わたしの雑記帳

2013/3/7 体育会系運動部の問題を野球の特待生制度から、考える

顧問や監督による暴力や部員の暴力問題や非行行為など、さまざまな体育会系運動部の問題は、野球の歴史をひも解いてみると、わかりやすいのではないかと思う。
高校野球では、過去のさまざまな問題が表面化しただけに、他のスポーツ以上に、内情について書かれていいる書籍や取材された新聞記事が多い。同じような問題が、体育会系の運動部にも存在するのではないかと思われる。


1991年
(明治44年)
8/29-9/22
東京朝日新聞が、「野球と其害毒」と題した記事を22回にわたって掲載。
野球熱の高まりに対して、野球に熱中するあまりに学問がおろそかになる学生たちや、興業化する学生野球に警鐘を鳴らした。
この頃からすでに、野球熱の高まりに乗じて、お金に絡む問題や、それに翻弄される選手の精神的な歪みが表面化。拝金主義が問題化。
1915年
(大正4年)
大阪朝日新聞が、全国中等学校優勝野球大会(現在の全国高校野球選手権大会)を実施。 「すべて正しく、模範的にやるなら、やっても構わないと、様々な制限を設けた。
1931年
(昭和6年)
6/
田中隆三文部大臣の諮問機関・体育運動審議会は、文部大臣からの諮問事項「体育運動競技の健全なる施行方法に関する件」の答申を発表。  
1932年
(昭和7年)
3/28
答申の具体化の第一歩として、学生野球の健全な施行の方法が小委員会で審議され、鳩山一郎文部大臣は、文部省令として「野球統制令」を発令。
中学校の全国大会の開催や大学野球連盟の設置に文部省の承認が必要とされるようになる。
その後、戦時中の文部省の学生野球弾圧の法的根拠となった。
1943年
(昭和18年)
3/
文部省、「戦時下学徒体育訓練実施要綱」を制定。
太平洋戦争の戦局の悪化に伴い、中学校のスポーツの全国大会と大学のスポーツのリーグ戦の開催を禁止。
4/28 文部省の通知書に従って、東京大学野球連盟は解散。
 
1946年
(昭和21年)
8/
全国中等学校野球連盟結成。

日本学生野球指導委員会(全国大学野球連盟・全国高等学校野球連盟・全国専門学校野球連盟・全国師範学校野球連盟・全国中等学校野球連盟が参加)が発足。
同年中に日本学生野球協会へ改組。
「野球統制令」の早期廃止を目指す。
1946年
(昭和21年)
12/21
日本学生野球協会が、 「学生野球基準要綱」制定。
これに伴い、1947年5月21日、野球統制令を廃止。
 
1947年
(昭和22年)
4/
全国中等学校野球連盟は、学制改革に伴い、全国高等学校野球連盟へ改称。  
1950年
(昭和25年)
1/22
日本学生野球協会が評議会を設け、「学生野球基準要綱」の基本方針を発展させて、「日本学生野球憲章」成立。  
1987年
(昭和62年)
ブローカーが暗躍し、不明朗な金銭が動く。 ブローカーは、プロ野球や高校から、有望選手紹介の謝礼を受け取り、選手の親にも、紹介料を要求。
1990年
(平成2年)
代半ば
野球の強い高校に中学生が越境入学する、「野球留学」が広まりだす。  
2004年
(平成16年)
1/
日本高野連と日本プロ野球組織とは、健全な関係を醸成することを共通の目的として、覚書を締結。
@日本プロ野球組織は、新人選手選択会議の対象となる高校生には自由獲得枠を採用しない。
A日本プロ野球組織は、いわゆるドラフト制度において、高校生に関する内容を変更する場合には、事前に日本高野連に説明し、理解を得るものとする。
B今後、日本プロ野球組織所属の球団による高校生の勧誘や獲得に関し、プロ・アマの健全な関係を阻害する行為があったとき、またはその恐れがあるときは、日本高野連と日本プロ野球組織の双方が誠意を持って事実関係を調査し、明らかにした上で、是正措置を講じるとともに、それぞれにおいて当事者(または球団、野球部)に対し、適切な指導、処置を行う。
なお、その阻害行為が著しい場合は、処分を行う。
 
