“ファルージャの大虐殺”−−これはジェノサイドだ!
(1) 米軍がついにファルージャに対する大規模侵攻を開始した。11月8日、激しい空爆、砲撃によって住宅地を破壊した後、西部の橋と病院を制圧し、次いで大規模な地上部隊が北部からファルージャ市内に侵攻し殲滅作戦を始めた。ファルージャ周辺には4月を大きく上回る1万5千もの米兵と数千のイラク治安部隊が結集し、5千を超える部隊が市内に突入している。ブッシュは血塗られた大虐殺を再選後初めての仕事にしたのだ。
今回の攻撃は、米軍にとって決して余裕のあるものではない。逆に、無法・無謀なイラク侵略を開始したものの、国際的な支持もイラク民衆の支持も得られず占領支配が行き詰まり・破綻した結果、焦りと苛立ちから始めたものである。戦線は延びきり兵士は疲れ切っている。このまま軍事費が増えれば財政もパンクする。一刻も早く決着を付けたいが故に、却って凶暴になり、まさに“凶器”となって暴れ回っているのだ。
(2) 11月10日、米軍によるファルージャ制圧作戦は3日目に入った。11月10日夜時点で、米軍は市内の7割を制圧し、空爆と共に個別撃破のローラー作戦を展開していると報道されている。「以外と抵抗は少ない」「米軍の侵攻は予想以上に速い」「武装勢力の大半は市外に逃げた」等々の情報が流されているが、真偽はわからない。
元々ファルージャの武装抵抗勢力がとるべき戦術は限られていた。「玉砕」戦術を採るか、それとも「ゲリラ戦の鉄則」通り真正面からぶつからずに一時的に後退し力を温存するのか、後者の傾向が見えているが最終的にはまだ分からない。両者の中間的な戦術という見方もある。
(3) しかしはっきりしているのは、おびただしい数の死傷者が生み出されているということである。アラビア語で「夜明け」、英語で「亡霊の夜明け」と名付けられたふざけた名称のファルージャに対する軍事作戦は、イラク戦争の「終結宣言」以来最も凄惨で残酷な様相を呈している。建物を片っ端から襲撃し、しらみつぶしの家宅捜索で逮捕・拘束、殺害しまくっている。それだけではない。病院、モスク、学校、駅など、人がたくさん集まる公共施設に対する攻撃を優先し、空爆と砲撃で破壊し、数百に及ぶ家屋の倒壊によって、中にいる住民もろとも抹殺しているのである。
今回の米軍による軍事行動の残虐性と暴虐は、今分かっている範囲内で以下のような特徴を持っている。まさに“ファルージャの大虐殺”“ジェノサイド”である。
@ 米軍はまず最初に病院を攻撃した。今回の作戦の最大の特徴の一つである。発端における西部のファルージャ総合病院の襲撃とそれに代わって負傷者を受け入れていた診療所も襲撃。医療機関、医療施設の徹底した制圧。等々。
−−病院攻撃の第一の狙いは情報統制である。これまで市民の被害状況、死傷者を積極的にメディアに証言してきた最大の病院を占領し、医師や看護婦を拘束、メディアから惨状をシャットアウトしたのだ。
−−第二の狙いは、負傷者を手当てさせず死に追いやるという米軍の戦術である。負傷したのが民間人であろうと武装勢力であろうと構わない。これまで通り、女性や子供も全部「テロリスト」呼ばわりすれば、何でもできる。
−−第三に、徹底殲滅のためか、救急車、医師・看護婦・救援者も容赦なく狙撃され命が狙われている。とにかく病院への攻撃と破壊が特徴的である。
A 15,000人の米兵がファルージャを完全包囲し、水・電気・食糧をストップしている。武装勢力を兵糧責めするという口実で、6万〜10万人は残っている住民全体を兵糧責めにしている。最初にファルージャに通じる2つの橋を封鎖し、一般の荷物だけでなく、赤新月社などの医療物資、支援物資さえも閉め出した。米軍は残留者はすべて反米勢力かそのシンパ、「テロリスト」と見なし殺戮の対象にしているのだ。未曾有の人道的危機が間もなくやってくるだろう。
B 攻撃も徹底的であり凄惨である。停電も重要な戦術である。夜中のローラー作戦、急襲のために行っている。住民を暗闇の中に置くことによって攻撃のフリーハンドを得ている。その上で、北西部のジョラン地区、および北西部のアスカリ地区から南下。C130による無差別空爆、戦車による砲撃、ブルドーザーに家屋倒壊、スナイパーによる射撃、自動小銃による乱射、しらみ潰しのローラー作戦。等々やりたい放題。一般市民は身を守るすべを全く持っていない。
