[イラク特措法を廃案に!自衛隊派兵に反対する 7.20大阪集会 基調報告]
イラク戦争の泥沼化、ブッシュ・ブレアの窮地の下でのイラク特措法廃案の闘い
○自衛隊海外派兵阻止を勝ち取りイラク民衆と連帯しよう。イラク占領中止、米英軍撤兵を世界の反戦平和運動と連帯して勝ち取ろう。
○米日両政権による対北朝鮮戦争挑発、経済制裁をやめさせよう。
○無制限のグローバル海外派兵を目論む日本軍国主義の新たな台頭を阻止しよう。
2003年7月20日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
T.はじめに−−視野を広げて国内外の情勢を見直そう。
@ 今ほど国際情勢の変化を見る眼が必要なときはない。やりたい放題、好き放題に軍事的冒険主義を拡大しまくってきたブッシュ政権とブレア政権が、ようやく限界を見せ始めたからである。つまずきの舞台はイラク。イラク戦争の泥沼化、ベトナム化が反戦平和をめぐる情勢を変化させ始めた。徐々に国際政治の潮目は変わろうとしている。今まさにイラクの泥沼化・ベトナム化、ブッシュとブレアの窮地に注目すべきである。
A 国内の与野党の貧弱な政治動向、如何ともし難い小泉政権の「強さ」だけに目を奪われていては、間違いなく展望と状況判断を誤る。小泉政権の軍事外交政策は、対イラク政策にしても、対北朝鮮政策にしても、ブッシュ政権に全面的に追随する格好でやってきた。従ってブッシュの窮地、ブレアの窮地は、小泉の窮地である。日本の特殊な政治状況が小泉首相を「ラッキーマン」にしているだけである。日本でも必ず変わる。そう言う確信で私たちは活動を続ける。長期戦の構えで、諦めず地道な闘いを積み重ねよう。
U.ブッシュ・ブレア両政権に吹き始めた逆風。変わり始めた国際政治の潮流。
(1)バグダッド陥落から3ヶ月が経過、初めて窮地に立つブッシュ政権。
@ “イラクゲート”事件−−ウソとでっち上げで一個の独立主権国家を壊滅させた。大量殺りくと国土破壊を破滅させた。これは間違いなく世紀の一大政治スキャンダルである。
ようやくブッシュ政権に逆風が吹き始めた。あれだけ大騒ぎしたイラクの大量破壊兵器が結局はなかった。実はイラクの脅威もなかった。イラク戦争の大義が大揺れに揺れている。「決定的証拠なしに開戦した」「経験から危険と判断した」(ラムズフェルド国防長官)、「発見はもはや不可能」(英政府高官)など、米英政府は開き直るしかなくなっている。
・国際政治の潮の流れが変わる兆候が出ている。7月11日がその潮の変わり目になるかも知れない。ブッシュのアフリカ歴訪の真っ最中のその日、とうとうイラク核兵器開発の「決定的証拠」と断定されたニジェールからのウラン購入疑惑がでっち上げであったことを、CIAテネット長官自身が認めたのである。彼はこれまで幾度となくこのニジェール疑惑を公式文書に載せるのに反対してきた人物である。なぜ彼一人が?幕引きの茶番劇であることは明らかだ。
だが事態はそう簡単ではない。ブッシュ政権はCIAに責任を転嫁しトカゲの尻尾切りで乗り切りを図ろうとしているが、翼賛的メディアも関心を示し競って報道し始めた。有力候補がおらず今のままでは来年の大統領選で勝ち目がない民主党が反転攻勢に動き出した。
・焦点は2つ。まず第一に、ニジェール問題はCIAだけの問題、CIAだけの責任ではない。ブッシュ政権総ぐるみでこのでっち上げを演出したことは明らかだ。それは安全保障担当大統領補佐官ライス氏の責任であり、当初からこの疑惑のでっち上げを組織し大統領一般教書に強引に盛り込んだ副大統領チェイニーの責任である。そして実際に全世界に向けてこの一般教書を読み上げたブッシュ大統領自身の責任である。
第二に、ニジェール疑惑のでっち上げは氷山の一角に過ぎないことである。2月5日に安保理決議を強要するために国連の場で大芝居を打った大量破壊兵器に関する「パウエル報告」全体がでっち上げだった。その真偽が問われるからである。
A そして何よりも大問題になっているのがイラク戦争である。「毎日平均一人の米兵が死んでいる」「1日も早く本国に帰りたがっている」−−イラク占領のデタラメと泥沼化が、バグダッド陥落3ヶ月を迎えてようやく政治問題化し始めた。
ブッシュ政権の支持率が急低下し始めた。すでに来年の大統領選は始まっている。戦争と戦意発揚だけで高支持率を維持してきた現政権にとって、戦争での失敗は一大事だ。
・イラク戦争の泥沼化はアフリカへの戦争拡大に制約をはめようとしている。リベリアへの派兵は政権内での対立を生み出し急速にトーンダウンした。派兵するにしてもその規模は限定されたものとなるだろう。イラクの泥沼化をどう評価するのか。米軍の余力をどう捉えるのか。予想外にイラクで手を取られているために、これ以上戦争と軍事介入を拡大することが困難になり始めているのである。
B 日本ではあまり問題にされていないが、9/11調査委員会は文書提出と議会証言の要請を無視し続けるブッシュ政権を厳しく非難し始めた。ブッシュ政権は、なぜ幾つも出されていた事件につながるテロ情報を無視したのか、なぜ全容解明に反対するのか、なぜあれだけ早く犯人グループが逮捕されたのか等々。一部の被害者家族は事件へのブッシュ政権の関与を疑い訴訟に踏み切っている。
・これらのいずれもが、9/11以降、アフガニスタン侵略、イラク侵略、北朝鮮への戦争挑発、イランやシリアへの軍事的脅迫等々、戦争と軍事的脅迫を政権運営の唯一の機軸に据えてきたブッシュ政権がその戦争政策で足下をすくわれる傾向が出てきたことを指し示すものである。
(2)デフレーションの危機、その下での「ジョブレス・リカバリー」の政権への打撃。
@ アメリカ経済は現在、バブル・マネーで人為的に浮揚させられたNY株式市場とドル相場の小康状態の下で、実体経済の不振、極度の低成長に陥っている。昨年の第4四半期も今年の第1四半期もGDP成長は1.4%にとどまった。多くのエコノミストは今年後半に成長率がもっと回復すると予測するが、超楽観論と見ていいだろう。
A 労働者、勤労者、黒人や多数のマイノリティにとって最大の関心事は、低成長と経済停滞の下での雇用・失業問題の異常な深刻化である。「雇用なき回復」(ジョブレス・リカバリー)である。これこそが今のアメリカ経済の深刻さを特徴付けるものである。まさに1990年に現在のブッシュ大統領の父親が、それが原因で大統領選に敗北したのと同様の経済危機現象である。