2005年
(平成17年)
11/
日本高野連は、脇村春夫会長名で、野球部員のスポーツ特待生制度禁止の徹底を図る通達を加盟校に出す。

日本学生野球憲章13条には、
選手又は部員は、いかなる名義によるものであっても、他から選手又は部員であることを理由として支給され又は貸与されるものと認められる学費、生活費その他の金品を受けることができない。
但し、日本学生野球協会審査室は、本憲章の趣旨に背馳しない限り、日本オリンピック委員会から支給され又は貸与されるものにつき、これを承認することができる。
A 選手又は部員は、如何なる名義によるものであっても、職業野球団その他のものから、これらとの入団、雇傭その他の契約により、又はその締結を条件として契約金、若しくはこれに準ずるものの前渡し、その他の金品の支給、若しくは貸与を受け、又はその他の利益を受けることができない。
と書かれている。
特待生制度は高校生に、「野球だけやっていればいい」と誤った優越感や特権意識を持たせ、精神面に大きな影響を与える、という考え。
2007年
(平成19年)
3/
プロ野球球団が、アマチュア2選手に、計1300万円近くの金銭供与をしていたことが発覚。
1人には、2003年12月1日、高校3年生時に、「早大の学費、栄養補給費の負担」名目で、1025万7800円を供与。引き換えに、2007年度の入団を誓約させていた。もう1人にも、秋田経法大付属高校時代から、270万円の金銭供与をしていた。
プロ野球球団による高校生時代からの選手の「囲い込み」が問題になる。
2007年
(平成19年)
4/12
日本高野連の調査で、金銭供与を受けた部員の母校で、日本学生野球憲章13条で禁じているスポーツ特待生制度を採用していたことが判明。  
2007年
(平成19年)
4/24-5/3
日本高野連は、全加盟校(硬式4167校、軟式511校、あわせて延べ4678校。内私立は784校)対象に、特待生制度の調査を実施。
最終的に、硬式376校、軟式8校(すべて硬式とかぶる)の延べ384校が違反し、対象部員は7971人にのぼった。

47都道府県で、最も申告が多かったのは福岡の27校、次いで愛知の26校、東京20校、申告ゼロは高知だけだった。
その高知は、計6校の中高一貫校に野球部がある。
秋の四国大会登録メンバー20人中、明徳6人、高知12人の計18人が、系列中学で軟式野球の経験者。
高知の明徳の50人以上の中学部員たちの出身地は、神奈川、大阪、沖縄など全国に広がる中学生にも高校野球を意識した指導を行っている。
この調査まで、特待生制度禁止の建て前が先行していたため、高野連の予想を上回る高校で実施していたことが判明。

中高一貫校では、小学生対象に青田買いが始まる。
高体連も中学生への勧誘行為を禁じているが、小学生への勧誘については権限はない。
2007年
(平成19年)
7/9
日本高野連の第三者委員会「高校野球特待生問題有識者会議」が発足。  
2007年
(平成19年)
10/11
有識者会議は最終答申をまとめる。
特待生は1学年5人以下などのガイドラインを設けることなどを求める。
 
2007年
(平成19年)
11/30
日本高野連が、有識者会議の答申を受け入れて、特待生に関する新基準を決める。
3年間を暫定措置として、実態調査を実施。
2012年度の新入生募集までに最終結論を出すことを決める。
他のスポーツが当たり前りのように特待生制度を導入するなかで、高野連は頑なに憲章を守ってきたが、実態との乖離のなかで、妥協せざるを得なくなった。
2008年
(平成20年)
2/22
日本学生野球協会が、「憲章検討委員会」発足を決定。
 
2010年
(平成22年)
2/24
日本学生野球憲章を全面改正。
高校での特待生制度は日本高野連が定める基準に委ねられた。
 
2011年
(平成23)
5/27
日本高野連が、2012年度からの特待生制度導入を正式決定。
・ブローカーなどの第三者を排除し、中学の進路指導に好ましくない影響を与えないため、出願時に中学校長の推薦書を必ず求める。
・特待生の条件は、野球の技術だけではなく、中学校時代の学業成績と生活態度も考慮する。
・入学金、授業料の免除、軽減は認めるが、寮費などの生活費の支援は認めない。
・特待生の人数は1学年につき、5人以内とする。
・プロとの関係は、条件付きで「交流できる」とした。
など。
大会の出場登録を規制することも検討されたが、特待生であるかどうかは個人情報。
特定されると、出場選手から外れた場合、いじめの原因にもなりかねないとの懸念から、入学時での規制に落ち着いた。
罰則も見送られたが、守れない場合には、退会してもらうという姿勢も。
2011年
(平成23)
12/
高野連が禁止している入学試験での実技テストを実施している学校があることが判明。
高野連が、体育学科や体育コースを持つ全国192の加盟校を調査した結果、29校の違反が判明。内27校が公立校だった。
有力新人集めに時間と手間がかけられる私立校と違い、公立校の場合、志願者が揃う入試の場で、実力を確かめたい。
2012年
(平成23)
1/12
高野連は、高校入試で野球の実技試験を禁止するよう、改めて禁止。
中学校の授業で学んでいない野球の私見をするのは、生徒に不公平感が生まれることが理由。
2010年度から、ソフトボールを使った実技テストは認めている。

