的集団自衛権」と呼ばれるものです。ソ連崩壊後、「対ソ」が「対北朝鮮」に変わりました。テポドンが飛んできたらどうするのか。テポドンが日本を狙っているのか米国本土を狙っているのか打ち上げ直後は分からない。テポドン対処で米のミサイル防衛に参加すべきだ。「片務的」から「双務的」に変え、米本土が攻撃されても日本が米と一緒になって北朝鮮を攻撃すべきだ。そういう方向へ発展してきました。
※言うまでもなく、現行の日米安保条約は、日本が攻撃された場合の共同防衛を規定した第5条、極東有事の時の米軍への基地提供を規定した第6条がある。イラクをめぐって議論されているのは、「日本有事」でも「極東有事」でもない。いきなりグローバルな日米共同軍事侵略が問題になっているのである。
何が違ってくるのか。それは形の上だけでも残っていた「自衛」「日本の防衛」という枠組みが根本的に変わることです。もちろん従来の論争においても、集団自衛権行使のきっかけや口実は、「日本の領土・領海で米軍が攻撃を受けた場合」「テポドンが飛来してきた場合」等々、あくまでも米国や日本が被害者であり攻撃を受けた、つまり「自衛」「防衛」を想定して議論をしていますが、実際には米国の先制攻撃戦争への参戦という形態の集団的自衛権行使が問題になっていました。
しかし今回は日本の領土・領海あるいはその周辺がイラクから攻撃されたり脅かされたわけではありません。そもそもイラクという他国領土に勝手に軍隊を侵略させておいて、その侵略者の間での「自衛権」「指揮権」を云々すること自体が不遜・傲慢ではないでしょうか。他人の領土で侵略者達が「殺戮・破壊は俺が仕切る、否俺が仕切る」と議論しても、侵略された者にとっては関係ありません。
地理的な制約を取っ払うことによって、「日本の自衛」「日本の防衛」という虚構、建前、口実が一気に剥がれ落ち、ストレートに他国領土へ共同で侵略し展開する、いわば「集団的侵略権」「集団的攻撃権」を押し出すことになるのです。
(4) イラクでの自衛隊展開が「個別的自衛権」「日本の防衛」?!−−ますます隘路に入る論争。
私たちは、しかし自衛隊の指揮権論争に大きな落とし穴があることを同時に指摘せざるを得ません。それは指揮権さえ多国籍軍=米軍の指揮権から独立しておれば、また日本の指揮なら、イラクに居座り続けることが逆に可能なのか、という問題です。指揮権が日本にあれば重武装し迷彩服を着たれっきとした軍隊がイラクに居座っても侵略・占領してもいいというのか。日本の軍隊がイラク民衆を攻撃したり銃撃したり虐殺することを「主体的に判断」すればそれでいいのか。そういう問題です。
集団的自衛権か個別的自衛権か。もちろんこんな議論は全くの誤りです。指揮権が日本にあれば良い、対米従属軍国主義なら悪くて日本単独軍国主義なら良い、こんなことが許されれば、日本が自国の「指揮権」で「単独」「主体的」に世界中どこへでも侵略し軍事介入できることになってしまいます。私たちは、指揮権が米にあろうと日本にあろうと、軍隊をイラクに居座らせること自体に反対です。
イラク特措法の国会論戦で論点になった憲法第9条そのものを、もう一度真正面から対置すべきです。抵抗するイラク民衆を武力鎮圧・武力制圧する多国籍軍に参加することは、どこから見ても、「国際紛争を解決する手段としての」「国権の発動たる戦争」であり「武力による威嚇又は武力の行使」なのです。
だから憲法論争についても、政府の解釈改憲に結びつく集団自衛権行使の捉え方を前提にして批判するのではなく、もっと根本的な、イラク特措法制定時の論争、イラクに派兵すること自体の違憲性を前に出して批判すべきです。論争が指揮権の所属問題だけに矮小化されると危険です。そもそもなぜ自衛隊という軍隊がイラクに居るのか?