B 「雇用なき回復」とは言え「回復」である。しかしデフレーションの危機は依然消えていない。もしデフレとなれば、雇用・失業問題が更に深刻化するのは必至だ。大量破壊兵器のウソと大義なきイラク戦争、イラク戦争の泥沼化と並んで、新たにこの深刻化する失業問題が、すでに始まっている2004年大統領選の最大のテーマになることは確実である。
(3)深まるブレア政権の窮地と下がり続ける支持率。
@ イギリスでイラク大量破壊兵器問題、情報操作問題の焦点になっているのは、2つの報告書。
−−昨年9月の「イラクの大量破壊兵器−−英政府の評価」:ここでは「イラクは45分で生物・化学兵器を配備できる」とその脅威の切迫性をでっち上げたことが争点。BBCが、首相側近の戦略広報担当者がわざと「45分」の書き入れをさせイラクの脅威を誇大視する情報操作があったと報道したことが大論争に発展した。
−−今年2月の「イラク−−その隠匿、虚偽、脅迫の構造」:ここでは10年も前の古い米学生の論文の盗用が争点。
・ブレア政権は、政治問題化していた「45分」問題で、7月7日英下院外交委員会が首相側近の「無実」を明らかにしたことで、幕引きを図ろうと躍起になっている。しかし問題は何も解決していない。
A ブレア首相は7月17日訪米し、首脳会談、共同記者会見、議会演説を行い、「歴史は許してくれる」と開き直ってイラク戦争の正当性を強調した。ニジェール疑惑で一旦そのでっち上げを認めたブッシュ政権に翻意を促しに行ったのが訪米の真の目的かも知れない。しかしそれはブレアの勇み足になるだろう。ブッシュはブレアと共に「あれは正しい情報だった」と主張し、政権の幕引きのシナリオを狂わせる発言をし始めた。ニジェール疑惑はでっち上げなのかそうではないのか。ブッシュ政権とブレア政権の思惑にズレが生じてきている。再び振り出しに戻ったかのようである。消そうとすればするほど燃え広がる。ニジェール問題は混迷の度を深めつつある。
・そんな中、ブレア政権からBBCの情報源として名指しされていた国防省兵器担当顧問のデビッド・ケリー氏が7月18日、遺体となって発見された。死因も、自殺か他殺か、また事故死かも今のところ不明だ。しかし、英メディアはケリー氏を「犠牲者」とみなし、死に追いつめたブレア政権の責任を追及する厳しい報道ぶりを見せている。ブレア政権のどす黒い疑惑はますます広がるだろう。
・最新の世論調査によれば、ブレア首相がイラク派兵問題で国民をミスリードしたとする回答者が全体の66%を占めた。27%は首相が意図的に虚偽情報を流した、39%は無意識のうちに国民に誤解を与えたとの回答であった。
V.イラク民衆の抵抗闘争と米国内政治の中心問題に急浮上したイラク戦争の「泥沼化」「ベトナム化」。
(1)イラク民衆による反米・反占領の民族解放闘争、ゲリラ戦争の強化・拡大。「掃討作戦」という名の民衆弾圧・民衆殺戮の大失敗と反米・反占領気運の急速な拡大。
@ 米英占領軍とイラク民衆との対立が先鋭化しつつある。イラク民衆の最も先鋭な抵抗形態はゲリラ戦でのレジスタンスである。米英政府当局やマス・メディアはこれを「テロ」と決め付けるが、国際法に違反し他国領土に何の理由もなく侵略したのはどちらなのか。イラク民衆のゲリラ戦争は、反米英・反占領・反帝の民族解放闘争であり、全く正当な闘いである。
−−米兵へのゲリラ襲撃は、スンニ派教徒が住む「スンニ・トライアングル」地域の個々の都市から地域全体へ、また南部シーア派地域や北部のクルド人地域などイラク全土にまで地理的に拡大している。
−−米兵への襲撃は5/1のブッシュによる戦争終結宣言以降、特に5月下旬から始まり、6月後半から現地占領当局の間でも、米国内でも政治問題化し始めた。今では長期化の傾向を示している。
−−襲撃件数も増えており、1日数件から、10〜25件まで増加している。
−−襲撃の武器の中心はRPG(ロケットランチャー)であり、最近では迫撃砲攻撃や小型ミサイル攻撃にまで発展している。
−−最近ついにパレスチナと同様の自爆攻撃が始まった。
−−襲撃対象も米兵個人から、油田やパイプライン、発電所等のインフラ基盤の爆破にまで拡大し、米英の占領に協力するイラク人への襲撃にまで拡大している。
−−米軍当局も最初は偶発的事件と高をくくっていたが、その組織性と同時多発性に恐れを抱き始めている。どうやら単一の指令ではなく多種多様なレジスタンスが並行して闘われているようだ。それにはフセイン支持者、バース党員らだけではなく、スンニ派過激派、イスラム原理主義者なども別々に活動していると言われている。更には米英の侵攻で犠牲者となった家族たち、占領下の弾圧で犠牲になった者たちも含まれている。容易に一網打尽というわけにはいかないのが実情である。
A ブレマーが“総督”になって以降、連合軍暫定当局(CPA)は方針転換を行い一気に凶暴さを増した。これらレジスタンスを弾圧する「掃討作戦」が、逆になりふり構わず民衆弾圧・民衆殺戮を拡大し、イラク民衆の怒りと憤激を呼び起こしているのである。最近第4次目の「大規模掃討作戦」が始まった。残党狩り、刀狩りを口実に民家に土足で踏みにじり理由もなく民衆を逮捕・拘留する家宅捜索が横行している。逆らう者には屈辱的な仕打ちや容赦のない弾圧・殺戮が待ちかまえている。文字通り力づくでイラクを強権的に植民地支配しようと躍起になっている。米英占領当局とイラク民衆との間の矛盾・対立が激化するのは避けがたいだろう。
・民衆弾圧の最大の焦点になっているのはファルージャという首都バグダッドの西方約50キロにある同国中部の100万人のスンニ派が住む大都市。4月下旬に相次いで米軍による大虐殺事件があったところだ。CPAは7月12日、このファルージャの治安維持をイラク人警官に任せると発表して、米軍部隊を都市中心部から後退させた。
しかしこれは米にとって余儀なくされた後退である。米軍が治安維持の役割を地元のイラク警察に移譲するのはイラク戦争後初めてである。ファルージャの民衆は、ついに米軍を町から叩き出したというのが真相である。