C 非人道兵器の使用も報告されている。恐怖を与え攻撃の士気をそぐためのサーモバリック爆弾の使用。米軍の無人航空機「プレデター」が殺傷能力の高いサーモバリック(熱圧)弾頭を搭載した空対地ミサイル「ヘルファイアー」を撃ち込んだという。
(4) これが小泉首相が「成功してほしい」と全面支持を表明したファルージャ軍事作戦の中身である。兵糧責めも負傷者の見殺しも米軍の重要な作戦だ。首相は10日の党首討論で「失敗したらいいと言えるわけがない」と語った。「自衛隊がいるところが非戦闘地域だ」とも語った。もはや彼には、「米軍の軍事行動と自衛隊の復興支援は別」というような欺瞞を弄することもなくなっている。安全なところを選んで自衛隊が行くのではない、自衛隊がいくところを武力で非戦闘地域に変えるのだ、力づくで抵抗を弾圧するのだ、サマワを非戦闘地域にせよ、自衛隊を派兵し続けるためにイラクの治安を安定させよ、そのためにファルージャ民衆を皆殺しにしてもかまわないと、本末転倒の論理を公然と主張するまでになっている。小泉はもはやイラク民衆殺戮の完全な加担者、当事者である。我々はこのような政府をまだ倒せないでいるのだ。
(5)一般に言われているように「ザルカウィ」が目的なら、「逃亡」が判明した時点で米軍は攻撃を中止しなければならないはずだ。しかし容赦のない殺戮と破壊を続けている。なぜ攻撃を続けるのか。それは「大量破壊兵器」と同様、「ザルカウィ」も単なる口実だからだ。真の目的は、米軍占領に真正面から抵抗する拠点都市ファルージャとその住民を武力で虐殺し、米とアラウィに逆らえばどうなるか末路を見よと、軍事制裁の恐怖をイラク民衆に見せしめとするためである。ファルージャの次はラマディか、モスルか。「ザルカウィ」には足がある。米軍は「あそこにいる」「ここにいる」と言い、攻撃したいところを自由自在に選ぶことで、スンニ派三角地帯全域で大量殺戮と大量破壊をやり遂げるつもりだろう。
(6) 情報統制と世論誘導が著しい。アルジャジーラ・バグダッド支局が3ヶ月前から閉鎖されているため、攻められる側、殺される側、被害者の側からの情報、現地に密着したまともな情報が極端に減少している。ほとんど全てが攻める側、殺す側、加害者の側からの「大本営発表」である。AP、AFP、ロイター等欧米メディアから流れされる情報は基本的には、悪名高い従軍記者によるエンベッド取材であり、加えてイラクのグリーン・ゾーンや米国の国防総省で行われる米軍・イラク軍によるブリーフィングである。
「米軍はああした、こうした」−−米軍の「大本営発表」を垂れ流す事しかできない堕落した日本のメディアが伝えない真実を何としてもつかまなければならない。数が少なくなったとはいえ、それはアルジャジーラや中東のメディア、現地に入っているフリージャーナリストのインターネット情報、欧米のメディアの断片を丁寧に隅から隅までフォローすれば可能だ。
一体何人が殺されたのか、電気も水も供給がストップし商店という商店は閉ざされて食糧や生活物資を買うことも出来ず、食糧供給のための搬路は米軍によって閉ざされ、何日もの間、水も食物もないもとで、暗闇の生活を強いられている。出れば攻撃される状況下で一歩も外に出られないファルージャで、人々がどのような悲惨な生活を強いられているのか、我々は正確に知ることは出来ない。
しかし、このような制約があったとしても、メディアや現地からの証言などを元に、現在ファルージャで起こっている米軍の軍事行動と住民被害について報じられている限りで明らかにする必要がある。事態が目まぐるしく変わるので、全訳を避け、できるだけ多くの情報の断片を伝えるようにする。その作業を積み重ねた上で、できるだけ正確なイメージを作り上げようと思う。
2004年11月10日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
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