注 : 被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。 また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。 |
S.TAKEDA |
980309 | いじめ逆転 報復殺人 |
2003.3.23 2005.6.25更新 |
1998/3/9 | 埼玉県東松山市での市立東中学校で、加藤諒(まこと)くん(中1・13)が、別のクラスの男子生徒A(中1・13)に折りたたみ式ナイフで左胸を刺され、死亡。 | |
経緯1 (犯行当日) |
3/9 登校途中、2人は出会った際にトラブルとなった。 1時限目が始まる直前、諒くんと同じクラスの仲間の生徒5人は、同校3階のAの教室に行ったが、授業開始のチャイムが鳴ったため、教室に戻った。 9時35分頃、1時限目の授業が終わった後、諒くんら6人は再びAの教室に行き、口論。 Aは諒くんの心臓付近を折りたたみ式ナイフで1回、刺した。 諒くんはベランダ沿いに約20メートル離れた自分の教室に逃げたところで倒れた。 保健室に運ばれたが、すでに意識不明。病院に運ばれたが、午前11時46分に死亡。 |
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加害者の言い分 | 男子生徒Aは、警察の事情聴取に対し、「昨年暮れ頃から(相手が)机をけったりするので我慢できなくなった。いつか仕返ししてやろうと思っていた」と供述。 また、「自分の行動で加藤君や自分の両親に迷惑をかけた。悪いことをしてしまった」と話した。 |
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諒くんと仲間の言い分 | 諒くんの仲間は、「(Aに)廊下ですれ違ったりした時に、殴られたり、蹴られたりした」「2週間くらい前からり6人組で仕返しをしようということになった」と警察に話した。 | |
加害者 | Aは諒くんと同じ小学校の出身。Aは小学校時代は明るく、クラスの人気者だった。 諒くんとも仲がよく、何度も自宅を訪れていた。 1997/9 Aの父親が米国に赴任。 Aは、すぐに小突いたり体当たりをする、肩をぶつける、たたくなどの暴力をふるう、きつい冗談や悪口を言う、廊下であうとにらみつけるようなことが目立つようになり、友だちが少なくなっていった。 秋頃、別の男子生徒とのけんかに負けて、立場が逆転。 12/ Aは母親に「最近、友だちがどんどんいなくなるんだ」ともらしていた。 12/末 コンビニエンスストアで仲間とガムを万引き。Aくんは逃れたが、仲間は捕まり叱られた。 ひとりであることが目立つようになる。 事件の2週間前頃から、諒くんのグループから「いじめられた仕返し」として、机に足を乗せるなどのいじめをされるようになった。 Aは、自殺を考えるほど落ち込んでいた。 |
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凶 器 | 1997/11/ この頃、市内の店で折り畳み式ナイフ(全長18センチ、刃体8センチ)を購入し、先週頃から校内に持ち込んでいたと供述。 他の生徒によると、Aは昨年(1997年)6月頃から、ナイフを持ち歩いていた。 テレビドラマの影響で、制服の内ポケットなどに、折りたたみ式やバタフライナイフを4、5本持ち歩き、教室などで、「カッコいいだろう」と片手で刃物を出し入れしていた。 |
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担任ほか・ 学校の対応 |
教室では何人もの生徒が、Aがナイフを見せびらかすのを見ていたが、事件後、学校は「一切知らなかった」と話した。 県教委が、1998年1月28日に発生した栃木県黒磯での事件(980128)をきっかけに、全県で実施したアンケートで、同校の生徒から、Aがナイフを持ち歩いていることを指摘する回答があった。 回答を見た教師は、Aの担任に報告したが、Aと話し合うなどの対策はとられなかった。 担任らは、諒くんのグループからのAへのいじめを、「じゃれあっている」と思っていたという。 |
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少年法 | 1998/3/9 Aは14歳未満のため、刑事責任が問えない。触法少年として補導。 児童福祉法に基づき、埼玉県川越児童相談所に身柄送致。 同相談所から身柄を受けた浦和家裁は、監護措置による浦和少年鑑別所送致を決定。 4/2 浦和家裁は第3回目の審判(生徒と両親、付添人弁護士、裁判官らが出席。非公開)で、Aを児童自立支援施設(旧称・教護院)に送致する保護処分を決定。 鈴木秀夫裁判長は、「生徒が粗暴な行為や嫌がらせをしたために同級生から無視され、最近では逆に加藤君らからいわゆる『いじめ行為』を受けたいた」と認定。「いじめの仕返しとして、数日前からポケットに忍ばせて学校に持ってきていたナイフを使用して、衝動的に本件行為に及んだものと認められる」 「事件の重大性や学校内のささいなことから粗暴行為を繰り返していた少年の資質、性格上の問題点などを総合的に考慮した」「事件の重大性や生命の尊さを教えなければならない」とした。 |
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アンケート | 同校では、栃木県黒磯市での事件(980128)後、県教委の要請で、生徒にナイフ所持の申告調査(無記名)を行っていた。「持っている」と答えた生徒が数パーセントあったが、持ち物検などは生徒との信頼関係を損なう恐れがあるとして、実施しなかった。 | |
参考資料 | 1998/3/9、3/10、4/2、4/3毎日新聞(「いじめ問題ハンドブック」/高徳忍著/つげ書房新社)。1988/4/2朝日新聞・夕刊、4/2中日新聞・夕刊、4/3西日本新聞・夕刊(月刊「子ども論」1998年7月号/クレヨンハウス) | |
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