提言「被害を受けた人の権利保持と権利回復のために」が、第8回全国集会で採択されてから7年が経過した。そこで示された課題には今なお解決の途上にあるものも少なくないが、一方で、その後の社会や大学の動きに伴って新しく浮かび上がってきた課題も多い。そこで、今回の第15回全国集会では、先の提言における各項目の実施をあらためて求めるとともに、近年の社会変化を踏まえた、新しい提言を示すこととした。
<大学に対する提言>
- 大学は、セクシュアル・ハラスメントの対応に際し、被害を受けた人が、良好・安全な環境で学習・研究・就労を続けることができるよう、必要な措置(二次被害・二次加害の防止、緊急避難措置、加害者処分後の学習・研究・就労環境改善、加害によって必要となった療養や法的援助の費用・授業料等の補償を含む)を講じること。その際、何が必要な措置であるかは、被害を受けた人自身が決定すべきものと認識すること。
- 大学は、教職員が受けたセクシュアル・ハラスメントを労働災害として認定することが、被害を受けた人の権利回復措置として有効であることを認識すること。
- 大学は、非常勤講師・任期付き研究員・非常勤職員が大学の重要な構成員であることを認識し、そうした人々がその立場の弱さゆえに、セクシュアル・ハラスメント等の被害に遭いやすく、また被害を訴えること自体難しい状況にあることを理解すること。また、その立場を考慮した上で、研究・就労環境が良好で安全なものとなるよう、積極的に対策を講じること。
- 大学は、セクシュアル・マイノリティー(同性愛者、両性愛者、トランスジェンダー、インターセックスなど)に対するハラスメントの防止を、ガイドラインに明記すること。
- 大学は、相談情報の適正な管理に細心の注意を払い、相談窓口を安全で信頼できるものとすること。そのための前提として、相談員の勤務環境及び雇用条件の整備が不可欠であることを認識すること。
- 大学は、加害者からの報復や嫌がらせ、被害の申立を理由とした不利益取り扱いを禁止するとともに、インターネット上における第三者からの中傷への対応も含む、二次加害の防止に積極的に取り組むこと。
- 大学は、セクシュアル・ハラスメントが重大な人権侵害であることへの理解が浸透するよう、必修科目の設置を含む人権教育の徹底・研修など構成員に対する意識啓発活動に、より一層の力を注ぐこと。
- 大学は、セクシュアル・ハラスメントの加害者に対し、加害行為の再発防止のために必要な措置を講じること。その際、処分だけでなく、加害者の実名や加害行為内容の公表、教育活動の停止、その他の行動制限などが有効であることを認識すること。
<その他の関係機関に対する提言>
- 学会は、セクシュアル・ハラスメント防止を学会方針・倫理規程等に盛り込み、必要な防止対策を講じること。
- 学会は、研究者の職業キャリアにおける学会活動の重要性に鑑み、セクシュアル・ハラスメントの認定・処分等の事実に関する情報を大学と共有し、加害者を学会の要職から外すなど、連携して、被害拡大防止のための対策を講じること。
- 日本学術会議は、日本の研究者団体の代表として、学術の場におけるセクシュアル・ハラスメントが、研究者に対する人権侵害であるとともに、学問の進展を阻む重大な要因となっていることを認識し、学会におけるセクシュアル・ハラスメントの実態を調査し、積極的な防止対策を講じること。
- 高等教育の評価機関は、セクシュアル・ハラスメント防止対策を、大学評価の重要な評価項目として位置づけること。その際、防止対策の運用の実態を質的に調査し、被害を受けた人の権利保障・権利回復に実質的に役立っているかを評価の対象とすること。
- 文部科学省は、大学におけるセクシュアル・ハラスメント防止について自らの責任を明確にし、第8回全国集会における提言の各項目について誠実に実施すること。大学への指導・実態調査等に努め、防止対策への取り組みの大学間の格差是正に取り組むこと。学術・高等教育の場における男女共同参画実現に向けては、研究・教育の場におけるセクシュアル・ハラスメント対策が不可欠であると認識すること。
- 内閣府男女共同参画局は、教育の場におけるセクシュアル・ハラスメント防止対策等の推進に関する文部科学省の施策について、十分な監視を行うこと。
- 司法機関・弁護士会、マスメディア、医療機関は、キャンパス・セクシュアル・ハラスメントが、性暴力としての特質と、大学等での優越的な地位や立場を利用して行われる学習・就労・研究環境の侵害としての特質をもつことを理解し、その理解に基づいた対応を行うこと。
以上
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Last update:2009-09-30