子どもたちは二度殺される【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA


950428 いじめ自殺 2001.8.1. 2002.12.16 2003.7.1 2013.10.29更新
1995/4/28 長崎県長崎市立l梁川町の市立淵中学校で、大河内栄子さん(中2・13)が制服姿で、校舎3階から飛び降り自殺。
当日の経緯 午前8時頃、栄子さんが、校舎と体育館の間のコンクリートの上に頭から血を流して倒れているのを市職員が発見、病院に運ばれたが間もなく死亡した。
教室にカバンが置いてあった。
遺書・ほか 4通の遺書が見つかった。

【死の現場で見つかった遺書】
(縦12センチ、横9センチの白書き用紙が重ねて折り畳んであった)
「日常茶飯事の言葉によるいじめより突発的におこった形に出たいじめの方が、取り上げやすいのでしょうね。私は毎日毎日行動と言葉でいじめられているのに誰れも気付いてくれない。○○ ○○ ○○ (男子生徒
3人の姓)、他のクラスも同じクラスも、男子全員、一年の男全員に、行動で「おまえは汚い」と言われ、傷つけられ続けてきた。これで終わりにする」

【通学カバンの筆箱の中から発見された遺書】
「消えてやるよ。てめえらも、オレ自身もそれを望んでいるはずだ。なら望み通り消えてやるよ。てめえらのそのうざったく、こざかしい『いじめ』もなくなるし、そのすさんだカオも見らずにすむ。ただ普通の日
じゃ、すぐに私が消えたことを忘れるだろう。だから一ヶ月後、丁度オレの誕生日になる28日だ。そうしたら28という数字を忘れまい。だがおぼえておけ。オレはテメェらに殺されたも同じだ。ここまで追いつめたのは他でもない、おまえなのだから」

母親のジャンパーのポケットから見つかった遺書には、
「もう耐えられない。あそこに行けば苦しめられる。そのつらさに、もう、どうしても耐えきれない。私は、もうこれ以上生きることができない。生きることすら今の自分には耐えがたい苦しみがある。そうなるほど私は、あの人たちに心を傷つけられ続けていたから。毎日、毎日、あの人たちは、私が傷つくのがさも楽しそうに笑っていた。私は、もうその笑いに耐えられない。これ以上はどうしても生きていけません。本当にごめんなさい、お父さん、お母さん。でも、だめなんです。死ぬのも恐いけれど、今の苦しみがこれからも続くのなら、そっちの方が、私には一番苦しいことだから。本当にごめんなさい。そして、永遠に、さようなら。」
とあった。
いじめ態様 教室で、十数人の男子生徒から「汚い」「くさい」と言われていた。
プリント類が前の席から回ってくると、栄子さんの後ろの生徒は「汚い」と嫌な顔をした。
音楽の時間に栄子さんが歌うと、誰かが床を踏みならした。
栄子さんの持ち物に触れると鬼になるルールで鬼ごっこが始まった。
被害者 父親は漁船員で、出漁すると2カ月くらい帰らなかった。双子で生まれた弟は心臓の病気で入院。母親は留守がちだった。栄子さんは家事をよく手伝っていた。将来、弟の世話は自分がすると言っていた。
古い長屋で、家に風呂がないことから「汚い」「臭い」と言われたが、公衆浴場に行き、清潔には気をつかっていた。
親の対応 小学校4年生の時からいじめがあり、両親は担任に相談していた。

1996/3/20 父親が男子生徒に復讐し書類送検。
担任教師の対応 1994/11/ 栄子さんの1年生のときの担任教師は、同じクラスの女生徒から、栄子さんに対し根拠のない中傷の言葉を言う男子生徒が数人いることを聞いた。
ホームルームで全員に注意。その後、個別に男子生徒数人を呼んで、二度と言わないように諭した。生徒も反省している様子だったという。
作 文 学校側は全校生徒にいじめについて作文を書かせた。
学校の対応 遺族の要望を受けて、栄子さんが倒れていた場所に供養塔を建立。
毎年、「命を考える週間」として、語り継がれる。
参考資料 読売新聞/yomidasランド、「イジメブックス イジメと子どもの人権」/中川明/信山社、1995/5/2、5/3長崎新聞(「子ども白書1999年版/日本子どもを守る会/草土文化)1995/4/29、4/30西日本新聞(「月刊「こども論」1995年6月号/クレヨンハウス)「子どもと教育 事件のなかの子どもたち 「いじめ」を中心に」/浜田寿美男・野田正人著/1995年12月20日岩波書店1995/5/2西日本新聞/(月刊「こども論」1995年7月号/クレヨンハウス)、1995/11/21朝日新聞・夕刊(月刊「こども論」1996年1月号/クレヨンハウス)、ほか



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