・ファルージャだけではない。イラク中部、中西部だけではない。シーア派の南部も含めてイラク全土で、失業者が街頭にあふれ返り、雇用問題が深刻化している。食料配給制度が寸断されたために、あちこちで食糧不足が広がっている。人道的危機が先鋭化しつつある。電気、下水道、病院・衛生施設等々、米英軍によって破壊された基本的なインフラ基盤は未だに復旧も回復のメドも立たない状況である。米英の占領、米英兵士への不満と怒りは様々な形で、イラク全土で爆発しつつある。
(2)米軍のイラク治安維持兵力の決定的不足と余力の欠如。日本を含む各国への増派要請圧力と「戦死」の肩代わり要求。
@ 米軍は深刻な兵力不足に見舞われている。行政権力が機能せず、軍事力だけが統治の根幹を占めている下での兵力不足は致命的である。現在米軍はイラク国内に14万8千人が駐留する。当初計画では秋までに3〜4万人にまで削減する予定だった。今やそれどころではない。どうやらローテーションでイラクへ増派する計画も事前になされた痕跡はない。だからすでに昨年9月から1年近くになろうとしている第3歩兵師団を中心とする駐留米兵の疲労・不満・怒りは爆発点に向かっている。
・メディアではほとんど知られていない事実がある。米軍には今、イラクに派兵できる現役の交代部隊、交代要員が事実上存在しないのである。米陸軍の10個師団のうちすでに5個師団がイラクに展開中である。アフガンに1個師団。残りのうち2〜3個師団は対北朝鮮戦争に備えて待機中である。あとは訓練部隊が3〜4個師団があるだけ。−−これは何を意味するか。第三歩兵師団をはじめ現有師団の駐留が長期化するしかない。そういうことなのだ。若い現地の兵士たちの士気はますます低下するだろう。
A この米軍兵力の決定的不足を他国がカバーできるか。そのメドも全く立たないのが現状である。米軍資料によれば、有志連合軍は、ポーランド2,300人、ウクライナ2,000人、スペイン、オランダそれぞれ1,000人、全部かき集めてもせいぜい21,000人。実際に治安維持や民主弾圧にどこまで役に立つかも分からない。焼け石に水というところだ。直近では7月14日、猛烈な圧力を加えたにもかかわらずインドはついに派兵を拒否した。米国傘下の派兵に強く反対する国内世論に配慮した結果と言われている。
・米はNATOに増援要請を行わざるを得ない状況に陥っている。だがNATOのロバートソン事務総長は7月16日、「イラクへのさらなる関与を検討する段階ではない」と述べ消極的姿勢を示した。大部隊を派兵できるフランスやドイツ、またロシアは容易にはこの泥沼の渦中に入らないだろう。シラク仏大統領は15日、「現在の枠組みでは考えられない」と拒否を表明した。インドもフランスも国連の管理下での派兵を求めている。
・日本が強引に派兵しようとしているイラクの現状はざっとこんな状況なのである。しかもそれは単なる兵力不足の埋め合わせではない。毎日の米兵の犠牲者を日本を含め他国に肩代わりさせることでもある。更に、一旦派兵すれば米英は次々と増派命令を出すだろう。泥沼化は米英だけのことではない。派兵を推進する日本の問題でもある。
B パウエル米国務長官は7月16日、治安維持の兵力不足、占領軍維持費用の膨張が不可避になる中で、焦りと苛立ちを募らせ、国連による「お墨付き」を得ようと、新安保理決議採択に向け各国外相やアナン国連事務総長と協議を始めた。米英単独の占領が破綻し音を上げたのである。
米英の単独占領が破綻するに連れて、再び国連の全面的な管理を認めるか否かをめぐって安保理内部での駆け引きが高まるだろう。先の国連決議1483の審議過程ではフランスやドイツが米英の戦争と占領統治の正当性を受け入れず、統治や人道支援の国連への全面移管を要求したのを米英は拒否し「戦利品」は渡さないと大見得を切った経緯があった。
(3)着実に増える米兵の犠牲者。現場兵士の高まる不満と本国帰還の要求。急速に低下する士気と厭戦気分。
@ 米軍が7月9日に発表したところによれば、3/20の開戦以来、米兵の死者は212人、負傷者は1044人、計1256人、このうち5/1戦争終結宣言以降の死者は74人、負傷者338人にのぼっている。毎日平均死者1人、負傷者6人という計算になる。
もちろんこの数字は大本営発表であり、士気の低下を恐れる米軍当局が、襲撃による死者を事故死にごまかしている問題がメディアでも追及されている。
A 第三歩兵師団問題が大きな政治問題になりつつある。7月16日、米ABCテレビが、問題の放送を流したのである。再三の帰国延期の不満を爆発させた軍曹がインタビューに堂々と答え、「もしラムズフェルド国防長官がこの場にいたら、我々がなぜ未だにここにいるのかを聞いてみたい」「辞任を要求する」と発言した。これらの若い軍曹らを束ねる小隊長も「命令がコロコロ変わるので士気を保つのが容易ではない」と述べた。第三歩兵師団は昨年9月にクウェート入りし、バグダッドへ一番乗りした。この5月にも本国帰還が約束されていたが、今ではいつ帰国できるか分からない状況に兵士たちが怒りを爆発させているのである。
・これとは別に、若い兵士たちが戦争と占領の真実、不満と怒りを家族、メディア、議会に対して、手紙や訪問者への証言の形で自ら明らかにし始めている。きっかけはクリスチャン・サイエンスモニター紙の記事だ。兵士たちは戦争と占領の意味に疑問を呈し口々に本国への早期帰還を訴えている。
・とりわけブッシュ大統領が現地の兵士たちの気も知らず不用意に言い放った「やるならやってみろ」(bring them on)という発言は、兵士やその家族たちからの怒りを買う羽目になった。
・いつ襲撃されるか分からない緊張。いつ帰還できるか分からない見通し。現場の兵士たちは戦争の長期化に厭戦気分を募らせている。フランクス前司令官は7月10日「米軍はイラクに将来も関わっていくと想定しており、2年になるのか4年になるのか分からない」と駐留長期化を示唆した。ラムズフェルド国防長官も9日、「骨の折れる仕事で時間がかかる。忍耐が必要だ」と釈明、無責任な態度に終始している。
(4)元々緻密な占領計画はなかった!? メドが立たないイラク全土での占領権力の樹立。
