2009/12/24 | ソシオメトリック調査と発表を発端とするいじめ裁判の傍聴報告 学校関係者の証言 | |
2009年12月16日(火)、午前10時30分から、千葉地裁601号法廷で、千葉市を被告とするソシオメトリック調査を発端とするいじめ裁判(平成20年(ワ)第566)の証人尋問があった。 裁判長は三代川三千代氏、裁判官は片山昭人氏、宇野直紀氏。 冒頭に4人の教師が並んで一斉に宣誓を行った。 他の教師が証言している間は、残りの証人(教師)は控室で待機していることになっていた。 いつものごとく、内容の正確さは保障できないので、概略をつかんでいただければと思う。 長文なので、カラーの文字と私見のところを主に読んでいただけばと思う。 |
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●K担任の証人尋問 最初に、平成17年4月に千葉市立小学校で、当時4年生だったXくんの担任だったK女性担任の尋問が行われた。 被告千葉市の代理人弁護士から、主尋問。 Q:当時、この調査については「ソシオ」と説明したのか? A:「友だち調査」ということで子どもたちには話した。両親には「ソシオ」と説明した。 Q:あなたのやった調査は、ソシオメトリック調査とは厳密にいえば違うということはわかっているか? A:わかっている。 Q:調査の目的はなんだったのか?何のために行ったのか? A:当時、クラスがとても乱れていた。難しいクラスを受持ってしまったと思っていた。表面ではわからない、心の中にもっていることを救ってあげたいと思った。 Q:Xくんが当日、欠席していることは知っていたか? A:知っていた。全員が揃っているときにやりたかったが、毎日のように日替わりで休んでいたので、その日は朝からやるぞと決めていた。 Q:翌日、Xくん一人だけやったのか? A:前の日に子どもたちに丁寧に説明した。Xくんにも同じ説明をしたうえでやらせた。 Q:Xくんは、他の児童からやり方を教わったと言っているが? A:いきなり私が言うと、ドキッとするので、友だちに頼んで聞いて、もう一回、私が全く同じ説明をした。Xくんは、「わかっている、わかっている」という感じで、書き始めた。 Q:このような調査は今までもしたことがあるのか? A:4、5回くらい。…5回くらいやっている。 Q:目的は? A:同じ目的。 Q:それまでに公表したことは? A:ない。 Q:最初から、公表するつもりだったのか? A:そうではない。 Q:どういうことから、公表することになったのか? A:自分のクラスをよくするために、もっとよいクラスにしようと道徳の時間に話したが、直後に染みこんでいないなあというのがわかった。Xくんに染みこんでいないなというのがわかったので。 4年生を受持ったときから、Iくんはどうみてもいじめられていた。たくさんの子に、たぶんワースト1はIくんだろうと思われていたようだった。Iくんも自分ではないかと誤解しているようだった。一番クラスの中で、きらいな子に自分の名前が挙がっているのだろうと誤解しているようだった。クラス全体もそういう雰囲気だった。 Iくんは、「ぼくに決まっている」「やだ、聞きたくない」と言った。Iくんとクラス全体の誤解を解いてあげたかったのと、Xくんに染みこんでいなかったので、わかってもらいたいと言う気持ちがあった。 Q:調査の結果を公表することのマイナスについては、どう考えたのか? A:絶対に自分でこの先、絶対に立ち直らせるという自信があった。 Q:X姉への影響を両親は考えていたが、あなたは考えたか? A:そこまでは、考えなかった。 Q:学校は、調査はともかくとして、結果を公表したことは不適切であったと言っているが、あなたはどう思っているか? A:不適切だったと思う。その後、子どもを自分の責任で全部フォローできると思っていたが、できなかった。 Q:それは、訴訟になったからか? A:ちがう。公表すべきではなかったと最近はずっと思っていることなので。 Q:調査のあとの家庭訪問で、X母親とどういう話をしたのか? A:「友だち調査をしました。Xくんから何か聞いていますか?」と聞いた。 Q:公表について、母からの反応は? A:Xからは何も聞いていないということだった。 Q:どういうことから、ADHDの話が出たのか? A:どういう形で聞いたかは、はっきり覚えていない。 母親から、「どうなんでしょう」と心配されていたので、話のなかで話したように思う。いろいろ相談する機関がありますよと話した。 Q:ADHDの言葉を出したのはどちらかか? A:覚えていない。 Q:父親との面談はどういうことからだったのか? A:「お話したいことがあります」ということで、何で友だち調査をしたのかの話だったと思う。 Q:あなたが療養休暇をとったあと、Xさんに離任式に出るという話を電話でしたか? A:した。覚えている。 Q:Xさんからの反応は? A:母親から、離任式に出ないでという反応だった。もし、出たら刺しちゃうかもしれないという話だった。 Q:子どもたちから電話はあったか? A:あとにはあった。一方的に、「出ないで」「来ないでください」というような話だった。 Q:あなたは、子どもたちにどう答えたのか? A:答えていない、答える間もなく、電話を切られた。 Q:X母が、「私なんかいなければいいのだ」と叫んで走り回ったというのは? A:叫んだわけではないが、そう言って、走って行った。 Q:父親から大きな声で怒鳴られたというのは? A:あった。 Q:この件だけか? A:はい。 Q:あなたは、子どもが同じことを聞いたら、「ほら、また聞き返す」「先生はもう言いません」と言ったというが? A:クラス全体が話を聞いていないことが多かったので、全員にそういう指導をしていた。 Q:とくに言わなければいけないのはXくんたちだったのか? A:Xくんも、そのなかのひとり。 Q:Xくんへのいじめについて。 A:私が休むまでは全くなかった。 Q:気をつけていた? A:はい。 Q:Xくんは、「僕からは悪口を言ったことはなかった」と証言しているが? A:いさかいのなかで、互いに言い合うことが多かった。何度も叱ったことがある。Xくんが言ったことは事実とは全く違う。 Q:Iくんへのいじめについて。Xくんは「僕が特にやったわけではない」と言っているが? A:GくんとXくんが特に、Iくんに対する攻撃が強かった。何度も、指導したことがあった。 Q:Iくんの父兄に、そのことを連絡したことは? A:ない。 Q:なぜ、連絡しなかったのか? A:Iくんのほうは家庭がたいへんだったので。 Q:Xくんの母親にも伝えなかったのはなぜか? A:X母が聞いたら、そうとうショックを受けると思ったから。自分がXを買えていけば、言わなくてもいいと思った。 事実、XくんのIくんへのいじめはひどかったが、Xくんは自分のしたことに対しての意識が薄かったのかなと感じている。 ******** ここから、原告代理人の大石剛一郎弁護士から反対尋問。 Q:Iくんに対するいじめは、先生が対応すればすむ程度のものだったのか? A:いえ。ひどかった。 Q:IくんやXくんの家族に相談すべきだったのではないのか? A:自分のなかで、Xくんを変えてあげたいと思った。 Q:Iくんの家族には、いじめのことは連絡していない? A:していない。 Q:連絡するまでもないという判断のではないか? A:違う。 Q:調査結果は元々、公表するつもりはなかったのか? A:はい。 Q:子どもたちに書かせるときにも、誰にも見られないように、誰にも見せないようにと言って書いてもらった? A:はい。 Q:調査結果は、児童が公表してと言ったから、公表したのか? A:違う。 Q:公表すると、どういうプラス効果が発生すると思ったのか? A:Iくんの誤解がとける。力関係で、Xくんに思っているひとがいるので、対等になる。 Q:AさんやXくんを指導するためもあったのか? A:それもある。クラス全体の雰囲気がよくなかったので。 Q:公表すれば、よくなると思ったのか? A:思った。実際、次の日から、AさんとXくんは、すすんでいろいろやるようになった。 Q:公表が不適切であったことはわかっているのか? A:はい。 Q:公表によって、マイナス効果が発生する。ワースト1とされたXくんの大きな精神的ダメージはわかるか? A:はい。 Q:前の調査のときに、「きらわれもの」という言葉を使ったようだが、子どもたちの間に強弱関係をつくってしまうとは思わなかったのか? A:自分のなかで、考えていなかった。 Q:前に5回調査をやっているということだが、今回は大丈夫でも、次は自分が「きらわれもの」になってしまうといったことは? A:話の中にはあると思う。 Q:ワースト1と公表されることで、いじめの対象になるとは? A:思っていない。フォローしていけると思った。 Q:それは、いじめの危険性があるからか? A:はい。 Q:実際、Xくんは周囲から、「だから嫌われるんだ」と言われたり、X姉も「弟は一年生で一番嫌われているんだって?」と言われている。2月には、掃除の班でXくんを嫌いな人と言って手をあげさせて、手をあげなかった子を仲間はずれにするという経過があるが、今回のケースだけでなく、周囲にも悪影響があるとは思わなかったか? A:自分がその場に遭遇したわけではないので、答えられない。 Q:公表した結果、その後、どうなったか報告は受けていたか? A:受けていない。 Q:他の教諭から報告がなかったとしても、クラスやXくんが、どういう状態になっていると知りたいとは思わなかったのか? A:休む前は、できることをやったし、変化をみていた。