(Wikipedia、2011.5.28付け朝日、ほか参照)


なぜ、野球なのか?
野球は戦前から人気があった。そのことから、大手メディアが率先して取り上げてきた。他のスポーツ以上に、宣伝効果が高い
特に高校野球に関しては、甲子園大会は全試合がテレビで全国中継される、新聞各紙でも大きく取り上げられる、恰好の宣伝場所
他のスポーツでも、宣伝効果はある。とくに、駅伝など長時間のスポーツ中継が流される競技では、同じ問題が発生すると思われる。

少子化のなかで、とくに地方の私立は、生徒の獲得が難しい。学校存続の死活問題ともいえる。入学金や授業料の安い公立学校に太刀打ちできない。
その地方の私立高校が、甲子園大会に出場したり、優勝すれば、地元だけでなく、地方からの入学希望者を含め、一気に生徒が集まる。名前が知られるようになると、野球関係だけでなく、他の入学希望生徒も増える。
入学希望者が増えれば、競争原理が働き、偏差値が上がる。生徒の質もよくなる。
偏差値が上がれば、有名大学の合格者も増え、ますます入学希望者が増える。経営が安定する。


プロ野球の青田買い
競争が激化するなかで、勝つことができるのは、資金がたくさんあって、優秀な選手を国内外から集めることのできる球団となる。
一方で、少子化とともに、国内で子どもたちのスポーツ離れは進んでいる。空き地が減ったことや、塾や習い事などの幼児教育の影響で、小さい頃から体を動かす習慣がない子どもたちにとって、スポーツは楽しい部分より、きつくて敬遠したいものになった。意識して人材を育てなければ、自然には育たない環境になった。進学、就職、金、地位、名誉、おいしそうな人参を目の前にぶら下げなければ、走ろうとはしない。
以前は経済力にものを言わせて、外国から優秀な選手を留学生として引っ張ってくることもできた。しかし、海外でもプロスポーツが盛んになり、日本は経済大国ではなくなった。以前のようにはいかないだろう。国内で選手を確保したい。いや今はむしろ、国内で優秀な人材が育てば、海外に輸出できる。
少ないスポーツ人口のなかで、優秀な選手は取り合いになる。確実に手に入れるために、できるだけ早い段階から、お金をかけてでも確保したいと思う。高校、中学、ついには小学生にまでエスカレートしつつある。
そこでお金をかけても、強いチームを作ることができれば、宣伝効果や企業との提携で、資金は回る。違法とわかっていても、手をつける。


高校が大量の特待生を受け入れる理由
ブローカーの仲介により、優秀選手と、そうでない選手を「抱き合わせ」で受け入れる。
選手のランクにより、入学金や授業料の免除額などが異なる。
私学助成金制度は都道府県ごとに制度は異なるが、助成額は生徒数や職員数、学級数によって決まる。
助成金により、授業料を払わない生徒でも、人数が増えれば助成額が増すため、経営が成り立つ。特待生を増やしても、定員を埋めたほうがよい。
また、自分のところに抱え込むことができなかった選手は、他のライバル校に流れる。それを防ぐため、できるだけ多くを採用。飼い殺しにすることも厭わない。
ブローカーを通じて、特待生以外の入学希望者に、寄付を要請することもあると聞く。