その根本から問い直すべきです。
※第九条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
(5) 政府与党の次の目標は集団的自衛権の“解禁”。明文改憲につながる多国籍軍参加を撤回させよう。
日本の政府与党、支配層の次の目標は、改憲による集団的自衛権行使の“解禁”です。それは2000年10月の「アーミテージ報告」以来、米政府・軍の実力者が強く日本に要求してきたことです。同報告は「日本側の集団的自衛権の禁止は、日米同盟協力の制約となっている。この禁止事項を撤回することで、より緊密で有効な安全保障協力が可能になるだろう」と迫ったのです。そしてブッシュ政権下で国務副長官となったアーミテージ氏は、今年2月来日した際、「今日、報告で展望したことの多くが現実となった」と小泉政権の対米従属と対米忠誠を高く賞賛しました。そして集団的自衛権に関して「もう少しの柔軟性」「もう少しの公平な関係」と公言し、更なるエスカレーションを求めたのです。
6月27日、小泉首相は、遂に本音を明らかにしました。集団的自衛権の行使を公然と行うために憲法を改悪し集団的自衛権行使を新憲法に明記すべきだと主張したのです。「米軍が攻撃されても(自衛隊が)米軍と共同行動できないのはおかしい。憲法ではっきりさせることが大事だ。」しかし今回首相が暴走した多国籍軍参加は、まさにイラクでの「米軍との共同行動」です。すでに既成事実を先行させているのです。「日本の防衛」「自衛」ではなく、他国領土での米日共同の侵略行為なのです。まずは今回の多国籍軍参加を撤回させなければ、こうした既成事実がもっとエスカレートするでしょう。
※集団的自衛権行使は容認 改憲問題で首相表明(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040627-00000114-kyodo-pol
※憲法改正も「対米協調」で説明?=「荒さ」目立つ首相発言(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040627-00000539-jij-pol
自民党は2005年11月の結党50周年の党大会で改憲草案を公表する方針です。党の憲法調査会は6月15日、戦力保持、集団的自衛権行使を盛り込んだ新憲法草案の素案を公表しました。衆院憲法調査会長の中山氏は「今回の参院選で当選する議員は憲法改正手続きの国民投票法案の審議を行う」と発言しています。
しかし今回の参院選に突入してから、首相や自民党の改憲発言は突如トーンダウンしました。年金批判、多国籍軍参加批判で世論から予想を超える批判を食らったため、争点隠しに転じたからです。騙されてはなりません。参院選での与党の勝ち方如何で、改憲への危険は一気に高まるでしょう。その意味で参院選の隠れた最大の争点は改憲なのです。
※<参院選>憲法問題、自民は争点化避ける(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040701-00000155-mai-pol
X.イラク居座りが日本軍国主義の新しいエスカレーションの“軸点”に。一刻も早く自衛隊を撤退させよう!
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(1) 小泉首相は“確信犯”。多国籍軍参加=自衛隊居座りの独断専行の執拗さ、異常さ。何が何でもまず先にイラク居座りありき。
首相暴走の過程はそれほど複雑ではありません。第U章で詳しく経緯を述べましたが、何が何でも自衛隊居座りありきを先に決め、そこから逆算して事を運びました。ブッシュに取り入りほめてもらうためもありますが、それだけではありません。日本の支配層全体が目指す新しい軍事外交戦略を自分が独断専行でエスカレートさせようとしているのです。首相の腹は明らかに、行けるところまで行く、世論が猛反発し選挙で大敗北するところまで行く、ということです。
このままではイラク特措法の「安全確保活動」条項を盾にとって、来年3月のオランダ軍撤退後、サマワの治安維持に当たると言いかねません。これとは別に6月24日には何とサマワ以外の地域でも自衛隊を展開する可能性まで公言しました。一体どこまでエスカレートさせようと言うのでしょうか。彼にはイラク民衆の意志や要求も、国際法上の検討も、日本のこれまでの憲法や法律の制約との整合性も、眼中にはありません。
※サマワ以外の活動に含み 首相、治安安定すれば(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040624-00000330-kyodo-pol
小泉が総理総裁になってから、軍事外交政策は根本的に変わってきました。有事法制本体と関連7法の成立、靖国参拝、アフガン侵略、イラク侵略への加担、ミサイル防衛参加、対北朝鮮軍拡等々、野党第一党民主党を抱き込みながら次々と成功させてきたのです。いくら好き放題しても何のとがめもなくきたのですから、今回もへっちゃらだろうと思い上がったのでしょう。