自分でも、うつ病の薬を飲んでいて、そんな余裕はなかった。 Q:平成17年11月に復帰するという話もあったのか? A:はい。 Q:クラスがどうなっているかは? A:子どもたちから手紙が来ていた。 Q:他の教師から報告は? A:受けなかった。 Q:あなたから質問はしなかったのか? A:私のあと、S先生がみてくれると聞いていたから. Q:あなたから、S先生に「こういうふうにフォローしてください」ということは? A:なかった。 Q:この件で、「調査公表は誤りだったから、なかったことにしてください」「調査結果を前提した言動はしないで下さいということを子どもたちに言ったことは? A:私がか?ない。 Q:学校としてはどうか? A:知らない。 Q:Xさん家族が、調査公表のあとのいろいろな出来事のショックで、カウンセリングを受けたりしていたことは知っているか? A:母との電話で知った。 Q:その状態に応じて対応するということは? A:私は休みをいただいていたので、私からはできない。 Q:現場にいたとしたら、した? A:した。 Q:調査結果公表前に、公表するけれど、公表された結果に基づいて、ワースト1とされた人に同じことがあったら、注意してくださいと言ったか? A:言った。 Q:AさんとXくんは、みんなから注意されなければいけないと、その後の経過のなかで何かトラブルがあるたびに調査結果が引き合いに出されていることをどう考えているか? A:その後は知らない。私が見たときはなかった。 Q:トラブルになるたびに、「だからワースト1になるんだ」というようになったのは、関係性の問題では? A:対等になったと思う。今まで言いたくてもいえなかった子たちが、言えるようになったと思う。 Q:Xくんがみんなから注意すべき対象になったことが、対等になったというのか? A:対等になった。 ****** 宇野裁判官からの質問。 Q:Xくんの場合、調査の結果、どれくらいの割合だったのか? A:だいたい4分の1強。 Q:Aさんは? A:Aさんのほうが多い。クラスのなかの3分の2くらい。 Q:それに次ぐ人はどれくらいだったのか? A:あとはそれぞれ1人とか、ごく少数。あとは、ばらばらだった。 Q:5月11日から精神的なことで休暇をとっているか? A:そのちょっと前に、仕事のなかでイライラするようになった。4月初めから、この学級を受けもつと決まった頃から、苦しいなと思っていた。 Q:6月の療養休暇に入るまでに、どのくらい休んでいたか? A:ほとんど休んでいない。 Q:休みがちで、休暇をとるようになったということは? A:ない。 Q:5月26日付けの甲○○号証のところで、「X様、お手紙拝見しました」とあるが、どういう手紙だったのか? A:内容は全く覚えていない。 Q:どういう趣旨かも? A:覚えていない。 片山裁判官から。 Q:以前に5回、調査をしたということだが、どういう形で? A:やみくもにやったわけではない。友だち関係がとうなっているか知りたいとき、いじめが集中しているときに調査をしている。 Q:この時、道徳の時間に指導したということだったが、個別に面談などは行わなかったのか? A:行わなかった。今までも、全体指導するなかでやっていた。 Q:公表しないで、Aさん、Iくん、Xくんに、個別に面談するにどして対応することは考えなかったのか? A:考えなかった。自分では、公表するまでの間に、自分でも働きかけをしていたつもりだ。 個別に呼んでということはしていないが、「言葉がきついんじゃないの?」などと。 Q:こういう結果が出ていたので、折に触れて、Aさんにも注意していたということか? A:はい。 三代川裁判長から。 Q:Xくんが2年生からの担任だったということだが、その頃はどうだったのか? A:2学年からけんかやトラブルが耐えない、中心の一人だった。 Q:2学年のときに、何か注意をしなければいけない子だったという認識は? A:あった。連絡帳のなかは書いたことがあった。 Q:家庭訪問ではどうだったのか? A:母親は、家庭でも指導していきますという話だった。 Q:それでよくなったのか? A:どうしてもトラブルが頻繁に起こっていた。 Q:2学年のときから問題があると話だが、実際、よくなっていないという話を保護者にしたことは? A:その都度、連絡帳や電話で、1回、1回、必ず、「指導をお願いします」と連絡していた。2年生のときには毎日のようにおきていたので、日に日にという感じで。 Q:小2であれば、元気がいいとトラブルは日常的にけっこうあるのではないかと思うが。これをみると、4年生のときのほうが、非常に問題が大きいと思っていたのか? A:Xくんは非常に問題が大きいと思っていた。 Q:ちょっと元気がよすぎるという認識か? A:問題が多かった。 Q:前学年度の手紙事件のことは、担任でなかったので、詳しくはないか?何人かの保護者を巻き込んで大事になったように書いてあるが? A:3年○組の児童や保護者が、手紙事件で犯人捜しが始まった。 Q:そのときに活動した保護者は誰かしっているか? A:知っている。 Q:その中に、X母は入っているのか? A:はっきりとは言えないが、入っていないと思う。 Q:関係がない? A:はい。 Q:友だち調査を4、5回やったということだが、内容は? A:好きなひと、嫌いなひとと、その理由も書かせた。 Q:Xくんはどういう理由が多かったのか? A:らんぼう、わがまま、こわい、そういうのが多かった。 Q:公表したあと、どういうことが理由でこうなったか、Xくんや保護者に話したか? A:はっきり覚えていない。 Q:調査をすることは、ほかの先生には伝えていなかった?、 A:事前には伝えていなかった、 Q:公表後に、したことを話したのか? A:その週、すぐに週案の反省欄に書いた。 Q:どう書いたのか? A:クラスがあまりいい状態ではないとみんな知っていたので、「1時間やってもだめだったので、公表しました。これからがんばっていきたいです」というような内容を書いた。 Q:校長、教頭、主任がみると聞いたが、3人からのコメントは、どういうコメントだったか? A:はっきり覚えていない。 Q:批判的なコメントはなかったという理解でよいか? A:はい。 Q:そのあと、問題になったのは、Xさんから電話がかかってきたときからか? A:だと思う。 Q:先ほど、Xくんの名前をあげたのは4分の1くらいということだったが、何人くらいか? A:10人くらいだった。 Q:2、3人という子はいたか? A:いた。 Q:家庭訪問は、Xさんは5月9日か? A:クラスみんなの家庭を訪問しているので、何月何日か覚えていない。 Q:連休をはさんで? A:はっきり覚えていない。 Q:Xさんには、早く伝えようとは思わなかったのか? A:公表したあと、変わる姿もあわせて公表したかったので、そうは思わなかった。 Q:保護者にも協力してもらうため、早く話そうとは思わなかったか? A:変わる姿もあわせて公表したかったので。 Q:2年生のときも担任をして、4年生のときも担任をして、問題を感じていたというが、個人的にXくんとADHDを結びつけて、もしかしたらと思っていたか? A:頭の中では。 Q:5月11日に、急に精神状態が悪くなって、「3カ月の療養が必要である」との診断が出ているということだが? A:その後も、6月初めまでは1週間に1回ずつ病院に通いながら、学校に行っていた。 Q:病院に行っていることは、誰かに相談したか? A:覚えていない。 Q:早退とかは? A:勤務後に行っていたので、早退していない。 原告代理人の相川裕弁護士から、補足質問。 Q:調査公表前と公表後、Xくんに変化はあったか? A:公表前も、後も、手を出していた。回数的には減っていて、いいほうに変化しているが、完全にはなくなったわけではないと思っていた。 |
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●T校長の証人尋問。 被告代理人弁護士の主尋問から、 Q:「Xくんに対するいじめはありませんでした」と書いているが、いじめとは? A:強いものが、弱いものに一方的に、身体的、心理的な攻撃を長い間、あわせる。相手をいやな目にあわること、ととらえている。 Q:K教諭が調査公表をしたと知ったのはいつか? A:5月17日、S教務主任がXさんと面談したとき。 Q:その前に面談があったのは知っているか? A:その場にいたので、知っている。家庭訪問したときに言われたことで、確かめたいことがあるということだった。 Q:具体的には? A:ADHDと言われたということで、相談するということと、公表したことによって姉が傷つくということは考えていなかったのかということを、K教諭、S教諭、X父から聞かされた。 Q:「週案」とはどういうものか? A:週の予定と反省を書く。週はじめに提出する。 Q:校長はそれにコメントを書くのか? A:書く。 Q:4月27日に調査を公表したことを週案に書いたとK教諭は言っているが、みたことは? A:わからない。 Q:集案を見ないこともあるか? A:出した時期によって、まとめて見ることもある。 Q:週案にそういうことは書いてあったか? A:学級で困っているということは覚えがある。学級をまとめたくて頑張っていると。 Q:公表したことは、校長としてはどう思うか? A:公表したことは、やってはいけないことだと思った。 Q:校長として、どう対応すべきと思ったか? A:学級をよくみて、いろいろ、子どもたちがショックを受けているからよくみていこうとS教務主任と話した。実態をみて、まずそれからと。 Q:校長として、みに行ったか? A:みた。