シリーズ<マスコミが伝えないイラク戦争・占領の現実>その23
ファルージャ大虐殺一周年:米軍の戦争犯罪(3) |
米軍の暴虐と人々の怒り・抵抗を記録
『Caught in the Crossfire
〜The Untold Story
of Fallujah』
−−十字砲火に曝されて〜語られなかったファルージャ−− |
ファルージャ大虐殺1周年を期して、アメリカとイラクの映像制作者によるビデオが発表された。タイトルは『Caught
in the Crossfire〜The Untold Story
of Fallujah』――「十字砲火に曝されて〜語られなかったファルージャ」。ファルージャへの空爆、歓喜をあげる米兵、逃げまどう人々、傷ついた子どもたち、町から避難する人々を攻撃する米軍−−2004年4月と11月のファルージャ攻撃についての映像と、それ以降も厳しい検問によって封鎖され、まともな食糧や清潔な水さえ欠いているファルージャの人々や難民の証言、そしてイラクの人々の激しい怒りと抵抗の意志が納められている。17分程の短い映像であるが、それは見るものを圧倒せずにはおかない。
米軍の無差別爆撃と、傷つき逃げまどう人々
このビデオは衝撃的な、戦争の映像から幕を開ける。
市街地に砲弾が落ち、一瞬の光とともに瓦礫が舞い上がったかと思えば、それを追って黒々と空高く噴煙が立ちこめる。戦車の砲からすうっと砲弾の線がのび、住宅へ命中……米兵が「Wow!」と歓声を挙げる。
バンバンと音がする度に、部屋の窓から血の色のような真っ赤な閃光が瞬く。戦車、戦闘機、ヘリコプター……近代兵器の粋が投入されている。この冒頭の1分余りが、米軍が配信した映像だ。あまりものワンサイドゲームであり、しかもそこに「敵」の姿はない。米兵が誰に向かって歓声を挙げているのか分からない。
しかし短い英語のナレーションの後、視点は切り替わる。家の玄関で叫び声を上げる女性の姿。通りを横切り向かいの家へと避難する女性たちや子どもたち。幼い子どもを抱いてあてどなく逃げ惑う父親たち。その間パパパパパンと連続する機関銃の音や、ズズンと低い迫撃砲弾の音が、絶え間なく鳴り響いている。通りの向こうでは黒煙が次々と立ち上っている。親は我が子を懸命に守ろうとする。しかし、どこにも逃げ場がない。それがどんなに怖ろしく、辛く悔しいことであるか。砲弾の飛び交う中、子どもを抱いた親の気持ちを私たちは一体どれだけリアルに想像できるだろうか。
街中で、少年が空襲の恐ろしさを語る。「あいつらがファルージャを爆撃した時、このビルよりも高い火柱があがったんだ。」「砲弾の破片が頭の上を飛んでいって、本当に怖かった。体がふるえた。」
惨劇を訴える子どもや父親の証言もある。病院のベッドに傷つき横たわる子どもたち。子どものひとりは脚をやられ、もうひとりの子どもは顔をやられて歯がボロボロになっている。彼らは、夜間外出禁止令がでる前に車で家に帰ろうとしていて突然車が撃たれ、爆発・炎上した。父親が言う「子どもは体中が傷だらけで、破片が至る所に刺さっている。」
布にくるまれた無数の遺体。人々は広場に地面に溝のような墓穴を掘る。その「溝」はパワーショベルで掘られ、それは延々と続いている。埋葬作業に携わっている何十人もの人々は、等しく沈鬱な面持ちだ。嗚咽が聞こえる。埋葬される遺体はここにいる人たちのかけがえのない存在なのだろう。そもそもかけがえのきく存在の人間なんて存在しない。次々と埋められる遺体は単なる遺体でなく、誰かの愛情や尊敬を受けていたであろう存在なのだ。
難民キャンプでの証言
バグダッドの避難民キャンプ。緑や茶色のテントが立ち並ぶ。明らかに夏用のテントで、雨風はしのげても寒さはしのげまい。
子どもを連れた女性が証言する。「私たちは、まともに避難させてもらえませんでした。バグダッドの人々が私たちを助けるために来て、川を渡らせようとしました。しかし米軍は、ファルージャへの出入りをさせないために通りを閉鎖しました。彼らは言いました『おまえたちは中に入ることも出ることもできない』。彼らは、この場所に、この砂漠にとどまるよう私たちに命じたのです。私たちがファルージャを去ることを認められるまで、子どもたちは朝から晩まで水のない砂漠に放置されたのです。」
水は非衛生的で、伝染病の危機にさらされている。子どもたちは下痢にかかっている。「蚊がいっぱいで、私たちは夜眠ることができません。さらに今、子どもたちは肺をやられています。」
続くファルージャの封鎖と家宅捜索
ファルージャ郊外のチェックポイントでは、無数の人、無数の車が並んでいる。鉄条網で仕切られた空間を、ただひたすら待ち続ける。バーコードの入った身分証明書と、虹彩検査と、銃を突きつけられ腹這いにされて受ける身体検査。まるで街全体が収容所と化してしまったかのようだ。
そしてファルージャ市街・・・車の中から通りを舐めるように映していくそこは廃墟、廃墟、廃墟・・・全くの瓦礫と化した街。壁は崩れ、柱は折れ、煤で黒ずんでいる。よく見れば建物の一軒一軒にスプレーペンキで記号らしきものが書かれている。アルファベットと数字の組み合わせであったり、×の記号であったり。おそらくは米軍がしらみつぶしに「捜索」した結果だろう。その一軒一軒でどのような悲劇があったのか。ナチス時代の、ユダヤ人街に書かれた印を思い出す。
がれきの中で
そんな廃墟にも子どもたちがいる。しかしこの子たちの親や兄弟は元気にしているのだろうか?一体今後どのような未来が、この子たちに待ち受けているのだろうか?手を繋いで煤こけた階段を下りてくる幼い兄弟、うつむき手を繋いで道を歩く幼い姉妹、水と電線を運ぶ子ども、ショベルを持ちたたずむ子ども、ボロボロになった自転車にまたがる子ども・・・一様に笑顔はない。この子たちが心の底から笑顔を取り戻せる日は果たしてやってくるのだろうか。誰が、そのような資格や権利があって、この子たちの笑顔を奪ったというのか!
