シューラ市場の住民大量虐殺

 55人が死亡、47人が負傷(直後のBBC NEWS)。バグダッドの市場にミサイルが見事命中し、罪なき一般市民は瞬時に吹っ飛んだ。「誤爆」なんて言い方はもう許せない。怒り泣き叫ぶ家族たち、周囲を取り囲み侵略者を糾弾する市民たち。
 28日の金曜日はイスラム休日にあたり、子供連れの女性客で市場は賑わっていた。誰もが、その頭上にミサイルが襲いかかるなどとは、想像もしなかったに違いない。米軍はまさにその市民をめがけてトマホーク・ミサイルを撃ち込んだのである。まさにこの事件は米英軍による大量虐殺である。多数の民間人被害者を出したこの惨劇を、私たちは決して忘れない。全世界の心ある人々とともに米英のこの蛮行を糾弾する。
※死者の数は現在のところ34〜62人と幅がある(Body Count参照)。

1.許せない。言い逃れ、責任転嫁、開き直り。全責任は米英にある。
 この大量の犠牲者の全責任は米英が負わなければならない。しかし彼らはその責任を未だに認めていない。自分たちが放ったミサイルであることを認めてようとはしない。26日の直後米軍は、「あの近辺には共和国防衛隊が配備されており、責任はイラクにある」、その後「あれはイラクの対空ミサイルによるもの」とまるでイラクによる自作自演だと言い放ったのである。
 その背後には、すさまじい形を変えた戦闘=情報戦がある。しかしすでに世界は米英の犯罪であることを見抜いている。現地に入っている中東系、欧州系マスコミによって、住民の目撃証言が伝えられている。「低空で飛んできたミサイルを見た」。またミサイルが米軍の物であることを示す物的証拠も上がっている。破片の中には、米国製コンピュータを内蔵していたミサイルであることを示す刻印が刻まれているものもあった。反吐が出るほど堕落し翼賛化した米マスコミはだませても、それ以外のマスコミはだませないのだ。
※<イラク戦争>米軍の誤爆「イラクのミサイル」と説明(毎日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030329-00002110-mai-int
※<イラク戦争>イラク政府「米英軍の誤爆」と非難 市場着弾
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030329-00001069-mai-in
※<イラク戦争>バグダッドの市場にミサイル、55人死亡 誤爆か(毎日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030329-00001041-mai-int
※Robert Fisk: In Baghdad, blood and bandages for the innocent(Independent)
 http://argument.independent.co.uk/commentators/story.jsp?story=392161

2.急増する住民の空襲被害−−分かるのはバグダッドだけ。その他の地域は把握されず。
 バグダットでは多くの住民が空爆の犠牲者になっている。28日のシューラ地区の市場への空爆と相前後し26日の木曜日にもトマホーク・ミサイルがシャーブ地区の一般住民の居住地に撃ち込まれた。多くの家屋が全壊し、爆風で飛ばされた人々、家屋に押しつぶされた子供たち、総勢15人が殺され、多くが負傷した。また市場への空爆と同じ28日の昼、マンスール地区の居住地にもトマホーク・ミサイルが撃ち込まれた。ここでも8人が殺された。31日にも市内の居住区において、4人が殺され、そのうち3人が子供であった。これはもはや「誤爆」ではない。大量虐殺である。


戦線が膠着してから激しくなる空爆とそれにによる死者の増大がはっきりと見て取れる。(Body Count のデータを元に作成) (クリックで大きい図)
 民間人の犠牲者はバグダットへの空爆だけではない。開戦直後のバスラに対する空爆にクラスター爆弾が使用され、子供たちが吹き飛ばされ、体を裂かれた映像が全世界を駆けめぐった。ナシリア、ナジャフ各所でも激しい空爆が実施されており、現地の通信員が把握できない多くの事件があるはずだ。北部のキルクーク、モスルなどの地域では、空爆があった事実しか報道されない。しかし一体どれほどの被害が出ていることか。当然のこと民間人への被害は空爆だけではない。地上軍による大砲、兵士の火器、迫撃砲、・・・。つねに民間人は死と隣り合わせであり、また多くの人々が殺害されている。開戦から3月末までの期間に400人を大きく超えるイラクの民間人が殺害されたと見られているが、この数は報道された結果として把握されているものに過ぎない。実際はもっと多いはずである。一体どれほど、無辜の人々の屍を積み上げれば気が済むというのか。
※イラクでの民間人の犠牲者増を懸念=国連事務総長(ロイター)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030327-00000132-reu-int
※クラスター爆弾連日投下、不発弾化で民間人犠牲も(読売新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030329-00000213-yom-int

3.「楽勝」シナリオの破綻と失地回復の凶暴作戦−−住民被害がさらに急増する危険性。
 地上侵攻作戦の当初の「楽勝」シナリオが破綻した結果、米英軍はその失敗を埋め合わせるかのように圧倒的な力を誇る空軍力に依拠する作戦を加速させている。空爆を強化し、戦況を少しでも有利にしようというのである。この三日間の空爆は、開戦以来最大規模のものであった。開戦以来投下されたトマホーク・ミサイルは700発、精密誘導爆弾8000発。しかしこの3日間で何とその半分弱の3000発のトマホーク・ミサイルと精密誘導爆弾が投下されている。すさまじい量の爆弾が今、イラクの人々の頭上を飛び回っているのである。

 また各地でイラク側の対空能力がせん滅された結果、低空飛行の戦闘機による非精密誘導兵器の使用も本格化している。米英軍の精密誘導兵器が底を尽きつつあるといった事情から、彼らは一般の爆弾を大量に使い始めたと言われている。さらに民間人犠牲者の数を加速させかねない。
 また空爆はより凶暴となっている。一般車両など動く標的を無差別に狙い始めた。インフラ、民間施設への爆撃も躊躇しなくなった。すでに民間の通信設備の相当部分は破壊されている。またTV局も標的となっている。

 ゲリラ戦、自爆攻撃が増えるに従って、米英軍は一般市民と兵士との区別ができず、「周りが皆敵」という疑心暗鬼に陥っている。彼らは自らが侵略者なのに、「自衛する」と称して一般市民を無差別に殺害し始めた。徐々に戦争の形態はベトナム戦争を彷彿とさせるものとなっている。映画などでよく描かれる、編隊を組んだガンシップ(当時の海兵隊のヘリコプター)によって地上の農民が次々と撃ち殺されるシーン。B-52による大量無差別爆撃のシーン。違うのは兵器の種類だけではないか。イラクにおける現在は、爆撃、地上侵攻によって無辜の住民が殺害される悲惨な戦争絵図である。 
※空爆の規模に関す情報 U.S. Pounds Repablican Guard Near Baghdad(ロイター 3/31)
 http://reuters.com/newsArticle.jhtml?type=topNews&storyID=2481224

4.シューラの悲劇を繰り返さない道はただ一つ−−即時無条件の戦争中止、米英軍のイラクからの撤退である。
 ○月○日、「誤爆」によって△人死亡、□人負傷。多くの家屋が全壊。泣き崩れる遺族たち。怒り狂う群衆。このようなニュースを私たちはもう聞きたくもないし、見たくもない。絶対繰り返して欲しくない。それを可能にするのは、今すぐ戦争を中止することである。
 シューラの悲劇は日本の私たちにも直接関係がある。小泉政権が明確に支持したからである。日本はシューラの悲劇の「共犯者」になったのだ。私たち日本の市民と運動の責任、それは一刻も早く小泉政権の支持・加担をやめさせることである。再び、シューラの虐殺を繰り返さないためにも。

2003年4月1日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局