子どもたちは二度殺される【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
040603 いじめ自殺 2007.2.4.新規
2004/6/3 埼玉県蕨市立第2中学校のA子さん(中2・14)が早朝、自宅マンションから飛び降り自殺。
遺書ほか A子さんの部屋にあったノートには3ページにわたって、「告白ゲームなんていやだ」「ゴキブリと呼ばれている」「死にたい」などと鉛筆で書かれていた。
また、仲の良い友達との思い出や感謝の言葉もあった。
人権作文 A子さんが亡くなる少し前、道徳の授業で同和問題のビデオを見て感想を書くという課題が出されていた。A子さんは、同和問題といじめを関連付けて書いた作文を亡くなる直前に提出していた。(2007/1/ 市教委は公文書として情報公開の対象とする)



 「イジメと同和問題について思ったこと」  

 私は、イジメについて思うこと、少ししか知らないけど、同和問題について思うことを書きたいと思います。
 まずはイジメです。私はどうしてイジメをするんだろうと思います。人にはもちろん好き嫌いがあるから、自分と合う人、合わない人がいるのはあたりまえだと思います。
 こう思うのは私だけかもしれませんが、だったらどうしてイジメなんてするんでしょうか?嫌いならば近づかなければ済むことだと思います。わざわざその嫌いな人を思い出して表面に出すのはむじゅんしているのでは?と思います。自分だってムカムカしてくるだろうし、その相手はもっと悲しい思いをしているはずです。
 嫌いな人にその人達同士にしか伝わらないあだ名をつけ、平気で悪口や残酷な言葉を言っている人。それを言っている本人達は楽しいのかもしれない。でも大声で話せば皆に聞こえて周りが嫌な気分になると思います。私も聞いて、「もしかしたらこの人物は私なのかもしれない。」と思い、不安になり恐くなりビクビクしていた事があります。
 私もこういう風に悪口を言ったことがあります。私が悪口を言った相手もこんな思いをしていたのかもと考えると、申し訳なくなります。
 誰だって自分を否定されるのは嫌だと思うし、つらく悲しいと思います。その人に対して、私はもう必要のない人間なのか、もう世界中誰一人と私をこれから必要としてくれないのか、考えてみたらとても胸が痛くなりました。
 イジメは自分をどん底まで沈めます。
 人には感情があるから、ぶつかりあったり笑いあったりする事ができます。時には、友達の意見に影響され、考え方が変わったり相手を変えることだってあります。主張とだきょうをつり合わせてうまく友達と付き合っていけたらと思います。
 人は一人じゃ生きていけない。だから友達をつくる。一人のさみしさが複数でいることの楽しさへ変わる。
 生活の仕方とか全く同じの友達はいない。だからこそ自分がいろんな感情を知り成長していけるんだと思います。

 次に同和問題について思ったことを書きます。
 私はこの前の道徳の時間のビデオで、初めて同和問題を知りました。聞いたことはあったのかもしれないけど意味はさっぱりわかりませんでした。
 江戸時代とか、そんな大昔の家柄とかを気にして、家を追いだされてしまった主人公のおばあさんとお母さんを見て、追いだした人はとても失礼な人だと思いました。なぜ、そんなちっぽけな事を気にするんだと不思議にも思いました。
 今、生きているのは私たちで昔など気にする必要はないと思いました。
 また、主人公の妹が友達と遊んでいると、その友達のおばあさんが「あの家の子と遊んじゃだめ。」と言い、連れて帰る場面がありました。
 家柄など選んで産まれてきた訳ではないのにどうしてそんな事を言うのだろうと思いました。
 でも物語は最後には理解しあったようで、いい結末に終わって良かったです。
 人格など関係なしに差別されるなんて悲しいと思います。

 イジメも同和問題も、似たようなもので、理解しあわず、すれちがいによっておきるものだと思います。なので、その二つをよくするためには、自分の考えを一方的に通すのではなく、お互いを理解しあうことがいいのではと私は思います。少しでも多くの人が理解しあい、いい方向に進んでくれるといいなあと思います。

直前の経緯 運動部の更衣室で、A子さんは、同じ部の同級生4人と「指スマ」という指遊びゲーム(テレビの人気番組で使われ、小中学生などの間で流行中の指を前に出し合って数を言い当て合うゲーム)をした。