@ 「統治評議会」が7月13日発足した。だが参加したのはシーア派の一部を除き、地元に足場のない親米亡命者ばかりだ。これは実権を握る連合軍暫定当局(CPA)の装飾物、傀儡に過ぎない。暫定政権への「第一歩」とメディアでは宣伝されているが、先行きは不透明でその見込みはない。
おそらく「統治評議会」では親米派と非米派、反米派が対立と抗争を起こすだろう。実権を握るCPAの指示・命令を聞かず、独走も起こるだろう。
日本型の「間接統治」なのか、ドイツ型の「直接統治」なのか。全く軸足が定まっていない。米英には数千人、数万人の行政要員を送り込む計画など全くない。緻密にたてられた統治計画など元々なかったのではないか。
A しかし実権を握っているはずのCPAでさえ占領統治は破綻している。ガーナーからブレマーへ、ORHAからCPAへ、そして今はクリントン政権の高官と専門家たちに泣きつく始末。コロコロ変わる軍政機構、コロコロ変わる政権構想。
軍にしてからがデタラメこの上ない。上述したように米英軍は15〜16万人、このうち直接の戦闘要員はその半分、7〜8万人ということ。これで2500万人とも2700万人ともいわれる人口からなるイラク国家全体を統治できるわけがない。
当初は警察機構を含めてバース党の官僚機構を利用する方針だったのが、ガーナーの更迭とブレマーの就任で方針転換、イラク全土に敷かれていた行政機構はガタガタにされてしまった。これではメドが立つはずがない。
北部ではただ石油を制圧するためにだけ一部クルド人を抱き込んで支配しており、アラブ人など他民族には民族浄化を強いている。中央部スンニ派地域では事実上の二重権力状態となっており、実質各地の部族が統治している。南部シーア派地域はイスラム教の影響力が強く「自治」が浸透している。等々。
(5)メディアの「泥沼化」「ベトナム化」報道の高まり。−−米国内政の中心問題に急浮上。
@ 米欧のメディアが、米軍の戦況を“quagmire”(泥沼化)、“Vietnam”(ベトナム化)、米軍兵士の苦境を“rock bottom”(どん底)と表現し始めた。
A アビザイド米中東軍司令官は7月16日、イラク駐留米軍を旧フセイン政権の残存勢力などが攻撃し続けている状況について、地域ごとに組織化された「古典的なゲリラ型の作戦」であると明言し、「ゲリラ戦争」が展開されているとの認識を示し、これに合わせた戦術転換が必要だとの判断を示した。
ラムズフェルド米国防長官は6月末の時点で、米軍への襲撃は散発的であり組織化されていないと指摘し、「ゲリラ戦」ではないと言明していた。今回のアビザイド司令官の発言は、事態が重大かつ深刻であることを米軍が自ら認めたものである。
B ブッシュの支持率が急落している。
・米誌タイムと米CNNテレビは7月18日、共同世論調査の結果を発表した。
−−それによればブッシュ大統領を来年の大統領選でも支持すると答えた米国民は回答者の50%にとどまり、今年5月の56%から減少した。
−−イラク戦争について「成功した」との回答は39%で、開戦直後の3月末に調査した際の52%を大きく下回った。
−−大統領の政策運営に対する支持も63%から55%に、イラク政策への支持も69%から55%へ、いずれも低下した。
・12日のワシントン・ポスト紙とABCニュースの世論調査によればブッシュ大統領への支持率は9ポイント減の59%になったことが判明した。前回の調査からわずか過去18日間の急激な変化である。
−−「イラク戦争は戦った価値がない」:40%、7ポイント増。
−−「現在の米兵の犠牲者は容認できない数」:52%、初めて半数を超えた。
−−「イラク問題への大統領の対応は好ましくない」:41%、11ポイント増。
また大量破壊兵器のウソと情報操作についても批判が強まっている。50%の人が「大統領は意図的に証拠を誇張した」と回答、「誇張していない」(46%)を上回った。
米軍のイラク駐留を支持する人はまだ74%にのぼり、不支持(25%)を大きく上回っているが、このままイラクでの泥沼化が続けば、占領そのものに批判が向くのは避けがたい。
W.ラムズフェルド戦略と米軍事力の国際的再編の軋み。揺らぐブッシュの先制攻撃戦略とグローバルな戦争拡大。
(1)イラクとベトナムの対比。イラクの泥沼化の政治的意義。
@ 米兵士の士気の低下は、イラクでの占領と作戦の遂行に影響が出るだけではない。米のグローバルな軍事介入や侵略にもダメージを与えずにはおかない。米制服組トップの懸念と警戒が高まっている。海外に展開する兵力37万人、イラクとペルシャ湾に23万人の兵力が展開している。この兵士たち全体に過剰な精神的ストレス、士気の低下を波及させる危険と懸念である。それはイランや北朝鮮への戦争準備にも重大な打撃を及ぼしかねない。
・すでに述べたように、イラク現地にいる兵士たちの士気の低下、不満の爆発、厭戦気分の蔓延だけではない。
・7月5日付のニューヨーク・タイムズ紙は、第三歩兵師団の米国内基地フォート・スチュアートで、任務に堪えきれなくなり帰還した一部兵士たちの心的外傷後ストレス障害(PTSD)の衝撃的事実を報道した。情緒不安定、家庭内暴力、不眠、アルコール依存症等々の症状が相次いでおり、彼らの多くが泣き、悪罵を吐き、怒鳴り、叫ぶ日が続いている。海兵隊の精神科医によれば、今回のイラク帰還兵の四人に一人が精神的後遺症に苦しんでいるという。
A ベトナムとイラクとは根本的に異なる。イラクにはベトナムのようなソ連・中国などの社会主義陣営からの、また全世界の反帝・民族解放勢力からの全面的支援はない。現在のところイラクで米兵を襲撃している勢力は反米英・反帝・反占領、民族解放闘争という性格は出ているが、多種多様で、目標がはっきりしない。南ベトナムの傀儡政権の打倒と民族民主政府の樹立、北ベトナム社会主義の防衛、南北の社会主義的統一といった鮮明な戦略的目標はない。等々。違いを挙げればきりがない。
B しかしベトナム戦争時とは比較にならない短期間で、比較にならない小さな勢力、小さな抵抗で、士気の低下や厭戦気分の蔓延など絶大な効果を挙げている点は特筆すべきことである。
−−ベトナム戦争は1965年〜73年、あるいは75年まで8〜10年間もかかった。このうち「泥沼化」は1968年のテト攻勢以降急速に広がった。イラクではどうか。5月下旬から顕在化し、6月後半、戦争終結宣言後わずか2ヶ月後には米国内政の中心問題に急浮上している。驚くべき超短期間だ。