K教諭が病気がちで、休んでいたので、その時にみた。もっと前、5月末に休んだときにもみた。 Q:クラスでのXくんの印象は? A:Xくんは体の大きい子だし、クラスで一番か二番に大きい。いやな思いにはならないだろうと思っていたが、Xくんが被害にあうということはなかった。他の子が、ギャーとわめくことはあった。 Q:K教諭が休んだ間、補欠で入ったということだが、それまでXくんの存在はどれくらい知っていたか? A:とくには知らなかった。 Q:そういう問題がありそうだということで初めてみたのか? A:そうだ。 Q:両親が学校に来たとき、教頭からはどういう報告を受けたのか? A:いろいろ親に言われたこと。最後に謝罪のこと。Xくんと、X姉、4年○組のこれからについて、文書で出すように言われたと聞いた。 Q:どう答えたのか? A:文書で出せと、今まで言われたことはなかったので、私としても、文書で出すことは考えられなかった。 Q:Xさんに電話したのは何のためか? A:文書では出せないと伝えた。 Q:電話したとき、あなたの話し方が悪い印象だったとして、Xさんは怒っているが、どう考えるか? A:私もはっきり、どう言ったか覚えていない。 Q:X母とは面識があったのか? A:X母とは、20周年で役員をやってくれていたので、よく知っていた。他の親よりよく知っていた。久しぶりでという感じで話した。全く面識のない人に比べると、少しくだけた話し方をしたかなと思う。 Q:6月7日に謝罪文をもってX宅を訪ねたとき、X母はあなたに脅されたと言っているが? A:脅したということはない。夜、突然、訪問して、そう取られたとしたらそうかもしれない。 Q:代理人を出すという話も出したのか? A:親と学校がいがみあっていたら、子どもが一番かわいそうなので、そういうことを話した。教頭も同席したので、そう思ったのかなとあとで話したが、そういうことはなかったと思うと言っていた。 Q:Xさんは、学校が誠意をもって対応してくれていないと言っているが? A:調査結果を公表したことでいじめがないか、XくんやX母の安定をはかることに、誠意をもってやったと思う。 親から、違うことで要求されて断ったことが、誠意がないと言われたら心外。 Q:卒業アルバムから外せという件か? A:はい。要求に対して、学校にもできることとできないことがある。2人の子どもがいじめられない為の対策は長くやらなければいけない。 Q:どのようにしたのか? A:まず、担任をS教諭に変えた。教務主任は、校長、教頭の次。教務主任に任せた。うまくやっていただいた。 また、特に何かあったときには、親と電話でも、何でもして話し合ってほしいと指示した。職員会議で、問題の共有を図った。職員で一致した形でやっていこうとした。 Q:職員会議では、調査の公表らについて話したのか? A:話した。 Q:どう対応していこうと話したのか? A:話した。1回目は、K教諭がこういうことをした。いろいろ考えられるから、子どもたちに声をかけたりしてみていきましょうと話した。 Q:1回だけか? A:学期の初めとか、他のニュースがあったときとか。あの頃はいじめの問題があったので、その都度話した。 Q:X母から、「K教諭を刺す」ということを聞いたことは? A:電話で1回、聞いた。K先生が出てきたら、刺すかもしれないと。 Q:冗談には聞こえなかったのか? A:冗談というより、陳述書に書いてあるような気がした。 Q:IくんがXくんからいじめられているのをみたことはあるか? A:Iくんは最初の頃、よく泣いていた。そういうとき、だいたいXくんはそばにいる。給食を配るとき、Iくんがワーと泣いていて、後ろでIくんを攻撃しなくてもいいじゃないかと叱った。 Q:Xくんは、校長室に直接、訴えにきたことがあるか? A:2月頃、Iくんともう一人が、Xくんにいじめられていると話に来た。とにかく、そういうことがあったら、助けてあげようねと、もう一人の子に言った。 Q:公表後もXくんは元気にしていたか? A:していた。11月頃、XくんとAさん、あと2人が校長室に遊びに来た。校長室のソファにハンコが落ちていて、Xくんが見つけてくれた。元気に普通に、遊んでいた。 Q:児童が校長室で遊ぶことはよくあったのか? A:4年○組は、私も授業に入っていたので、子どもが気軽に来れた。 ******** ここまでで、12時15分、お昼休みをはさんで、午後、1時半から再開。 原告代理人の大石弁護士から反対尋問。 Q:K教諭の調査公表は不適切だと考えたか? A:はい。 Q:ふつうのソシオメトリック調査とはどう違うのか? A:ソシオは、私も以前にやったことがある。はっきり理解してやったわけではないが、仲間関係とグループをつくるときに、この学級ではどういう友だち関係なのか、調べるためにやった。 今回、K先生は「好きな子」「嫌いな子」を書かせた。友人関係を分析するためにやったものではないのではないかと思う。 Q:何が目的で、K教諭はやったと思うか? A:問題のある子がいるが、問題が発生しているから、どこに原因があるのかを調べたのではないか。 Q:なぜ不適切と考えるのか? A:公表することについて、言われたほうは、かなりショックも大きいだろうし、周りもそういう目で見ていくから不適切。 Q:そこから、いじめに発展するということか? A:そういう恐れはなきにしもあらず。 Q:「きらいな子」とされた子のショックが大きいだろうということだが、Xくんもショックが大きかったと思うか? A:そうだと思う。 Q:その後の経過のなかで、カウンセリングや精神科医の治療を受けたことは知っているか? A:両親から聞いている。 Q:調査公表やいじめの経過から精神状態が悪くなっていると思わないか? A:私は、いじめではなくトラブルと考えていた。ただ、両親からはそう聞いた。 Q:その後の学校の対応から悪くなった? A:教育センターなど、相談できる機関があるから受診したらと勧めたこともある。 Q:Xさんの主治医と情報交換したことは? A:ない。 Q:担任や他の教師に、カウンセラーと情報交換して対応するように指導したことは? A:ない。 Q:情報交換する必要性は感じていなかったのか? A:そこまでは感じていなかった。Xくんの様子を見たり、聞いても、いじめとかの兆候がみられなかったから。 Q:通院している情報は? A:あった。 Q:K教諭は、自分が現場らいたら、していたと言っているが、校長としては? A:その時はなかった。 Q:平成19年1月に、Xくんは転校している。XくんやX姉、父母の状態がどんどん悪くなったのはわからなかったのか? A:当時はわからなかった。 Q:Xくんの4年生、5年生の連絡帳をみたことは? A:ある。 Q:通院のことやXくんはこんな状態ですと書いてなかったか? A:よくわからない。最初はどういう状態で、どうなったという変化はわからない。 Q:今からふり返って、カウンセラーや医師と相談したほうがよいとは思わないか? A:今は、両親と相談でよいと思う。 Q:精神状態が悪化した原因は、公表も原因のひとつだと思うか? A:そうではないと思う。 Q:では原因は何か? A:母親は前から、うつ病だと聞いていた。以前の担任から聞いた。 Q:それは誰か? A:・・・特定できない。わからない。 Q:その先生は何を根拠にそう言っていたのか? A:母親から聞いたと言っていた。 Q:では、XくんとX姉は何が原因か? A:わからない。 Q:調査公表あとの学校の対応が原因とは思わないか? A:私にはわからない。 Q:時期的にはそうではないのか? A:以前もXくんは千葉大に受診に行ったと聞いている。 Q:それは精神科を受診したということか? A:忘れた。精神科ではない。違う病気で。 Q:X姉は? A:聞いていない。 Q:学校の対応が原因ということを否定するのか? A:私の判断ではわからない。 Q:Xさんから、それが原因とか聞いているのでは? A:はっきり書いているかわからない。覚えていない。 Q:なぜ、調査公表の結果として、いじめが発生する危険性があるのか? A:言われた子どもが、他の子に、大勢の子どもに、他の子どもとの友だち関係を損なう。 Q:強いものが弱いものをいじめるという、ワースト1が特定されると強弱関係が生まれるということでは? A:そういう予想がたつ。 Q:今回も、そういう危険性があった? A:だから、そういうことがないよう、担任や母親と連絡をとった。 Q:X母から、K教諭の調査が原因で、トラブルがあったと言われたことは? A:覚えていない。 Q:強弱関係が発生する可能性があるのだから、強弱関係について調べたことは? A:ない。 Q:他の児童やXにきくことは? A:子どもたちにきく、きちんとした調査はない。 Q:そのようなチェックが一番重要だったのではないのか? A:トラブルがあったときにすぐ対処して、ご両親と話し合いをするようにした。 Q:根本原因として、調査公表にあるのではという調査は? A:ない。 Q:今から考えて、チェックする必要があったとは? A:子どもたち全員に、そういう手法でやるということか? Q:方法は別として、そういう観点で対応したほうがよかったとは思わないか? A:日常的なできごとを観察することが、私たちにとって大切だった。当事者の行動を把握していれば大丈夫だと思う。 Q:X母から連絡帳に、公表の影響を受けたトラブルが発生していると書かれていた記憶はないか? A:それは何月頃か?よくわからない。 Q:本当に連絡帳をみたのか? A:みた。 Q:担任から、連絡帳にこんなふうに書かれていると報告を受けていたか? A:受けたこともあるが、トラブルが多かった。 