[抗議声明]
大阪府知事橋下徹は、岩国住民投票否定発言を撤回し謝罪せよ!
日本政府は、基地再編交付金をテコにした締め上げをやめよ!
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(1)大阪府知事選で初当選した橋下徹は、1月31日、岩国市が06年に行った空母艦載機移転についての住民投票を批判し、「国政の防衛政策に地方自治体が異議を差し挟むべきでない」などと語った。許し難い暴言である。住民に対する、住民の権利行使に対する重大な冒涜である。大阪府民として絶対に受け入れることはできない。私たちは発言の撤回と岩国市民への謝罪を要求する。
井原元岩国市長は「国策だとモノを言えないのか」「大阪でこういう問題が起きれば、国策だから府民の声は聞かないということなのか」と痛烈に批判した。
橋下は大阪府知事選では自らがもつ反動的な考えを封印し、耳障りのいい言葉だけを振りまきメディアを最大限に利用して当選したが、当選から一週間もたたないうちに、化けの皮がはがれてきた。今回の発言は、徴兵制を容認する橋下の本性があらわれている。米軍再編問題の最大の集中点である岩国市長選では、推進派から基地問題の争点外しが行われ、「井原が再選されると市立病院がなくなる」「年金がなくなる」などとデマが飛び交っている。橋下の発言は、このような市長選に介入し、新たなデマを持ち込み、移転受け入れ派を応援し、岩国市民の切実な思いを踏みにじるものである。決して許すことはできない。橋下徹に抗議の声を集中しよう。
※岩国市長選:前市長、橋下・大阪次期知事発言に反論(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080202k0000m010183000c.html
(2)橋下は弁護士である自らの立場を笠に着て、憲法などを持ち出して住民の権利が制限されているかのように語っているが、全くのウソである。ウソとはったりによって自らの主張の正当性をねつ造していくのは彼の常套手段である。法律関係者からは失笑を買っている。橋下は、国策であろうと何であろうと、住民投票による意見表明の権利が制限されているというのであれば、その根拠を示せ。憲法を勉強すべきは橋下の方だ。
※橋下節に疑問の声「あんたこそ憲法学べ」 岩国住民投票(朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/0202/SEB200802020019.html
橋下は、住民投票が間接民主主義に反するかのように誹謗しているが、数年に一回行われる国政選挙で住民は代議士に政策全体について全権委任しているとでも考えているのか。福田首相が「年金の公約を忘れた」というとき、公約が忘れられようと、前言が撤回されようと、約束が不履行になろうと、議員を選んだ以上政府の決定にはどんなことがあろうと従うべきだ、国民は意見を表明してはならないとでも考えているのか。橋下は府民が自分を知事に選んだ以上、何をやっても俺の勝手だと思っているのか。そうであれば、思い上がりも甚だしい。恐るべき独裁政治の思想である。国政が正しい方向に向くように監視し、意見を表明し、おかしい方向にすすめばあらゆる形で反対していくのは、国民の権利である。
(3)しかも「国政の防衛問題」などといっているが、現在問題になっているのは国政一般、防衛問題一般ではない。これもまた問題の抽象化、すり替えである。岩国基地問題とは、普天間飛行場の空中給油機の岩国移転の見返りとして市庁舎建て替え補助金49億円を国が約束したにも関わらず、05年10月、米軍再編に関して厚木基地の空母艦載機59機の移転も決定し、岩国市がこれを拒否したため、政府が勝手にこの空母艦載機と市庁舎補助金を結びつけ、残り35億円の補助金の打ち切り恫喝で締め上げてきたという問題である。一度決めた補助金の約束を破るという、地方自治体や住民を愚弄したやり方、国の約束不履行、だまし討ちの問題である。こんなことがまかり通るなら、一度補助金を受け入れた自治体は、政府がどんな理不尽な政策を打ち出してきたとしても、国策だからといってすべてを次々に受け入れなければならなくなる。橋下が「国政に異議を挟むな」というのはそういう意味なのか。大阪府は、国の政策であれば地獄の底までついて行くと言うことなのか。
※[行動報告]10月6日、7日岩国フィールドワーク・集会(署名事務局)