がれきの前で女性が語る、「飛行機が爆撃しつづけていました。こっちではクラスター爆弾が、むこうではミサイルが、至る所から私たちを攻撃していました。私たちの頭上で、休む間もなく爆発していました」
がれきの前のテントで、子どもを抱いた男性。「今では、通りの蛇口からは水が出るが、それを飲むことができない、非常に汚い、本当に汚れている。私たちは、衣類を持った人にその衣類で水をろ過してもらい、それからそれを飲む。
しかし、もしあなたがそれを見れば、服をそこで洗濯するのにさえ十分に清潔だと思わないだろう。今、子供たちは胃の病気で痛んでいる。そして、腎臓がやられている。」
人々の怒りと抵抗
街中で、男たちが叫ぶ。「俺たちは、何よりもイスラム教を守るために、このファルージャで闘っている。やつらはコーランをトイレに流し、コーランを冒涜した。」「あいつらは女性たちをレイプしている。あいつらはアブ・グレイブで陵辱している。」「俺たちは襲撃され、火をつけられ、拘束され、追い立てられ、殺される。このようなことが日夜を問わずずっと続いているんだ。」「それが我々が米軍に抵抗する理由だ。」
また、通りで女性がイラク政府に対する怒りをぶつける。「政府はどうしてこんなことを容認しているのでしょうか。政府は、抵抗するイラクの男たちをテレビで映し出し、彼らがテロリストだと言っています。しかし、ここにいる人々をテロリストと呼ぶのであれば、なぜ彼らはアメリカ人を同様にテロリストと呼ばないのでしょうか。イラク人が生涯これを受け入れることはないでしょう。」
「Caught in the Crossfire」の意義
ファルージャに対する米軍の攻撃とその後も続いている惨禍をメディアは全く無視している。それに対して、ファルージ攻撃を経験して生き延びた避難民たちが、世界に真実を伝えるために、命の危険を冒してこのドキュメンタリーフィルムに協力したという。また、このフィルムはアメリカとイラクの映像制作者の共同作品とされているが、イラクの映像制作者の名前はクレジットされていない。その事実そのものが、この映像作品の重大性を示している。最後に字幕が表れる、「これはイラク・アメリカの映画制作者の共同作品です。しかし、皆さんにこの真実を明らかにしたことで、報復される可能性が非常に高いため、イラクの映画制作者の名前は明らかにされません。それに連帯する形で、私たちが真実を完全に自由に言えるその日まで、アメリカの映画制作者およびこの映画の制作に貢献した多くの技術者・スタッフのすべての名前も同様にクレジットされません。」
ファルージャ虐殺について知識を持っている人も、ほとんど知らない人もこの映像を是非観てほしい。米軍が彼の地で何をしているのか、誰のための戦争であるのか、テロリストとは一体誰であるのか。そしてイラク戦争とブッシュ政権を支え続け、政治的にも軍事的にもアメリカとの一体化を追求する日本とは何なのか、そこに住む私たちは一体何者であるのか−−このことを鋭く突きつけている。ナレーションは英語で語られ、アラビア語で語られる証言には英語の字幕がついている。日本語ではないが、映像を見るだけでもファルージャの真実の一部を知ることができるだろう。
2006年2月23日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
■『Caught in the Crossfire〜The Untold Story
of Fallujah』――「十字砲火に曝されて〜語られなかったファルージャ」
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このDVDは、以下のウェブサイトで購入して下さい。「イラクでの軍事行動によって、戦闘地域にいる市民はほとんど援助もなく、恐ろしい状態で生きています。このフィルムの販売から生じる収益は、イラク内の戦闘地域の激しい攻撃によって被害を受けた無実の民間人や難民への援助となります。」とされています。
※ConceptionMedia, http://conceptionmedia.net/projects/caughtinthecrossfire/
このほか、ファルージャを巡るドキュメンタリー映画には2本ある。あわせて参考にしていただき、イラク戦争とはいったい何なのかについて考えてほしい。
■ドキュメンタリー映画「ファルージャからの証言」DVD版 33分
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2005年/イラク/日本語字幕付き/アル=キターフ芸術プロダクション
日本語版制作「ファルージャからの証言」日本語版制作委員会
頒価 2500円+送料200円(2枚以上は送料無料)
5枚以上は委託料金扱い1枚2000円
〒545-0052 大阪市阿倍野区阿倍野筋3-1-27-401 役重方
イラクフォーラム事務局 TEL090-9273-4316 /FAX06-6624-2835
メール ysige@hotmail.com
■「ファルージャ2004年4月」(日本/2005年/55分)
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制作:土井敏邦 ファルージャの虐殺を記録に残す会
申し込みは日本語版、英語版ともにVHSとDVDの2種類
VHS、DVDともに 3500円(団体10000円)(税込・送料別)
申し込みは以下のところにお名前と送り先、お求めの種類と本数を銘記ください。
折り返し、代金の振込み先が通知されます
(Eメール) falluja2004@hotmail.co.jp
(FAX) 045-311-3772
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