Q:謝罪について。Xさんに謝罪したことはあるか? A:ある。 Q:何について、謝罪したのか? A:公表したことについて。 Q:それ以外は? A:公表したことについて、これからきちんとみていきますと言った。 Q:6月に、校長先生が会合に行っていたとき、教頭からの報告で、文書で出してくださいという要求に無理ですと回答したとのことだが、その文書の内容は? A:謝罪のこと。X、X姉、4年○組のこれからについて。 Q:謝罪は出した? A:はい。 Q:Xのこれからについて、なぜ文書にできないのか? A:今まで一度もなかったので、そういう慣習のもとで話した。 Q:中身の問題ではない? A:ない。 Q:K教諭は、調査を実施したその週の週案に公表のことを書いたと言うが、週案について、議論はなかったのか? A:ない。 Q:週案に書いてあったのは、事実か? A:記憶にない。 Q:Xくんが転校した理由について、児童にどういう説明をしたのか? A:私はしていない。 Q:学校としてはどのように説明したのか? A:5年生の担任が集会をもつというので、そこで話すように指示した。 Q:中身は、転校の理由はどういうことだと話したのか? A:今、ちょっと思い出せない。 Q:Xさんの転校理由はなんと? A:書類には、「いじめ」と書いてあった。それを聞くために、X母に来てもらったが、「これからどうしますか」と。転校するときには通常、市に言ったのでは通らないということで、学校でも引きとめを含めて、話してくれということで、転校しなくてもいいのではないかと話しあいをもった。 Q:理由は? A:「転校するのか?」と聞いたら、「そんなの決まっているのに、なんで聞くのか」と言われた。 Q:Xくんの転校の理由はわからないのか? A:わからない。 Q:Xさんは、学校の対応に納得していないから、裁判になったのではないのか?いじめがあったのでXさんが転校させたというのではないのか? A私たちはそう思っていない。両親の考えはわからない。 Q:謝罪について、Xさんはなぜ納得していないと思うか? A:学校が謝罪してもその通りにやっていないからか? Q:その通りとは? A:いじめがある、いじめられていると親御さんは言っているが、私たちがいじめはない、その場で対応していると私たちが言っているからではないか? Q:公表によって強弱関係が生まれ、排除されるようになった。公表は過ちなら、調査の結果をもとに「だから嫌われるんだ」と言うことをしないようにと、全児童あるいは家族に表明すべきだったのではないか? A:それは、謝罪文と一緒に、今後こうしますと出している。6月7日に両親に来てもらったとき、懇談会で、全校集会で、このように話します。4年○組では、6年○組ではひのように話しますと文書で出してある。 Q:公表によって強弱関係ができると認めるのか? A:一部のひとをいじめるようなことはいけませんと、お願いしてある。懇談会では、X母といろいろ話し合って、意見を取り入れ、それを話し、それで困っているからと話した。 ***** 相川原告代理人弁護士から補足質問。 Q:平成18年2月に、そうじの班のなかで、子ども同士でXくんのことを好きか、嫌いかと手を上げさせるということがあったのを知っているか? A:詳しい内容は知らない。 Q:S先生にXくんが、自分のことで友だちが、仲間はずれにされるのは申し訳ないと大泣きしたあと、クラスのみんなで移動したので、Xくんが探したというのは記憶にあるか? A:わからない。記憶にない。 Q:Xくんと校長先生が偶然あって、一緒に探そうとしたことは? A:ちょっとわからない。 Q:そういう出来事があって、本件調査と同じことを子どもがやったという報告は? A:記憶にない。 被告代理人弁護士から補足質問。 Q:校長としても連絡帳の中身は見るのか? A:担任が必要があって、もってきたときだけ見る。 Q:6月7日の謝罪文に書かれたとおりに実行したのか? A:はい。 Q:懇談会での説明は? A:学校が案を出して、Xさんから要求があったので、そのようにした。 Q:X母からの手紙を読み上げた? A:Xさんからの手紙ということで、読み上げた。 Q:校長が口で説明したことは? A:中身はそう。いきさつはXさんからの手紙ということで話をした。 裁判官から質問。 Q:平成17、18年度の生徒数は? A:約600人、1学年3クラス。 |
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●2時10分から、S主任の証人尋問。 被告代理人弁護士の主尋問から。 Q:あなたからみて、X母と校長先生と話しているとき、今回のことがある前の印象は? A:すごく仲のよい雰囲気で、話をしていたと思う。それほどかしこまらないで、話をしているのを聞いたことがある。 Q:X母からの電話は、K教諭が休みだからということで対応したのか?それとも、S先生自身にかかってきたのか? A:私にだったと思う。家庭訪問の際に話した際、ADHDという話が出てきた。心配になったので、どんなふうに対処したらいいかと聞かれた。養護の先生や教育センターに相談するのが一番いいのではないかと話した。 プライバシーということで、学校の中でそういうことが知られるのが心配しているようだったので、養護の先生や教育センターと連携ができている。レッテルを貼られる心配もしていたが、養護教諭や学校だけなので心配ないと言った。 Q:調査を公表したことについては? A:その時には話はなかった。 Q:17日の両親との面談はどういう話だったのか? A:クラスで一番嫌われているのがXくんだったということで、いじめられるのではないかと心配だということ。 Q:心配だということだけか? A:どうして発表したのか、それが原因でいじめられる可能性があるということ、姉が敏感になって心配だという話があった。 Q:相談を受けて、どう話したのか? A:クラスの状態をみて、その時にはそれが一番の方法だと思ったのではないかと話した。 Q:校長にも報告したのか? A:K教諭にこういう話があったけれどと確認した。 Q:それに対して、校長から具体的な話は?17日の報告に対してだけでよいので。 A:よく覚えていない。 Q:5月末あるいは6月初め、K教諭が年休で休んで、補欠としてクラスを受持ったか? A:部分的に教室に入った。 Q:他の先生も入ったのか? A:空いている先生を含めて。 Q:校長もか? A:覚えていない。様子を見に行ったのは覚えている。 K教諭の休みは3日くらいで、その間は私が中心に入った。 Q:入るにあたって、校長からの注意は? A:発表したことを含めて、XくんとAさんをみてみるようにと話があった。 Q:6月に正式に担任になって、校長からの注意は? A:Iくん、Xくんのことは注意深くみるように、Aさんもと注意があった。 Q:学年全体は? A:学年主任や音楽担当など、5人の先生でしっかりみていこうという話があった。 Q:具体的には? A:担任は授業中、グランドほかを含めて。 Q:クラスの様子はどうだったか? A:それまで聞いたり、垣間見たXに比べXくんに比べ、思ったより大人しくなった気がした。 Q:それまでもXを知っていたか? A:知っていた。 Q:どんなことを聞いていたのか? A:学年の中で、大柄。力が強い、運動神経がよい、発言力がある、影響力がある、など。 Q:Iくんをいじめていると聞いていたか? A:聞いた。 Q:担任をしたら、そうでもないと思った? A:そう。その前に一度、いじめているところをみたことがあるが、担任になってからはない。 Q:クラスの中だのXの位置は?クラスのなかでは一番、ボス的な存在であったのではないか? A:トップ、それに近い立場の子は他にもいた。 Q:一番ではないか? A:一番はGくん。4年生後半になってGくんも出ていたが、GくんとXくんが中心的な存在だったと思う。 Q:どんな遊びをしていた? A:ドッチボールやミニサッカーをしていた。 Q:役割と立場は? A:運動神経がいいので強い。みんなに指示をするというかんじが多かったのではないかと思う。 Q:逆にXくんがいじめられていることは? A:なかった。私が見た範囲では一人に集中してやられているということはなかった。 Q:Xくんが他の子とトラブルがあった、大きなトラブルは何回くらいか? A:記憶に残っているのは3つほど。 Q:それ以外にもあったか? A:ちょっとした言い合いとか、トラブルはふつうにあった。 Q:他のより目だって多いということは? A:Xくんが目だって多いということはなかった。 Q:トラブルがあった子は? A:Gくん、Eくん、時々Iくんがあった。ちょっとしたトラブルは他にもあった。 Q:トラブルがあったとき、どう対処したか? A:当事者2人を呼んで、それぞれ原因について話を聞いた。周りに見ている子がいたら、その子からも話を聞いた。 どうしたらそうならないか話合いをもった。一方的ないじめはなかったと思う。 Q:Xくんがいじめられるもしれないという配慮があったのか? A:Xくんの場合、別々に話を聞いたことが多かった。一緒にきくと、そのなかで言い合ってしまう心配があるので。 Q:とくにXくんがいじめられるのではないかということに、どういう配慮したのか? A:トラブルが起きてからのことだったので、特別Xくんだからということはなかった。 Q:Iくんとのトラブルはあったか? A:すごく言いこめることはあった。圧力的な言葉で追い込んでいくように言って、Iくんが萎縮してしまうような形。はっきり何と言っていたか、覚えていない。 Q:Iくんに、一方的に口で攻撃していた? A:けんかというより、Iくんは一方的にやられていた。