−−ベトナム戦争では米兵は5万8千人が戦死した。イラクではまだ200人超、戦争終結宣言後わずか70人あまり、うち襲撃された死者は半数の30人である。驚くべき少数の犠牲で政治問題化している。
−−米ソ冷戦と両体制間の対立の下で、「共産主義の脅威」と「ドミノ理論」で、アジア全体が社会主義化・共産主義化するのを阻止する、当時の米国の「大義」は、それ自体口実であったとしても、米政府当局者の恐怖心を表していたことは確かである。しかし今回は政府自らありもしない「イラクの脅威」をでっち上げた「大義なき戦争」である。イラク現地の兵士たちの士気、米国民の戦争への支持取り付け確保するのは並大抵ではない。
(2)イラク戦争の“泥沼化”、すなわち鳴り物入りの「イラク電撃作戦」の“代償”とラムズフェルド戦略の破綻。
@ ラムズフェルド戦略は、2つの全く異なった問題を無視した。まず第一に、国家壊滅と国家建設との根本的違い。イラク侵攻作戦では、国家破壊と国軍の壊滅しか想定されていなかったことが今ではもはや明らか。電撃作戦、過小兵力での首都陥落だけが、持てはやされ世界中の保守反動勢力から賛辞の嵐が巻き起こったが、治安維持、占領支配の段階では、電撃作戦も過小兵力もハイテク兵器の圧倒的優位も全く役に立たないことが事実で証明された。現在の兵力ではバグダッドの治安すら維持できないことはすでに明らかである。
ラムズフェルドには占領統治の緻密な計画がなかったことも明らかである。ましてや敵対的人民が存在するところでは、たとえ緻密な占領計画があったとしても、統治は不可能である。イラク民衆の意志と精神を無視したツケが今回ってきているのだ。
A 第二に、ラムズフェルド戦略は、正規戦とゲリラ戦との根本的違いを無視した。ゲリラ戦を決定的に過小評価した。今まさにラムズフェルドはハイテク兵器の無力さを思い知らされているはずだ。国軍としての軍事力、国家として組織された軍事力を壊滅させるのには、米国とイラクとの圧倒的な軍事力格差は決定的であった。ハイテク兵器は有効であった。しかしゲリラ戦になればそんな優位は全く役に立たなくなる。追う者と追われる者が逆転するのである。そしてゲリラ戦争は“人民の海”の中でしか戦えない。国家として組織された国軍を壊滅させるのは簡単だが、ゲリラ戦争の相手を壊滅させるのは決定打がなく異常に困難である。
B 米軍がバグダッドに侵攻した4月9日、一夜にしてイラクの国軍、民兵組織、バース党の官僚たちが一斉に「消滅」した。私たちはこの不思議な現象をこれまでなかなか理解できなかった。ところが最近、これがイラク政府側の「戦略的後退」であった可能性を示唆する記事や論文が増えてきている。もちろんまだまだ不可解な点が多々ある。しかしなぜこんなに超短期間でゲリラ戦争での反撃が可能になったのか。なぜこれほど組織的計画的な反撃が可能なのか。なぜスンニ派地域がその中心なのか。「戦略的計画的後退」と捉えれば納得できる部分もある。
(3)国力と国家財政の限界を無視したイラク占領。ラムズフェルドの「軍事革命」、軍事力の国際的再編成とその軋み。ブッシュの軍事外交戦略全体が破綻の危機に陥る。
@ イラク占領経費が米政府の超楽観論を吹き飛ばす勢いで膨らんでいる。米軍のイラク戦争とその後のイラク駐留にかかった経費が国防総省の計算で総額480億ドル(約5兆6000億円)に上ることが7月15日、明らかになった。
−−開戦までの部隊派遣や武器などの輸送、施設立ち上げなどにかかったのが約300億ドル。
−−3月20日の開戦からブッシュが戦争終結宣言を行った5月1日までに使ったのが約50億ドル。
−−月額の駐留経費については、戦前見通しの2倍近い39億ドルがかかっている。
−−9月末までに開戦時からの総額費用はさらに100億ドル増え580億ドルに達する見通し。
・米政府は7月15日、財政見通しの改定を発表し、2003会計年度(2002年10月―2003年9月)の財政赤字が、4550億ドル(約54兆円)に達すると予測した。今年2月の予算教書の発表時点では財政赤字を3040億ドル(約36兆円)と予測していたが、何とわずかここ5か月余りで約50%も赤字見込み額が急増したのである。2004年度の財政赤字についても、当初予測より1680億ドル多い4750億ドルとなり、2年連続で過去最大を更新する見通しを示した。しかもこれにはイラク駐留経費が含まれていないという。やりたい放題、好き放題のラムズフェルド戦略、ブッシュの先制攻撃戦略は財政面からも不可避的に矛盾の爆発を引き起こすだろう。
A そんな事情はお構いなしにラムズフェルドは米軍事力の国際的な配置見直しを推進している。これは「テロとの戦い」を口実にして、小規模で迅速な先制攻撃戦略を具体化する構想である。米国防総省が計画する常設の「平和維持部隊」構想とも関連している。
−−英国や日本の米軍駐留拠点は基本的に維持する。
−−中東やアジアの大規模駐留軍は小規模な常設駐留部隊に分散配置する。
−−例えば中東はサウジアラビアからカタール、クウェート、アラブ首長国連邦へ分散。
−−欧州の中軸である在独米軍はローテーションを組んで、一方では、ポーランド、ブルガリア、ルーマニア、更にはアゼルバイジャンなどカフカス諸国などへ分散する。他方では、アルジェリア、モロッコ、チュニジア、ケニア、西アフリカなどアフリカ諸国へ分散する。
−−韓国も、司令部があるソウル中心部の龍山基地を初め大規模な移転・統廃合を進める。南北非武装地帯から南部への基地移転もこうした全体計画の中に位置付けられる。
−−沖縄、ハワイ、グアムの海兵隊基地も再編成・再配置されるかも知れない。フィリピンの再基地化。オーストラリアへの移転なども観測されている。
・戦場体験もなくベトナム戦争では逃げ回ったブッシュ大統領やラムズフェルド国防長官やチェイニー副大統領らは、現場も知らぬまま、机上でチェスの駒を動かすように、軍事力を振り回すことの矛盾は必ずや噴出するだろう。
X.対北朝鮮戦争挑発で巻き返し図るブッシュ政権、追随し先兵役を演じる小泉政権。
(1)イラク戦争失策を対北朝鮮戦争挑発でごまかそうとするブッシュ政権。新しい柱は経済制裁による封じ込め強化。