「負けたら罰ゲームをしよう」と決めていたが、罰の内容は決められないままゲームが行われた。
A子さんが5回、その他2人の生徒が1回ずつ負けた。

ゲーム終了後、「1回の負けにつき男子生徒1人に告白」という罰が決定。
A子さんは告白相手の5人を勝った生徒らに指定され、「好きです」と言うことを強要された。

部活動の休憩時間に、他に負けた生徒2人が先に告白。A子さんも続いて告白した。
1人が監視役となり見届けていた。残り4人に対する告白は翌日に持ち越された。

告白後、A子さんはトイレで泣いており、友人に慰められていた。A子さんは友人に、「ゲームに負けた罰で4人に告白しなくちゃいけない。告白しないとはぶかれる(仲間外れにされる)」などと語っていた。
学校の対応 2004/6/ 校長は記者会見で、「罰ゲームが自殺の原因になった可能性が非常に高い」とした。

6/11 臨時保護者会を開き、いじめがあったことを認めた。一方で、校長は「いじめがあったことは、それまで知らなかった」と話した。
被害者 特に学校を休むこともなく通っていた。部活動の練習も熱心だった。
A子さんは部員以外の友人と行動するようになっており、いじめのことも相談していた。
調 査 2004/5/20頃から、A子さんは「部活での態度が気に入らない」などと同級生に疎まれるようになった。生徒の仲間内でA子さんのことを陰で「うざい」と言ったり、「ゴキブリ」などと本人に聞こえるように言ったこともあった。A子さんも自分のことを言われていると気付いていたらしい。

部活顧問の教師は、A子さんが「練習に遅れるなど積極性に欠けてきた」とはみていたが、いじめには気づかなかったと説明。

同校には、いじめの把握など心のケアを目的に県教委が配置を進めている「相談室」があったが、A子さんは今回の件を相談していなかった。
背 景 同校では生徒は全員、部活動に加入することになっていた。

埼玉県教育委員会は、公立中学校375校(さいたま市を除く)中252校に、カウンセラーなどの「さわやか相談員」を配置していた。相談員は各校に1人、月曜から金曜まで1日6時間、生徒の相談にのっている。
2003年度、相談室を利用した生徒はのべ28万7千人、実数で5万2784人。友人関係、性格行動、不登校の悩みが多い。

埼玉県内の自殺した生徒は2004年度、中学生2人、高校生3人。2002年度、2003年度は、いずれも中、高校生1人ずつ。
事故報告書 蕨市教委は当初、「主たる原因は不明」と報告。

2006/11/ 文部科学省はいじめ自殺が相次いだことから再調査要望。

2006/12/ 「担当者の個人メモ」を根拠に、「いじめも理由の一つと考えられる」と修正報告。

2006/12/25 A子さん宅を教育長と市教委職員が訪問。文科省の再調査で、両親に連絡せずに回答したことについて謝罪。
情報公開 2004/7/-8/ 両親が県と市に情報公開請求。

10/7 蕨市教委は氏名などが黒塗りされたA4判1枚の事故報告書を公開。
遺体発見状況などはあるが、学校生活の記載は無かった。
主たる原因欄には「不明」とあり、A子さんの名前や住所、校長名は黒塗りされていた。

埼玉県が開示したA4判1枚の用紙では教育長名、公印まで塗りつぶしていた。

直接、事件に関わる文書はほとんど公開されなかったが、事故後に同校職員会議で教職員に配布された文書の一部が明らかになった。
同文書によれば、「事故の再発防止に向けての取り組み」には、ごく一般的な生徒指導の項目を羅列しただけだった。
また、「さわやか相談室」からは、「人生の重大な危機を乗り切るために」と題する文書が出されていたが、教職員向けのカウンセリング内容だった。

1年後に再び県に申請したが、自殺翌日付けの事故報告書が1枚あるだけで、結果は同じだった。


蕨市教委は、学校などから聞き取った記録を「担当者の個人メモ」として非公開扱いにしていたことが判明。この「記録」は事務処理に必要なため、当時の職員が事実に関することを整理して記した個人的メモで、後任が受け取って保管しているという。

2006/12/18 市議会一般質問で教育長は「聞き取り調査をメモにしたものだが、公文書でない」などと答弁。
蕨市は条例で公文書について「職員が職務上作成し、または取得した文書等」「組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの」と規定。
一方、「個人的な検討段階にとどまるメモや資料は公文書に当たらない」と手引に規定。「個人的に保管している。前任者から『見たら廃棄してくれ』と言われており、そういう性質のもの」と釈明。

2007/1/ 市教委は両親の要望で、人権作文と学校が事件直後に関係生徒に聞き取り調査した内容を公文書として情報公開の対象とする。
参考資料 2004/6/17スポーツ報知、2004/6/16、2004/6/17、20067/2/2朝日新聞、2006/12/12、2006/12/18、2006/12/2、2007/1/291毎日新聞
CEBcサイトhttp://www.cebc.jp/s-jiko/warabi/、ほか




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