Iくんは弱弱しい子。 Q:Xくんから、指をさして、ひそひそ話をされ、笑われたりしたという訴えがあったか? A:あった。Xくんはこう言っているが、君たちはどうなんだと聞いたところ、「Xをみてたわけではないし、関係ない話をしていた」という答えだった。2人にも、「誤解したかもしれないから、気をつけなさい」と話した。 Q:クラスのなかで、Xくんが孤立しているという印象をもったことは? A:ない。けっこう、クラスの子たちと遊んでいる、話していることが多かった。 Q:一人でしょんぼりしていることは? A:一人であることはあったが、孤立しているという形ではなかった。 Q:母親から訴えのあったいじめをどう考えるか? A:いじめというのは、一方的に相手をやり返せない形で、攻撃して長く続くのをいじめととらえていた。母親からの訴えがあったようないじめ、そういう形のいじめはなかったと思う。どういう状態であったか、話を聞いて、一つ一つ対処していった。 Q:X母は納得したか? A:納得したこともあったし、そうでないこともあった。あとになって、そうではなかったと連絡帳にあった。 X母の訴えに対し、授業中の様子など、注意深く観察していた。元気とまではいえなくとも、弱っているようには見えなかった。 Q:円形脱毛症になっているという話を聞いたことは? A:どこかで聞いた覚えがある。 Q:大きなトラブルはX母からの訴えを見たか? A:見た。 Q:どういうトラブルと思っているのか? A:けんかしているところにXくんが仲裁に入ったが、それがBくんとXくんとのけんかになってしまった。 Q:その時に、ひどいけんかになってしまったという認識なのか?Xくんはこのとき、殴られても殴り返さなかったのでは? A:Xくんは殴られたということだった。殴られても手を出さなかったということだったと思う。 Xくんは、正義感が強いところがあるので、前後の話もある。仲裁に入るんだけれど、威圧的なところがあったのでは。それが原因でけんかになってしまったということではなかったかと思う。逆に相手をあおる形で言うというか、けしかける態度が見られたと私は思う。争点を踏まえてXくんにも指導した。 Q:指導すべきはBくんだけど、その点についてXくんにも指導したということか? A:はい。 Q:XくんとBくんとの仲はもともとどうだったのか? A:特別、仲が良かった同士ということはない。どちらかというと、もう一人と仲がよいということだった。 これは私が年休をとって休んでいたときに起きたこと。学年主任のY先生が全部対処してくれたとあとから聞いている。 Q:どういうトラブルがあったかは把握しているか? A:直接は把握していない。あとから出てきたときに聞いた。先ほどのに比べると、自分の中でははっきりしていない。 Q:あなたは、こういう言葉が児童から出たということは聞いたか?「休み明けに転校していなければボコす」。 A:聞いた。そういうことを言ってはいけない。みんなで仲良くしなければいけないと指導した。 Q:掃除グループの件で、どういう経過だったのか? A:校庭掃除にXくんはなっていた。2つのグループが担当で、4人ずつ8人。その中のGくんと一緒だった。 Xくんが休みのとき、6人に、「Xと一緒に掃除をしたくない人」と言って、手を上げさせた。一人だけ手をあげなかったのがHくん。 Xくんが学校に来たとき、HくんがXくんと2人で掃除して、6人と別々に掃除をした。それについて、私のほうで指導した。 Q:その件について、Xくんが訴えてきたのか? A:はっきり覚えていないが、そうだったと思う。Xくんが主張したのは、Xくんがいないところで、XくんのせいでHくんが仲間はずれにされたとXくんが大泣きをしたと思う。 給食の前だったので、Xくんはこのままでは食べられそうにないかと、隣の研修室で食べさせた。Xくんと一緒に食べてくれる人ということで、3人くらいが一緒に食べてくれた。そのあと、子どもたちに話さなければいけないと思い、Xくんが隣のクラスにいるから、ランチルームに移動した。「どうしたらいいんだろう?仲間はずれにしてはよくないよな」と指導した。 Q:なぜ、ランルームに移動とのか? A:Xくんは、給食を食べたが、まだ落ち着かなかったので、別のところで話したほうがよいと思った。 Q:3月29日、K教諭と一緒にX母と面談したとき、「団地中を走り回って何十回も追いかけました」とあるが、本当にそういうことがあったのか? A:あった。 Q:X母は、座り込んだり、叫んだりしていたのか? A:大きな声で叫ぶというとまではなかった。「帰りましょう」と声をかけても、「私はいいんだ」とかいろいろ言った。 Q:なぜ、追い掛け回したのか? A:学校に用があってきたので、帰るところまでしないと、何かあってもいけないと思った。時間的にも、昇降口の外でも1時間かそこらいたと思う。校門を出て、そのあと、団地の中を走り回ったり、2人で「帰りましょう」と言うと、「帰らないわ」と言い、そんなふうな話をしたと思う。 自宅の電話を知っていたので、自宅に電話したら、父親はまだ帰っていなかったので、連絡してほしいということで、連絡したと思う。 Q:11時過ぎもまだそういう状態だったのか? A:そうだと思う。 ******** 原告代理人の相川弁護士から、反対尋問。 Q:調査公表のことは、9月17日の面談のときにはじめて知ったのか? A:だと思うが、その前に本人からちょっと聞いていた。 Q:いつ、どういうふうに? A:たぶん、17日にXさんがみえるということをK教諭に話したときだったと思う。連絡があったのがいつかははっきり覚えていないが。 Q:15日に父親がK教諭と話した前か、後か? A:あとだと思う。 Q:初めて知ったときにはどう思ったか? A:公表することについてはちょっとまずかったかなと思った。 Q:どういう対応をすべきということを教頭や校長に報告したか? A:その時点では報告していない。 Q:学校として対応すべきであるのだから、校長ゆ教頭に報告したことは? A:17日の面談のあと、校長と話した。 Q:先ほど、「K教諭としてはクラスをよくするために一番の方法を考えてのことではないでしょうか」と言ったというが、あなたとしては? A:まずいと認識した。しかし、どうしようもない場合に、そういうこともあるのかなと思った。 Q:学校として、事実をどのように調査し、対応すべきと思ったか? A:校長、教頭と3人で、どうしたらいいかと話し合った。 Q:学校の判断として、公表が不適切だというのは、なぜ、どういうふうに問題なのか? A:児童のプライバシーに関することと私のほうは考えている。基本的に、誰がどういうふうに書いたかなど公表すべきではないと思う。 Q:ほかは? A:ない。 Q:調査公表で、1つには、一番、嫌われているとされた子がショックを受ける。2つめとして、周りからそういうふうに見られてしまう。という議論があると校長となかったのか? A:あったように思う。ショックを受けた可能性があるという話はした。それが、その時の友だち関係に影響を及ぼす可能性はあると話した。 Q:実際に、どういう影響があったかということだが、Xくんの精神状態が悪くなって、カウンセリングや精神科で治療を受けたのは知っているか? A:連絡帳に書いてあった。 Q:あなたとしては、Xくんのショックをどんなふうに考えていたか? A:はっきり言って、ショックの程度はよくわからなかった。 Q:なぜ、そうなったというのは、どんなふうに把握していたか? A:私からみて、よくわからなかった。 Q:周りの子どもたちとの関係への影響についてはどういうふうに考えていたか? A:K教諭が発表したことについて、クラス全体に話をしていたということで、K教諭から聞いていた。いい方向にXくんのほうは行っているのではないかと、私はとらえていた。 Q:K教諭は、発表から正式に休むまでの間、5月11日に通院した最初の段階で、3カ月休むよう診断が出ていたのは知っているか? A:知らない。大分、苦しそうだとはみていたが、運動会のときも十分できていたので。 Q:休暇に入ってから、引継ぎができなかったということだが、調査について、Xくんについて、K教諭から引継ぎは? A:特別、引継ぎ時間はなかったと思う。公表によってもXくんも、少し変わってきたのではないかという話を聞いた。 Q:担任を引き継ぐまで、Xくんが苦しんでいるように見えなかったというが、母親からの連絡帳にカウンセリング担当の医師から、説明しますと、母親から聞いていたのでは? A:覚えていない。 (ここで、原告席の母親が、こらえきれず嗚咽をもらしはじめた) Q:ここをこうしてほしいというような、具体的な要望はなかったのか?対応が必要とは思わなかったのか? A:私としては、精一杯のことをやっていたと思う。 Q:養護の先生との関わりについて? A:具合が悪いとき、おお泣きして少し具体が悪いとき、保健室で休ませてもらった、 Q:養護教諭はどういう認識だったのか? A:そこまではわからない。 Q:けんかの仲裁で、正義感が強いので、威圧的なのが問題ということだったが、けんかをしていた人たちがすぐに改めないから、語気が強くなったのではないか? A:だからと言って、子どもたちのけんかはすぐにとまらない、 Q:けんかしていた2人と同じように、Xくんを注意するのか? A:2人にはけんかについて指導をし、Xくんには、仲裁はよかったが、100パーセントよかったのかという形で注意したと思う。 Q:Xくんが周りから、「だからお前は嫌われるんだよ」と、ことあるごとに言われているということは? A:母親からは聞いていた。 