(2) 政府与党だけでなく財界を含めて日本支配層全体が軍事外交戦略の根本的転換を狙う。政治日程に上った憲法改悪と無制限な集団自衛権行使。
日本の支配層は、首相と政府与党も、今や戦争党になった公明党も、グローバル企業トヨタがトップを牛耳る財界の司令塔・日本経団連も、侵略国家作りを完成させるべく改憲と教育基本法改悪を次の一大政治目標に設定しました。今回の参院選はその意味で決定的に重要なのです。
改憲が現実の危険になるのは戦後史を通じて2回目のことです。戦後直後の1950年代、まだ戦争の悲劇と犠牲、加害と被害の生々しさが日本全土を覆う下で、日本の支配層は本気で改憲を追求しました。そして安保闘争でその目論見が壮大な挫折を遂げてからは、改憲や教育基本法の改悪は差し迫った政治日程には上りませんでした。支配層が本気で、しかも実現の可能性を限りなく高めて本気で臨むのはそれ以来のことです。
日本の独占企業は、グローバル市場で市場制覇を目指すグローバル企業になり、アメリカの世界覇権の恩恵、西側の帝国主義秩序維持にアメリカと共通の関心を抱くようになってきました。グローバル企業の世界市場制覇の野望とグローバル軍国主義とを、アメリカ帝国主義の世界覇権の下で追求しようとしているのです。彼らグローバル企業の経営者や所有者にとって、米軍の侵略行動、軍事介入体制への参加、集団自衛権の行使、そのための憲法第9条改悪は、自分達が世界市場の中で他国のグローバル企業と互角に争う際に不可欠と考えているのです。
※日本経団連の奥田会長は今年5月27日の総会で、「イラク問題やテロなど最近の諸情勢を背景に、国のあり方や憲法問題、安全保障問題などについて、経済界としても検討する必要がある」として「国の基本問題検討委員会」を新設すると発表した。
また6月14日の記者会見では、「現在と同様、人道復興支援や安全確保支援に活動を限定する限り、自衛隊が多国籍軍に入るのはやむを得ない」と発言し公然と多国籍軍参加を支持した。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/speech/kaiken/2004/0527.html
http://www.keidanren.or.jp/japanese/speech/kaiken/2004/0614.html
(3) イラク居座りは日本の軍国主義化、軍事大国化、侵略国家作りを進める“軸点”。自衛隊即時撤退の歴史的な意義。
そういう日本の政府・支配層にとって、イラクの自衛隊は日本の軍国主義化、軍事大国化、侵略国家作りを進める“軸点”、日本の軍国主義化を推進するための便利な“テコ”になりつつあります。現に今起こっていることを今一度評価し直せば分かります。
−−イラク居座りを利用した解釈改憲、明文改憲ギリギリまでの改憲。ほとんど改憲そのものに等しい集団自衛権行使の既成事実を推し進めることができる。今回の首相の独断専行がまさにそうです。
−−自衛隊の実際的な侵略軍化。イラクに居座らせ米軍との共同行動、共同演習、軍事的プレゼンスの実績と経験を積ませる。
※「陸自北富士演習場に“ミニサマワ宿営地”を造営==イラクで武力行使をする軍事演習を開始」(署名事務局)
−−米軍のグローバルな侵略戦争体制、軍事介入体制に積極的に加わり、アメリカの中東覇権・世界覇権に関与して行き、政治的軍事的発言権を高めていく。
−−イラクでの軍事的プレゼンスをテコに石油利権を獲得する。復興利権も取れる。石油・エネルギーを市場から購入する、あるいは中東諸国との外交関係の上に購入するのではなく、アメリカのように軍事力で脅して強奪する。中東を軍事的に支配し軍事的プレゼンスを高めることで石油を略奪する。
小泉首相のイラクでの火遊びを今すぐやめさせなければ大変なことになります。イラク居座りが軍国主義化の“軸点”になっている以上、これ以上の軍国主義化にストップをかけるためにも、一刻も早くイラクから自衛隊を引き揚げさせなければならないのです。
アメリカの帝国主義的膨張主義に追随・加担する形で、米の軍事介入の一部を担う一部隊になる、自衛隊に経験を積ませ侵略軍化する、その米軍と共に軍事プレゼンスを高める、その対米貢献・対米協力を背景に政治的軍事的発言やポジションを高め、さらには経済的資源的な利権も追求する、そういう日本の新しい帝国主義的軍国主義ということです。アメリカ帝国主義の世界覇権の茶坊主として振る舞う限りでの軍事的政治的ポジションの追求です。その日本軍国主義の新しい台頭はまだ始まったばかり、進行中のことです。多国籍軍参加反対、自衛隊撤退の闘い、イラク反戦の闘いは、この日本の新しい軍国主義との歴史的な闘いなのです。
2004年6月30日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
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