イラク戦争劣化ウラン情報 No.12 2004年2月2日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局 吉田正弘
NATO軍の劣化ウラン攻撃から8年−−−−−−
旧ユーゴのサラエボ近郊の町ハジチの住民の間でガンが多発
−−イラクの都市部・人口密集地での劣化ウラン使用の危険を改めて警告する−−
昨年12月30日、BBC放送でサラエボ近郊の住民の間で、ガン死亡率が異常に高いというニュースを放送していました。ニュースは、NATOによる劣化ウラン空爆を受けたサラエボ州のハジチ武器製造工場で働いていた人や付近の住民が葬られた墓地の映像から始まっています。短いニュースですが、非常に重要だと思われるので以下に紹介します。
ところで昨年3月、国連環境計画(UNEP)は、1995年のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で米軍などが使用した劣化ウラン弾に関する報告を発表しています。
それによればこれまでの国連報告と同様、対米配慮をきかせ「環境や人体に直ちに危険を及ぼすものではない」と結論付けるものですが、使用から約7年が経過したにもかかわらず、幾つかの衝撃的な内容が含まれるものでした。
(1)地中に埋まった劣化ウラン弾が腐敗し、地中を通じて地下水の一部を汚染したこと。(2)一部の建物内部で大気中から微量の劣化ウランを検出したこと。
(3)7年間で劣化ウラン弾の約25%が腐食しており、完全に消滅するまで25〜35年を要するとみられること。等々。
※この報告書は私たちも「劣化ウラン戦争を直ちに中止せよ!」(署名事務局)で紹介しました。
http://www.jca.apc.org/stopUSwar/DU/stop_du_war2.htm
しかしハジチの現地住民は、このUNEP報告書の結論−−汚染はあるが被害は立証できない−−に強い不満を持ち、住民の間でガンが多発している事実を改めてBBCに知らせ、告発したのです。
確かに、このUNEP報告をよく読めば、ハジチを含む3箇所でDUによる汚染とDU兵器の破片を確認したが、被害との関係は「実証できない」と述べています。しかし今回のBBCニュースが報道するように、当時の専門家チームは「必要なデータを入手できなかった」と言い訳していることからも分かるように、「実証できない」のではなく、「実証したくなかった」と疑われても仕方がないでしょう。
※Low-level DU contamination found in Bosnia and Herzegovina, UNEP calls for precaution
http://www.unep.org/Documents/Default.asp?DocumentID=298&ArticleID=3926
報告の全文はUNEPのこのホームページに掲載されています。
このBBC報道とUNEP報告が示す“もう一つの警告”−−それはサラエボ近郊の都市ハジチで起こっているように、都市部や人口密集地で劣化ウランを使うことがどれほど危険なものかということです。私たちは今回のイラク戦争で、南部から首都バグダッドに至る激戦地がいずれも都市部や人口密集地であったことを想起しなければなりません。
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セルビア人共和国の医療関係者は劣化ウランの影響について調査を求めています。劣化ウランで処理した爆弾や砲弾がガン発生率の上昇につながっていると主張しています。これらの爆弾は1995年にNATO軍の空爆で使用されたものです。
旧ユーゴスラビアのセルビア人勢力の基地があったこの町は、首都サラエボの近くにあります。1995年、劣化ウラン弾の爆撃を受けました。ジェリコさんの両親は、いずれもガンで死亡しました。父親は、武器製造工場で働いていたときに、NATO軍による攻撃を受けました。両親はボスニア東部の墓地に眠っています。そのほかにも、数十人がガンで死亡し、ここに葬られました。いずれもハジチの武器製造工場の近くに住んでいたか、そこで働いていた人々です。ジェリコさんは、「劣化ウラン弾の使用は戦争犯罪である」と語ります。NATOの空爆開始後、セルビア人住民の多くはハジチを離れました。この男性の兄は、ガンで死亡しました。10代の娘は、自分が面倒を見ていると言います。妻もガンにかかっていて、この先長くはないだろうと語ってくれました。
NATOの空爆から7年。国連の専門家が、基地の近くの水源、及び土壌を検査しました。環境や人体に危害は無いという結論が出されました。しかし、検査チームの責任者が、EメールでBBCに語ったところによると、ハジジに一部汚染があったものの、必要なデータを手に入れることができなかったことを認めました。
サラエボ付近のセルビア人居住区のガン発生率は、それ以外の地域の4倍です。医師はさらなる調査が必要であると主張します。病院の責任者ドラレスさんは、劣化ウラン弾の使用は絶対に禁止するべきであると主張します。
コソボ紛争でNATOの空爆を受けたセルビア人居住区でガンによる死亡者が増えています。アメリカの空爆を受けたアフガニスタンやイラクでも数年後には同じ事態が発生するであろうと旧ユーゴの専門家は見ています。
しかし、NATOのロバートソン事務総長は、全ては事実無根であると切って捨てました。「劣化ウラン弾とガンの発生率との間には、科学的な関連は認められません。」
しかし、これだけ高いガン発生率に明確な説明がなければ、住民の間から恐怖が消えることはないでしょう。
(2003年12月30日放送 BBCニュース より)
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「UMRCイラク・ウラン被害調査カンパキャンペーン」