Q:Xくんや他の子どもたちからきちんと聞いたことは? A:ない。 Q:「だからお前は嫌われる」の言葉が言われる原因は、調査公表があげられるのでは? A:そう。つながると思う。 Q:「くそデブ」などと言われていることは言っていたが、一方的ではなかった? A:はい。 Q:12月1日に一方的にやられたということでXくんは言ってきているが、相手をあおるような言い方をしたのか?実際はXくんはどういったのか? A:私が聞いたのは、「やられても平気なんだぞ」と言うような言葉というように聞いている。「痛くもなんでもないぞ」と。 Q:殴られた小4の児童が言ったその言葉が、相手をあおるような言葉というような根拠は? A:相手をあおるような言葉だと私は認識をした。 Q:円形脱毛症について聞いたが、どういう対応をしたか覚えていないといことだが、円形脱毛症が強いストレスでなるということは? A:聞いたことがある。 Q:Bくんが、「転校しなければ、ボコす」と言ったことは、本人に確認したのか? A:確認した。 Q:2月24日、掃除の班ののことで、話題になったいきさつは、本件調査と同じことがされたあと、一人の子が別の子たちから離れたところで掃除をさせられたのを、Xくんがひどいじゃないかと児童同士でやりとりがあったことは聞いているか? A:覚えていることと、そうじゃないこととが、ごっちゃになって、はっきりしない。 Q:Xくんが大泣きしたした原因がはっきりしない? A:はい。 Q:事情を把握しなければならないと思ってランチルームに移動するということはXくんには伝えていない? A:いないと思う。 Q:Xくんはみんなが隣の教室にいると思っていると思うが、自分だけ置いていかれたと思うとは考えなかったのか? A:その時は、思わなかった。 Q:ランチルームから出てきたあと、掃除の班の人たちと校庭に先生も一緒に行った時の内容は覚えているか? A:はい。 Q:Xくんに対して、「直してほしいこと」を先生が言わせたということで、みんなが発言したということはあるか? A:はい。 Q:Xくんが一方的に言われたので、自分も発言してもいいかと言われた? A:Xくんからも、逆の立場で、こうしてほしいということはあった。 Q:細かい内容は覚えていない? A:覚えていない。 Q:「どういうこと?」とS先生が聞いたら、「5月くらいからずっとあって、またあった」とXくんが話したというのは覚えているか? A:そこまでは覚えていない。 Q:S先生が、「こういうことを繰りかえさなればいけない」そういうふうなことを言ったことは覚えているか?Xくんが、「クラスをよくするためには、その人を何度も傷つけていいの?」と言ったら、あなたは「そういうつもりではない。Xの気持ちはよくわかっている」と話したか? A:言葉はよく覚えていないが、いろいろ話した。 Q:「『Xのそばにいるとろくなことがないので』と言って、みんなを連れて行ってしまうので、ちゃんと話できなかった」とXくんが訴えたことは? A:覚えていない。 Q:「K先生が発表したからか?」と聞いたら、そうだと答えたというのは覚えているか? A:それを言った覚えはない。 Q:Xくんは、1回言って、みんなが「うん」と言うのでびっくりして、もう1回聞いたが「うん」と言ったというが?覚えていない? A:はい。 Q:仲間はずれになったHくんが何日か休んだことは? A:そういうことはなかったと思う。 Q:早退とかもしていない? A:していないと思う。 *********** 被告弁護士から補足質問 Q:みんなにXくんの悪いところを言わせたのは、何のためか? A:とにかく仲良くしてもらいたいということがあったので、互いにこうしてほしいということを言い合えれば、仲良くできるのではないかと思った。 Q:「こんなことを繰り返さなければいけない」の「こんなこと」とは? A:いろんなトラブルがあったとき、みんなで話し合って少しでもいい方向にもっていこうということ。当事者同士も自分の思いを相手に伝えなければいけないということ。 宇野裁判官から質問 Q:K教諭が休暇をとっている間、Xくんの成績の変化はどうだったか? A:前の状態ははっきり把握していなかったが、変わっていなかったのではないかと思う。 Q:Xくんは、体が動かなくなるということがあるということだが、体育のところは? A:とくに、動かないということはなかった。 Q:体育の見学はあったか? A:覚えていない。 Q:Aさんについては、どういう認識だったのか? A:「しきりや」という感じて聞いていた。ただ、確かに強い面はあったと思うが、それが原因でトラブルを起こすということは、私が担任になってからはなかった。 Q:S教諭が担任になって、よく問題を起こす児童は?注目していたのは? A:Gくんと、Xくんに私は注目していた。 Q:Aさんは? A:はじめはAさんも気をつけてみていたが、特別なことは見られなかった。 三代川裁判長から Q:平成17年の11月、Xくんがけんかしていた児童の仲裁にわって入ったところ、一方の児童ともけんかになったというところは、わかりにくいので、もっと具体的に話してほしい。 A:直接、見ていないので。 Q:直接見ていないのか?では、直接見たものはないのか?児童にどういうケースを聞いたか? A:2人の子どもたちが、原因はわからないが、意い合いになった、言葉がきつくなってしまう。そこへXくんが入ってきて、「そんなふうに言っちゃいけないんじゃないか」と。2人のうちのどちらかに、自分の気持ちがあるように仲裁に入る。そこで、「何いってんだ。お前だって、なんだ!」ということで、それにXくんが言い返し、言葉のけんかになる。それが高じて、殴られた。 Q:そのとき、誰に、どういう注意をしたのか? A:最初の言い合いはどうしてそんなふうになったのかということから指導。Xくんに手を出したことが一番いけないんだと、仲裁に入ってきたXくんにどうしてそんなことをするんだ?と聞いた。そうしたら、「今まで随分、やられていたのに、何であいつがそういうことを言うんだ」となった。Xくんには、仲裁の仕方をもっと考えないと意味なくなっちゃう。もっとやさしい言葉というか、一方的な言葉を使ったらいけないということを言った。 Q:手を出さなかったことは、ほめてあげたりするのか? A:そうだ。 Q:「あおるようなことをしてはしけない」と言われると、悪いほうぱかりを言われたように、Xくんは受け止めたかもしれないね。仲裁に入ったら、昔の悪いところを持ち出されて。という気持ちはしないか? A:・・・・。 Q:もう、いいです。 |
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●15分休憩をはさんで、W教師。(ここからは、ポイントのみ) W教師は、ソシオ調査公表のあった平成17年はX姉と同じ学年(小6)の別のクラスを受持っていた。翌年、Xくんの担任となる。学年の副主任という立場でもった。 被告代理人弁護士の主尋問から Q:(Xくんが5年生になる際)クラス、教室を決めるにあたって、Xくんに配慮はしたか? A:私は学年の副主任という立場だった。階段をはさんで、1組、2組と反対側に3組が孤立している形になっている。交換授業にしても他の先生も全員でみられる。 Q:どういうことから、配慮が必要になったか知っているか? A:4年生のときに、ソシオのことでいじめられているのではないかと、よくみてほしいとXさんからあったので、校長からも6月のときから、X姉のとき、もめたので、配慮していた。 Q:「罵声をあげることはなかった」と書いているがどういう意味か? A:Xが言っている子が、相手をののしることはなかったという意味。 Q:Xはクラスの中でどういう存在だったのか? A:C、D、Eと、イニシャル記載のない男の子と、Xくんの5人が活発で、いろいろ意見を言ったりするクラスだった。 Q:けんかになったりということは? A:活発ということで、意見の違い、トラブルと、外で遊ぶことが多かったので、5人の中で多かった。 Q:5人の中で、誰が強くて、誰が弱いということは? A:なかった。私の見た範囲では、Xくんは、誰とはトラブルになって、誰とはトラブルにならないということはない。 Xくんだけがトラブルになるということはなかった。 (略) Q:Xくんだけがみんなにねらいうちされることは? A:ない。 (略) Q:「学習をふり返ろう」は何のためにあるのか? A:ひとつには、友だち関係。それから、学習についてどれだけがんばったかをふり返る。 「関係がある」という項目に名前があるのは、深い関係があるので、Xくんは、「参考になった人」にはDくんの名前が書いてある。「雰囲気のある人」は○くん。 Q:名前が出るというのは親愛の情の強い子か? A:今までの経験では。 Q:「一言」欄はみんな書くのか? A:そんなことはない。他のことで付け加えることや書き忘れたことがあったら書いていいですよという意味で、全員、書いているわけではない。 Q:Xくんの「友だちとのことで悩んでいたけれど、解決した」というのは、誰のことを言っているかわかるか? A:ふだんからけんかの多かったE、Dのことと思った。 Q:Xくんは、前期終了まで元気だったと判断した。 A:はい。 Q:前期で、落ち込んでいる様子を見たことは? A:ある。友だちとけんかになったときは落ち込んでいる。 Q:「Xを自宅まで送っていった」と書いてあるがなぜか? A:この時、大きなけんかになって、脱力状態になったので、安全上、問題があると思って送って行って、説明した。 Q:それに対して、Xさんは? A:翌日、「ありがとうございます」と感謝の気持ちを連絡帳の家庭欄に書いていた。 