@ 大量破壊兵器のウソとデタラメの発覚、イラク占領での立ち往生、増え続ける米兵の犠牲者、本国帰還を求める兵士たちの声等々、イラク戦争の後処理で大失敗すればブッシュ政権は必ず米国民の関心を反らせようとするだろう。その恰好の標的が、イランと並んで北朝鮮なのである。ブッシュ政権を本当の意味で追い詰めるには、この朝鮮半島でのブッシュの火遊びを阻止することが必要である。
A 核兵器保有発言、再処理完了発言等々、北朝鮮は自ら進んで戦争挑発と国際的な孤立化の道を突き進んでいる、米日韓三国は事を平和的に解決しようと努力しているが北朝鮮が挑発行為に出るためにやむなく「圧力」をかけている、経済制裁は平和的解決のやむを得ざる対応である−−メディアと日本政府はこのように北朝鮮をめぐる情勢を描き出している。またほとんどの日本の国民はそのように感じさせられている。
・しかしこの図式は全くねじ曲げられた見方、転倒された見方である。実際に起こっているのはメディアの報道とは逆のこと、つまり戦争を挑発し能動的に追い詰め封じ込めているのは北朝鮮ではなく米国の方なのである。北朝鮮が先に手を出すまで徹底的に挑発し追い詰めようというのが米の狙い目なのである。
・6月はじめの万景峰号事件を思い起こして欲しい。政府やメディアは、「黒船」に攻め込まれるかのようにヒステリックに騒ぎ立て、日本がまるで被害者であるかのように描き出した。私たちはそれが偶発事件でも、日朝間の問題だけでもないことを指摘し、米が主導する対北朝鮮包囲網の先兵となって、経済制裁に先陣を切って踏み込んだ非常に危険な戦争挑発であることを糾弾した。
B 経済制裁、経済封鎖で兵糧責めにし、あわよくば金正日政権の崩壊を促進する−−これがブッシュ政権の当面の対北朝鮮戦略である。5月7日、米国家安全保障会議(NSC)で方針決定されたと言われている。現にこの直後から米日韓の一連の首脳会談、エビアン・サミットを経て、マドリード・イニチアチブ、そしてARF(ASEAN地域フォーラム)等々に至るまでその経済制裁包囲網は狭められてきている。米は、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)による軽水炉建設事業の中断を強引に推し進め、またこれとは別に中国を抱き込んで国連安保理で北朝鮮の「核開発」を非難する「議長声明」を上げさせ、「大量破壊兵器の開発・拡散防止」と「麻薬密輸阻止」を口実とした陸海空の「経済封鎖措置」の包囲網を確立させようとしているのである。7月10にも日本、米国など11カ国の「拡散防止イニシアチブ」の第2回局長級会合が開かれ、年内にも不審船などを臨検する共同訓練を行うことで合意した。
・朝鮮半島情勢はこの米による経済的封じ込め戦略の大きな流れの中で見て行かなくては何一つ理解できないだろう。
(2)ブッシュ政権は朝鮮半島の軍事情勢と核問題でもウソとでっち上げ。日本・韓国を巻き込み先制攻撃準備と軍事脅迫を加速。
@ ブッシュ政権は政権ぐるみでイラクの大量破壊兵器問題をでっち上げた。それと同じ事を朝鮮半島情勢でもやっているのだ。北朝鮮の軍事力過大評価と米の軍事力の無視、北朝鮮の核の過大評価と米の核の無視。それが典型的なやり方である。
・朝鮮半島情勢を悪化させているのは北朝鮮の核開発問題、直近では核燃料の再処理問題であるかのように言われているが、それはウソである。
もちろん私たちは北朝鮮を含めて核兵器を保有し軍事的外交的駆け引きに使うことには反対である。朝鮮半島、日本と東アジア全体の非核化実現を要求してきた。しかし朝鮮半島の核、アジアの核を問題にするなら、真っ先に米の巨大な核戦力の廃棄を問うべきである。北朝鮮が保有すると言う核の個々の要素や材料をあたかも差し迫った脅威だと騒ぐ前に、現に北朝鮮に核先制攻撃が可能な状態で配備されている米の核を、更には北朝鮮を幾重にも包囲する巨大な軍事力を非難すべきである。
A 繰り返しバンカーバスターで北朝鮮の核施設を先制攻撃すると公言している米政府や米軍は、なぜ非難されないのか。全く不公平極まりない。
B 朝鮮半島の軍事的緊張の根源は北朝鮮ではなくアメリカにある。ブッシュ政権が金正日体制の打倒を戦略目標に掲げ、体制保証も行わず二国間の直接対話もせず、一方的な屈服を強いていることが根源なのである。
・米の先制攻撃準備と戦争挑発は最近特に加速している。米の民間安保研究所であるグローバル・セキュリティは7月14日、「米政府はこれまでの韓半島戦争計画『作計5026〜5029』などを修正する一方、北朝鮮軍の内部崩壊を誘導する新しい作戦計画(Oplan)5030の細部内容を調整している」と明らかにした。イラク戦争でのラムズフェルド流「電撃作戦」を対北朝鮮戦争にも適用しようというのだ。
・在韓米軍の後方移転は極めて衝撃的なことである。地上戦ではなく空爆を機軸にすることを公然と表明したのも同然だからである。
・また米国防総省は北朝鮮有事への即応態勢を強化するために、空母、最新鋭戦略輸送機などからなる大規模な「即応部隊」を新たにハワイに配備する計画であることを明らかにした。
・沖縄の海兵隊の即応態勢が早まったことが表明されたとろである。米軍の軍事的圧力と軍事的脅迫は全体像が知らされないまま加速化している。
・特に米は最近意図的に朝鮮戦争停戦協定への違反行為を行っている。米が5月31日に発表した在韓米軍の戦力増強計画は極めて挑発的である。経済制裁や海上・空中封鎖も、朝鮮半島および周辺で戦力増強をするのも停戦協定に対する重大な違反なのである。
C 韓国も軍備増強を強めている。特にミサイル防衛システムの導入、パトリオット、AWACS導入で北朝鮮のミサイル攻撃能力を無力化する狙いである。
(3)米の戦争挑発、経済制裁に躊躇と不安が出始めている。小泉政権の先兵的で犯罪的な役割。
@ 対北朝鮮戦争については、米日韓の一部強硬派以外は、ことごとく反対しているのが現状である。米国に対抗する動きも中国や韓国を中心に活発化している。
−−7月14日に中国特使と金総書記が会談し双方が評価した。中断している米中朝の三者会談再開に向かって動き出したようだ。