野球留学や特待生制度を利用する生徒の気持ち
努力して学力をつけて有名大学に入って、有名企業に就職できても、いつ倒産するかわからない不確実性の時代
メディアを通じて、プロ野球選手の年俸の高さや海外でも活躍できることなどが喧伝されている。実力本位の世界に期待と夢が膨らむ。その夢を親も子も目指すようになる。
甲子園出場校や優勝校は、ある程度、常連化している。そういう高校に入ること、あるは、常勝に導いた監督率いる野球部に入部することは、甲子園大会に出られる可能性を高くしてくれる
甲子園で活躍すれば、野球が強い大学への進学や、プロ野球入団の際に有利になる。
何としても、わが子を甲子園常勝校に入れたい親は、ブローカーに乞われるまま紹介料を払ってしまう。
子ども自身の意思ではなく、野球チームや学校の野球部監督やコーチ、親が、進学先を決定することも少なくない。
子どもは、特待生になれば、学費などがかからない、安く済むなど、親の経済的負担が減ることで、選択することもある。

一方で、練習がきつくても、辞められない無理をさせられるために、けがをしたり、病気にもなりやすい。使い捨てても困らないくらいの選手数はすでに確保している。
野球ができないことは、退学にもつながる。あるいは、親の経済的負担増につながる。
野球しかやってこなかった部員が、野球以外の道を途中からは模索しにくい。栄光をつかむことができるのはごくわずかな選手だけ。それがわかっているだけに、親も、子も、なりふり構っていられない。


部員の問題行動はなぜ、発生しやすいか?
甲子園を目指して入学しても、100人前後の部員を抱える強豪校では、レギュラーになれるのはごく一部。挫折感を抱きやすい妬みも発生するため、いじめが横行
越境者が多いために寮が完備されていることが多いが、集団生活はストレスがたまる。しかし、人数が多いため、管理の目が行き届かない。
実力さえあれば、大人たちからは、何をやっても許される。エリート意識や特権意識。野球さえしていればよい環境のなかで、それ以外の教育が行き届かない。
野球漬けの毎日や勝負にこだわる監督の有形・無形暴力によるストレス。
それでなくても、思春期は性的衝動も強いが、異性と付き合う環境や時間的ゆとりもない
野球以外の人間関係はますます希薄になり、強い仲間意識で、違法行為にも手を染めてしまう。
などの理由から、問題行動が起きやすいのではないかと思う。


顧問やコーチの問題
選手を育てる能力より、いかに優秀な生徒を自分の学校に引っ張ってこられるか、人脈の広さやカリスマ性が、重要視される。
自身も、学生時代に野球漬けの生活を送ってきたため、経験値は高くとも、指導に必要な科学的な知識や安全知識に乏しい。学生時代は厳しい上下関係のなかで過ごしてきた。後輩は先輩に従うのが当たり前で、そうでない場合には、鉄拳制裁を加えてきた。そんな中で、コミュニケーション能力が育つとは思えない。口頭での指導が必ずしも、生徒に伝わらない。
大会に出て、優勝することを周囲から期待され、強いプレッシャーになっている。負けが続けば契約を解除されたり、周囲からも責められる。この不況下、スポーツばかりやっていた人間を雇ってくれる企業は多くない。大会に優勝して天国か、負けて解雇の憂き目にあうか、なりふりかまわず、背水の陣で臨んでいることだろう。
部員の人数が多く、行動を把握しきれない。野球ができることでちやほやされてきた生徒は、礼儀作法を欠いていたり、監督の思い通りに動こうとしない。不祥事の発覚は出場停止につながる。
手っ取り早くいうことをきかせる方法として、暴力を行使するようになる。


また、優秀選手を送り込むことが、顧問の評価となる。それが結果的に報酬や将来の仕事や役職に反映されるため、自分の推薦を蹴って、勝手に志望校を決めた部員に腹が立って制裁を加えたり、部活動を辞めようとする部員を無理やり引き止めたり、辞めた部員に嫌がらせをすることが出てくるのではないかと思われる。
これは、野球に限らない。


公立学校での問題
公立学校でも、強い部活動の存在は、学校管理職の評価と直結し、その後の出世にも結び付いていたと思われる。反面、荒れた学校は管理職にとってマイナス評価になる。
そのため、管理職に体罰容認の考え方はかえって根強く、学校統制を容易にする体罰も辞さない体育教師の存在は重宝されてきた。

また、少子化に伴う公立学校の統廃合の流れの中で、公立学校においても、定員割れは問題になってきた。
2004年度、東京都は「特色ある学校づくり」を掲げ、スポーツ実績などで都立高の合否を決める「文化・スポーツ等特別推薦」を始めた。
2005年10月の中央教育審議会答申で、「学校評価」と「学力調査」に着目。
2006年には、この提言に基づき、文部科学省は評価ガイドラインを策定。
2007年6月には学校教育法が一部改正され、各学校は学校評価を行い、その結果に基づき学校運営の改善を図り、教育水準の向上に努めることが規定された。