Q:「いじめを自白した」と書いているが? A:いじめと判断した。いじめは悪いと、指導した。 Q:いじめとは? A:弱い立場のひと。関係のない人が、一方的にたたいた場合もいじめ。理由があったらいいかというと、いじめを認めることになるので、一方的にということも。第三者ということも。 Q:よそのクラスのBくんが、Xくんをいじめたと判断したのか? A:はい。 Q:Bくんを指導した? A:はい。クラスでは、DくんとEくんとのトラブルが多かった。Xくんからもそういう訴えがあったということだった。 Q:どういう指導をしたのか? A:双方の言い分を聞いて、30分くらいXくんを残して、事情を聞いたり、Xくんがまだ言い足りないことを聞いた。「あまりトラブルが多いんだったら、一緒に遊ばなくてもいいんじゃないの?そんなに遊びたいの?と3回くらい聞いた。3人とも、いや一緒に遊びたいということだった。 Q:それでもトラブルはなくならない。指導したことは? A:最初は双方の話を聞いているが、「こっちが先にやった」、「あっちが先にやった」といういいわけが多くて、見ていてわからな。XくんがEくんほ殴ったり、たたいたことがあった。「先に言ってきたから、がまんできなくなって殴った」と言ってきた。「君を信じるから、殴る前に言われたときに言いにきて」と指導した。 (略) Q:席替えが頻繁に行われているが? A:日直2人ずつが一巡して終わったら、1カ月に1回程度行った。そこで友だち関係をみたいと思った。男の子と女の子、自由にペアを決めて、同じペアになった人は次回はならないようにした。多かったのは、Dくん、Eくん。 Q:Fくんはどういう子? A:4月に転校していった子。まじめで明るい。 Q:Xくんとトラブルが起きたことは? A:みたことない。 ******* 原告代理人の相川弁護士から反対尋問。 (略) Q:4月に、Xくんの担任になるに当って、前年4月に公表したことで、どういう問題があるから注意しなければいけないと、前年度の先生から引継ぎがあったのか? A:それまでも取組んできたので。ソシオのことがあって、けんかもあって、保護者からこういうことがあった、アルバムの件、トラブルが多いので気をつけてみていくようにと言われた。 Q:学校がXさんに謝罪したことは知っていたか? A:詳しくは知らない。そのようなことがあったということは聞いている。 Q:ソシオ公表に対して謝罪したと聞いているとのことだが、どうして問題なのか、説明されたか? A:とくに説明はないが、それぞれの学級担任のやり方があるので、ソシオそのものが悪かったということではなかった。 Q:公表することについて、どういう問題があるのかとの説明は? A:詳しくはなかった。 Q:W教諭は問題だろうと思ったか? Q:私がソシオをやったときに、そのあとのことを考えたときに、公表しないと思う。状況によってもあると思うが。 Q:公表する問題として、精神的に傷つく、他の子どもとの関係で「あいつ一番きらわれているんだ」と見られてしまうという意見について、どう思うか? A:可能性としてはあるので、私ならしない。 Q:公表のあと、家族もカウンセリングに通うなど、調子が悪くなったことは、連絡帳などで知っているか? A:承知している。 Q:Xくんの脱力状態の現場は見ている? A:はい。 Q:Xさんは、精神的に厳しい状態は、調査と公表が原因としてあると訴えているが、あなたはどう考えるか? A:白紙の状態で受持った。最初、トラブルやけんかが多かったのは記憶している。昨年の入学式に、おしゃべりをしていて、反省を促したら、固まったということもあって、精神的なストレスに弱いのではないかと思った。 Q:Xくんと一対一で、どういう原因でと、じっくりと話を聞いたことは? A:前のことからということで、聞いたことはない。 Q:2月に、同級生からK教諭と同じことをされて、つらい思いをしたということは把握しているか? A:していた。母親からの連絡、個人面談でも、聞いていた。 Q:Xくんが平成18年11月くらいから学校に行けなくなった原因について、現時点でどう思うか? A:やられたら、その時々で言ってくるように。また、互いに少しがまんをするように伝えたところ、クラスの中でトラブルが減った。いじめ問題があって、フラッシュバックがあって、ストレスがのしかかっているのかなと思った。休んだことに対して、母親に精神的なものがあるのではないかと思った。 (略) Q:Xくんんが登校できなくなって1カ月。他の子どもたちの反応はどうだったのか? A:自分のせいじゃないかと思い込んでしまう生徒がいたことは陳述書に書いた。 Q:平成18年11月18日、クラスの児童に説明したときに、学校側のすべき説明として、自分のせいで来れないのではないかと思い込んでいる子がいて、そうではないと言いたかったのか? A:そうだ。 Q:Xくんが学校に来れない根本的な原因は何だと思うか?適切ではなかった調査公表で、傷つけ、他の子にも影響を与えたとは思わないか? A:そのように感じていなかった。 Q:転校直前、両親がどんなことを望んでいると把握していたか? A:診断書から、学校の環境を整えていかなければいけないと思っていた。根本的な原因は、これとは私のなかでは言えない。 Q:5年生から、カウンセリングに通ったり、診断書が出るなど、重大性は感じていなかったのか? A:Xくんは精神的にストレスに弱いと感じていたので、同じことがあっても、精神的にいろいろ起こらないように指導していた。 (略) Q:いじめを認めた子どもたちがいた。母親からの連絡帳への返事として、Eくんがいじめを認めたと書いているが、いじめではないのか? A:第三者が関係ないところでやられた。話を聞いたら、○くん、○くんと、関係ないEくんが仕返しをする。一方的に、「理由があるからいい」と言ったが、それは違うと思ったので、連絡帳に書いた。Eくんに問題があったので指導した。 (略) ****** 三代川 Q:Xくんと一対一で面接したか? A:一方的にたたかれたというので、面接した。 Q:Xくんはどんな話をしたのか? A:理由もなくたたかれて、わからないんだという話を聞いた。 Q:結果、どういうふうにしようと、面接に結びつくのか? A:きちんと聞かなければいけないと思った。9月の面談のあと、休みから転校してしまった。 Q:その間、一対一の面談のほかのことはないか? A:クラス全員に聞いた。Xくんと、E、Dについて、一方的にやられているかというとそうではない。けんかもあるので。 (略) 終了は5時15分。 次回、3月17日(水)10時半から千葉地裁601号法廷。人証を終了し、次回までにそれぞれの主張を整理。おそらく結審となる。その間に代理人弁護士と裁判官とで話し合いがもたれるという。 |
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私見 一日で、4人もの教師の証人尋問は、聞いているほうも、さすがに疲れた。とくに最後のほうは、集中力もとぎれがちなのと、ボールペンを持つ手が思うように動かなくなってしまったりで、かなり内容を省略した。 今回、Xくんは法廷には来なかった。あとで聞いた話では、やはりK教諭と顔を合わせると思うだけで数日から吐き気がするなど体調をくずし、寝込んでしまっていたという。 姉は、「傍聴席でもいいのよ」と気遣う母親に、「大丈夫。中でしっかり顔をみてやるんだ」と言っていたが、昼休みに外に出たときには、目を赤く充血させていた。 そして、母親も、教師たちの証言のなかで、悔しい思いがよみがえったり、まだそんなことを言うのかという怒りがこみ上げてきたりするのだろう。何度か、こらえきれずに嗚咽がもれた。 Xさん一家が、学校の対応にいかに傷つけられ、追いつめられたか、学校関係者との温度差にその一端をみる思いがした。 K教諭はなぜ、ソシオメトリック調査(正式には、ソシオメトリック調査ではないが)をしたのか。 運営の難しいクラス。学級崩壊状態のなかで、自分のせいではないと、自分を除いたなかでの犯人捜しをしたかっただけではなかったかと思った。 本来、ソシオメトリック調査とは、子どもたちの人間関係を把握する目的で行われる。しかし、K教諭のした調査は、「好き」「嫌い」調査。理由をあげさせ、名前のあがった児童を責める材料とした。「友だち調査」というより、明らかに「嫌われ者調査」だ。 K教諭はこの回以前にも、同様の調査を5回も実施しているという。 公表したのは今回が初めてというが、わからないと思った。子どもたちには、「嫌いな子」の名前をあげたという罪悪感がある。そして、ワースト1と書かれた子どもは、自尊心をズタズタにされる。自分がクラスで一番嫌われているなどと、報告したい子どもがどこにいるだろう。親ががっかりするのは目に見えている。あわせる顔がない。どんなやんちゃな子どもであっても、親にとって、自慢の子どもでいたいものだろう。いじめられている子どもが、いじめを相談できないのにも、共通する。いじめられている情けない自分であることを、他の誰よりも、親にだけは知られたくないと思う。 もし、今回、Xさんが泣き寝入りしていたら、再び同じことが繰り返されていたかもしれない。 児童には、誰にも見せないで書くように指示しながら、自らが結果を発表してしまう。しかも、たった1時限の道徳の時間に、調査をもとに説教をして、クラスを沈めようとしたが、聞く耳をもたない、児童の心に響かないので、発表したという。まるで、思い通りにならないイライラをぶつけるため、報復のようだと思う。 