(4)岩国基地問題が「防衛問題一般」「国策一般」ではないというのは、住民一人一人の生活に直結する深刻な問題であるということでもある。現時点でさえ深刻な騒音被害が出ているもとで、さらに空母艦載機59機もが移転してくる。昨年一年間で騒音や上空飛行で市に寄せられた苦情は1194件に上るという。離着陸を繰り返すタッチ・アンド・ゴーが夜間に繰り返されたらどうなるのか。地下鉄で電車が通過するときの騒音レベルである100デシベルもの騒音に日夜悩まされることになる。「以前一週間ほどタッチ・アンド・ゴーをやられたときは、たまらんかった。あんなのが59機も来たら…」というような住民の声も報道されている。しかも、岩国基地では、滑走路の沖合移設事業が進み、埋め立て用の土砂が削られた市内の愛宕山には、米軍住宅が建つ可能性が高まっている。米兵による犯罪への懸念も取りざたされている。橋下はこのような岩国の深刻な状況をどれだけ知っているか。地方自治体の首長は、住民の声を聞くのではなく国の命令に従うことを最優先するべきだというのが橋下の考えなのか。
※出直し市長選2月3日告示 3度目「民意」どちらに 岩国への米艦載機移転(西日本新聞)
http://www.nishinippon.co.jp/news/wordbox/display/5439/
(5)岩国の住民投票は井原前市長が発議して06年3月に行われた。神奈川県の米軍厚木基地から空母艦載機部隊を岩国基地に移す計画に対する賛否を問い、投票率は58.68%、「反対」が87.4%、有権者の51%が反対だった。井原前市長は「住民投票は議会で成立した条例に基づいて行われ、住民の意思が明確に示されたもの」と語っている。
住民投票は、住民の意思を反映する手段としてここ10年ほど拡大してきた。その大きな先鞭をつけたのが96年8月に新潟県巻町で行われた東北電力の原子力発電所の建設を問う住民投票である。以降97年6月岐阜県御嵩町での産業廃棄物処理施設の建設を問う住民投票、97年12月沖縄県名護市での米軍代替海上ヘリポ一ト基地の建設を問う住民投票、2000年1月徳島市で吉野川可動堰の建設を問う住民投票、そして06年の岩国の住民投票と、基地問題や原発問題、土建開発・環境破壊などの政府の政策のあり方が問われるようになっている。条例に基づく住民投票は法的拘束力はもたないものの、国政が住民の生活に密接に絡んでくればくるほど、住民投票という形で意見を表明する意義は高まるのである。
(6)橋下はこれまで、「日本の一番情けないところは、単独で戦争ができないこと」、「日本も核兵器を持つべき」、「日本人による買春は中国へのODAみたいなもの」、(ニート対策について)「税金を払わないヤツは生きる資格がない」等々日本の独自核武装支持、新自由主義推進、自己責任論押しつけ、女性蔑視と女性差別、他民族蔑視などの右翼的・反動的な考え方を語ってきた。少なくとも、橋下はテレビ番組で公然と平気でこのような問題発言を連発するような人物である。だが今回の岩国問題にからむ発言は、単なる軽さだけではない。住民運動への敵意をむき出しにし、国の政策を府民に対して有無を言わさず押しつけてくるような強権政治の危険を示している。現に府知事選直前に出た彼の著書では、「『日の丸・君が代』に反対するなら卒業してからやれ」などと、教職員だけでなく、児童・生徒たちが自分意志で行動することを非難し、抵抗することなく無批判に国の政策に従うよう主張している。また知事選直後に小中学校などの教育現場での学力別クラス編成の導入を表明するなど、格差教育と愛国心教育を自らの政策の目玉の一つにしているのは間違いない。
※橋下大阪次期知事が大胆提案、学力別クラス編成導入を(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080202/plc0802021942004-n1.htm
私たちは、橋下の府政に対して警戒と批判を強めていきたい。私たちは橋下に対して、岩国艦載機移転拒否を表明した住民投票否定発言を撤回し、岩国市民に謝罪することを重ねて要求する。
2008年2月2日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
(橋本徹氏が6日知事に就任したことで、“次期大阪府知事”を“大阪府知事”に変えました。2008年2月6日。)
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