学校評価に合わせて、予算配分を決める自治体も登場し、私立学校同様、スポーツで活躍が期待できる公立学校に生徒が集まるようになった。定員割れをして統廃合されないためにも、公立学校でも、強い部活動をめざすようになった。
桜宮高校のように、暴力を振るってでも強い部活をつくることが、学校管理職から顧問に強く求められるようになったのではないか。そのため、部活動を勝利に導くことのできる監督が重宝されるようになる。

また、生徒や保護者も、強い部活動のある学校に入学することで、あるいは常勝校に導くことのできる監督のもとで指導を受けることにより、大会に出られる確率を増やし、そこで活躍することで、将来の進学やプロ入りや就職を有利に進めたいと思う。
そのためには、大会に出られる強い部活でないと、入学した意味がない。
だからこそ、暴力を振るってでも、強い部活を作ってほしいと願う。不祥事をみんなで隠ぺいしてでも、大会に出たいと思う。
よく、スポーツマンシップとして、「ひとりはみんなのために。みんなはひとりのために」という。でも、今は一人を犠牲にしても、みんなが犠牲になっても、とにかくすべては勝つために。それは、監督やコーチとて例外ではない。


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学校スポーツが、プロの拝金主義に強い影響を受けている。また、スポーツへの関心の盛り上がりは、用具や施設、指導者の養成など、多方面にわたって経済活性化をもたらすだろう。メディアも、関連会社も応援する
そこにさらに、オリンピックでの金メダル獲得を目指して、国を挙げて、スポーツに力を注ごうとしている。
文部科学省の「スポーツ振興基本計画(平成13年度〜23年度)」http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/plan/06031014.htmIには、はっきりと、「オリンピックにおけるメダル獲得率が、夏季・冬季合わせて3.5パーセントとなることを目指す。」と謳っている。
生徒の精神や肉体を蝕む高校野球にみられる学校スポーツの競争激化を諌める立場かと思いきや、国はむしろ率先して、数字目標まで掲げて煽っている。
スポーツ離れは、特に、金メダル獲得の可能性の高い柔道などでも進んでいる。国粋主義を推し進めるためにも、選手の層を厚くして、優秀な選手を育てるためにも、中学校での武道が必修化された。(me120210)
野球ほかのスポーツで小学生にまで青田買いが進んでいるように、そのうち、小学校での体育の授業にまで、この考えは導入されるかもしれない。そして、武道は軍事教練にもつながる。憲法9条を変えようとしていることとも、つながっているかもしれない。

ほどよいスポーツは人々に心身の健康をもたらすだろう。しかし、目的が「勝つこと」に絞られたとき、心身を犠牲にしても、時には命を犠牲にしてまで、強くなることを要求される。
強くなることばかりに気を取られて、今も、安全対策がおざなりにされている。
女子柔道でのパワハラ問題にしても、文部科学省は選手たちが今まで置かれていた人権を踏みにじられていた状況に思いを馳せることなく、一日も早く事態を収束させ、オリンピックを東京に招致することばかり考えている。
不祥事を起こした学校が、根本解決を図ることより、さっさと謹慎処分を終わらせて大会に復帰したいと願うことと、何ら変わりはない。

学校で事故や事件が起きるたびに、文部科学省はプロ選手の導入や連携を言う。しかし、暴力体質、拝金主義、不正をしてでもの手段を択ばない勝利主義などなど、プロこそが、今日の学校での体育会系運動部の元凶を作り出している。
しかも今まで求められてきたのは結果を出すことであって、そのためには安全面も、精神面も、むしろ犠牲にしてきた。
経費に余裕がないなかで、経営者は、成果が出るまで待ってはくれない。他にも経験者なら沢山いる。プレッシャーは大きい。
元プロの選手を学校に指導者として入れることは、より、競争を激化させるだけではないか。
単に、教育現場がリタイヤ後の選手の受け入れ先として重宝され、そこに再び、利権がらみの問題が生まれるのではないか。

せめて、学校でのスポーツ指導者として必要な要件をはっきりさせ、まずは健全なスポーツ指導ができる人材をきちんと育ててから、導入してほしい。
そして、大人のためではなく、誰よりも、子どもたち自身のためのスポーツ振興を進めてほしい。
でなければ、部活動での大人と子どもによる暴力事件を根絶することはできないだろう。



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