それも、ざわつくクラス全体をコントロールすることができないので、犯人捜しをしたその結果をもとに、たった2人の児童に全部の責任を押し付けた。 「立ち直らせる自身があった」とK教諭は言う。しかも、2年で担任をしていたときからXくんには問題を感じていたという。それなら、調査は必要なかったし、結果を発表して、その他大勢の子どもを自分の味方につけなくとも、指導できたはずだ。 結局、K教諭のしたことは、「いじめられる側には、それなりの原因がある」と、子どもたちに示したようなものだ。 しかも、非常に問題を感じるのは、Iくんへのいじめ。担任はもとより、他学年の児童生徒、教師まで知っているほど、長期にわたって、大勢から、しつこくいじめられていた。それに対応することなく、場当たり的にその場、その場で、単なる注意を繰り返し、教師全体で取組むことも、保護者と連携をとることもしなかった。これは、Xくんに対する学校、教師の対応の仕方と何ら変わらない。 しかも、平成17年(2005年)、18年(2006年)といじめ自殺の報道が相次いでいた。子どもたちの自殺予告も相次いだ。にもかかわらず、何年間にもわたるいじめをIくんの保護者に連絡さえしていない。自分の学校の生徒がとは思わなかったのだろうか。 クラスで、調査をしたとき、Iくんは、自分の名前がワースト1にあがっていると思っていた。他の子どもたちもそう思っていたという。 小学校4年生ともなれば、大人の考えを先読みする。「友だち調査」と聞いたとき、子どもたちは、これは、自分たちのIくんへのいじめを調査するものではないかと考えたのではないだろうか。 もし、そこで自分がIくんの名前を「嫌いな人」欄に書いたとわかれば、Iくんをいじめているとわかってしまう。そう考えて、わざとIくんの名前を避けた子どもたちが多かったのではないだろうか。 多くの子どもたちが、同じように考え、行動した結果、クラスの子どもたちにとっても意外な結果が出た。その日、休んでいて、日ごろ、元気でけんかも多いXくんの名前が、理由も書きやすいことからあがった。 もし、子どもたちが何の警戒心も持たずに、Iくんの名前を書いていたらどうなっていただろう。 同じように、K教諭は対応したと私は思う。Iくんのいじめられる理由を教師自身も見つけた気になって、「だから、あなたはいじめられる」「ここを直せばいじめられない」と指導したのではないか。 クラスにいじめがあり、それを止められないのを、自分の力不足とは考えたくはない。かといって、クラス全員を指導するほどの気力も、力もない。いじめられるのは少数。まして、周囲からいろいろ言われて自信を喪失している。教師があれやこれやと言いやすい。 私は、この裁判はもしかすると、Iさんと学校の間で行われていたかもしれないと思った。証言をきく範囲内で、Iくんが自殺していてもおかしくないような対応を学校側がしている。 NPO法人ジェントルハートプロジェクトでは、「いじめは、いじめられる側に原因があるのではありません。いじめる側に原因があるのです」と言っている。 文科省も度々、「いじめの問題への取組の徹底について」の通知を出し、「いじめ問題への取組についてのチェックポイント」では、1学校に対して、 (9) 教職員の言動が、児童生徒を傷つけたり、他の児童生徒によるいじめを助長したりすることのないよう、細心の注意を払っているか。 (17 )いじめについて訴えがあったときは、問題を軽視することなく、保護者や友人関係等からの情報収集等を通じて事実関係の把握を正確かつ迅速に行い、事実を隠蔽することなく、的確に対応しているか。 (25) いじめが起きた場合、学校として、家庭との連携を密にし、一致協力してその解決に当っているか。いじめの問題について、学校のみで解決することに固執しているような状況はないか。 とあるが、同小学校が守っているとはいい難い。 証言のなかで、各教師のいじめ定義に欠けているのは、「個々の行為がいじめに当るか否かの判断を表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うこと」の一文。 結局、教師がいじめだと認めないのだから、いじめを訴えている児童生徒側の立場に立って考える必要もないということなのか。 小学校4年生の男児がクラスで大泣きすること、元気だった子どもが大人しくなること、円形脱毛症になること、カウンセリングに通ったり、精神科の治療を受けなければならないことを、あまりに軽視している。 Xくんの「精神的な弱さ」のせいにして、それだけ大きなストレスがかかっている状態であることを認めようとはしない。 母親が教師に対して、「刺してしまうかも」とまで言う、自分の子どもを守るために、ぎりぎりまで追いつめられた心情を思いやることがない。そこまで、言わせた自分たちの行動を変えようとはしない。 そんな鈍感な感性の教師たちばかりでは、複雑な人間関係の問題であるいじめを止められるはずもない。 そして、自殺問題や裁判になったときに学校側が必ずのようにすることは、いじめを、「けんか」や「トラブル」に言い換えること。 神奈川県津久井郡の平野洋くん(940715参照)の自殺事件を彷彿させた。 津久井いじめ事件の民事裁判の一審では、生徒たちの行為を「ほかに同様の行為をしている者がいることを認識しながら、足をかけたり、黒板消しでたたいたりするなどの行為を繰り返したから、これらの行為は加害生徒らの認識や、洋君の反撃などにかかわらず、洋君に対する共同不法行為に当たる」と認定。 学校の責任については、「担任教諭は、洋君が転校後、7月に自殺するまでの間、少なくとも約3ヵ月間に15回以上、加害生徒らとのトラブルが起きていたことを知りながら、共同不法行為として把握せず、個別的、偶発的なトラブルとして扱い、その都度双方に謝罪、握手させるなどにより指導を尽くしたものと軽信し、共同不法行為を阻止するための十分な指導監督措置を怠った過失が認められる」と認定。その後、高裁ではさらに、生徒個人の責任以上に、学校の責任をより大きく追及している。 また、「自殺を予見するような直前の様子があったかどうかではなく、いじめ事件報道やいじめ自殺事件の頻発により、いじめが不登校や自殺など重大な結果を招くことは社会的に周知されている」として、いじめと自殺との因果関係も認めている。 学校、教師は、今回のことで、Iくんも、Xくんも自殺の危機へと追い込んだと自覚するべきだと思う。 学校は、母親からの訴えを受けてXくんがいじめられないように、注意深く見守っていたと主張する。 しかし、ほんとうにXくんを守ろうという意思がそこにあっただろうか。 むしろ、Xくんやその家族をトラブルメーカーと考え、監視していたのではないか。 ソシオのレッテル貼りが、子どもたちにだけでなく、教師にまで浸透していると感じる。そして、学校にもの申す親子が、モンスターペアレント、トラブルメーカー扱いされる。 学校が、きちんと対応してくれるなら、親は声を荒げずにすむ。他人教師はまだしも、校長の写真までも、アルバムから外してくれなどといわずにすむ。転校しなくてもよく、裁判など起こさずにすんだはずだ。 では学校はどうすべきだったのか。 校長らに提出される「週案」が形式化しているのではないか。事前に週案にソシオ調査が書かれることもなく、個人の思いつきでできてしまう。それを防ぐための週案ではなかったのか。また、保護者から訴えがある前に、学校自ら気づいくべきだったと思う。まして、過去に5回も実施していたというが、本当に今まで、問題はなかったのか。 また、問題の多いクラスに、K教諭は荷が勝ちすぎていたのかもしれない。少なくとも、いじめ問題を学校全体の問題として、取組む姿勢がまったく見られない。おそらく、このクラスだけでなく、学校全体にいじめは蔓延しているだろう。それに対して、個々の教師がどう対応してよいかわからず、場当たり的な指導をただ繰り返している。 2年生のとき、Iくんがいじめられているとわかった時点で、学校全体でしっかりと取組むべきだったと思う。そうすれば、4年生になって、さらに多くの児童を巻き込んで、傷つけあうこともなかっただろう。 公表が間違いだと気づいた段階で、児童や保護者に学校は説明と謝罪をすべきだったと思う。 それをあいまいにしたまま、ただ教師を病欠扱いで休ませ、ほとぼりを冷まそうとした。あれは間違っていたときちんと表明しなかったために、その時の教師の言動に影響された子どもたちのいじめ行為を他の教師たちも、あいまいにせざるを得なかった。 トラブルやけんかなどと言い訳して、目をそらさずに、いじめとしてきちんと対応すべきだった。 教師たちがまず、いじめられる児童の立場や心情を理解すべきだった。それがないから、児童に指導しても空回りしてしまう。 誰が一番困っているのか、そのままにしておいたら、誰が一番、追いつめられてしまうのか、情報を共有すればすぐにわかったはずだ。もし、教師全員が、Xくんを守り通すという決意のもとに行動していたら、少なくともおおっぴらにいじめられるということはなくなっていただろう。 面倒をできるだけ避けたい、自分たちの非を公にしたくない、そんな教師たちの保身が、Xくんやその家族を追いつめたのだと思う。 この裁判をここまで詳しく取り上げさせていただくのは、他の学校で二度と同じことを繰り返してほしくないと願うからでもある。 大小差はあれ、日本全国で同じような対応がなされているのではないかと思う。だから、いじめがなくならないし、いじめ自殺もなくならない。実際の学校の対応から、多くのことを学び取ってほしいと思う。 |
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