−−その前12日には、韓国と北朝鮮は閣僚級会談の場で、北朝鮮の核兵器開発問題で「適切な対話」を進めると発表した。
−−8日には、盧武鉉(ノムヒョン)韓国大統領と胡錦濤・国家主席らは共同声明を発表し、朝鮮半島の非核化維持を強調して北朝鮮の核保有に反対するとともに、核問題が対話を通じて平和的に解決できると表明した。
A ここでも朝鮮半島の平和と安定にブレーキを掛け犯罪的役割を果たしているのは小泉政権である。今ほど日韓の民衆の連帯が重要なときはない。私たちは韓国の反戦平和運動との連帯を追求していきたい。
政府は万景峰号をはじめ北朝鮮船籍船の入港を無条件に認め、対北朝鮮戦争への第一歩になりかねない経済制裁を直ちに中止すべきである。米の対北朝鮮経済制裁戦略、戦争挑発政策から離脱すべきである。何でもかんでも戦争と武力で抑え込もうというブッシュのやり方と一線を画すべきである。ありとあらゆる誹謗中傷、民族排外主義的な北朝鮮敵視キャンペーンを中止し、日朝国交正常化交渉を再開し、政治的軍事的緊張緩和政策に立ち戻るべきである。
Y.日本軍国主義の対外侵略的性格のエスカレーションと「自衛隊」のグローバルな侵略軍への変貌。2つの課題、2つの闘い。
(1)突如出たのではない「恒久法」。とんでもない“グローバル海外派兵法”−−急変貌する日本軍国主義、そのグローバル化、新しい台頭の全貌を把握する必要が出てきた。(別報告)
(2)日本軍国主義の2つの対外的方向性。2つの課題、2つの闘い。
@ イラク特措法は戦場であるイラクに日本の軍隊を派兵する法律である。しかし韓国の民衆、中国の民衆、アジアの民衆はそうは見ていない。自らに向けられた派兵、戦前・戦中の傍若無人な恐ろしい天皇制軍国主義の復活だと捉えている。イラク特措法を「日本−イラク」の枠組みの中だけで捉えるのは全くの誤りである。日本の私たちは自国の軍国主義のグローバルな拡大と膨張を、ここでしっかりと捉えねばならない。
A 小泉政権は、わずか2年の間に、日本の軍国主義を2つの対外的方向に向かって一気にエスカレートさせつつある。
第一に、イラク特措法を皮切りに戦場での銃撃戦・砲撃戦も射程に入れた「自衛隊」のグローバルな海外派兵、グローバルな侵略軍への脱皮である。イラク特措法がまだ成立していないのに、早くも「恒久法」がぶち上げられている。
第二に、対北朝鮮戦争準備である。3本柱が立てられている。北朝鮮への長距離空爆を可能にする空中給油機の配備、ミサイル防衛(MD)開発への参加と迎撃ミサイル網の配備、軍事衛星の相次ぐ打ち上げ。ともに真剣な国会審議もないままに既成事実化されている。
(3)イラク特措法の成立は新たな闘いの始まり。地道な闘いを積み重ねよう。
@ イラク特措法の闘いは日本軍国主義の2つの方向への新しいエスカレーションを阻止する決定的な意義を持っている。確かにこのままでは与党の数の力でイラク特措法を押し切ることは必至、週明けにも採決を強行する見通しだ。
A しかしここへきてイラク特措法が想定していた現状認識が全くウソであることが明らかになった。米英軍の圧倒的な勝利幻想に悪乗りした現状に合致しない認識、つまり戦闘はない、相手は壊滅した、相手は弱いし抵抗する力もない、米英軍の庇護の下におればルンルン気分で適当にやれる等々。
破廉恥にも首相は、派兵の先送りを示唆し始めた。米からは「激戦地」であるバラドへの派兵を要請されたが、政府与党は怖じ気づき、このままでは確実に自衛隊員に死者が出る。(イラク民衆のことは眼中にはない)解散・総選挙の後に派兵をずらせようと姑息な対応をしている。
B 小泉政権はブッシュやブレアとは違った意味で窮地に立たされている。選択を迫られている。威勢のいい好戦的な好き放題の発言をして銃撃戦・砲撃戦をやる覚悟を自衛隊と国民に強要した首相らが、このままこの法律を強引に押し通し、米英軍へ加勢し実際に死を覚悟して派兵するのか、米英に許してもらってイラク全土を逃げ回るのか。後は法案そのものを撤回することである。
C 最後まで廃案を掲げて頑張ろう。イラク民衆のゲリラ戦争は、「ラッキーマン」小泉をかつてない窮地に立たせようとしている。もし政府与党がイラク特措法を強引に成立させた場合、それは私たちにとって新たな闘いの始まりである。成立はしたが発動できない、全面的発動はできず部分的発動しかできない。そういう可能性が出てきた。秋を見通し長期戦の構えで取り組まねばならない。
[イラク戦争の泥沼化についての資料]
専門家は勝利の深さに疑問を持つ
米軍への攻撃はバース党が去勢されていないことを示している
by トーマス・E・リックス、「ワシントン・ポスト」スタッフ・ライター
2003.6.27(金);ページA20
イラクでの米軍と文民の占領勢力への、よりいっそう洗練された攻撃は、軍事専門家たちの間に新たな懸念を引き起こしつつある。4月に終結した21日戦争は、サダム・フセインの軍隊は打ち破ったが彼のバース党は打ち破っていない不完全な勝利であった、という懸念である。
バース党員の抵抗を無力化することは、ペンタゴンが思い描いていたよりも難しい仕事であることがはっきりしつつある。そして、引き続く暴力が困った事態になりつつある、とバグダッドの米高官が述べた。
昨日、バグダッド南西部で特殊作戦の一人の兵士が敵対的な発砲で殺された。また別な待ち伏せ攻撃では、米文民占領当局に属する Chevrolet Suburban がバグダッド空港への途中でロケット・ランチャーによって攻撃された。軍用ジープが以前その道で攻撃されたことがあるが、文民車輛が攻撃されたのは明らかに今回が初めてだった。それは、反米攻撃における標的の新たな形態を示している。
2人の米兵もバグダッドで誘拐されたのかもしれない。さらに、米占領当局に協力するイラク人も、昨日爆弾で殺された2人の電気労働者のように、彼らも攻撃目標であるというイラク人敵対グループによる数週間の脅迫の後、今では攻撃対象となっている。
このような攻撃行動は、イラク南部で6人のイギリス兵が殺された水曜日の暴徒集団の攻撃に続いて起こってきている。シーア派支配地域のイラク南部は、今週までは概ね平穏とみなされ、ペンタゴン当局によって成功している場所とされてきた所である。
国防総省副長官ポール・D・ウォルフォウィッツは、イラクの基本的な動向は依然として良好であって、1日だけの出来事を通して見てはならない、と述べた。彼は電話インタヴューで、「方向は、きわめてはっきりしている。より安全なイラクへと向かっている。」と述べた。そこではバース党の立場は弱まりつつあり、基本的サービスは回復されつつある、と。
ウォルフォウィッツは、攻撃に対する対応での米軍の態勢の大きな変化をなにも想定しなかった。「私は、軍が用いている基本的なアプローチは確かな方法であると思う。」と彼は述べた。
しかし、複数のイラク専門家は、これらの攻撃に、事態の基本的動向についての新たな懸念を抱いている。
「私は、今週までは、私たちが事態を掌握していると考えていた。だが、今では確信がもてない。」と、前の米軍中東方面司令本部中央司令部情報士官、退役空軍大佐リチャード・M・アチソンは述べた。「もし我々がこの作戦行動をただちにとらなければ、敵対は大きくなり続け、もっと大きな問題を抱えることになるだろう。」
前の防衛情報局アラブ地域軍事問題専門家ジェフリー・ホワイトは次のように述べた。「現状に関しては、多くのやっかいな面がある。抵抗は地理的に広がりつつある。抵抗グループはスンニ派地域で激増しつつあるようだ。抵抗している小部隊は戦術的に適応性があるようにみえる。抵抗小部隊はスンニ派社会のさまざまな部分から成り立っているようだ。我々の作戦行動は、民間人犠牲者を出し、生命を奪い、人々に屈辱を与え、財産を損なうことによって、不可避的に憎しみや敵意をつくり出す。」と。
戦争があまりにも狭くバグダッドのフセイン政権に集中し過ぎたため、イラク人の大部分は敗北したとは感じていない、と退役陸軍大佐スコット・R・フェイルは述べている。「私は一人のイラク人がこう言うのを聞いた。アメリカ人はサダムを打ち負かしたが、イラク人を打ち負かしたわけじゃないと。だから敗者の心理は存在していないと。」と彼は述べた。
ウォルフォウィッツも、その見方に合致することを述べていた。「政権があまりにもはやく崩壊したために、旧政権の主要な残存者がいたるところにいた。」と。
状況をいっそう厄介にしているのは、イラク人戦闘員がいっそう効果的な戦術を採りはじめているようにみえることである、と軍事専門家たちは分析している。たとえば、戦争中にはイラク人は、頻繁に自動小銃やその他の小火器で戦車を攻撃して死んでいった。しかし今月になってからの攻撃は、軍用ジープや歩いている兵士のような傷付きやすい攻撃目標に向けられるようになった、と退役陸軍大佐アンドリュー・J・バシーヴィッチは述べている。
さらに、米侵攻軍が相対的に小規模であることが、おそらくある程度まで戦後の混沌の原因であろう、と分析する専門家もいる。というのも、駐留軍はこの国を占領するという任務には規模が不十分であることが明らかになったからだ、というのである。「我々は勝利しつつあると私は思うが、占領軍が実際十分な規模ではなかったために、思っていたより時間がかかっている。」と、アメリカン・エンタープライズ研究所の防衛問題専門家トーマス・ドネリーは述べた。彼は現在バグダッドにいる。「私は、結果はたいして違わないだろうとは思うが、より長い時間がかかっていて、それが疑いの要素をもたらしている。」と彼は述べている。
これから数か月、米国の犠牲者は頻繁に生じるだろう、とイラクにいる別の米国高官は述べている。「6か月かそこらの間に暴力が限られたものになるというのは、私は疑わしいと思う。」と、その高官は今週のはじめに述べた。彼によれば、問題はこうである。占領統治を効果的にしようと思えば、米軍は、外に出てパトロールや探索をおこない、検問所に兵士を配置し、疑わしい者を拘束しなければならない。しかし、イラクの安定を増進するために必要なこれらすべては、米兵を傷つきやすい状態に置くことになるということである。
たとえそうであっても、「私は楽観している。状況は改善していくだろう。」と、その高官は付け加えた。
ウォルフォウィッツは、イラク人の敵対が望みのないものであるのは2つの本質的な支持の形態を欠いて行われているからであると述べた。「彼らは、住民の同情を欠いている。そして、外部からの真剣な支持を欠いている。基本的に彼らは、彼らだけなのである。」と。
しかし、継続する低強度ゲリラ戦の長期にわたる政治的コストを懸念する者もいる。
「これからの数か月にわたって、私は、悪循環を予期している。力づくで防衛するやり方が住民の離反の原因となり、占領へのいっそうの敵対を生み出すという悪循環。そして犠牲者は増加していく。」と、前の国務省アラブ問題専門家で中央司令部の政治顧問として勤務していたローレンス・ポープは述べた。
退役海軍将官カールトン・フルフォードは、もっと悲観的に「イラクにおける長期の骨の折れるたいへんな仕事」を予言した。
「これが長期にわたって続けば続くほど、このような出来事はいっそう激しくなるだろう。」と、前のヨーロッパ駐留米軍副司令官フルフォードは述べた。「我々は、このことをレバノンとソマリアで学んだ。そして、イラクは、これらのどちらにもましてずっと骨の折れるものだ。」と。
*イラク戦争の泥沼化について、次のレポートも是非参照してください。
1.[TUP速報136号 03年7月16日]
「イラク前線の米軍の士気はどん底
軍が増兵を考える際に兵士のストレス状況がネックになっている」
アン・スコット・タイソン
クリスチャンサイエンスモニター紙特集記事
http://www.egroups.co.jp/message/TUP-Bulletin/135
2.[TUP速報134号 03年7月16日]
「ある兵士の父親より」
米ナッシュビル・テネシーアン紙オンライン掲示板
7月4日書き込み
http://www.egroups.co.jp/message/TUP-Bulletin/133
*TUP速報メインページ: http://www.egroups.co.jp/group/TUP-Bulletin
[イラク特措法を廃案に!自衛隊派兵に反対する 7.20大阪集会]
■ 集会の報告
[報告]
「恒久法」と日本軍国主義の新しい危険−−−国際平和協力懇談会の「提言」について
[集会決議]
イラク特措法廃案!自衛隊派兵を阻止する闘いを地道に作り上げよう!